ギャラリー縄「しょう」

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ギャラリーコレクション

2011-12-09 | ギャラリー縄コレクション
想い出の作品
友 遠方より来る
石黒宗麿、小山冨士夫、荒川豊蔵先生



40年近くこの仕事をしていますが、最も思い出深い作品です。
石黒宗麿先生の鉄釉の瓶です。
1975年の秋頃だったでしょうか、奈良県在住のお客様が一つの壺を入手されました。 
箱が無く、拝見しましたところ作風、銘などから石黒宗麿先生の作品ではなかろうかと
なりましたが、もとより確証はありません。
そこで当時ご健在だった小山冨士夫先生に鑑ていただくべく、岐阜県土岐市の花ノ木窯へ
持参いたしました。
二階の広間に通されたのですが、小山先生は部屋の奥のほうに坐しておられ、私共は
入口近くに控えて、壺を取り出しました。多分に遠目であったのですが先生は即座に
「石黒さんだね」と言われました。
それから、やおら電話の受話器を取りダイヤルを回されて、相手の方に「君、久し振りに
友達が訪ねて来てくれた」とおっしゃったように私には聞こえました。
しばらくして、人が訪ねてこられましたが、それは荒川豊蔵先生でした。
その後の情景は、いまだに私の目の奥に焼き付いています。
石黒先生の壺を真ん中にして左右に、普段から寡黙であった荒川先生はもとより、日頃は
比較的饒舌であった小山先生も何も語らず黙して、ずっと坐しておられました。
そこには私共余人の立ち入ることできない石黒宗麿、小山冨士夫、荒川豊蔵先生の
想いが立ちこめていました。

後日談)
小山先生に箱書していただいた石黒先生の壺を、奈良のお客様にお納めさせて以来30数年余
昨年どうしても、もう一度拝見したくなりお訪ねしましたところ、自宅が火事にあわれ、
建て替え中でした。もしやと思っていましたが、今夏改めてお聞きしましたら無事とのこと
こうしてここにご紹介出来たことは何よりも幸甚でございます。
酒盃はその時頂戴した、花の木窯で焼かれた種子島です。