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原敬首相就任祝賀と岩手県内スペインインフルエンザ猖獗

2009-01-31 22:47:37 | 新型インフルエンザ
 解熱したものの、原敬新首相が12月まで体調不良を訴えていたことは前回述べた。

 大正7年10月頃、原敬首相就任をうけ、出身地である岩手県内各地において祝賀会が開かれ、遠野や一関の住民代表が上京、解熱直後の原首相を表敬訪問した様子が原敬日記にみえる。
 この時期、県内各地での祝賀会開催のほか、岩手―東京間の人の往来も多かったと推測される。当時の大津知事はじめ県高官も続々たおれ、病をおして県参事会(県議会)に和服を着用して出席している。(岩手日報)

 内務省衛生局の「流行性感冒」の統計調査のもとになった岩手県の調査では、大正7年10月半ばから12月までの3ヶ月たらずの間(流行第1波)に、県内罹患者は33万8326人うち死亡は3660人を数え、11月の死亡率は東日本で一位であった。
 
 速水融氏の超過死亡推計では、岩手県では第3波までの超過死亡は7800人以上であるが、氏によれば、第1波による死亡率が高かった地域は総じて第2波の死亡率が低かったという。(速水融著「日本を襲ったスペインインフルエンザ」)
 
 岩手県も例外ではなかったようだ。ちなみに大正7年の岩手県総人口は86万7390人である。

 10月23日の岩手日報に小さな「感冒流行」の記事が載った。これがスペインインフルエンザに関する県内最初の記事ではないかと思われる。 死因として、「流行性感冒」のほか、これに続発した「肺炎」などによる死亡を含めると、納得のゆく数字であろう。
 また、具体性に欠ける記述ではあるが、消化器症状を呈した者は総じて重症化しているような記事もひとつだけあった。

 また県内市町村史上、スペインインフルエンザの記録は乏しいが、「山田町史」によるとどうやら10月半ばには県内で流行していたらしい。現釜石市鵜住居(うのすまい)や現山田町織笠、旧織笠村議会の記録が残っており、罹患者のいない世帯はなく、学校は2週間ないしそれ以上、休校措置を取っていたことがわかる。

 新聞紙面の縮小、工場、会社、警察、郵便局、役所の業務停滞、医師らの罹患による医療不足、物価上昇、失職、困窮と、2ヶ月余りの第1波のうちに、思いつく災難は何でも人々の上に降りかかった。
 人々は滋養をつけようと卵や牛乳を買い漁ったため、品不足に陥った記事もある。また、「悪性感冒」「流行性感冒」に効くという薬の広告の多さも目立つ。
 集会禁止や巡回診療など精一杯の対応も焼け石に水の感がある。

 岩手県におけるスペインインフルエンザの猛烈な流行と原敬首相就任に沸く県内祝賀の動きの間に関連があるのではないか、とは余りにも穿った見方であろうか。


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3 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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立ち寄り (風履来歩)
2009-05-24 13:01:48
「猖獗」と言う言葉を検索していて貴ブログに
立ち寄らせていただいた。
「新型インフルエンザ」に強い危機感を抱いていたので感動して読ませてもらった。
ご指摘の通り、スペイン風邪の時と状況が酷似している。
母親の叔父兄弟二人がわずか一週間で亡くなったことをよく聞かされてインフルエンザと肺炎だけは気を付けていた母が不覚にも肺炎でたった一週間で亡くなって二年目である。
それにして、よく調べられた資料と簡潔で適格な表現で尊敬してしまった。
まだ駆け出しの小生にしては、立派な先輩が
世の中にはいらっしゃるものだと心強く思った。
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コメントありがとうございます (風履来歩)
2009-05-28 17:52:38
カテゴリーが多岐にわたっているの、その博識に驚いています。
東海地震の想定震源域のど真ん中で、暮らしていることが、どれほど落ち着かないか、、
三陸沿岸の大津波のはるか昔、1459年明暦
7年の津波で、浜名湖が出来上がりました。
湖ができるほどの危険にさらされているとも言えます。
吉村 明 著 「海の壁」で三陸津波の記録を読みました。
世界に冠たる防備を備えても、なを恐怖はぬぐえないもののようです。
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風履来歩様 (goojuly)
2009-06-03 21:11:07
含蓄に富むお言葉ありがとうございます。自分なりに問題点と対策を挙げては消し、消しては書きの繰り返し。ついには、ほとんど消してしまうという意気地なさです。
 事が起きてしまっては手の尽くしようがないように思います。大切なのは平時の準備、生き方なのだと考えております。
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