スマホの通知音が鳴った。
秘書給与詐取の疑いで、参議院議員広瀬めぐみ氏の事務所、自宅に東京地検特捜部の強制捜査が入ったというニュース速報であった。
そういえば、いつか、どこかの週刊誌がそのことを書いたことを思い出した。
広瀬議員は、例の自民党女性局のパリ研修旅行の「エッフェル事件」では四人の国会議員のうち、三人の女性参院議員の一人であった。
貸し切りバスの前列で婉然と微笑む姿と、自らがインスタにアップしたフレンチの写真が「観光旅行か」と話題になった。
バスの中の写真が週刊誌に使われたということは、この研修一行の誰かが、タレこんだに違いない。
そして、極めつけが「赤ベンツ、歌舞伎町ラブホテル、外国人サックス奏者との不倫」騒動である。
取材して下さいと言わんばかりのcatchyな話題であった。
しかも、彼女の開き直りは、むしろ天晴だった。
そうして、第三弾が、今回の東京地検特捜部の強制捜査である。
第一公設秘書の妻を第二秘書として届け出、勤務実態がないにもかかわらず給与を支払った形にして詐取したというものである。
振り返ってみて不思議に思うのは、参議院選挙に立候補するまでの広瀬氏の政治との関わりの少なさである。
子育て中に弁護士の夫の姿に触発されて、司法試験を目指し、見事、弁護士資格を得る。
これは本当に称賛に値する。
それからは離婚や相続問題などに関わり、簡易裁判所などの調停委員などを務めてきた。
女性の権利、子育て問題に定見をもった人であるのは間違いない。
国連で「日本の女性の地位と状況について」と題してスピーチ。平成30年7月以来、法務省・人権講義「女性と人権」を担当、とある。
上智大英語学科卒なので、英語は堪能である。
ただ、弁護士広瀬氏のブログを見ると、その記事の少なさから、他の候補者たちに比べ、あまり表立った活動はしてこなかった印象を受ける。
議員になってからの広瀬氏のブログ上のプロフィルも同様だ。
広瀬氏は選挙・議員活動について文字通り一年生で、事務所の主とはいえ、そのイロハについて誰かに指導を仰がざるをえない立場であったなずだ。
「赤ベンツ不倫」事件も、エッフェル塔事件の後にしては、政治家としては脇が甘すぎる。
そもそも、どのような経緯で広瀬氏が参議院議員選挙に立候補するに至ったのだろう。
地元盛岡では名前の知られた老舗旅館(ホテル)の娘であったことは間違いないだろうが、高校卒業以来、生活の拠点は東京であった。
故郷が出馬選挙区はザラにあるので、これは不思議ではない。
ただ、他の候補者にくらべ、候補となる以前の政治活動は、政治と無縁と言ってよいほど見当たらない。
岩手県選出で良く知られた自民党の重鎮と言えば、鈴木俊一財務相がおり、氏の義兄は麻生太郎元総理である。
広瀬氏を巡るスキャンダルは混迷を極める自民党にボディブローのようにきいてくるだろう。
広瀬氏の政治経験のなさ、管理者としての甘さを承知の上で、彼女を候補者に祭り上げてしまった力とは何なのだろうか。
国会議員にさえなっていなかったら、彼女は今頃、ワインの美味しい夜を過ごしていたはずだ。
広瀬氏の人生の歯車を狂わせたのは、一体何だったのだろう。
うまく国会議員の地位に納まったように見えた彼女の計画が破綻したのか、それとも最初からこのような役柄を期待されて誰かに登用されたのか、まるでミステリードラマだ。