日々の寝言~Daily Nonsense~

しあわせの王子

「しあわせの王子」(または「しあわせな王子」)はオスカー・ワイルド原作の童話です。原題は The Happy Prince (そのままですね)。オスカー・ワイルドといえば「サロメ」で有名ですが、この作品もかなり有名だと思います。今でも翻訳がいくつか売られています。たとえば、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4092500106/

最初に読んだのは、たぶん小学校低学年の頃で、名作童話集のようなものにはいっていたのを読んだのだと思います。挿絵もついていたと思います。途中からもう泣けて泣けて、最後につばめが死んでしまうところでは、もう、興奮のあまり体が震えるわ、涙は止まらないわで、大変だったのを覚えています。その後も、繰り返し読んでは泣いていたと思います。

主人公である王子とつばめの行動は、いかにも道徳的なものですが、しかし、あそこまで利他的であると、頑固というか、愚かというか、つばめも巻き添えにしたところなどは、とても身勝手で、もはや反道徳的な感じすらします。偽善的だ、という意見もわかります。でも、その当時の自分にとっては、そういうことはどうでもよくて、もっとずっと生理的なレベルで、なにかとても響きあうものを自分の中に感じていた、ということだったと思います。だから、読んで泣くことは、ツボにはまったというか、ほとんどオートマチックな反応で、とても強烈な快感でした。何かを読んでそういう体験をしたのはたぶんこれがはじめてだったので、よく覚えているのだと思います。

今でも、どちらかといえば、本を読んだり、テレビや映画を見たりして、よく泣くほうだと思いますが、あれほどの強烈な感覚はなくなってしまいました。もともとが癇の強い子供(今で言えばキレやすい子供?)で、悔しいことなどあると、枕を噛みしめていたりしたのですが、そういうのもいつのまにかなくなってしまいました。そういう変化に気づいたときに、これが成長というものか、と感じるとともに、さみしいような、残念なような気持ちもしたのも、また、覚えています。

子供向けに脚色されたものと原作そのものとはかなり違うという話もあるようですから、一度原作も読んでみたいと思って、どうも果たせません。
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