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正しい裁判を得るために

訴訟提起が不法行為との判決の事後検証ーその5(番外ー無効契約)

2022年05月09日 | 裁判・法律

原告(アブラハムプライベートバンク(株)・現ヘッジファンドダイレクト(株))の投資助言契約は
無効と確信している。先にも述べたとおりである。
契約行為が全く存在しなかった被告の場合は直接関係がなかったのであるが、原告の悪性を証明するためにも
無効を主張した。
判決は被告の主張として以下のように消費者契約法10条違反のみをとりあげたが、実際の訴訟では、
履行不能・あるいは金商法違反で無効という主張もしていた。

原告の投資助言契約3条及び5条はそれぞれつぎのとおりである。

これによると、投資助言サービスを受ける投資資産の額は、助言指導により「投資した」有価証券等の
「実際の投資金額」と定める。わかりやすくいうと、1年前の本日A投資信託を中長期保有(5~10年)
目的で、1000万円で購入したとすると、実際の投資額は1000万円なので、1年目の報酬は、
2021年5月9日、94500円である(1000万円×0.945%)。
中長期保有が目的なので本日現在、当然に保有している。売却(換金など)は考えたこともない。
すると原告投資助言契約によると、2年目として、例えば、本日現在のA投資信託の金額が
ウクライナ戦争などの影響で800万円に下落していたとすると75600円の報酬を
原告に支払わなければならないということになる。
しかし、A投資信託がAが運用しているし(運用先のAにはマイナスがでても運用手数料の
支払義務はある。)、売却するつもりもないので、原告に投資助言を求める必要は
全くない。にもかかわらず、0.0945%の報酬を原告に支払い義務があるという。
これが保有している間、継続するわけである。

皆さん、おかしいと思いませんか?
私はおかしいと思う。
なぜか?保有しているのは、A投資信託という現物であって、資金(現金・預金)ではない。
保有していた投資資金(現金)の1000万円は2021年の5月9日(実際にはそれ以前の振込をした日)に
なくなっている。
2022年の800万円というのは、A投資信託の評価額にすぎず、投資に充てる予定の現金(投資資金)ではない。
売却しないかぎり、800万円についての投資先を考えるのは空想でしかない。

原告の投資助言契約2条は次のとおりである。
なお、投資というのはいうまでもなく、利益を得る目的で、事業・不動産・金融商品等に資金を投下することである。

これによると、原告が行う助言は、
「顧客の投資目的に基づき、投資対象の選定及び売買の時期等の投資助言」を行うとしている。
ここで取り上げた例では、A投資信託を購入した後では、投資資金は不存在であり、
A投資信託については中長期保有で買い替えるつもりもない(顧客の投資目的)ので、
もはや「投資対象の選定も売買の時期等」についての投資助言は必要としていない。

そして、1条は、「原告は甲(顧客)のために忠実に投資助言サービスを行う」ことを承諾したとある。

そうすると、第3条が、投資助言サービスを受ける「投資資産の額」を「投資した有価証券等の
実際の投資金額及び5条1項に定める基準日に入手できる最新の評価額」としたのは
顧客の投資目的に忠実な投資サービスの観点からは「不能」を定めたものであるというべきと思う。
なぜなら、「有価証券等を実際に投資・購入した」瞬間に、投資資金(現金)が消滅したので、
最早、投資助言の対象となる投資資金(現金)が存在しないからである。
そうすると、不能な内容を定める3条は無効というできである。
契約の対象たる投資財産が存在しない以上、投資助言契約の目的そのものが
存在しないので、契約全体が無効である。
というのが、私の考えである。
つまり、投資資産を実際に投資すると、投資資産だったものは運用資産に代わったのであって、
もはや投資資産ではない。
運用資産は、投資助言会社ではなく、運用会社の判断で資産を運用することになる。
投資助言会社の投資判断など出番はない。

・・・・・

ところで、有価証券を保有し続けるかぎりは、現金(投資資金)としては存在しないので、
実際に必要とする投資助言(顧客の投資目的に基づき、投資対象の選定及び売買の時期等の投資助言)
サービス提供の機会は存在しない。
つまり不能の契約というわけであるが、これは顧客の方で問題提起をしない限り、取り上げられることはない。
そうすると、当分の間は(当分というのは法律の世界では”いつまでも”の意味であるが)、
助言指導により投資した有価証券等を保有し続ける場合は、自動更新するとの7条の
つぎの規定は、無用な投資助言契約を顧客に押し付ける、原告にとって好都合な条項なのである。
運用は運用会社(例の場合は、A )が行うので、投資助言サービスなど不要なのであるが、原告は、
顧客がサービスを求めなかったと弁解し(申出があれば、随時相談に応じるとしたあるが、
申し出がなかったと)、何もしないで、売却しただけで、3条及び7条の規定により
毎年、0.0945%の報酬が「棚ぼた」となる仕組みである。



原告の投資助言契約書は、詐欺商法のツールなのである。
(真正の投資助言会社であれば、投資した有価証券等を頻繁に売却・購入する顧客こそ、
投資助言サービスを必要とするはず。)

・・・・・

論争がかみ合う事例があれば、是非、原告の投資助言契約の無効を争ってほしいものである。
現ヘッジファンドダイレクトのHPをみても、その商法は現在も同じのように見える。

 

 

 

 

 

 



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