診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

『紅麴』 機能表示食品で死亡!

2024年04月01日 | 医療、健康

遂に出てしまったのか、日本版 『 トリプトファン事件 』。このブログの 2022 12 29 日および 31 日の記事『 健康食品・・・科学的根拠が要らない 』 と 『 トリプトファン事件 』を参考にして欲しい。今回、恐ろしいのは健康補助食品(いわゆるサプリメント)でなく、機能表示食品であるということである。表向きにはサプリメントよりも格が上の信頼性のありそうな印象を得るが、私も知らなかったが、販売側の自己申告で国の審査もなく了承されてしまうということである。この小林製薬、次から次へとウサン臭い商品を面白おかしくネーミングを付けて売りさばいている。てっきり厚労省の天下りが山ほどいて、簡単に承認されているのかと勝手に理解していたが、どうも国の承認の仕方に問題があったようである。医薬品としても 『 ナイシトール 』 と名付けて内臓脂肪が減少するなどと売っているが、これは 『 防風通聖散 』 という昔からある漢方薬に添加物を加えて売っているだけで、一昔前、『 防風通聖散 』 がやせ薬として週刊誌を騒がせたことがあり、結局それは効果なしと結論づけられた。また、足の痙攣(こむらがえり)を抑える医薬品として 『 コムレケア 』 というネーミングで売っている商品があるが、これも昔からある 『 芍薬甘草湯 』 という漢方薬に何らかの添加物を加えて売っている。この芍薬甘草湯はこむら返りに非常に良く効く漢方薬で、当院を含め日常よく医療現場では処方される。咳、痰の切れを良くする薬として 『 ダスモック 』 という商品も、漢方薬の 『 清肺湯 』 に添加物を加えて売っているだけ。これはあまり効かない。一般の人なら、この会社は次から次に凄い薬を作り出しているんだな~と感心し、過剰評価をしてきているに違いない。製薬業を愚弄するようなこのような商売の仕方がまかり通っていることに、何か制限を掛けるべきと常に思っていた。先月も、診察中に S さんとこれらの商品について話したことがあった。そこにきて今回の事件である。今、この商品のどこに問題があるかと精査中のようであるが、医者の立場からすれば、疾患をサプリなどの食品で治療しようなどと考えるのは大きな間違いであると考える。血液をさらさらにして脳梗塞や心筋梗塞を予防しようと 『 ナットウキナーゼ 』 を服用している人も多いようだが、ナットウキナーゼの作用機序では、これらの疾患の予防には全く意味がない。素人同士の浅い知識で予防、治療できるものではないことを認識するべきである。

 


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