The Man

理系男のダンディズム -ロジカルにロジカルに。 考え抜いたとき、それはその人の感性となる-

組織の壁 と 思考する個人

2004-12-20 00:21:09 | 生き方
組織を下から支える個人では、どうすることもできないのか!
「死んでしまった」 by absinthさん from しんぞうのおんな へトラックバック。

無念な思いあふれる話故、心理的に重い話なのだが、どうしても考え抜かなければならない問題として、取り上げたい。

この話は、一見、医療の世界における難しさであるように見える。
だが、医療の世界だけにとどまる問題ではない。


この問題の根幹は、「組織の壁」なのだ。


専門分化された組織に所属していると、「組織の壁」に接することは一度や二度ではない。

たとえば、メーカやサービス提供会社ならば、組織を超越する企画を立案し審議に進んだのはよいが、審議の場が「組織の壁」によって紛糾し、よいプロトタイプや企画が死んでしまう。


このような現象は、なぜ生じるのだろう?


組織を構成する個々の人々は、悪意を抱いて行動しているわけではない(最悪な事例では、悪意を抱いて行動するどうしようもない人間もいるのだが)。

だが、専門分化された組織として動き始めると、縄張り争いに代表される権力争いや責任の押し付け合いと言った、悪意を持たない人間達で構成された組織とは思えない面を見せる。


なぜだ?
なぜ、こんなことが生じるのだ!?


いつものように、仮説を立てて、検証してみよう。


独立している各個人は、自ら考え、自ら行動する。
しかし、組織の一員となった瞬間、組織で思考したような錯覚に陥り、自ら考えることを止めてしまう。


かなり乱暴な仮説であることを、お詫び申し上げる。
しかし、それぐらい、緊急に考えてみたいテーマなのだ!

無論、単独の個人個人が、なにも考えていない場合もある。
この場合、組織として構成されていても、その組織全体としてなんらかの結論を出せるとは思えない。

なので、この場では、単独の個人個人では大なり小なり考えることができる人々によって構成された組織を考える。

専門分化された個々の組織。この個々の小さな組織は、専門分化された人間達で構成される。専門分化させるとは、似たような思考や行動を行うことができる人間達に分類することである。

このような組織は、年齢や経験、実績に基づいて、ピラミッド型の組織を構成することが多い。


ここで、人はある組織に所属すると、その組織で居心地良く過ごしたいと考える生物であると仮定しよう。

居心地がよくない場合、

・じっと我慢する(妥協する)
・周囲に働きかけて、周囲を変革する
・その組織を捨て、自分に適合する組織を求める

のどれかの行為を取るだろう。
どれを選択してもかまわない。どれが正しく、どれが間違っている、そういう問題ではない。本人が決めればよいことだ。

人は、自分が所属した組織で居心地良く過ごすために、その組織に認められたいと思い、行動する。
そのために、その組織にふさわしい人間であろうとする。


ここが、問題なのではないか?
自分で考えようとしなくなる、第1歩なのではないか?


組織にふさわしいとは、その組織にとって都合のよい人間である。
極論言えば、個人を殺しても組織につくし、その組織を乱さない人間である。

個人を殺す。この危うさ。
個人を殺すとは、自分の目で見て感じて考えたことを、組織の観点で見て感じて考え直すことではないか?
これが、組織にとって都合を優先する思考の原因ではないか?

近年、有名企業の不祥事が相次ぎ、解散の危機に瀕するような事例が少なくない。
それらは、不都合な事象について伏せたり、不適切な行為について伏せてしまうことで、問題が生じた例がほどんどである。

考えなくても、適切か、不適切な行為かわかりそうなものなのに。
第3者は、皆、そう思う。

だが、組織に属する個人からすると、誰もが容易に思えることが、判断できなくなってしまう。

この原因は、何が(どのようにすることが)最適かを個人で考えずに、組織の都合を優先する思考をするからではないのか?
個人レベルで本当に考え抜いた人間同士が、意見交換を行ってないからではないのか?

無論、いつでも組織を乱してよい訳ではない。
そのようなことをすれば、たちまち組織はばらばらになってしまう。

しかし、組織の都合を優先するあまりに、組織の舵取りについて判断を誤れば、その組織は壊滅的なダメージを受けることは避けられない。


なのに、なぜその組織は、避けられずに壊滅的なダメージを受けるような判断をしてしまうのか?


無論、このような組織にならない様、その組織を構成する最高責任者が、誤りのない判断をし、正確に舵を切りつづければ、そのようなことは生じない。

しかし現実は、組織を下から支えている構成員が必死に考え、正しい行動をしようとしているにも関わらず、その組織を構成する最高責任者、いや中間層が、自分で何も考えず、組織の都合のよいように考え、行動してしまうのは、なぜなのか?

自分の保身のためか?
思考する労力を節約するためか?
それとも、判断に必要な情報の入手が困難になるのか?


この原因は、なんだろう?


そして。
このような組織が集合すると、組織全体の都合より、各組織の都合を優先する。
これが、「組織の壁」ではないのか?

組織を下から支えている構成員によって、この「組織の壁」を壊す方法はないのか?

御意見お待ちしております。

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2 コメント

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はじめまして ()
2004-12-22 21:09:20
absinth先生のところからやってきました、とともうします。少し考えて結論が出ないので後を引き取っていただきたくて(笑)投稿します。



まず心理的な側面。(例え追い出されるという結果が同じでも)仕事でなら社長室でもどこでも入れるが、個人的な用事では入りづらい。組織の指令があるかどうかで行動に対する心理的な抵抗が変わってくる。また、そのように組織では教育する(遠慮したら仕事にならない)。



力学的(笑)に考察。

慣性の法則。というわけで一人より二人説得するほうがエネルギーが要る。それは人数が増えるほど増すのだが、単純に比例関係ではない。数が少ないうちは「他の人がいいなら」とか「他の人の迷惑に成らなければ」というように1対1で説得するときより「質量」が増える。逆に説得済みの人数が多いと一人当たりの説得必要エネルギーは減少する。動きやすい人間をまず動かして動かない人間を巻き込む。これがいわゆる根回しですね。・・・うまい近似式があると面白いのですが。

組織が大きくなるほど意見を浸透させるのが難しくなり身動きが取れなくなるので、てこの原理が登場。つまりピラミッド型の組織を作り、上の人間の意見に重みを付け下の人間を動かす。このため、組織の壁に阻まれたとき、さらに上の人間に働きかけて相手を動かすという技が生じる(直訴)。

基本的にピラミッド型組織は上から下を動かすための組織なので、下からの改革は組織の性質上難しくなっている。というここが、問題のメインでしょうか。

余談ですが、下からの力と上からの力が拮抗すると、てこの中間にいる管理職が壊れる(笑)。



なんだか「組織の力学」を語っているだけになってしまいました。ごめんなさい。
返信する
あぁっ、そんな、いけませんw (GALANT's Cafe)
2004-12-23 01:46:30
とさま:

ようこそ、お越しくださいました。



え?早速、置き逃げですか!そんな。そんなことをすると、absinthさんに灘の酒一升瓶を進呈しておきますので(absinthさん、神戸まで取りに来てくださいw)、妖怪 しみーずに、結論が出るまで、とさまの枕元に立っていただきますよw





「心理的な側面」ですか。ふむふむ、なるほど。

確かに「仕事だ!」というと、水戸黄門さまの印籠のように「これが目に入らぬか~!」と、どこでも入っていけますよね。

確かに、一人でやっていると「なんだかなぁ」と思えるようなことでも、組織でやると「じ~んせいらくありゃ~く~もあるさ~」とやれるようになってしまいますねぇ...怖い怖い。



やはり、組織は、個人から「思考する」という能力を奪ってしまう、恐ろしい力を持っているのでしょうか?



次に「力学的」に思考していただきましたか。

では、私も力学計算で、思考させていただきましょうw



力F=M×a (M:質量 a:加速度)と表されます。

すると、加速度a=F/M と表されますから、この物体の速度V=a×t=(F×t)/Mです。

この式を、運動エネルギーE=(M×V^2(Vの2乗))/2 (M:質量 V:速度)に代入すると、E=((F×t)^2)/2Mと表すことができます。



つまり、

F:根回しの力

M:説得する人の総量

t:説得するのに必要な時間

E:説得に必要なエネルギー

とすれば、



根回しという行動は時間の短縮行為と考えることができれば、説得に必要なエネルギーを小さくすることができると表すことができ、省エネに繋がるわけですよ!

なんと素敵な。地球環境に優しいではありませんか!



やはり、根回しは重要なのか?!



人間関係は美しい。だから、人間関係を表す数式も美しくなければならない。

慣性の法則どおりですよ!



ピラミッド型組織には、質量というパラメータが、ものすごく効いてきますよね?

その重みのために、底辺を構成する人間に歪みがでる。



やはりこういう時には、底辺を構成する人間には、直訴という手を使うしかないんでしょうか?



昔は、直訴するのは大変勇気が要りましたね。えぇ、目立ちますから。

直訴とは、組織で行動するというより、個人で行動しますからねぇ。



しかし、今の時代は、片手の指1本でぽちっとな、です。

ITを駆使して、時間の短縮だけでなく、エネルギーの省力もできますね。



そうか。

ITを駆使して、中間層を壊せばいいのか!

そうすれば、フラットな組織になってw



「組織の力学」を美しく語っていただき、ありがとうございます。



では、次の宿題は、「壊した組織を、美しく再構成するには?」です。

よろしくお願いしますねw
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