野鳥に興味のない方は気づかないかもしれませんが、夏場よりも冬のほうが断然多くの鳥が見られます。とくに、カモなどの水鳥が飛来するのは冬場です。池や川でよく見られるのは、ヒドリガモ、マガモ、コガモあたりでしょうか。最近はオオバンも至るところで群れています。水場以外では、ジョウビタキやツグミなどが住宅地でも飛んでいますので、目にされる方も多いことでしょう。バードウォッチングをするようになって15年ほどになりますが、これほど身近に、こんな綺麗な鳥がいることにいつも驚かされます。冬場は、川べりを歩くだけでも楽しくなります。
今回ご紹介する映画『グース』に出てくるのは、カナダガンという鳥です。体の大きさはハクチョウを一回り小さくしたほどで、カモに比べればかなり大きいです。北米やヨーロッパではごく普通に見られますが、日本で見かけることは基本的にありません。(調べると、日本では数年前に特定外来生物に指定され、駆除されたようです。)
ニュージーランドに住む少女エイミーは、母親を交通事故で亡くし、別れて暮らしていた父親のいるカナダに移り住みます。母親を失った悲しみと慣れない生活での苦労が重なったエイミーは、ふさぎこみがちになり、父親のトーマスや彼の恋人にも心を開こうとしません。そんなおり、エイミーは近くの林で鳥の卵を見つけ、持ち帰ります。やがて卵は孵化し、刷り込み(鳥が生まれて最初に見た動物を親と思い込むこと)により、ヒナ達はエイミーを慕い、ついて歩くようになります。鳥たちの世話を続けるうち、周囲の手助けも借りながら、しだいにエイミーは明るさを取り戻していきます。
やがてヒナ達は成長し、越冬地へ飛び立つ時期になります。しかし、親鳥のいない鳥はどこへ飛べばいいのかわかりません。そこでトーマスは、趣味のモーターグライダーに乗り、鳥たちを越冬地へ導くことを思いつきます。しかし、鳥たちはトーマスの後は追わず、エイミーにつきまとうばかり。結果、エイミーがグライダーの操縦を覚え、彼女が鳥たちを率いて飛ぶこととなります。
到着地となるノースカロライナ州の湿地は、開発により埋め立てられる予定となっていました。エイミー達が鳥を導いて飛んでいることが全米でも話題となり、環境団体の協力もあって、湿地の開発反対運動が起こります。もしエイミー率いる鳥たちが到着したなら湿地の埋め立ては避けられるのですが、果たして彼らは無事にたどり着けるのでしょうか――。
こうして映画では、父と娘、人間と鳥との交流が描かれます。もちろんそうしたドラマ部分もじゅうぶん見ごたえがあるのですが、やはり動物好き、鳥好きの僕としては、カナダガン達の愛らしく美しい姿に目を奪われてしまいます。とくに、ずっとエイミーの後を追ってぴよぴよぴよと歩いていたヒナ達がたくましく成長し、大空へ飛び立つ時の光景の素晴らしさには、心を打たれました。動物が本来あるべき姿を見せた時の力強さと美しさには、有無を言わせない迫力があります。野生動物を相手に、的確な瞬間を映像としてとらえるのは、至難の業だったことでしょう。素晴らしい映像を作り上げてくれた映画製作スタッフには、最大の賛辞を贈りたいと思います。
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