新型コロナウィルスにより、さまざまな業界が苦境に立たされていますが、ペットシッターも同様、かなりのダメージを受けています。なにしろ、人が外出しなくなればペットシッターの必要もないわけで、2~3月はキャンセルが相次ぎ、新しい依頼もごく僅かとなっています。かといってできることはほとんどなく、今は先を信じて我慢する時期と決め、家でできる作業を粛々と続けています。
こんな状況ですので、今回はご家族そろって楽しめる映画をご紹介しましょう。学校も休みになり、出かける場所も限られるなか、家の中で過ごす時間が増えていると思いますが、何かいい映画でも観たいという方にぴったりなのが、『パディントン』です。予告やポスター画像などから子供向けの作品と軽視されそうですが、実は本作、大人の鑑賞にも耐えられる良質のエンタテインメント映画なのです。
南米ペルーに住む新種のクマの夫婦がいて、かつてイギリスの探検家が彼らと交流し、いつかイギリスに来たら歓迎すると言い残して去っていきました。それから40年後、大地震が起きてクマの夫が死に、年老いた妻にも体力は残されていませんでした。そこで、彼ら二人と暮らしていた甥のクマが、探検家の言葉を頼りにロンドンへと旅立ちます。
パディントン駅に到着したクマは、あてもなくさまよううち、通りがかったブラウン氏一家に引き取られ、住処が見つかるまでそこで暮らすこととなります。クマは、到着した駅名をとり、パディントンと名づけられました。都会も人間社会も知らないパディントンは、早々に騒動を引き起こし、ブラウン氏に疎ましがられます。居場所をなくしかけた頃、偶然の成り行きでスリを追い詰め、逮捕に貢献したことで、少しずつ一家に認められていきます。
その後、ブラウン夫妻の友人の協力により、捜している探検家が地理学者協会の一員だと突き止め、パディントンはブラウン氏と共に協会を訪れます。いったんは追い返された二人でしたが、その後にふたたびこっそり忍び込み、探検家の残した重要な証拠を探し当てます。ついに探検家の子息に会えるかと思いきや、そこには大きな罠が潜んでいたのでした――。
まずは騒動を起こして皆を困らせたあと、徐々に心を通わせていくという展開は、この手の映画にはお決まりの展開ではありますが、ツボを心得た安心の品質を保証してもくれます。とにかく実写とCGの融合が見事で、本当にこのクマがそこにいるようにしか思えません。クマの毛並みの表現、マーマレードがこびりつく表現など、高い技術が映画の品質をぐっと上げています。これこそ、最新技術の正しい使い方と言えるでしょう。
パディントンとブラウン一家が仲良くなる過程、探検家の行方を追っていく展開にくわえ、悪役となる存在についても徐々に明かされていきます。それらが最後にきれいに結びつき大団円を迎えるあたりは、巧い、と唸らされます。舞台となるロンドンも美しく切り取られており、とにかく映像を見ているだけでわくわく感が止まらず、すべてがしっかり計算され尽くしています。
パディントンの起こす騒動は、見ている側も最初は煙たく思ってしまうほどですが、徐々に彼の純真さに惹かれ、身の上を案じるようになります。観客の心理をつかまえる術を、制作陣は熟知しているのだと思います。誰もが楽しめて、誰もがハッピーになれる作品。こんな時期には、四の五の難しいことは置いといて、こういうある種能天気な映画に触れることが、心や体にとって大事なことかもしれません。僕も元気を出して、前向きにやっていこうと思います。