結局、怖いだけなんだよ。 形にするのが。
ひとりごとにすぎないので、
進み様がなくて、困る。
わかり切ってる結論が、つまんなそうにそこにあるだけで。
齢を経るに従って、‘当たり前’が増えてゆき、
手の届かないところへも、独断が届くようになって、
世界の四隅が、90°で、固定する。
見渡す景観の、完成。それは額にはまった、名画のようで。
正直なところ、寿命なのではないかと思うのだけど。
なんで続きが、あるんだろう?
いやいや、わかってるんだよ?そんなことは。
歩きたいんだ。夜の街を。外国の路地、砂漠の丘、海の彼方、星の合間を。
でもね、額からはみ出た絵を、壁画みたいに描き広げて、
ふと我に帰って二歩退いて、
腰を伸ばして仰いだとき、
あはは、なんだこりゃ。って乾いた笑いが、
すべてを台無しにしないか、心配でね。
それこそ、もはや逃げようのない、神話の崩壊。
‘作品’の破壊。
理論で導かれる、必然の‘予定不調和’。
それに抗える力が、在り得る?
そこに無責任な信仰は、介在し得ない。
なのに歌わなければいけないのだろうか。
だろうね。
がっかりだよ!
なんで音痴に歌わせようとするんだろうね!
そういうふうに、出来てないんだってばっ!
そういうふうに、出来てないんだってば!
かなしいだけだとおもうんだけど。
わかったよ。探しに行くよ。
でもそれには舞台が要る。物理的な足がかり。
あえて避けてきたのに。しょうがない。
逃げられると思ってか。
中世ヨーロッパ風の、城だろう?
ええと、どんなだ?石造り?
寝台には天蓋。ごてごてした刺繍に縁取られて、重苦しく垂れ下がる。
見慣れた光景だ。元の持ち主は我でないから、もう相当に古めかしくて、ホコリ臭いが、毎朝のこと。気にもならない。
まだ薄暗い寝所は、溜まったまま動かない、ひんやりした空気に支配されている。
抵抗するように身を起こす。次の間に、人の気配。
この微かな衣擦れに反応しているのだろうか?毎度ながら、大したもんだ。
まあそれが、正確にいえばそれだけが仕事なんだろうから、役目を果たしているだけだが。おろそかにすれば、それなりの報いを受けることになる。
敷物を通して、素足に固く冷たい感触。
「おい。」
寝起きの、つぶやくような一言。
それでも動き出す新しい一日。垂れ幕を割って、お支度役が次々と入ってくる。
組み立て式の台。厚い布を二枚重ねて敷いた後、真鍮の盥が据えられる。
大きな水差しから、湯気と共に注がれる洗顔用の香水。すべてがテキパキとこなされる。
あくびしながら立ち上がる。居並ぶお拭き役。白い布を下げて、緊張感に包まれる。
ああ、キツイのは苦手だって言ってるのに。
ご丁寧に花びらまで浮かんでいる。
まあ、これもいつもの気遣いなんだろう?好意的に解釈して指をひたす。
あの、映画だのアニメだののは、多分もっと下った時代の、それもごく一部の例外だろうけど。
もっともらしさを出すには、間違った思い込みにも配慮せねばなるまい。
ということで、無責任にも強調気味。