朝倉心理学講座〈7〉社会心理学 (朝倉心理学講座 7)唐沢 かおり朝倉書店このアイテムの詳細を見る |
ちょっと前の記事ですが
不登校の女子中学生が、ネットでいじめ。電車に飛び込み自殺。
この記事自体に対して自分がどうこう言うつもりはありません。
この記事を引用したのはネットに潜む集団の危うさを書くためです。
ネット以前に人間の集団行動とはなんでしょうか?
まず集団行動、とりわけ人間の集まりを集合体といい、その集合体の行動を集合行動とブラウンさんは言いました。
●集合体の分類
1.サイズ(規模)
2.集会性(会合の頻度)
3.成極性(ベクトルの集中、分散の度合い)
4.同一視(自己と集団の同一視の度合い、帰属意識)
これとネットの条件を重ねてみます
1.閲覧者、発言者等不特定で際限なく膨れ上がる
2.場所と時間の制約がない
3.ネタとして上がった場合の方向性は非常に高くなる(ex.田代)
4.mixi、2chなど、「ねらー」など帰属意識は高い
ネットの中では3の成極性が高くなれば火が付く可能性は非常に高い土壌が既に出来ていると考えられます。
●集団行動
ブラウンさんは形態を2つに分けました。
それは「モッブ」「聴衆」です。
モッブ・・・能動的な群集(リンチ、パニック、略奪など)
聴衆・・・・受動的な群集(視聴者)
スメルサーさんは
「価値」「規範」「動因」「状況的便宜」を元に形態は5つあると言ってます
1.パニック
・・・恐怖に対するヒステリー。
ex.火災になり我先に逃げるとか。
誰かが取った行動を皆同じ行動をとったりする(反響行動)
2.クレイズ
・・・熱狂的な反応。流行。
ex.初音ミク体験版つきのDTMマガジン。
3.敵意噴出
・・・潜在的な恐怖、不安から対象を攻撃する行動。
ex.9.11以後のアメリカ行動
4.規範志向
・・・一般的な社会規範に対して何かしらのアクションを起こす
ex.メーデー
上記1.2.3.へ変容しやすい
5.価値志向
・・・一般的な価値に対して何かしらのアクションを起こす
何かしらの自己、社会おける不都合を価値を変えることによって取り除く
ex.晩婚化
こんなところでしょうか。
最初の自殺の記事に当てはめるとブラウンさんで言えばモッブ、スメルサーさんではクレイズですかね。
●集団行動の特性
特性に対してはル・ボンんがこんな事を書いてます。
1.匿名性(集団が強すぎて個が埋没する)
2.暗示性(集団のベクトルが強すぎて深い連帯意識や心理的結合が発生)
3.情緒性(心理的一体感から情緒が大きく出る)
他にも1.は無責任性、2.は無批判性も特性としてあるようです。
ル・ボンさんは「人間は群集の一員になることだけで文明の階段を何段も下ってしまう」と言ってます。
そういえばだれの言葉か忘れましたが
「個としては結構まともな人間を集団はバカに変えてしまう」
と以前に聞いたことあります。
自分は集団が必ず悪いとは思いません。
人の歴史には集団でなければ出来なかった事は沢山ありました。
ようは集団の矛先、ベクトルと自分の中での個と集団のバランスだと思います。
森の中に居て森の大きさは見えませんが、集団の中で集団を冷静に見ることはある程度可能です。
今回引用したブラウンさんの概念は半世紀も前のもの出版物から。
ホント集団としての人って変わらないのもですね。
●ネットと人、集団
どんなに技術が進歩してもネットの先には「人」がいて無秩序な「集団」が形成されていることは変わらないと思います。
画面の向こうの「人」が見えればこのような悲劇も無かったのではと思ってしまいます。
それすら集団として無理なんでしょうけど。
●蛇足
最後に集団心理とは関係ないことですが引用した記事に付いてでも。
本当は言うつもりは無かったのですが。
「人を殺すには武器は要らない。殺す意思があれば十分だ」
何処かで出てきそうな言葉ですが一応自分の言葉、、、かな?
法律でも「未必の故意」や「幇助」とかありますし。
今回は残念ながら個としては「小さな悪意」が集団としては「殺意」になってしまったのでしょう。小さなものが集まりより強固で大きなものになりやすいのも集団の特徴です。
もっと残念な事はこれから先もまた同じことが必ず起こるでしょう。
集団とは学習しない生き物ですから。
集団リンチは明日は自分かも。
もしかしたらそんな潜在的な恐怖が斡旋していたかもしれません。
こんな色々書きましたが自分ですら集団の一部。
何時集団の中に埋没して、恐怖から逃避的や攻撃的になり、意味も分からず浮かれて踊らされているか分かりません。
そのぐらい人が認識している「個」と「集団」とはあいまいなものなのです。
この記事を書いたのは「自戒」のためでもあります。