風のこたろう

'05年4月6日~'07年4月7日 ウランバートル生活日記
'09年8月~  詩吟三昧の徒然日記

論語の会 二日目

2013年06月02日 | 徒然に日々のことを
朝6時 昨日から泊まっているメンバーと、毎月集まっている素読の会のメンバーが合流して、渡良瀬川の河畔で川に向かって論語の素読。

足利学校の発行する「論語抄」をもって、横一列に並び、初心者も経験者も区別なく一人ずつ主導し、唱和していきます。

滑らかな主導もあれば、私のような初心者はつまりながらも一節を主導をし、同じ章句を全員で繰り返す。
主導者が練達であれば、勢いまで頂いて繰り返します。
未熟の主導者がタイミングを外しても、経験者がうまい間合いを取って唱和してくださるので、全体としての流れは平らかにすすんでいくのでした。
これが、素読。


鮮やかな緑と涼しい風とおいしい空気に包まれて、爽快な素読が一時間続きました。
声を出し慣れているつもりでも、素読を続けてこられた方の声とはまた一線を画するものがあり、それぞれに練達があるものだと感動。

朝食のあとは、「菜根譚」の読み説き。
一時期論語よりもよく読まれた時期があったそうですが、私には、初めて聞く「さいこんたん」のことばでした。



菜根譚の一日一章句として、13日目 〈訓読〉経路窄(せま)きところは一歩を留めて人のいくに与え、滋味濃やかなる的は,三分を減じて人の嗜むに譲る。此れは是れ世を渉る一の極安楽法なり。

先生は、これに、題をつけて、詩になさいました。
  13日 一歩を譲る心がけ
 狭い道で行き会ったら
 立ち止まって おさきにどうぞ
 美味しいものを頂いたなら
 人にも分ける 心持ち
 人は何時でも 何事にでも
 一歩を譲る心がけ
 夜を渡る時の 何よりの鍵
 献上の徳 人間力
 

論語よりもわかりやすいと先生はおっしゃいました。
こよなく愛する菜根譚は先生の卒論のテーマだそうです。
何十年もかかわりながら、今もなお、研究が進んでいるとのこと。
卒論を物するほどに若いころ、このような章句に、目を留めあこがれ続けている須藤先生なのであります。



先生とお話をしていると、習い覚えたばかりの論語の章句「巧言令色少なきかな仁」が頭の中を行ったり来たり。
あるがままで、居られる幸せ、あるがままで居てよい幸せ。

この渡良瀬川の河川敷は、大きな声を出すには絶好の場所。
こんなところで、詩吟をしたらさぞ心地よいことでしょう。


帰りは、先生と一緒に足利学校を支えてきた田崎早雲の早雲美術館に行ってきました。
ゆっくりと、絵を鑑賞し、画室の縁側に腰鰍ッて二人で、取り留めもない話をしてくださいました。
先生は、美術館へ私を落とすとそのまま駅に向かわれるつもりだったのに、一緒に来てくださいました。
大きな美術館より、こんなこじんまりしたところが好きで、良く一人来てはゆっくりと時間を過ごすのだそうです。
お好きな場所が、去りがたくて、一緒に居てくれたようです。

杜甫のお好きな先生ですが、中村不折の書いたおおきな鰍ッ軸の李白の「山中問答」に、心を動かされたようでした。
このような形で描かれた漢詩を読むと、また、心にさざ波が立つようです。
詩吟を教えながら、杜甫と李白の明白な違いを考えることなく、一つ一つの詩の違いだけに着目していた私の不明を認識。

須藤先生の読み説きによって、今までと違った吟詠後の爽快感を体験し、これが同化ということらしいとわかり、初めて吟詩の妙味を体感したのです。
そして、関吟初代会長藤沢黄坡先生がさらにおっしゃる「修養の道も亦ここにあり。」の何たるかの道も選ぶことになったようです。
そしてさらにさらに、「われ諸君とここに従事せん。」と、ともに歩む人たちは、詩吟の仲間だけでなく、須藤先生にもまたご一緒していただきたいと、ご指導を願いたいと思うのです。

長年練習の前に黄坡先生の巻頭言を唱和してきたのですが、単語としての理解はしていたつもりでも、やっと、今頃になって、このことの本当の意味を知ったのかもしれません。

私も、やっと、ひらがなの理解から卒業して漢字で理解の時代に入ろうとしているようです。
まだ、自由自在に声を操れないうちから、詩情を出そうと思うのは、おこがましいとの考えは、ここに至るわけなのでした。
同化は、しかし、詩をよく学び咀嚼することからはじまり、それはやはり、声を出す訓練の緒に就いたところからしていなければならなかったのかもしれません。

ただ、中途半端に声を出しながらでは同化は有りえず、教える力と知識の無さは如何ともしがたいのでありました。

足りないところがいっぱい見えてしまったけれど、それは、これからの宿題として、何かに向かう力をもらった気がします。

鼻持ちならぬ奴になりかけていた私に、ブレーキもアクセルも授けていただいた気がします。


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