弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

ウクライナ危機について

2015年03月04日 | 日記

ウクライナ危機は益々深刻化しています。

イギリスの辞めたばかりの前MI6(海外情報担当)のボスがウクライナ危機について
大学で講演しています。
ウクライナ危機はもはやウクライナだけの問題ではなく、ロシアと西側との
より大きな、はるかに危険な危機になっているとしています。
そして、西側はロシアのプーチン大統領と共存することを学ばなけらばいけない、
プーチンの考えが気にいらないとしても、ありのままの姿を受け入れて付き合って
いくしかないと警告しています。
レジームチェンジになった場合、今よりはるかに悪くなるのではないかとしています。

だから、メルケル独首相の外交による和平を目指すこのところの努力にヨーロッパは
全面的なサポートをするべきだと。
アメリカがウクライナに対してリーサル武器を供与するとしてロシアに脅しをかけていますが
おそらく反対なのだと思います(どうもアメリカに対しては腰が引けているようですね)。 

その理由はつぎのようなものです。私の解釈も入っています。
そもそも直接のトリガーはNATOが、歴史的にも地理的にもロシアと密接な関係がある
ウクライナに干渉したことだからです。
NATOの拡大主義の結果だということです。
もともとロシアは領土問題には極めて神経質な国である。そのロシアの裏庭に
無断で侵入したようなものである。
プーチンはウクライナを侵略しようとしたのではなく、自国の安全が侵害されるとの
警戒から西側の無断侵入に対応しただけだというのです。
つまり自己防衛のためということです。
わかりやすく言うとプーチンの行動は正当防衛だったというものです。

さらにその後の展開ですがこれについても批判的です。
というのは西側は厳しい経済制裁で対抗し、それは益々厳しくなっています。
経済的打撃をくわえると、ロシアがあきらめざると得ないと考えたわけです。
しかし、これは全く戦略的に間違っているのです。
たとえばナチのヒットラーのような侵略が目的の場合には、こういう戦略は抑止力
として効果的ですが、プーチンの場合は、自己防衛です。
自国の安全が益々おかされるわけですから、防衛は益々エスカレートするのは
当然のことだというのです。 
正当防衛は過剰防衛につながることは、個人レベルで考えてもわかることです。
西側がまとまってロシアを攻撃してきたというような感じでしょうか。
特にロシアはアメリカに対しては特別な感情を持っていますから、防衛は益々
過剰になるわけです。
だから経済制裁をさらに厳しくすることは逆効果だとしています。
ましてやリーサル兵器の提供などあり得ないということでしょうか。

前ボスの一番恐れていることは、ロシアの核兵器です。
ロシアがアメリカと同等に対抗できる唯一の分野である。
人は(動物もそうです)追い詰められると必死になります。これは人間(動物)の生存
本能です。
追いつめれれるとロシアは核兵器を使うかもしれないという恐れです。
キューバ危機の再来です。
プーチンが逃げることはない、徹底的に戦うとみているわけです。
(ロシアが経済的に困難な状況になっていることは事実ですが、プーチンの人気は
引き続き高いというのは、戦争になれば国民が団結することは歴史の
示すところです)。 

ということで経済制裁のやりすぎも賢明ではないとしています。

このボス(ジョン・サワーズ)はリビアの例をあげています。
リビアは今回ほど西側が団結したわけではありませんが、米英仏などの主要国が
軍事支援し、空からの攻撃をしました。
カダフィは死亡し(リビア人による殺害ですが)、いずれにしても政権は崩壊しました。
しかし、軍事支援は、地上支援を含まないものでしたので、
カダフィはいなくなったが、新しい国造りに取り組む人材も組織もなく、
現在は過激なグループにかき回されケイオス状態になっているとしています。
ウクライナについても地上支援はないと言明していますので、
もしロシアに勝つことができた(ロシアに勝つことは考えられない)としても、
リビアの二の舞だというのです。無政府状態になるのではとみているわけです。

またボスはイギリスはこれまでにもイラク、アフガニスタンから撤退したことがあるし、
アメリカもベトナム戦争のあと撤退したと述べています。
意味深な発言ですね。

要は外からの支援には限界がある。要は当事者次第というものです。
むしろ無責任な干渉は逆効果だというものです。
ウクライナがロシアに勝つことはないだろうし、よくて対立の膠着状態が
果てしなく継続するだけである(それでもリビア状態になるよりはましですが)。
そういう状態はウクライナ国民にとっては不幸なことです。

ということで、一刻も早く和平をし、ロシアと協力し新しい付き合い方を模索する
努力をすべきと提案しています。
少なくともヨーロッパには現在ウクライナ問題に関わり続けるゆとりはないというものです。
ギリシャ危機はEUの解体につながるかもとの恐れがありますが、
ロシアはギリシャのチプラス政権に救済の申し出をしています。
他国を救済する経済的ゆとりなどないはずですが、西側に対する揺さぶりですよね。

メルケル独首相が訪日し、安倍首相と会談するようですが、
私の推測ですが、ウクライナ危機の平和的解決について話し合われるのではないかと
思います。
日本はロシアと領土問題を抱えているし、平和憲法の下、武力による対外干渉については
否定的・消極的ですから、協力できることがあるのではということでしょうか。

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これは直近の停戦合意交渉の一貫としてメルケル独首相とオランド仏大統領が
ウクライナ大統領と事前会談している写真です。

 

   

この後、メルケル首相らはモスクワに飛び、プーチン大統領と同じように会談
しています。その写真です。 

 

   

モスクワとキエフ、全く同じ文化圏だと思いませんか?
私には特にこの白いラウンドテーブルは極めて印象的でした。

そもそもウクライナの独立については、あまりにも急にベルリンの壁が崩壊し、
ソ連が崩壊したため、周辺国の領土問題について慎重に考慮する時間がなかったと
されています。

いずれにしても、サワーズ氏のいうように当事者で話し合い解決すべき問題
で第三者が武力や経済制裁といいような強制的な圧力で解決するような
問題ではないと思います。

サワーズ氏の見解はイギリスの情報機関の指導層が共有するもののようです。
政治家は違うのですね。

なお、機会があれば紹介したいと思いますが、アメリカでも同じような
考えを持つ専門家は多いのように思います。