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月刊ボンジョルノ

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地味なミドレンジャーが気になったあの頃

2007-06-13 | Weblog
具足ではない愚息につきあってスーパー戦隊シリーズのDVDを見ている。

ここで説明しよう。
スーパー戦隊シリーズとは「秘密戦隊ゴレンジャー」に始まる(*異説はあるようだが)子供向け番組シリーズで、赤・青・黄などに色分けされたコスチュームを着た3~5人程度のヒーローがチームを組んで悪と戦うという内容をもつ。
先般終了した「轟轟戦隊ボウケンジャー」が記念すべきシリーズ30作目であったそうで、現在は日曜朝7時半から「獣拳戦隊ゲキレンジャー」をやっている。
「全部おんなじようなもんだろ」とお思いの方は即座に己の不明を恥じるがよい。
脚本のよしあしや善悪双方の登場キャラクターなどによって、その面白さの量と質には大変な違いがあるのである。

いまうちは「魔法戦隊マジレンジャー」強化週間なので、エンディングの「♪マ~ジマジマジーロ~」に合わせて踊りのキレを親子で競い合っているところである。
それにしてもスカート短けえな。

なんでも最初に考えついた人というのは偉いが、そもそも秘密戦隊ゴレンジャーを構想した人(石ノ森章太郎?)にはなんぞ立派な賞を差し上げた方がよろしいかと思う。
複数のヒーローがチームを組んで戦う点、ヒーローが色分けされている点、メンバーが一人ずつ名乗りをあげて最後に「○○戦隊、△△レンジャー!!」とビシリとポーズをキメるパターンなど、いずれも超画期的で現在にまで連綿と踏襲されている。

多くの戦隊で「△△レンジャー!!」とキマるのをキッカケに背後にドッカーンと火柱が上がるのを「すげえなあ」と思いながら見ているが、あの火薬担当の人のテクニックはすごい。伝統芸能として保存・伝承すべきだ。ひょっとして今はCGでやっているのだろうか。そうは見えないが。
で、このポーズキメキメ→火柱ドッカーンを見るたびに、「これって歌舞伎以外のなにもんでもねえな、うんうん」と私は深く頷いてしまうのである。

戦隊モノの制作者が意識していたかどうかは知らないが、実はこの「複数のヒーローから成るチームによる名乗りパターン」の原型は、歌舞伎の「白浪五人男」である。
派手な着流しの野郎どもが傘もって並んで「問われて名乗るもおこがましいが…」とかいってカーッと見得をきるやつ。ご存じですね。加藤茶の歌舞伎コントで見たことありますか。そうですか。
ちなみに「白浪五人男」の前には「雁金五人男」というキャラも存在するのだが、これはちょっと知ったかぶりをして言ってみたかっただけである。

非日常的なコスチュームの五人がずらりと並び、順番に自己紹介をしつつキメのフレーズでそれぞれのポーズをビシリとキメる。要するに

「燃える炎のエレメント、赤の魔法使い・マジレッド!」は

「六十余州に隠れのねえ、賊徒の張本・日本駄右衛門!」

なのである。

「あふれる勇気を魔法に変える、魔法戦隊・マジレンジャー!」 は、

「案に相違の顔ぶれは、誰白浪の五人連れ(略)ならば手柄に、からめてみぃろぉ!」

なのである。

そういうことなら、稲瀬川勢揃いの場の幕切れに、土手の向こうからドッカーンと戦隊風火柱が上がって捕り手たちが一斉に返り落ちをしてもなんの違和感もない。
それがライヴで使われる、あの「パーンという音とともに銀色の細いテープが一杯飛んでくるやつ」でも一向に構わない。
要はそのキッチュなカタルシスに至る文法や、そこから生み出される体感リズムが全く共通のものであるということだ。
「鋼の錬金術師」のところでも書いたが、と自分の書いたことを繰り返し持ち出すのもいかがなものかと思うが、私は確信している。
歌舞伎にはエンターテインメントのほとんどの要素が含まれている。
エンターテインメントを志す者は、まず歌舞伎の門をくぐるべし。