塚谷裕一『森を食べる植物』 ←アマゾンへリンク
図書館で夫が借りてきた。面白そうなのでわたしも読んだ、というわけだ。
腐生植物 といえば ギンリョウソウ とか ナンバンギセル とか ツチアケビ なら一応知っているけれど、という程度だったので、出てくるあれもこれも、へえ!へえ!!とかいちいち面白く読めたんである。
著者の塚谷氏はご専門は分子生物学なのだが、その一方で若いころから腐生植物にもたいそう興味がおありで、新発見やらこういう本を書くやらなさっている方なんである。
というわけで、このノンフィクションはライターの書いたものではなく研究者の愛に満ちたものである。ぶっちゃけた感じのある文章もとてもよかった。
ところで、『ゾウの時間 ネズミの時間』という名著で有名な本川達雄氏はナマコの生存戦略をたいそうほめておられる:本川氏HPインタビュー、 tbsラジオ荻上チキ2017年8月23日放送分
それは軍拡競争、つまり捕食者の追いかけるスピードや顎や牙の性能をアップさせる一方被捕食者の逃げるスピードやトゲなどの性能をアップさせるというスパイラル、からナマコは外れた生き方をしている、ということである。
筋肉というコストのかかる組織をほとんど体に持たず、結合組織という非常にローコストな防衛方法を身につけ、また誰も食べたがらないようなうっすーい養分を砂からより分けるような摂食方法をとる、ということだ。
それと同じようなことをこの本で目にしたので驚き心が躍ったんである。
p.58~ 地球上でもっとも量の多いタンパク質は何だかご存じだろうか。
おっと!これ以上書くとネタバレだ。まあ察しのよい方ならピンと来るかもしれないが。
競争して生きていくって大変なんですね。
腐生植物にラン科が多く含まれる理由も納得できた。そもそもランはラン菌がないとダメだからね。そこから光合成を行わなくなるステップは低い、ということだな。
というわけで、うちでなんとか生き続けているフウランも一緒に写真に収めてみた次第。
ランに限らず、光合成を完全にやめたというところまではいかなくとも菌を利用している植物は他にも色々あるらしい。
むかし大学の植物の実習で学内を歩き回りながら教わったとき、フデリンドウを見たときの驚きはまだ心に残っている。あんなに背が低い(というよりほとんど地面にへばりついている)のに青い星のように美しい花が茎より大きいくらいだ、ということに。こんなに小さい葉の光合成でこんなに大きい花を咲かせられるものなのだろうか!?と。
その疑問は正しかった、ということを約30年も経ってから知るとは。
本川氏のリンクの方が多いのもどうよ、と思うので、塚谷氏のインタビューのリンクも貼っておく。★ 塚谷氏と本川氏の共通点を感じたりして。笑顔とかスタンスの取り方とか。
塚谷氏の他の著作も読みたくなったよ。