一回生が叩きのめされる日である。
始まりの言葉
「ビールは麦から作る。よってパンと同じである」
「酒は米から作る。よってごはんである」
京都河原町のとある宴会場(貸切)であった。
メインは鍋料理である。
この日一回生は酌や料理の注文、料理の
取り分けなどの責務を免除される。
ビールケースは何ケースあっただろうか
日本酒の一升瓶はいったい何本あっただろう…
記憶にはない。
上級生がかわるがわる酌にくる。
最初はビールから始まる。
初夏であるので、最初の二三杯はうまい。
が、アテはキュウリのQちゃんと決められておりそんなにQちゃんばかりも食えぬ。
あるところから、ビールグラスがおちょこ、そう日本酒のおちょこだ。
これに変わる。
まだ10代の高校卒業してまもない一回生はじきにトイレに逃げる。
ほうほうの体でトイレからでると
「お疲れ様です!はい、ワンコビールいっとこか!笑」
ワンコソバをもじっている。
笑いどころではない。
そしてかけつけ三杯どころでもない。
むろん断れるはずがなく飲む。
何人もの同輩は、くたびれた布団のようになり畳で撃沈していた。
撃沈した奴まで、飲ます先輩はいなかったが。
中学2年の時に、サントリーホワイトを
1本空けてのたうち回ってから、私はある程度アルコールに対して免疫?があった。
あとは「潰されてたまるか!」の意地もあったし、アホなので冒頭のビールは…と米は…に洗脳されたのだと思う。
が、このワンコビールはむちゃくちゃ効くのである。
一瞬、すするからだろう
ストローでビールを飲んでも速攻で回るが、あれに近いと思う。
日本酒にシフトチェンジする
目が回る、回るどころか座ってもいられなくなる。意識が朦朧とする。
ここまでくると
上級生もこの儀式を通過しているので
いじめのような酒は飲ませなく、本当にヤバい手前で酌をやめるのだ。
そして、潰れた一回生をたたき起こして
水を無理やり飲ませてトイレに送り込む。
出てきた順に畳に寝かせ、手の届くところにゴミ袋を置く。(ここで戻せの意味だ)
こんな前時代的な事はいまや死滅していると思うが、少なくともとことんまで
潰しにかかる先輩はいなかった。
最後に寝たまま聞いた終わりの言葉。
「酒というのは自分の限界を知ってから飲むものである!以上 一回生諸君ご苦労さま!」
先輩の訃報を夜中に知り、思い出を綴った。
先輩ありがとうございました。