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ストレスマネジメント研究の歴史-2

2008-01-05 10:33:47 | Weblog
子どものストレス研究会
 1995年1月17日午前5時46分。兵庫県南部地震が発生。死亡者5502名(同年5月統計)、避難者者30万人の大被害となった。
 西宮市教委からOSMA研究会の服部先生に学校で心ケアをしてくれないかとの依頼を受け、2月5日に当地訪問。西宮北口周辺の小学校2校、中学校1校に子どもたちの心のケア介入することとなった。
 今でこそ、災害や事件が発生すると、学校に医師や心理士などの専門家が派遣されるのが当たり前になったが、当時はおそらくはじめてのこと。双方何をどんな順番で行ったらいいのかわからない状態でした。
 2月初旬、上六の都ホテルロビーで私と服部先生が介入計画を相談したことを昨日のように生々しく思い出します。まず子どもたちの元気の様子を測定しておこう、それからストレスマネジメントを学校でやりましょうということになりました。
 パイノスという人たちが、1989年のアルメニア地震の1年半後に使った、CPTSDR(子ども版PTSD反応指標)を使うことに。しかし、小学校低学年の子どもから中学3年生までに等しく使えるかどうか。専門家による面接調査は物理的に無理。なんとかならないかというので、イラストを使った、集団検査法のアイデアが生まれました。
 誰にイラストを描いてもらうかが課題でした。運良く、パソコン通信仲間のイラストレーター、ハンドルネーム「モップさん」実名小浜さんに依頼したら二つ返事。原稿料もいりませんという熱意で2日後にはアウトライン完成、1週間で原画完成。印刷は看護大に出入りの印刷屋さんに特別の配慮でお願い。数日後には自分を知ろうチェックリストver1.0が完成したのです。
 2月中に検査の因子構造と信頼性くらいみたいねというので、中学3年生を対象として、CMIとあわせて実施。担任の先生にマニュアルどおり読んで実施してもらいました。回収した調査用紙を、看護大の学生(まだ1回生しかいない)20名ほどにお願いして、エクセルに入力。エラーチェックのあと、SPSSで因子分析。4因子構造であることを確認し、それぞれを、①不安、②うつ、③混乱、④愛他と命名しました。CMIとの相関もとり妥当性を確認。
 急遽完成版を使って、子どもたちの震災ストレスを測るプロジェクトを、看護大に集まったOSMA、KASMAを中心としたメンバーに説明しました。子どものストレス研究会報告の瞬間です。
 こうして西宮の小中学生1800余名への介入がスタートしました。3月初旬のことです。併せて、羽曳野市内の小学校2校、中学校1校(合計1800余名)にもお願いして、いわゆる対象群として調査をさせていただきました。
 こうして3月、7月、翌年1996年1月の丸一年間、共通の検査用具を使っての客観的震災ストレス評価の確認と、ストレスマネジメント介入がスタートしました。
 「阪神淡路大震災と子どもの心身」は、こうした私たちの学術的活動記録を集大成したもので、1999年に名古屋大学出版会から出させてもらいました。今でもこの本の表紙をみるたびに、あの頃の加熱した議論が思い出されます。

2008年1月5日記 山田冨美雄

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