診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

ヒアリ(火蟻)、セアカゴケグモ、スズメバチ

2017年07月20日 | 医療、健康

「 先生、ヒアリ(火蟻)って怖い蟻らしいですね。刺されると死んでしまうこともあるらしいですね。」とMさん。「 小さな虫でも、大きな人間を殺してしまうなんて馬鹿にできないですね。」「 先生、ニュースで毎日騒いでますが刺されたらどうしましょう?」「 Mさん、実は3年ほど前の夏に、私は自宅の庭で夕方セアカゴケグモに咬まれた経験があります。右足の甲が一瞬チカッと痛みが走ったので、何もわからず手で足の甲に乗っている虫を叩き潰してビックリしました。1センチほどの正に背中が赤い蜘蛛でした。すぐに洗い流しで冷やしましたが、痛みは時間とともに酷くなり、細い焼け火箸を足の甲にジューっと刺されているような痛みで、その晩は寝ることさえできず、部屋の中を歩き回っていました。翌日も痛みは持続しましたが、少し軽快していたので診察はできました。」「 えっ、先生がセアカゴケグモに咬まれたんですか。ショックを起こさなかったのですか? 」。今、騒がれているヒアリにしろ、セアカゴケグモにしろ、スズメバチにしろ、その毒素で死ぬわけではありません。まあ、痛くて腫れあがりますが。そんな小さな虫の毒素が人間に入ったって大した量ではありません。怖いのはアナフィラキシーショックという過剰なアレルギー反応です。もっとも、この反応は初回で起こることはなく、一度咬まれてこれらの虫の毒素(抗原)が体内に入ることで IgE 抗体というものが作られ、二度目の毒素(抗原)の侵入で抗原抗体反応が起こってショックを起こす訳です。また、二度目の侵入で必ずショックを起こす訳でもありません。「 私も連日、ヒアリの報道をテレビで見ていますが、説明が不十分な上に、視聴者に対してヒアリを見つけたら冷静に対処するようになんて呼びかけていましたね。騒ぎ立てているのはマスコミの方なのにね 。」 マスコミよ! 知識のない君たちこそ、もっと冷静に視聴者に伝えるべきではないですか!

http://kato-junkanki.com/custom1.html


この記事についてブログを書く
« 救急車の頻回要請 | トップ | プールと小梅 »
最新の画像もっと見る

医療、健康」カテゴリの最新記事