多重債務道５７ 改札口

職安に何回も足を運び地元で数社の面接を受けた。地元企業はは地域特有の経済の冷え込みから給与水準も低く、弁護士先生が言っていた「月３万円の支払」を実行するのは厳しい給与の所ばかりだった。「地元資本の会社なら今はどこもこんなもんだよ」と言う職安の係員。自分は支払と生活が両立できる会社を探すため、「東京の資本の会社」を探す事にした。

自分が進めている「個人再生」は再生期間が始まると、裁判所命令により毎月３万円を積み立てるのは絶対命令になる。出来なければ再生失敗とみなされ「破産」となり財産差し押さえとなる。再就職の失敗は家族の為にも絶対に避けなければならなかった。その為にもある程度の収入が必要であった。

東京の企業で自分が求めていた給与と仕事内容の会社が何件か紹介出来ると職安の人が言ってくれた。求人案内を見ると自分の地元にも支店がある様だった。しかし東京での研修が１年間あるのが条件だった。

自分は悩んだ。家族と一緒に居たい気持ちは強くある。しかしながら給与もある程度がないと今後の生活も困る。自分は妻と相談した。結果が出るまで１週間話し合った。結論は東京に行く事でも仕方ないという事になった。妻ももしこっちに戻って来れない事になったら半年後にも家族で東京に住む事を快諾してくれた。自分は職安に東京の会社の紹介を希望し、東京の本社に行き面接と試験を受けた。

結果は２週間ほどして２次面接に進み何とか合格となった。勤務は３月１日よりと、寮に入ってもいい事伝えられた。家族に合格した事を電話で知らせた後に弁護士事務所に電話をし就職する事を伝えた。先生からは「オメデトウ、じゃあ最後の打ち合わせをしよう」と言ったので３日後会う約束をした。

家に帰るとちょっとしたご馳走を作ってくれていた。「３月から東京だよ」と言うと妻は「半年後にも追いかけてそっちに行くからね。待っててね、頑張ってね」と言ってくれた。仕事の内定が決まり東京に旅立つ２月末までは大変忙しい日々だった。弁護士の先生は行く寸前になって、消費者金融４社からＯＫ出たからと、結局支払うお金は「３年間ｘ３万」で一緒だからと、「個人再生」から「任意整理」に路線変更になった。

個人再生は裁判所の命令で行うもので、もちろん裁判所管轄。裁判所に毎月の収支の管理表を提出が義務付かれた。
「任意整理」は自分と金融業者の間に弁護士は仲介で入ってくれて「利息を引き直した残高」を弁護士が管理のもと支払う事だった。基本こちらの方が裁判所を通さずに出来るので、面倒な提出物や命令から逃れる事が出来た。

すっかり春めいて来た２月末。

まだ弱い雪が降っている。

妻は車で駅まで送ってくれた。

改札口で寂しそうな顔をする妻に自分は

「色々苦労をかけるけど・・・子供の事を頼むネ」

妻は悲しそうに下の唇をかみ締めていた

子供は「パパ、ばいばーい。今度ミッキーさんに会いに行くね～」

自分は後ろにいる妻達に手を振りつつ

改札を通過するのと同時に始まる

新しい人生のスタートに

必ず成功するように

祈りを込め

旅立った





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