僕の故郷・旭川は北海道のほぼ真ん中に位置しており、北海道の屋根とも言われる大雪山系の山々の麓にある上川盆地に広がる街です。大都会・札幌に次ぐ北海道第二の都市として、道東、道北方面への交通の要衝としても有名ですが、川のまちとしても知られておりまして、石狩川の上流に位置する旭川は、大雪山系の山々から注ぎ込む大小合わせて130もの川が流れております。
川が多いということは当然橋も多いわけで、市内にある橋の数は760。そしてその中でも最も歴史があり、街のシンボルとなっている橋が旭橋です。
街のシンボルだけあって、旭川市民は旭橋の話になると熱くなるし長くなります。このブログも延々と続いてしまう恐れがあるため、その概要とか歴史とかについてはいろいろと詳しいページや詳しいページがたくさんあるので、そちらに委ねたいと思いますが、そのくらい故郷・旭川を象徴するような存在だということはお伝えしておきたいのです。
そんな旭川という街で僕は高校卒業の18歳までを過ごし、大学生となってからは旭川よりもさらに北、オホーツク海沿いの紋別という街に住み、そこで竹原ピストルと出会います。
野狐禅の結成前のエピソード等でも話すことがありますが、学生時代、卒業後のことについて僕は何も動いたり考えたりできていませんでした。大学は単なる滑り止めで特に意思もなく入ったため、そこで学んだ福祉を仕事にすることも考えられず、なんとなく抱いていた漫画家やゲームプログラマーの夢も叶えるために熱心に動くこともなく、ぼんやり空からシアワセでも降ってこないかな、みたいな感覚で音楽への夢をぼんやり浮かべたままアルバイトに明け暮れ、友人たちと遊び倒し、気づけば大学を卒業していました。それでもなお僕のぼんやりは終わることがなく、なんとなく旭川に帰り、実家の近所のコンビニでアルバイトを続ける生活でした。
周りの友人たちはどこそこに就職した、どこそこに住んで働いている、みたいな話も聞こえてくる中、自分の心の中をずっと占めていた未来への不安と、何かを決断することへの恐怖、それを紛らわすかのように日々の生活に没頭しては現実逃避している自分に対しての自己嫌悪がどんどん強くなり、動き出すことへのハードルがどんどん高くなるという悪循環。バイトのシフトが入っていることが言い訳であり救いだった、そんな生活でした。
振り返れば高校だって大学だって、なんとなく行くもんなんだろうというくらいの認識で、あらかじめ誰かに決めてもらっていたような感覚がありました。思えば、自分の意思で自分の人生のことについての決断をちゃんとしたことが一度も無かった。それで自分で自分の職業や就職先などを決めることが怖かったし、自分は何ができるのか、自分の強みは何で弱点は何なのかも知らなかった。意思を持っている周りの人たちがとても眩しく見えて、自分とは圧倒的に差がついているように見えてしまった。そんな意識から悪循環を生んでいたのかな、と思います。
そんな僕だったので、野狐禅を組んで音楽活動を始めるというのは、僕にとっても衝撃的な出来事でした。
本当に一人では何もできなかった僕なので、絶対に一人では音楽活動なんてやっていなかったでしょう。竹原ピストルがいてくれて、二人だったからこそ決められたんだと思います。音楽活動をするということも、旭川を出て札幌に住む、東京に住むということも、たぶん僕は自分一人では怖くて何も決められなかったと思います。
それから時は経ち、僕もいろいろな経験をして、本当にいろんな選択や決断を重ねて、悩んで学んできました。もちろん今でも怖いこともありますし、後悔していることだってありますが、それも全部飲み込んで積み上げてきたからこそ、こうして今の充実した人生を楽しむことができているんだな、と思います。あの怖さを克服できたことは、自分にとってとても大きな成長だったなと思います。
例えばあの時、やはり恐怖と不安に押しつぶされていたら、何も踏み出せず何も決められずに過ぎ去ってゆくチャンスを見送るだけだったなら、僕は今も旭川のコンビニで働いていたんだろうか?今も悪循環の中で震えていたんだろうか?などと想像するとゾッとしたりもします。
旭川は四方を山に囲まれた盆地に広がる街。そこから夢やチャンスをつかんだ者が、旭橋を渡り、遠い街を目指します。
サウンド的には、今回のアルバムにおいてもバンドやパーカッションなどで楽曲のイメージをより鮮明にしていきたい曲がある中で、弾き語りの曲もその対比が活きるように効果的に配置していきたいというイメージがあり、この曲は弾き語りでもメロディや歌詞の美しさが十分伝わるかな、と思いました。
ナカノステレオのピアノにイッキ君がマイクを立ててくれて、アットホームな良い雰囲気の中でレコーディングできました。
わりと終盤でのレコーディングだったこともあり、ピアノに若干チューニングが怪しい鍵盤がありまして悩みましたが、そこをなるべく避ける運指に変えて弾いたことが逆にそれまで想定していなかったアレンジになって、個人的には怪我の功名的な良いテイクかなと思っております。
大好きな故郷・旭川のことを歌にしたい、旭川の良さを表現したり、旭川に恩返しがしたい、みたいな気持ちもあって旭川のシンボル・旭橋を題材にしたものの、歌詞のテーマはそういったことからは大きく外れてしまいまして、若干申し訳ない気持ちもあったりします。笑
それでも、旭橋から見る石狩川の美しさ、夕暮れに街灯を灯す旭橋の美しさ、みたいなものが少しでも表現できていたらいいなあ、とも思います。
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