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ペットシッターの紹介する本や映画あれこれ by ペットシッター・ジェントリー

ペットシッターを営む著者が、日常業務を交えつつ、ペット関連の本や映画を紹介します

映画『パディントン』

2020年03月20日 15時00分00秒 | いろんな動物の映画

 新型コロナウィルスにより、さまざまな業界が苦境に立たされていますが、ペットシッターも同様、かなりのダメージを受けています。なにしろ、人が外出しなくなればペットシッターの必要もないわけで、2~3月はキャンセルが相次ぎ、新しい依頼もごく僅かとなっています。かといってできることはほとんどなく、今は先を信じて我慢する時期と決め、家でできる作業を粛々と続けています。

こんな状況ですので、今回はご家族そろって楽しめる映画をご紹介しましょう。学校も休みになり、出かける場所も限られるなか、家の中で過ごす時間が増えていると思いますが、何かいい映画でも観たいという方にぴったりなのが、『パディントン』です。予告やポスター画像などから子供向けの作品と軽視されそうですが、実は本作、大人の鑑賞にも耐えられる良質のエンタテインメント映画なのです。

南米ペルーに住む新種のクマの夫婦がいて、かつてイギリスの探検家が彼らと交流し、いつかイギリスに来たら歓迎すると言い残して去っていきました。それから40年後、大地震が起きてクマの夫が死に、年老いた妻にも体力は残されていませんでした。そこで、彼ら二人と暮らしていた甥のクマが、探検家の言葉を頼りにロンドンへと旅立ちます。
 パディントン駅に到着したクマは、あてもなくさまよううち、通りがかったブラウン氏一家に引き取られ、住処が見つかるまでそこで暮らすこととなります。クマは、到着した駅名をとり、パディントンと名づけられました。都会も人間社会も知らないパディントンは、早々に騒動を引き起こし、ブラウン氏に疎ましがられます。居場所をなくしかけた頃、偶然の成り行きでスリを追い詰め、逮捕に貢献したことで、少しずつ一家に認められていきます。

その後、ブラウン夫妻の友人の協力により、捜している探検家が地理学者協会の一員だと突き止め、パディントンはブラウン氏と共に協会を訪れます。いったんは追い返された二人でしたが、その後にふたたびこっそり忍び込み、探検家の残した重要な証拠を探し当てます。ついに探検家の子息に会えるかと思いきや、そこには大きな罠が潜んでいたのでした――。

まずは騒動を起こして皆を困らせたあと、徐々に心を通わせていくという展開は、この手の映画にはお決まりの展開ではありますが、ツボを心得た安心の品質を保証してもくれます。とにかく実写とCGの融合が見事で、本当にこのクマがそこにいるようにしか思えません。クマの毛並みの表現、マーマレードがこびりつく表現など、高い技術が映画の品質をぐっと上げています。これこそ、最新技術の正しい使い方と言えるでしょう。

パディントンとブラウン一家が仲良くなる過程、探検家の行方を追っていく展開にくわえ、悪役となる存在についても徐々に明かされていきます。それらが最後にきれいに結びつき大団円を迎えるあたりは、巧い、と唸らされます。舞台となるロンドンも美しく切り取られており、とにかく映像を見ているだけでわくわく感が止まらず、すべてがしっかり計算され尽くしています。

パディントンの起こす騒動は、見ている側も最初は煙たく思ってしまうほどですが、徐々に彼の純真さに惹かれ、身の上を案じるようになります。観客の心理をつかまえる術を、制作陣は熟知しているのだと思います。誰もが楽しめて、誰もがハッピーになれる作品。こんな時期には、四の五の難しいことは置いといて、こういうある種能天気な映画に触れることが、心や体にとって大事なことかもしれません。僕も元気を出して、前向きにやっていこうと思います。


映画『グース』

2020年02月28日 12時00分00秒 | いろんな動物の映画

野鳥に興味のない方は気づかないかもしれませんが、夏場よりも冬のほうが断然多くの鳥が見られます。とくに、カモなどの水鳥が飛来するのは冬場です。池や川でよく見られるのは、ヒドリガモマガモコガモあたりでしょうか。最近はオオバンも至るところで群れています。水場以外では、ジョウビタキツグミなどが住宅地でも飛んでいますので、目にされる方も多いことでしょう。バードウォッチングをするようになって15年ほどになりますが、これほど身近に、こんな綺麗な鳥がいることにいつも驚かされます。冬場は、川べりを歩くだけでも楽しくなります。

今回ご紹介する映画『グース』に出てくるのは、カナダガンという鳥です。体の大きさはハクチョウを一回り小さくしたほどで、カモに比べればかなり大きいです。北米やヨーロッパではごく普通に見られますが、日本で見かけることは基本的にありません。(調べると、日本では数年前に特定外来生物に指定され、駆除されたようです。)

ニュージーランドに住む少女エイミーは、母親を交通事故で亡くし、別れて暮らしていた父親のいるカナダに移り住みます。母親を失った悲しみと慣れない生活での苦労が重なったエイミーは、ふさぎこみがちになり、父親のトーマスや彼の恋人にも心を開こうとしません。そんなおり、エイミーは近くの林で鳥の卵を見つけ、持ち帰ります。やがて卵は孵化し、刷り込み(鳥が生まれて最初に見た動物を親と思い込むこと)により、ヒナ達はエイミーを慕い、ついて歩くようになります。鳥たちの世話を続けるうち、周囲の手助けも借りながら、しだいにエイミーは明るさを取り戻していきます。

やがてヒナ達は成長し、越冬地へ飛び立つ時期になります。しかし、親鳥のいない鳥はどこへ飛べばいいのかわかりません。そこでトーマスは、趣味のモーターグライダーに乗り、鳥たちを越冬地へ導くことを思いつきます。しかし、鳥たちはトーマスの後は追わず、エイミーにつきまとうばかり。結果、エイミーがグライダーの操縦を覚え、彼女が鳥たちを率いて飛ぶこととなります。

到着地となるノースカロライナ州の湿地は、開発により埋め立てられる予定となっていました。エイミー達が鳥を導いて飛んでいることが全米でも話題となり、環境団体の協力もあって、湿地の開発反対運動が起こります。もしエイミー率いる鳥たちが到着したなら湿地の埋め立ては避けられるのですが、果たして彼らは無事にたどり着けるのでしょうか――。

こうして映画では、父と娘、人間と鳥との交流が描かれます。もちろんそうしたドラマ部分もじゅうぶん見ごたえがあるのですが、やはり動物好き、鳥好きの僕としては、カナダガン達の愛らしく美しい姿に目を奪われてしまいます。とくに、ずっとエイミーの後を追ってぴよぴよぴよと歩いていたヒナ達がたくましく成長し、大空へ飛び立つ時の光景の素晴らしさには、心を打たれました。動物が本来あるべき姿を見せた時の力強さと美しさには、有無を言わせない迫力があります。野生動物を相手に、的確な瞬間を映像としてとらえるのは、至難の業だったことでしょう。素晴らしい映像を作り上げてくれた映画製作スタッフには、最大の賛辞を贈りたいと思います。


映画『トゥモロー・ワールド』

2020年02月07日 23時00分00秒 | いろんな動物の映画

普段からたくさんのかわいい動物達と触れ合っていますが、ときおり不穏な幻想にかられます。この犬や猫はいま、本心ではどう思っているのだろう。そんな想像です。動物は嘘をつかない、というのは人間の勝手な決めつけであって、本当のところは誰にもわかりません。尻尾を振って甘えていた犬が、ご飯を食べた途端にそっぽを向いてしまう時など、「ああ、ご飯をもらうために甘えるフリをしていたのか」と悲しくなります。いつもはおとなしい犬や猫が、理由もなくとつぜん噛んだり攻撃してくることもあり、彼らの考えがまったく理解できないことはよくあります。

さて、今回ご紹介するのは『トゥモロー・ワールド』という映画ですが、本作を観られた方でこれを動物映画だと思った人はいないでしょう。人間に子供が生まれなくなったディストピア社会を描いたSF映画であり、けっして動物と仲良く触れ合うような内容ではありません。
 主人公のセオは、不法移民の押し寄せるロンドンで暮らしています。世界は混乱に満ち、各地でテロや暴動が起きています。セオはある日、反政府組織に誘拐されますが、そのリーダーはかつて別れた妻ジュリアンでした。セオはジュリアンから、ある女性のための通行証を準備するよう頼まれます。その女性は一つの大きな秘密を抱えていました。やがて反政府組織にもきな臭いムードが漂い始め、セオは女性を連れて逃げ惑うことになります。

激しい銃撃戦や、過激な暴力シーンが全編を覆う、シリアスでハードな作品です。それでもあらためて見てみると、実に多くのシーンで動物が登場します。逃げ惑う難民や一般市民の多くが、飼い犬を連れています。セオが逃亡先として頼る旧友ジャスパーの家にも犬と猫がいて、会話のあいだじゅうずっと犬や猫を撫でていたりします。町には羊の群れがさまよい歩き、建物に迷い込んでいたシカがとつぜん飛び出してきます。途中からセオと一緒に逃げることになる難民の女性も、飼っている犬を手放そうとしません。ちなみに、セオが通行証を求めて文化大臣を訪ねるシーンではブタの形の気球が浮いていますが、これはピンク・フロイドのアルバム「アニマルズ」をそのまま再現したものです。つまり、明らかに意図して様々な動物たちの姿が散りばめられているのです。これは一体どういうことでしょうか。

本作は、名匠アルフォンソ・キュアロン監督による2006年公開の映画です。戦闘シーンでは5~6分にも及ぶ長回しを多用し、迫力のある映像を作り出しています。そうして語られるのは、もし人間に子供が生まれなくなったらどうなるかという、突飛ながらも示唆に富んだ問題提起です。これは現代社会に対する警告と受け取ってよいでしょう。そうなると、登場する動物たちは、人間が自らを滅亡へと導くことへの対比だとも思えます。他の動物たちは変わらず生きているのに、人間だけが減っていく状況が浮き彫りのように明らかになっていきます。だから僕ら観客は、普段はかわいい動物達が、実はこぞって人類の滅亡をほくそ笑みつつ待っているのではないかという、不気味な想像をしてしまうのです。

結局、動物の本心など誰にもわかりません。前回のブログで参考文献としてご紹介した『友だち幻想』にもあった通り、人と人でさえ、完璧にわかりあえることはないのです。言葉がしゃべれるからと言って気持ちがストレートに理解しあえるわけではないからです。それが人と動物とであればなおさらのこと。だからこそ、わかりあえないということを前提としつつ、それでもおたがいが幸せに暮らせるよう、動物たちの存在を愛おしく思い、大切にしたいと思っています。

ちなみにバカバカしい陰謀論で、「猫は宇宙から来た侵略者であり、その可愛さで人間社会に取り入ったあと、一斉に人間の寝首をかいて地球を乗っ取る」というものがありますが、もしそうなったら人間はひとたまりもないでしょうね。


映画『ベイブ/都会へ行く』

2019年06月28日 12時00分00秒 | いろんな動物の映画

ペットの飼い主さんがたまに、「この子は言葉をしゃべるんですよ」とおっしゃることがあります。ずっと一緒に暮らしていると、場面に応じた鳴き方の微妙な違いに気づくこともあるのでしょう。ペットシッターがお世話をする場合、普通は長くても10日間ほどですので、鳴き方の違いにまで気づくことはありません。ただ、一度お世話した猫で、普通はにゃーにゃーと鳴いているのですが、顔をどこかにこすりつける時だけ、「カウカウ」と妙な声を出すことがありました。しかし、そのことを報告メールで伝えると、「いやあ、私達は聞いたことがありませんよ」と言われてしまいました。ならば、とふたたびご依頼を頂いた際、ビデオに撮ってお送りしようとしたら、今度はまったくその声を出してくれませんでした。

そういえば、僕の両親が以前に飼っていた猫のクロは、普段は「うわあん」という鳴き方なのですが、ご飯をねだる時には「ごわあん」と鳴いたそうです。母親がそう主張していました。真偽の程は定かではありません。

今回ご紹介する映画『ベイブ/都会へ行く』では、動物達がしっかりとしゃべります。ファンタジー映画なので当たり前なのですが、本作がすごいのは、動物が本当に言葉をしゃべっているように見えるところです。

本作は映画『ベイブ』の続編で、牧羊犬コンテストで大活躍した前作に引き続き、子豚のベイブは牧場で暮らしています。牧場が経営難になり、ベイブはイベントに出てお金を稼ぐため、牧場主の妻エズメと共に都会へと向かいます。ところがトラブルが続いて会場にたどり着けず、仕方なく途中の町で宿を取ります。そこには犬や猫をはじめ、チンパンジーやオランウータンなどたくさんの動物が暮らしていました。ベイブは彼らと共に穏やかに過ごそうとするのですが、町なかを徘徊する猛犬に追われたり、通報で駆けつけた保健所の職員に連れて行かれたりなど、騒ぎに巻き込まれていきます。

この映画では、シーンによっては巧妙に作られたロボットが使われますが、基本的には本物の動物が“出演”し、その口元だけをCGで合成しています。合成の境目はまったくわからないため、本当に彼らが動き、話をしているようにしか見えません。この完成度の高さには驚かされます。動物を調教してこうした映画に出すことに異論がなくはないのですが、ここまでうまくできていると感動すら覚えます。

後半はかなりドタバタのアクションになっていきますが、そちらも非常に素晴らしく、見たこともない映像が繰り広げられます。実は本作の監督はジョージ・ミラー、あの狂気の大傑作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を撮った監督さんです。たしかに本作でも、徹底して計算され尽くしたアクション構築やカット割り、そしてやり過ぎ感たっぷりの乱闘シーンに、その片鱗が伺えます。親子そろって楽しめる一本だと思います。


映画『WATARIDORI』

2019年05月10日 23時50分00秒 | いろんな動物の映画

アフリカに二度、行ったことがあります。もちろん野生動物を見るためです。現地の国立公園や自然保護区は、日本の県の一つや二つがまるごと入るほど大きなもので、本場でのサファリは想像以上に楽しくエキサイティングなものでした。象やキリン、ライオン、シマウマなどのメジャーな動物のほか、インパラ、トムソンガゼル、トピ、ウォーターバック、ゲレヌク、エランド、サーベルキャットなどなど、数え切れないほど多種にわたる動物たちを見てきました。
 野生動物を見た時の一番の感想は、とても綺麗だな、ということ。アフリカの他にも、パタゴニアのグアナコやニャンドゥー、フォークランドのペンギン、アザラシ、オタリアなど、いろんな場所でいろんな野生動物を見てきましたが、どれも格段に美しく輝いています。

こうした場所から日本に帰ってくると、また野生動物が見たいという気持ちが湧いてきます。動物園や水族館もいいのですが、どうしても美しさや迫力の点で見劣りしてしまいます。(もちろんそれらに存在意義はあると思いますので、これはあくまでも個人的感想です。)
 日本に生息する野生動物、たとえば鹿やキツネやタヌキなどは、なかなか身近で見られるものではありません。そんな中でただひとつ、比較的楽に見られる野生動物があります。鳥です。僕はいつしかバードウォッチングを楽しむようになりました。別に有名なスポットに行く必要もなく、近場の山や池で十分に楽しめる場所があるのです。
 仕事でイメージキャラにするほどペンギンが好き、というお話を前回しましたが、今ではペンギンに限らず鳥全般が好きです。双眼鏡でじっくり観察してみれば、その美しさ、かわいさにどんどん惹かれていきます。今回ご紹介する映画『WATARIDORI』は、そうした鳥の魅力、野生動物の魅力を最大限に伝えてくれる作品です。

この映画にストーリーはありません。世界各地のさまざまな鳥の姿を捕らえた映像が、ナレーションもなく次々と紹介されるだけです。なのに見始めたら途中でやめられません。いろんな鳥がいろんな環境でそれぞれに生きている。その様を見るだけで楽しく、感動を覚えます。なかには非常にユニークな行動をする鳥もいて、僕はいつも特定の二箇所で大笑いしてしまいます。
 ひとつはアメリカに住むクビナガカイツブリ。鳥は発情期になると求愛行動をおこなうのですが、この鳥はオスとメスが並んで水上を走るようにダンスをします。見事に二羽が並んでダダダダダ、と水上を駆ける様子は、「なんでそんなことするの?」という疑問と共に、おかしくてたまりません。
 もうひとつはアフリカのモモイロペリカン。魚を獲っているのか羽づくろいをしているのか、群れになって大きなクチバシを開け閉めしていると、一羽のクチバシが別の一羽の口の中に入ってしまい、抜けなくなります。大きな魚を保持するため、ペリカンのクチバシの奥にはのど袋というたるんだ部分があり、そこに別の一羽のクチバシが刺さってしまったのです。

他にも印象的なシーンはいくつも登場します。首のあたりを膨らませ、ぽわん、ぽわん、と泡が弾けるような音を出すキジオライチョウ。崖の上から飛び立ったかと思うと、一瞬で体をすぼませ、水面に向かってミサイルのように飛び込んでいくカツオドリ。不思議な行動に首をひねりつつも、これが生きているということなのかと思えば胸が熱くなり、そこにいる鳥たちすべてが愛おしく感じられます。

この手の動物ドキュメンタリーはいくつかありますが、本作の製作陣は志の高さが違います。たとえば、集団で飛ぶカモやガンの姿を間近で捕らえたショットでは、鳥たちの愛らしい、妙にすましたような独特の表情が見事に捕らえられてします。一瞬、合成かとも思いますが、そうではありません。ハングライダーにプロペラをつけたような超小型機で、カメラマンが一緒に飛びながら撮影しているのです。このため、同行する鳥とは幼鳥時から共に過ごし、仲間だと思わせておくという、非常に時間とお金をかけた準備がなされています。いっぽう、野生の鳥の撮影では、目指す映像を撮るため何日も費やすこともあり、本当に根気と情熱を持って作られた作品だということがわかります。

というわけで、とくに鳥が好きというほどでない人も、動物好きであれば必ず気に入る作品だと思います。とにかく最初の10分を見れば、最後まで見られずにいられないはず。なるべく大きな画面で見ることをお薦めします。