GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

美食探偵明智五郎 音楽が切ないサスペンスドラマ

2020-06-28 20:56:54 | BOOK/COMICS

美食探偵。

今夜が最終回である。書こう書こうと思っているうちに最終回になっちまったい。したがって最終回以外のネタバレを多々含むので、録りだめしてて最終回放送後に一気に見ようとか、オンデマンドで一気見しようとか、とにかくまだ見てない人は読まないでね。

 

美食探偵。タイトルから想像すると、ハハァ、このドラマは美味しいものに目がない探偵が、食の知識に絡めて事件を解決に導く話だなってなるよね。半分当たりで、半分ハズレ。

これはサスペンスドラマである。

 

確かに主役の探偵・明智五郎は美食家で、料理や食材の豊富な知識を活用して事件の謎を解く。

しかし最近乱立してるグルメドラマのように「うーん、美味い」と唸りながら舌鼓を打ったり、以前東山紀之でドラマ化された「食いタン」のようにパクパク食べ堪能してから「じゃぁ事件の謎を・・・」なんて展開にはならない。

食や食材、料理に絡んで事件が起こるのだが、その内容はかなりエグい。

タイトルで「美味しいものを食べる探偵ドラマ」と勘違いし、「夜10時から放送だから見てたら腹が減る夜食テロだろうな」などとは間違っても思わないでくれ。ご飯を食べながら見るなんて無謀な真似はしないでくれ。

 

と、書いてみたが、ドラマを見ていない人には全く理解できないだろう。なんのこっちゃって感じだろう。ごめん。でも、本当にご飯食いながらは見れないのよ。

 

ドラマや登場人物を簡単に説明する。

老舗百貨店の御曹司(ブラックカードを持つボンボン)で3食を大事にしてる(生きてるうちに食べれる回数は限られてるのだから外したくない)探偵・明智五郎を中村倫也が演じる。

何を演っても中村倫也と言われ始めてる。これはすごいことだ。田村正和、木村拓哉の域にそろそろ近づいてるってことだ。

確かに「下町ロケット」の頃はパッとしなかったが、「スーパーサラリーマン左江内氏」「今日から俺は!!」あたりで吹っ切れたのか、「ドロ刑-警視庁第三課」「初めて恋をした日に読む話」「凪のお暇」「不協和音」など立て続けに出演しスタイルを確立。クールというよりはニヒル、第二の及川光博とも言える。

 

特に今回のスーツはGood。よくもまぁ原作漫画のスーツを見事に再現したもんだ。

そしてこのボルドー色のスーツは彼くらいしか着こなせないだろう。(自分も昔こんなスーツ着てたことがあるが過去は封印したからね)

たぶんオーダースーツだね。ジャストサイズだもん。多少動いてもツレやヨレがない。いいテーラーで仕立てたな。生地も特殊っぽいぞ、っていうかこの生地どこで見つけてきたんだ?あまり見かけない生地だが。裏地もちょこっと見えたがちょっと変わった柄だな。

シャツもオーダーじゃないかな?ループタイも含め、中村倫也=明智五郎のイメージにぴったりだ。

 

おっといけない脱線しちまったい。本題に戻ろう。

そして彼の探偵事務所の前にキッチンカーを出してしまったのが運の尽き、助手扱いにされてしまう小林苺(小林一号とネーミングされる)を小芝風花が演じる。

このふたりが最初に組んだ事件は、夫の浮気を疑う主婦・小池栄子からの調査依頼。まぁこれは簡単にカタがつくのだが、その際に中村倫也が言った言葉をきっかけに小池栄子が覚醒。夫を包丁でスパッと横一文字に切って殺害。居場所を突き止めた中村倫也と小芝風花の目前で崖から飛び降り自殺する。

 

はい、ここまでが第1話。

原作漫画を読んでる身としては、第1話「うーん・・・」と判断しかねるような内容だったのだが、第2話以降を見て、「あぁ第1話はepisode0扱いだったんだな」と理解。

「あれ?これなら別に飯食いながら見れるやん」と思うでしょ。第1話は小池栄子が旦那の首を包丁で斬るシーン以外は、別に茶碗片手に見ても、箸を持ちながら見ても大丈夫さ。なんならワイングラス片手でもいいぞ。

 

第2話で死んだはずの小池栄子は生きていて、地味な主婦から美しく艶やかな殺人鬼「マグダラのマリア」に変貌する。自分のことを「マグダラのマリア」と自ら名乗るなんて「中二病か?」って感じだが、この後からの小池栄子、マジで怖いのよ。

中村倫也のところに送ってきたモナリザの絵葉書と同じく、何を考えてるかどこを向いてるのかわからないマリアを演じる小池栄子。殺人を通して中村倫也とコミュニケーションをとる。「あなたが私を変えた」と言い「あなたも私を望んでるでしょ」と言う。下手すりゃ勘違い野郎だが、中村倫也にはわかるみたいだ。

 

小池栄子は殺したい願望がある人に近づき巧妙に心理を操作し殺人を幇助する。殺人教唆ってやつですね。

第2話では、青森で実家のりんご農家を手伝ってる志田未来に、裏切った高校時代からの彼氏をりんごを使っての毒殺を教唆する。

第3話では、フレンチビストロのシェフ武田真治に、悪質なレビューをネットに書き込むブロガーをぱんで窒息死させる方法及び疑われない対処法を教唆する。

第4話では、旦那のキッチンハラスメントに悩む仲里依紗に助言し、耐え切れず刺殺してしまった後は武田真治をサポートに送り解体を指示する。

 

どうだ、これでもまだ「飯テロ番組」とのんきに飯食いながら見れるか。食事するのが怖くなるはずだぞ。いや第4話なんか特に食事中に見るのは絶対無理だろう。

結婚当初は旦那に美味しい料理を食べさせたいと夢見ていた仲里依紗だが、現実は旦那の実家から次々送られてくる茶色い惣菜類でパンパンになっている冷蔵庫にうんざりしてる。ハラスメントに耐え切れず衝動的に殺してしまった仲里依紗に「あら、もう殺してしまったの?」とPCから淡々という小池栄子。

手伝い(指導)に来たシェフ武田真治。夢見た冷蔵庫は解体された○○でイッパイ。そしてラスト、踏み込んできた警察と中村倫也に追い詰められた仲里依紗はダストシュートに身投げする。悲しくグロい結末。

これで飯を食いながら見れる人がいるとしたら、その人はどこかぶっ飛んでしまってるか、すでにマリアファミリーの一員かだ。

 

第5話では刑事・北村有起哉の娘(離婚して妻が引き取ってる)が小学校でいじめられている。重度の牛乳アレルギーなのだが周りのガキはわからないのか、からかい、そしてそれがいじめに変わる。大したことないとか好き嫌いだとか、所詮小学生の脳みそ。大人が言わなきゃわからないのに、担任の先生は綺麗事を言うだけで何も解決しようとしない。現実社会でも同じだよね。

アレルギーを甘く見ゃいけない。アナフラキーショックで年間どれくらい死んでるか。

いじめを苦にしてSNSに「死にたい」と書き込んだ途端、マリア小池から返信。「クラスメイトも担任も殺しちゃえ」。給食に仕込んじゃえと悪魔の囁きに導かれてしまうこの小学生の女の子は、あの「義母と娘のブルース」で綾瀬はるかの義娘の小学生時代を演じた横溝菜穂ちゃんだ。

ついでに言えば北村有起哉と同じく刑事の佐藤寛太(劇団EXILE)は、寺島進主演の「駐在刑事」に二人とも同じく警察役で出てる。北村有起哉は警視で管理官らしく堅物、佐藤寛太は副署長〜署長〜管理官で階級は警視なのだが寺島進にいいように使われてる。どこか今回のドラマとかぶる。

ちなみに今回のドラマで北村有起哉が喋ってるのは広島弁と勝手に思い込んでたが、先日の放送で「あれ?これって高知弁(土佐弁)?」って。思い込みって怖いなぁ。

 

第6話では、中村倫也の実家(百貨店扇屋)の実権を狙う専務が仕組んだお見合いで、後継者中村倫也を亡き者にしようと用意された料理をすり替える。

第5話と同じく第6話でもマリアファミリーの武田真治と志田未来が登場。

 

この美食探偵は最近売れに売れまくってる中村倫也のスケジュールのため、かなり前倒しで撮影してたおかげでここまでストックがあったから、軒並み放送延期や中断になった4月クルードラマを横目に通常放送できていたが、この第6話のラストあたりの尺がまだ撮影できてなかったみたい。

苦肉の策のリモート撮影でラストをつなげてたみたいだが、それはそれでよかった。小芝風花と中村倫也がそれぞれ暗幕バック一人芝居で演じたはずだが、悪くない。特に小芝風花が、中村倫也を助けるため躊躇なく燃え盛る炎の中に飛び込んでいける小池栄子に、敗北宣言するシーンはちょっと泣ける。

スタート時は「ちょっとうざいかなぁ」と感じた小芝風花の演技だが、彼女はやっぱりうまい。これからまだまだ伸びるし売れるだろう。

って、すでにウレッコだったらごめん。(「特撮ガガガ」くらいしか彼女の出演作知らないの)

 

そしてもう一人、富田望生。

「3年A組」で知った時からベタ誉めしてるのだが、彼女はいいねぇ。

今回彼女は小芝風花の友人で、恋のアドバイスをしたり、なぜか助手二号扱いにされてしまったり、それをまんざらでもないどころか期待以上の働きしたり。

車も運転すりゃ、バイクも乗る。大食いで食べるの大好きというキャラ・桃子を演じる富田望生。彼女のコメディアンヌ本領発揮のおかげで、下手すりゃグロいしエグいこのドラマが和らいでいる。いい女優だなぁ。

 

新型コロナの緊急事態宣言解除により撮影再開し、放送再開された第7話、第8話では武田玲奈が地下アイドル役で登場。

小芝風花の高校時代からの同級生で、3人組アイドルグループ「爆音エンジェルズ」の一員。心が病んでいてストーカー(森永悠希)に悩まされている。中村倫也の探偵事務所にメンバー全員で寝泊まりするも、マリア・小池にコンタクトを取り、彼にドクツルダケを食べさせ殺害する。

この闇オチする武田玲奈が圧巻。可愛い顔して罪の意識がない犯罪者って怖いよな。ダイナマイトボートレースのCMで田中圭を軽くあしらう武田玲奈も可愛いかったけどな。

 

森永悠希は勘違いストーカー役がうまい。ルシファーと自ら名乗る厨二病のキモさもそうだが、疑いながらも愛する推しのココちゃん(武田玲奈)が作ってくれた手料理だからと食べちゃうとこなんて、ヲタっぽくていいよね。

そして苦しむ演技はさすがだね。これはちょっと「ボイス 100緊急司令室」(唐沢寿明/真木よう子)での死に方とデジャヴ感あったけどね。(ちなみに特撮ガガガにも彼は出てる)

キノコに当たっての中毒死はしたくないなぁ。ドクツルタケってそこらへんに生えてるキノコがかどうかわからんが、絶対食べたくないな。キノコは最近でこそ食えるようになったが、基本嫌いだし大丈夫か。

 

ライブシーンで、新型コロナ感染予防対策がされてるのが目を引いた。ソーシャルディスタンスとってペンライト振ったり、推しカラーのマスクしたりとか。これってこれからのアイドルコンサートでも活用されそう。推しの手料理には気をつけて。

 

このドラマ、第1話で崖から飛び降り死んだと思ってた小池栄枯が生きてたのをはじめ、第4話でダストシュートに飛び込んだ仲里依紗がシレッと生きてたり、「魁!男塾」か「リングにかけろ」のよう。

死んだ人間が平気で復活とか、舞台から消えたキャラがまた復活して出てくるとか、少年ジャンプ感があるが美食探偵の原作は「Cocohana」で連載中の少女漫画だ(これも集英社だ)。

 

原作者は「海月姫」(映画版:能年玲奈/TV版:芳根京子)、「東京タラレバ娘」(吉高由里子)、偽装不倫(杏)と、漫画界の池井戸潤のごとく次々と実写化されている東村アキコ。つい最近も自叙伝的漫画「ひまわりっ」が平祐奈主演(父親役は高橋克典)でテレビ宮崎開局50周年記念ドラマとして実写化された。

ただ、この東村アキコさん、グルメではない。美食家でもない。

実弟の森繁拓真も漫画家で、「いいなりゴハン」という食べ歩きエッセイ漫画を描いているのだが、これに東村アキコさんはちょこちょこ登場する。この漫画が誇張でないとすれば、たぶんグルメでも美食家でもない。

別に美食家でもないのに美食探偵を書いたらダメだというわけではない。その理屈で言えばサイコ犯罪者を描く漫画の作者は精神を病んでなきゃいけないし、医療漫画を描く人は医師免許を持っていなければいけなくなる(手塚治虫は除く)からな。

締め切りに追われ、パパッと交代で食ったり、深夜に食べたりするのがザラの漫画家にグルメはいない。料理を美味しそうに描くのが苦痛と言われるが(誰が?)、実際この美食探偵の原作でも大して料理は美味そうに描かれていない。

一番美味しそうに描かれてるのはドラマでも何度か登場するちくわの磯辺揚げ。とても学園祭で平気で黒毛和牛のフィレ肉を焼く男(明智五郎)が好むとは思えないが、そこは漫画(ドラマ)だ、許してくれ。

 

さて、いろいろ書いたが、このドラマの印象的なのは食ではなく音楽だ。

エンディングに流れる宇多田ヒカル書き下ろしの『Time』がすごくいい。憂いを帯びた旋律と歌声が、このドラマの世界観をすべて表してる。宇多田ヒカル、人間宣言してからもすごいなぁ。

そしてドラマを盛り上げてくれるのが、劇中にBGMとして流れる音楽。

作曲家坂東祐大さんの旋律はクラシックの匂いがする。美食探偵の狂気の部分とコメディの部分を隔て、物悲しさもある世界感を見事に表現してる。この人はよく知らないのだけど、アレンジ(編曲)が得意なのかな。同じメロディラインでも場面ごとにいろいろ変えてる。

 

う−ん、音楽のいいドラマは心に残るよね。

 

ちなみに「爆音エンジェルズ」の劇中ライブ曲『爆発ラブリー☆デイズ」はYouTubeで公開されてたぞ。今も見れるのかわからないが、「最高のドッカーン」「燃えてBang Bang」「愛が溢れて伝わるエンジェルスマイル」。これぞアイドルソングって歌詞と王道のメロディ&リズム。武田玲奈ちゃんが可愛いぞ。

 

さぁ最終回、今から観ようっと。

やばいなぁ、今はやりのなんとかロスに陥りそうだ。



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