忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

処理水の放出開始「評価」57%徐々に理解増える【NNN・読売新聞世論調査】

2023年08月28日 | 随感随筆




尖閣諸島沖での中国漁船による衝突事件。記者会見の場で時の官房長官だった仙谷は「中国は司法権の独立、政治・行政と司法の関係が近代化され、随分変わってきていると認識していたが、あまりお変わりになっていなかった」と言って日本人の度肝を抜いた。

言葉遣いが丁寧なのは結構だが、要するに14人の中国人船員と船を中国に返せば北京の態度も軟化するだろうと考えていた。仙谷は「14人と船がお帰りになれば、違った状況が開けてくるのではないか」とも言っていたが、多くの日本人や国際社会の誰もそんなことを思っていなかった。そして仙谷の「お変わりになっていなかった」「お帰りになれば」に違和感を通り越した不気味さを感じていた。

更には白樺のガス田付近に中国の海洋調査船がうろうろしていると指摘されると「周辺にいらっしゃることは確認している」。中国に逆らうくらいなら政権なんぞどうでもいい。日本の政権与党、日本の官房長官如きが中国共産党に物申すなどとんでもない、という仙谷の忠誠心と健気さが際立っていた。また、仙谷は普段から丁寧な話し方で有名なわけでもなく、ちゃんと自民党議員相手なら、例えば予算委員会で自民党、西田昌司参院議員に対してなら「耳の穴をかっぽじって(聞け)」という答弁をしてもいる。相手を見下していないと出ない言葉だ。つまり、相手次第で立ち振る舞いを変えることができる。強いモノには弱く、弱いモノには強い。足の先まで中国人だった。

いま、中国の税関当局が日本からの水産物を全面的に輸入禁止する、と知った農水省のお爺ちゃんは「大変驚いた。全く想定していなかった」と記者の前で狼狽してみせた。我妻でも「放出したら中国、また、日本の魚とか止めるで」と言っていたから、この国の国務大臣、それも担当大臣とは、そこらのパート主婦がわかることすらわからず驚いて困っているとわかる。たぶん、もう、なにかとダメなんだから内閣改造を待たずに辞めて家に帰って寝たほうがいい。誰か布団を敷いてあげてほしい。

ちなみに、この野村農水相。出身校に「ラ・サール中学校 高等学校」とある。都落ちした左翼芸人も芸名として使っているが、学生らの名誉のためにも、そろそろ本気でなんとかしたほうがいいかもしれない。世間から「阿呆か左巻きしかいない」とされる「風評被害」は深刻だ。



まあ、いずれにせよ中国共産党、及び、日本国内の中国共産党シンパの思惑は外れまくっている。先ず、放出初日の福島県漁港のセリは通年より「2割増し」で魚介が売れた。ニュースでも「処理水放出の影響はみられませんでした」とのことだったが、あれ以来、マスコミでは見かけないニュースだ。風評被害を抑制したい、と本当に思うなら「福島の魚は売れてます」とやればいい。

しかし、日本のマスコミは「日本の魚介類が消費しきれなくて大変だ」と不安を煽る。北海道のホタテ業者をして「99%が中国向け。輸入停止は倒産の危機だ」とか嘆きを聞かせる。メタミドホス餃子のときと似る。あのときは巷の食品スーパーに「中国産が入らない。このままでは品物は揃わないし、値段も高くなってしまう」と消費者を脅していた。

橋下徹じゃないんだから、普通、あんな不安定な国に軸足を置いた商売自体を考えるきっかけにする意見もある、と報じるべきだ。それでも中国市場は魅力的、として参入する阿呆はともかく、何らかの政治的意図をもって「中国に逆らう気か」と尻尾を振る連中もそろそろ損切りして撤退を考えている。なにもないのに社員が逮捕、拉致監禁されたら賠償責任も問われる。日本国内の世論も面倒臭い。それで儲からないならメリットはない。

台湾のパイナップルが中国から輸入禁止とされたとき日本の輸入量は8倍になった。蔡英文総統は自らパイナップルを宣伝し、運送費の補助を決定して価格競争できるようにした。リーダーの見本だ。比して岸田政権は「外交ルートを通じて即時撤廃を求める申し入れを行った」で御仕舞い。そこらのパート主婦でもそれくらいは言う。それで習近平が「撤廃するアル」というわけがないのは、そこらのパート主婦でも知っている。また、世間は「WTOに提訴しろ」も言うが、そこは「聞く力」なんかない。そんな度胸もないし、バイデンファミリーと同じく、なにか「できない理由」があるのかもしれない。

例えば木原誠二に「ホタテマン」のコスプレをさせて、ついでに松川るいをエッフェル塔の着ぐるみで横に添え、ホタテを舐めるなよ、中国にゃ負けないぜ、とでも歌わせてPRするとか、今井絵理子にマリー・アントワネットのコスプレをさせて「パンがないなら、ホタテを食べればいいじゃない」とキャッチを載せたポスターを貼るとかすれば、岸田政権の支持率は大幅に回復するか即死するかのどちらかになる。賭けてみるのもいい。どうせダメなんだから。

地上波テレビなども相変わらず。元村有希子なる論説委員はまだ、「リスクはゼロにはできない。トリチウムという放射性物質が少しでも含まれている水を海に流すわけですから」と日曜の朝のテレビでやる。更に「中国の反応も外交力の欠如の結果だと、わたしは思っています」とのことだ。さすがは毎日新聞の人間だ。我々はもう「こんなのしかいない」のではなく「こんなのしかやれない」のだと認識すべきだ。もう、なにかはとっくに始まっていて、そしてそれはもう、そろそろ完成をみる。好きなようにさせ過ぎた。油断し過ぎていた。ギリギリアウト。遅きに失した。

福島第一原発、事故当時の官房長官だった枝野も「処理水を海に流す話がいきなり落ちてくるようなスタートから間違っていて、プロセスに深刻な問題があった。もうちょっと納得感を得られるようなやり方はいくらでもあった」とか無責任の極みを言う。2年以上前から計画されていたことを「いきなり落ちてくるようなスタート」と評するのは完全に外野、我関せず、自分には無関係だというに等しい無責任だ。それに「いくらでもあった」なら、ひとつでも出してもらいたい。こんなんだから泉如きにヤラれる。


そしていま、最も困っているのは中国共産党である。「振り上げた拳」で済まなくなる可能性がある。

中国国内で塩を買占めに走らない富裕層は日本旅行をキャンセルする。中国共産党高官が「日本の人道に対する罪に鑑み追加制裁する」と「日本への個人旅行全面禁止」を提案したが、とても良い流れではある。「国慶節」の旅行先、人気第一位の「日本」に行けなくなり、中国国内では日本産の魚介類の流通どころか、調理も禁止するというヒステリーに困るのは日本の漁港関係者だけではない。それに心配せずとも日本の魚介類は日本国内でも美味しく頂くし、インドなんかもいつまでもボンベイダックばかり食べていない。朝日や毎日、NHKや特定野党連中以外なら世界は中国だけじゃないと知っている。

それでも福島瑞穂や日本マスコミは大騒ぎするが、これもいつもと同じ手口だから、かなり影響力は落ちている。いくらサンデーがモーニングしても、処理水の海洋放出に「反対」は3割まで下がってしまった。そもそも中国、香港が日本産の水産物を輸入禁止しても、全体の輸出額からすれば0.17%に過ぎない。これが1年続いても日本のGDPに対する押し下げ効果は0.03%(農水省)。つまり、日本の海産物が来ない、で困るのはあっちだ。

東電も律儀に周辺海域から何か所も海水を採取してトリチウム濃度を測り、都度、公表もしている。山本太郎には申し訳ないが、これがぜんぜんベクれていない。

だから多くの日本人、今宵の肴は肉じゃない。





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