二人のピアニストに思う

gooニュース、注目のトピックスで「フジ子ヘミングがNHK斬り」を見て自分でもブログを作り、発言したくなった。

日本民族の合理性と東条首相

2007-10-27 00:34:40 | 歴史
昭和18年頃だったと思うが、東条首相が帝国学士院(現在の学術会議に相当するものだと思う)で講演を行なった。
現在の日本の、殆どの全ての人には、信じられないだろうが、
その時、東条首相は、日本の最高の頭脳集団の前での講演で、次の様なことを言ったのである


「日本から米国まで飛んで行って、空から爆弾を落すような飛行機を作れと私が云うと、そんな事は不可能だと、日本の学者は言う。
しかし、例えば、日本の空に向けて気球の様なモノを揚げて、其処で半日間静止させて置けば、地球が回転して気球は米国の上空に来る。
そこで爆弾を落せば、良いではないか。
その様なことを考えもしないで、人の云う事を最初から無理だ、と言うようだから駄目なのだ」。


これは作り話ではない。
演説の一言一句はそのまま、紀要にちゃんと印刷されて、書店で販売されていた。
帝国学士院の会員でなくても、国民の一般大衆の誰でもが、眼に出来た出版物である。

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瀬島氏の話題(▲瀬島龍三「幾山河」)、
栗林氏の話題(▲人間の評価: (7)秋の叙勲・栗林忠道②、▲人間の評価: (7)秋の叙勲・栗林忠道①)、
と続き、戦後派の人々は、それらの、今迄あまりよく知らなかった人の事跡を知ると、日本の現代史に無知であった事に、気付くと思う。

それでは、東条首相に付いてはどうであろうか。
この人物の名前だけは、殆どの人が知って居たと思う。
しかし、どの様な見識を持ち、どの様な戦争指導をしたのかは、知らないであろう。

戦中派以前の老人なら目の前で見てきたこと、(上記の種の事)、が伝えられないままに、戦後社会が過ぎてきた。
沖縄の人達の怒りで覆された、最近の安易な教科書検定の問題も、小泉首相の気楽な靖国参拝強行も、其処に根源がある。


小泉首相の靖国参拝を見て、若い人達の中には、名前だけしか知らなかった東条という男も、今迄言われていたほど悪い人物でもない、と思う人も居るだろう。
一部の陸軍軍人に可也厳しい態度で接した昭和天皇も、東条には比較的好意的であったと聞くと、なお更かも知れない。

しかし、帝国学士院での上記の発言を見れば、

このような感覚の持ち主が、日本の国の最高指導者だったことに、呆れるだろう


栗林中将の様な合理的思考の出来る頭脳を持った人物と、相性がよくないのは当然なこと、が分るだろう。


そして、東条は首相になり、栗林は玉砕が必至であるのが分かっていた硫黄島に送られるようなメカニズムが、日本の権力機構には働いていたのが、理解出来よう。

残念な事に、現在の日本でも、事情は左程変わっているとは思えない。
前回の衆議院選挙で大衆が圧倒的に支持したのは、
   論理派ではなく、東条に良く似た小泉であった


太平洋戦争が終わって、社会党全盛の時代、戦前の軍隊への批判が常識であった時代に、『風にそよぐ葦』を書いた石川達三は、
「葦をなぎ倒した風」、を軍部ではなく、大衆世論だと考えていた
 のを想い出す。


“散るぞ悲しき”を読むと、硫黄島での生活では蟻、ゴキブリの猛襲で一日中悩まされる事を著者梯は、最初に一度だけ書いてある。
しかし現実の生活では、毎日24時間を、死ぬ最後の瞬間まで,蟻、ゴキブリの猛襲が続いた筈だ。
その環境の中で行動した栗林が、作戦指導から報告書文面の詳細まで、合理性が乱れなかった事は、驚異的である。

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以下は、次の記事{ 日本民族の合理性と東条首相(続)}、に続く。

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3 コメント

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Unknown (Alps)
2007-10-28 11:18:37
東条首相がそのようなことを言ったと聞くのは始めてだが、そんな頭で良く陸大まで出たものだと思う。国家のトップによって国民の生活が大きく変る事を考えて、国民自身も考えなければいけない。

Q.C.では出た不良を捉えて、その原因に手を打つのが常識だが、出た不良を直すことに囚われて、原因究明と対策が取られなければ、不良はなくならない。今、次々と起こる事故や不祥事にも同じ事が言えるのではないか。
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後悔する事 (二人のピアニスト)
2007-10-28 17:03:26
戦時中をご存知のAlpsさんにまで、東条首相のその様な発言を知らなかった、と言われると、戦後派の人は私の言葉を信じないかもしれない、と心配になる。 あの演説の収録されていた学士院紀要を保存して置けば良かった、と悔やまれる。 終戦直後に占領軍を警戒して、焼却してしまったのだが、今になると、惜しい事をしたと思う。
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東条英機の人物像 (痩せ蛙)
2008-01-26 21:27:26
”東条英機暗殺の夏”(吉松安弘著、新潮文庫)という本があります。 その中の、例えば43ページに、同様な話があり、その様な考え方をする人物だったのだと分ります。
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