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Entrance for Studies in Finance

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Case Study:マイクロソフト

2017-11-20 13:58:06 | Area Studies
マイクロソフト 2017年秋 ウインドウズ10刷新(2015年7月提供開始 全面刷新は2016年8月 2017年4月に続き3回目) アップルのiPhoneと連携可能(2014年4月XPのサポート終了で7への乗り換え需要発生 2015年7月末に10の提供開始 今後 2020年1月にウインドウズ7のサポート終了で買い替え需要が見込まれるが情報端末としてPCからスマホに時代は移行。)スマホ市場の基本ソフト=OSは、グーグルのアンドロイドが85  アップルのiOSが15%(17年6月)

        AIの研究を内製で展開 量産は外部委託(17年8月)

        マイクロソフトの経営戦略(2017年8月)

        クラウドサービス(クラウド経由でITインフラ提供=アジュール)(オフィスソフトを利用権をクラウドで管理するオフィス365)に力を入れることで PC需要の低迷による存在感喪失から業績立ち直る クラウドを第一の業務に(17年7月) 国内2ケ所のデータセンターの能力を強化して大規模クラウド(最大60テラバイトを運用へ)を日本でも展開へ(17年6月)

        AI搭載のスマートスピーカー市場(アマゾンが2014年に発売開始して先行 2016年秋 グーグルがグーグルホームを発売して追っている アップルも開発中)へ参入へ(17年6月)

        マイクロソフトの復活(2017年1月)

        ノキア(ウインドウズフォンの会社であるため救済合併)から2014年買収した携帯事業(54億ユーロ=7700億円ものムダ金を投ずる 当初より赤字 典型的な失敗買収例に アップル、サムソンにおされる→2014年MSは大規模なリストラを迫られる ハンガリー工場を閉鎖 低価格スマホにシフト)は選択と集中の結果 大幅に縮小させ クラウドシフトを鮮明にした(2016年10月)

        ビジネス向けSNSの米リンクトンを262億ドルで買収(2016年6月)

        タブレット(スマホの大画面化で特色薄れ失速へ 2014年) サーフェス発売 大型化させるもあたらず(2013-2015年) 日本ではソフトバンクと提携して販売  パソコンの出荷台数は減少が止まらない。MSはOSからクラウドへ転換(2015年7月)

        クラウド事業を担当してきたサトヤ・ナデラ氏がCEOに(2014年2月) ビル・ゲイツ氏は会長退任 前CEOのバルマー氏(ゲイツの学生時代からの友人で長く営業を担当)は取締役に。

        iPadに業務ソフトオフィスを提供(2014年3月) スマホに続き(2013年) 機会損失を取り戻し増収狙う 方針転換へ。 

                       ウインドウズ10への無料更新(2015年7月 捨て身の反撃と話題に) 

企業戦略

 


Case Study : McDonald Japan 日本マクドナルド

2017-11-19 21:49:08 | Area Studies

マクドナルド 2900店(店舗数は概数 2017年10月現在) サラ・カサノバ社長 

  2002年3892店をピークに店舗数減らす

  2014年鶏肉偽装事件 2014-2015年度赤字 不採算店の大量閉鎖

  2016-2017     改装 連続するイベント 新メニューが奏功し復活

      2016年度黒字転換 モダンなデザインに店舗改装進める(リカバリープラン)→ コンビニによるイートイン併設の動きに対抗

  2016年4月グランドビッグマック発売 520円と高価格だが好評

  2016年7月 米ナイアンテックと提携 ポケモンGO効果で集客

  マクドナルドの復活(2016年12月 Infoseek)

  マクドナルドブランド再生物語 2017年3月  読売深読み

  2017年 コンビニに対抗してコーヒーを刷新 店舗改装は17年末までに8割

  バーガー総選挙を実施

  日本独自に開発 グランシリーズ(2017年4月投入)が好調

  マックの裏メニュー(2017年5月)

  2017年6月 都内33店舗でデリバリーサービス開始 ウーバーイーツのアプリを利用

モスバーガー(モスフード 中村英輔社長)1350店

  中途半端な価格設定で失速

ロッテリア 420店

ファーストキッチン(ウェンディーズジャパンが買収 コラボ店を20店から100に)

フレッシュネスバーガー(外食大手コロワイドが運営会社買収 3年で店舗数3倍目指す)160店 

 コロワイドはカッパ寿司のカッパクリエイト 牛角 土間土間などのレインズインターナショナルなどの持ち株会社 今回はレインズインターナショナルがフレッシュネスバーガーの株をユニマットグループから全株取得(2016年10月)

バーガーキングが出店拡大を表明(2017年10月 日本事業は投資ファンドが運営)98店

  → 高齢化の進展とともにバーガー市場は縮小が見込まれる

企業戦略


ユニコーン

2017-11-19 18:58:15 | Area Studies

上場していないものの時価総額10億ドル(評価額)超えるもの(大型VB)をいう。米国と中国に8割が集中している。

unicorn(finance) wikipedea

ユニコーン 中国などで増殖中(日興AMファンドアカデミー)

世界十大ユニコーン

背景:上場 内部統制の厳しさ などから上場を嫌う経営者がいる。過剰な投資マネー 投資金額の水準が上がっている 一般的には300万ドルだったものが→1500-2000万ドルの場合も このように投資を得られることがユニコーン登場の一つの背景。

ユニコーンに投資が集中 創業間もない技術系VBにカネが集まりにくいとの指摘さえある。

なお一般にクラウドサービス サーバー、ソフトを借りられるようになり 起業コストの低下している ⇒ アイデア資本主義とも

また投資時期 今ではシード、アーリーなど創業初期への投資が一般化し、上場直前の企業にしか投資しないという批判はただしくない

クラウドファンデイングも伸び、日本政策金融公庫の創業融資も。

なお信用力を高める支援が不足しているとの指摘。しかし他方で創業支援ラボの設置 販路、購入(納入)実績での支援 地方企業の場合は、資金 人材 情報の事例も。

VBについては、大企業がVBを買収して その独自ノウハウ、営業基盤を取得吸収する動きも。VBには単独の成長に限界があり大企業の傘下に入る選択も。


日産・SUBARU(無資格者検査)神戸製鋼(データ改ざん)

2017-11-18 08:27:23 | Area Studies

完成検査問題のSUBARUへの波及

 無資格者による完成検査の問題はその後 SUBARUに波及した。SUBARUでも長年 日産同様の慣行(まだ社内資格を取得する前の従業員が完成検査に携わるという)があったとされる(10月27日発表)。各メーカーが検査するのは、国の車検場に持ち込む手間時間を省力化するため。現在、輸入車についても国は完成検査を義務付けている。ただ社内資格を短期間で取得させることにして(各社により資格基準が異なりどうも弾力的に運用できたようだ)、有資格者を速成すれば、大騒ぎにならなかったのかもしれない。反面、現場では有資格者のハンコを借りて押印する行為が常態化していたということは、規制逃れの行為であることが現場の担当者も分かっていたことになる。こうした場合、資格を早くとれるように社内制度を改めればよかったのに、それを長年放置していたところに、現場に経営の目が行き届いていないことを感じる。あるいは現場の声が上に上がっていないか。現場レベルでの法令順守を、日産とSUBARUは改めて推進する必要があるのだろう。

 ある程度の経験のある工員による検査であり大騒ぎする問題ではなく、問題は過剰規制にあるとも言える、他方で逆に安全性審査の最終ステップが無資格者によって行われていたと声高に非難もできる。 

謝らない 日産社長の対応 ITmedia ビジネスonline  車の安全性の検査は、社内の研修訓練を経た完成検査員しかできない。しかし日産は無資格者による検査を常態化させていた。この問題は国交省の検査で発覚した(9月18日)

 西川社長がすべて有資格者が検査する体制に改めたと記者改憲で報告した(10月2日)。しかしその後、一部の工場では無資格者による検査が以前と同様に続けられていたことが社内調査の結果判明した。この問題はそこで日産の社内体制の在り方の問題、トップの指示が現場で無視されるのはなぜか、としても議論されることになった。トップの指示が厳正だったとすれば、これは組織の在り方としておかしい。なぜ指示は行き届かなかったのか?

 西川社長はその後、再発防止の指示が現場に行き届かなかったのは課長と係長のコミニケーションギャップがあるとの発言を記者会見で行った(10月19日)。その意味では、現場に規制を遵守する意識が徹底することがまず第一に必要だろう。その後公表された資料によれば、社内マニュアルの順守が強調される一方、法令順守の重要性が社内で十分でなかったと思える。

 社内では無資格者による検査を合理化するため、習熟度合の見極め、独り立ちの判定などが、指導員により行われることが慣行になっていた。確かに形式的な資格試験よりは業務実態に合っているようにも見える。背景には完成検査員の慢性的不足があり、合理化により慢性的な人員不足が生じているのに、現場が声を上げられず、本社は現場の実態を無視して合理化を促していた可能性がある。しかし国交省や社内の監査のときだけ、無資格者をラインからはずしたり検査員のバッジを配って不正を隠すとなると、隠蔽の意図は明らかである。資格試験そのものも教材を答えを見ながらの回答をさせていた、答案の提出後、間違いを直して再提出させていた、となると、資格試験として機能していないようにも見える。

 無資格者による審査。無資格者の審査をごまかすため有資格者のハンコを無資格者に貸すこと。国交省への届け出とは異なる場所で無資格者による検査。などが指摘されている。検査について、無資格者でも可能だという判断が現場あるいは管理職のレベルで生まれていたのではないか。なぜ資格者を置いて、その人に検査をさせているかの意味がよく考えられる必要があるように思われる。また製造現場に数値目標を掲げて、成長と利益を追求するコミットメント経営が一因との指摘)へのコスト削減の指示が結果として、原因になった可能性が指摘されている。

 11月17日に公表された報告書では、不正は38年前から続いていた可能性がある、現場の係長は実態を知っていたが課長は知らなかった、問題は現場にあったとしている。これは大変奇妙だ。40年近くの不正であれば、現在の管理職はかつて現場で実態をみていたはず。この報告書の言い方は管理職や本社経営者の責任を否定する目的があるようにみえる。西川広人CEOは、現場と管理職の意志疎通に問題があったことを認めたが。人手不足が直接の原因とする見方を否定。退任も否定した。西川氏の人手不足が直接の引き金でない、という言い方は今後も人の面で合理化を進めざるを得ないとの経営判断を示しているように見える。おそらく検査のところの合理化を法令に合わせてどうするかは、大きな経営課題なのではないか。ことは自動車というものの安全性にも関わる。人手を減らしつつ、完成検査の精度をむしろ上げる方法を探ることが、メーカーと国交省双方に求められているのではないか。

 このあとSUBARUの問題が表面化する。この連鎖 三菱自動車、日産自動車、SUBARUはとめようがないようだ。

日産 神戸製鋼 相次ぐ不祥事 Agora 2017/10/10

2017/10/11 記者会見記録 製品に影響を与えないとする神戸製鋼の主張は製品段階で品質チェックが行われるからという内容であるようだ。・・・かなり無責任としかいいようがない。この神戸製鋼の事件は8月の社内調査で事実が発覚。10月8日に副社長が問題を公表した。日産の事件と似ているのは、この公表以降も性能に関するデータ換算で不正が継続していたことである。これは現場での偽装が日常化して本流となっていたことを示すものではないか。

神戸製鋼の事件が、日産、SUBARU、SUBARUと次元を異にするのは、後者はともかく検査をして問題はなかったが検査を行ったのが有資格者でなかったという問題であるのに、神戸製鋼の場合は、品質データの改ざんを繰り返していた点である。ただ大変怖いのはリニア中央新幹線のように、高い強度が要求されるところにも神戸製鋼の部材が納入されていたこと。万一を考えると納入先が要求しているレベルの商品を供給していなかった神戸製鋼の罪は極めて深いといえるのではないか。

神戸製鋼 Free sta 2017/10/13

新たに9製品に不正 神戸製鋼 Jizi Com 2017/10/13

2017-10-27 投稿

2017-11-18 加筆修正


リバースイノベとリープフロッグ

2017-10-28 15:27:46 | Area Studies

新興国で開発された低価格の革新的製品サービスが先進国を含む世界に普及してゆく リバースリノベーション

リバースイノベーションとは何か

reverse innovation definition

 中国でシェア自転車がいち早く普及したこと

 法や規制が整っていないことが革新的技術普及には代えてって有利

 先進国企業が新興国で事業開発を進める事例も

 新興国で最先端の技術がいきなり普及する リープフロッグ現象が続出

新興国におけるleapfrog現象について

 リープフロッグ(飛び級)   既得権者の妨害を受けない利点がある

 電話は固定を飛ばして携帯(スマホ)へ 通話はほとんどがアプリ経由

 コンテンツ視聴はDVDを経ず いきなりネット配信へ
   中国でクレジットカードが普及する前にキャッシュレス経済が広がったこと

 自動運転やEVの普及でも中国は最先端に立つ可能性

 ネットの普及で最新消費情報が入手されている

資料 「中国、貧困の地にテスラ」(多部田俊輔)日経2017年10月16日

   「新産業を育む新興国」(増田貴司)日経2017年10月18日 


Case Study: Toshiba

2017-10-25 23:05:40 | Area Studies

コングロマリットディスカウント ➡ 経営用語集 wikipedia

エントレンチメント仮説 ➡ wikipedia

PwCあらた監査法人は適正意見をつけなかった(4月11日)

 4月11日に発表された(当初発表予定は2度延期 2月14日 3月14日)2016年4~12月期連結決算に関し、監査法人:PwCあらた監査法人は適正意見を出さなかった(監査意見不表明)最終損益は5325億円の赤字(前年同期4794億円の赤字)。自己資本は2256億円で債務超過である(来年も債務超過だと自動的に上場廃止へ)。東芝側は水面下で監査法人の変更も模索。しかし準大手は手を上げなかった模様だ。

  その後 2017年3月期決算についても、米原子力事業の損失計上時期などについてPwCあらた監査法人との対立が明らかになった(焦点になっているのは会計処理をめぐる経営者による従業員への圧力。これについて東芝側は既に行った調査で十分としている。60万件のメールをチェック、数十人の関係者にインタビューしたという。しかしなぜそれで十分と綱川智社長が言い張るのか根拠は不明だ。監査法人は突如6000億余りの損失が発生したことを疑問視している。なぜ監査法人の主張に歩み寄れないのか。つまりなぜ監査に必要な調査に協力できないのか?東芝の綱川氏の主張は全く理解できない)。なお本決算について、準大手の監査法人への変更を検討したものの引受先を見つけられなかった。

 今後も6月末提出期限の有価証券報告書をめぐり、東芝と監査法人との間の対立を予測する意見は多い。WDとの関係と同様にここでも、東芝は監査法人との関係を悪化させて、自分の首を自分で絞めている。

東芝と新PwCPwCあらた監査法人は「限定付き適正」で合意して有価証券報告書を関東財務局に提出(8月10日)

 その後 東芝は3月期の有価証券報告書の監査意見について(6月末から8月10日に延期して)、監査法人と調整を続け、有報の監査意見は上場廃止ルールに抵触する「不適正」「不表明」を避けて、「限定付き適正」となった。しかし監査法人は損失を認識したのは東芝の主張(17年3月期)より前との見方(2015年末の米原発建設会社買収直後)は変更せず、過去の決算数値の訂正をしなかったことなどを理由に内部統制について「不適正」とした。前任の新日本が東芝の言いなりなったことへの反省から、監査法人は厳正な態度を貫いた(東芝の主張は認識したという証拠はないというもの。しかし買収時の価値算定が甘かったからこそ損失が表面化したといえる。原発工事をめぐるコスト分担や、納期遅れをめぐる訴訟といった問題が、価値算定で軽視されたとされる)。この上場廃止問題に対する東証の態度は、上場廃止に対して慎重なもの。この慎重さは分からないではないが、上場廃止の判断の透明性を著しく低下させている。東証に求められるのは、上場廃止について、上場銘柄を平等に扱うという公平さではないか。

米ウエスタンデジタルWDによる売却差し止め申し立て (4月14日国際仲裁裁判所 5月14日カリフォルニア州上級裁判所)

 東芝は4月1日に東芝メモリを設立。その売却にのりだす。しかしこれには合弁契約違反という協業側の米ウエスタンデジタルWD側の売却差し止め申し立てがなされている(もともと1999年に東芝と米サンデイスクとが結んだ合弁契約により四日市工場が運営されている。2016年5月WDがサンデイスクを買収したことで、協業は東芝とWDとの枠組みに変わった)。合弁契約におけるchange of contorolの問題だが、「相手の同意なく売却できない」とある部分の解釈で、WDの同意なくなぜ東芝は売却できるのかは不思議だ。合弁会社の持ち分保有者である東芝やWDを第三者が買収する際には相手の同意は不要という特例条項がある。それが該当するというのが東芝側の主張だ。(なおこのWD側の主張は、2017年3月半ばでは表面化していない。あくまで新半導体会社を売却する相手として報道されていた。両者の対立は4月頃から報道されるようになった)

 WDは米国時間で5月14日(日本時間5月15日) 国際仲裁裁判所に、東芝メモリ分社などを契約違反として、仲裁申立書を提出したと発表した。このWDとの関係を早急に改善しなければ、東芝メモリ売却頓挫は明らか。東芝側がするべきことが、WDとの関係改善しかないことは明確だ。ところが東芝はその判断を未だ(6月上旬現在)していない。

 ただしWD側が当初主張したように、WDによる東芝メモリの子会社化(過半出資)という主張は独禁法上の審査が長期化する問題がある(技術情報流出について経済産業省が難色)。そこでWD側の出資比率を下げること、資金の出し方を転換社債あるいは社債のような形に変えることが考えられる。また東芝側が債務超過(2017年3月末で5400億円超の債務超過 2期連続の債務超過回避が課題 5月15日監査法人:PwCあらた監査法人の承認のない業績概要発表)を回避し上場廃止を避けるために必要とする2兆円以上の買収金額を、WD単体では用意しにくいという問題もある(背景には2016年5月にWDがサンデイスクを170億ドルで買収 このときWDは四日市工場の資産評価を詳細に行ったと考えられる)。そこでWDとしてはほかの出資予定者と組む必要がある。

 いろいろな入札の中身の話が伝えられているが、このWDとの関係(合弁契約上の問題)を整理することなく、入札手続を継続することは問題をこじらせるだけではないだろうか。

 東芝はWDによる四日市工場への情報アクセス(メモリーを共同で設計するシステム)、WD社員の立ち入りなどを制限すると警告したとされる(5月3日付け書簡 入札に関する妨害行為を停止しなければ)。この警告は協業を解消するのでなければ、協業相手に対して極めて異例かつ非礼でけんか腰にみえる。そもそもはWD側の了解を得ずに売却をすすめたのは東芝。東芝に非があり、東芝に誠意がないことは明らかではないだろうか。

 東芝は対抗措置として、主力工場の合弁会社株を6月3日付けで東芝メモリ側から東芝本体に買い戻したとされる。これによりWDの主張は無効化するという。確かに合弁会社株を東芝メモリに移した問題は東芝本体に戻せば、解消するかもしれない。しかし争いの大本は、東芝メモリの分社、売却にある。そして東芝メモリは合弁会社への支配権がないことになる。そのような東芝メモリの取得は、買う側に合理性はあるのだろうか。つまりこのような小手先の手法を始めると、問題がこじれるだけではないか。必要なことはWDとの関係の早期の修復であり、東芝の経営者にそれがなぜ見えないかが不思議である。 WDとの協業によって維持されている四日市工場の競争力が、将来的に確保できない可能性が次第に高まっている。

 WD側は5月14日(日本時間5月15日)に国際機関(ICCの国際仲裁裁判所)に仲裁を申したてる一方(この仲裁は3ケ月程度かかるとされるので8月中旬に裁定が出る見通し)、6月14日(日本時間6月15日)に、米カリフォルニア州上級裁判所に売却差し止めの申し立て手続きを開始したとされる(四日市工場の合弁契約は米カリフォルニア州法による。7月14日に法廷審問が予定された。)。しかし同裁判所は7月28日2回目の審問を開いたものの、東芝に対してメモリー事業の買い手が代金を払い込む売却完了の2週間前に、東芝がWDに通告することを命じた。差し止めに関して直接の判断を下さなかった。この結果、東芝は実質的に売却交渉を続けられることになり、焦点は国際商業会議(ICC)の国際裁判所に移った。仲裁裁判所の審理は1年半から2年にかかる。東芝がその判断を待たずに代金払い込みの締切りを設定すれば、買い手は仲裁裁判所の最終判断を待たずに2兆円を超える代金を払い込めねばならない。東芝はWDとの和解なく再建することは事実上不可能である。買い手にすれば、売却差し止めの判断が出るリスクがあるなか、東芝の言い分に従う理由はない。

 債務超過解消には18年3月末までに売却完了で2兆円以上の現金が必要。しかし仲裁裁判所から差し止めの仮処分がでないままで売却までたどりつけても各国の独占禁止法の審査に9ケ月程度かかるので、事実上すでに時間切れになっている。WDとの全面和解を拒む東芝に生き残る道は、理屈では第三者割当増資しか存続の道はなくなっているのではないか(その場合 東芝株は暴落へ)。

 東芝向け融資枠はWDの反対で使えない

 東芝向け融資は東芝メモリの売却が2兆円規模で実施できない限り、債務超過に陥る。三井住友、みずほ、三井住友信託の3行は、東芝の債権を要注意先としている。必要な資金融資1兆円(2017年4月)。担保は半導体メモリー事業を分社した「東芝メモリ」の株式。既存の融資枠6800億円に加えて、あらたに3000億円が(新規融資枠として)必要という計算になる。

 問題はWDは東芝メモリ株の担保差し入れにも反対しており、解釈によっては、融資枠を使えない。そこで別に数千億の融資枠を東芝は要請しているとされる。まず一つは東芝が自分の存続のために無茶苦茶な要求を出していること。ここでもWDとの関係改善が急務であり、それが東芝に残された道であることは、はっきりしている。

 メインではないものの融資額で三井住友を上回る三菱UFJFGは、3月決算で東芝向け債権を要注意先の中の要管理債権に区分したことが、その後判明する。これは、不良債権に区分したことになる(三菱はメイン3行より引当金率を高くした)。これは経営悪化しても同じ条件で借り換えていること自体が、金利減免・返済猶予を行っているに等しいと判断したもの。この状態に新規融資に応じる判断をすることは、銀行の融資としては極めて問題が多い判断であろう(なお銀行団が融資を継続しなかればその段階で破綻へ)。

8月中旬 WDとようやく交渉のテーブルにつくが 果たして何が議論されたのか?

 外から見る限り WDが国際仲介裁判所に売却差し止め訴訟を提起した5月の段階で、WDと折り合いをつけない限り 売却が完了しなくなったことは明らか。それなのに東芝はまず日米韓連合にこだわって時間をいたずらに空費する。それだけでなくWDとの関係をいたずらに悪化させる情報遮断措置に進む。東芝がようやくWDと優先交渉する判断に至るのは8月中旬になってから。この時間の空費は何を意味するのだろうか?全く理解できない。結局その間に株価が下がり、デイストレスト戦略のヘッジファンドが東芝の大株主になった。はっきり言えることは、東芝の経営陣はこうしたファンドの大儲けの機会を提供したということだ。 

 その後8月24日の経営会議で東芝葉一度WD陣営と優先的に交渉することを決定。しかし話を詰め切れなったかったとして9月13日の取締役会で日米韓連合と協議を加速させる覚書を交わしたと発表した。同日WDはこれを極めて遺憾とする声明をだした。この東芝の右往左往は何を意味するのだろうか。

 結局東芝は日米韓連合に売却する方針を動かさずわずか1週間後の9月20日の取締役会で日米韓連合への売却方針を決議。平行して協議を進めていたWDと鴻海との交渉を打ち切った。これに対し」WDは9月21日共同投資する四日市工場での東芝の単独投資を合弁契約に違反するとして国際商業会議所ICCに新たに差し止めを申し立てている。私にはWDとの交渉はWDとも優先交渉をしたポーズに見える

日米韓連合はそもそも問題

 東芝がこだわる日米韓連合についてはSKハイニックスの参加方式で、最初から対立が伝えられる。SKハイニックス側は最終的に株式の取得を希望し、当面は融資とセットで転換社債を求めている。だとすればこのハイニックスの参加方式は不可であるのに、東芝は、この連合にこだわり、WDとの関係修復を怠り時間を空費した。この点でWDも過半出資にこだわったという報道がある。しかしそもそも買収する側が支配権の取得にこだわるのは当然。

 理屈としては独禁法審査回避の問題(早期買収上必要というのが表向きの理由)と、基幹技術の海外流出問題(経済産業省の主張)がある。しかし買収する側が支配権を要求するのは、理屈としては当然ありうることだ。そこは全く交渉事項のレベルだろう。海外勢は東芝が必要とする2兆円以上を出すのは、支配権取得を条件に交渉することになる。

東証は2部降格をまず決定(6月23日)

 東証・関東財務局は6月23日。有価証券報告書の6月末の提出期限を8月10日に変更するとともに、8月1日付けで2部降格を決めた。東証はこの問題企業をいつまで上場させるのか? 

東証は東芝について特設注意銘柄の指定を解除した(10月11日)

 事態がまだ改善されないなか、2017年10月11日東証は東芝の特設注意銘柄指定(2015年9月)を解除した。根拠は内部管理体制や企業統治が改善されたというもの。しかし東芝メモリーの売却をめぐっては、WDが差し止めを求めて裁判で争っている問題は全く解決していない。各国とくに中国での独禁法による審査長期化も懸念されていおり、18年3月末の債務超過回避期限に間に合わない恐れも指摘されている。

 また東芝は、10月24日に開催された臨時株主総会で、17年3月期決算の承認、東芝メモリの日米韓連合への売却の承認などに関する議案の承認を得た。この臨時株主総会でも出された問題は、仮に東芝メモリが本当に期限までに売却まで進んだとしても(東芝メモリは新会社として再生できるとして)、売却後の東芝に将来はもはやないのではないかということだ。また新会社については、日本側の出資比率にこだわった結果、投融資先が拡大し(東芝 HOYA 日本の銀行団 産業革新機構 日本政策投資銀行 ベインキャピタル SKハイニックス アップル デル シーゲートテクノロジー キングストンテクノロジー)、迅速な意思決定がとれない化け物のような企業となった可能性は高い。この会社の将来もこのままでは暗いのではないか?

有価証券報告書 6月末提出期限に間に合わず 8月からは2部に降格

 6月27日に予定通り株主総会が開催された。しかし東芝はここで行うべき決算報告をできなかった。有価証券報告書を期限の6月30日までに提出できなかった(新たな締め切りは8月10日)。東証は6月23日に8月1日付けで2部に指定替えするとした。WDとの和解がないまま、米投資ファンドのベインキャピタル主導の日米韓連合との売買契約締結を目指すとの綱川社長ら経営陣の意志表明(6月23日記者会見)は無責任極まるやりかたといえる(WDと訴訟で生ずるリスクを売買契約相手方に負担させるもの)。この連合に韓国のSKハイニックスが加わっていることにWDは警戒を強めている(WDとしてはSKハイニックスが入るのであれば四日市工場の共同運営はもはやできない)。同業のSKハイニックスの参加は独占禁止法の問題に波及するほか、技術流出を防止するために売却を支援するとしてきた産業革新機構のこれまでの説明を覆す(韓国への技術流出)という点でも問題がある。

情報遮断の実施(6月28日)と米裁判所による解除命令(7月12日)判決は7月28日。

 6月28日、東芝はWD側の「妨害行為」の停止を求めて、東京地裁に不正競争行為として提訴する一方、WD社員による東芝側システムへのアクセスを遮断する措置を取った。また四日市工場の新製造棟に東芝単独でも投資も行うとした。これらはそもそも、東芝が問題を起こしたことを忘れたけんか腰の行為で、理解に苦しむ。このうち遮断措置に対して、7月12日米カリフォルニア上級裁判所は、遮断を一部解除する命令を東芝に下した。情報遮断措置は四日市工場の設計業務の現場を混乱させただけでないか?

 東芝のWDとの信頼関係をかなぐり過ぎたやり方は、度を超えており行きすぎている。7月14日の初審問が注目された。注目された14日の審問では、裁判所は双方の弁護士の意見を聞き、判断は28日に持ち越された。まず裁判所がこの問題について管轄権があるという判断を示したことに意味がある。つぎに28日まで、東芝は売却に進めなくなった。28日判事は売却の可否の判断は示さず、売却が完了する2週間前にWDに通告するように東芝に命じた。幸いにも、東芝は売却交渉の継続が可能になった。

 問題の発端:WHの破産法11条申請と債務超過

 破産させることで東芝の損失を確定したいということから3月29日 WH(米WHと欧州WH事業を統括する英国持ち株会社の2社)が米連邦破産裁判所に米連邦破産法11条の適用を申請した(負債総額98億ドル 裁判所管理となり東芝の連結から外れる 反面WHの債務保証6500億円 WHへの貸付金未回収に備えての引当金1700億円がうまれる 支援先は韓国電力公社グループとされる・・・WHの知的財産 核燃料製造 廃炉などのサービスに関心)。法的整理により巨額損失が発生の反面 損失額は確定した。

 なお米政府は83億ドルの債務保証している。親会社としてWHの債務を保証している。7934億円(うちゲンパツ関連は7100億円強) 米政府が電力会社に与えている債務保証額83億ドル 2016年9月末 自己資本は9000億円

 この結果 3月末で東芝は6200億程度の債務超過に(3月末 元の債務超過見通し1500+6500+1756-連結決算からの除外で2000 海外資産の評価損減少で1500・・・・1500+6500+1756=9756 9756-3500=6256)。この債務超過を4月からの新年度内に解消することが必要。方策されたのがメモリー事業売却で1兆円ほどの売却益を生み出すこと。純資産5000億程度のメモリー事業を1兆5000億程度で売却できるかが問題に。売却先は米投資ファンドのスルバーレイクパートナーズ、そして米半導体大手のブロードコムが名乗り。ほか併せて10社が29日入札に参加.

 半導体事業(NAND型フラッシュ もともと東芝が開発 世界シェア2位 1位はサムソン電子)の売却予定額 1兆5000億円~2兆円 3月2日から29日 出資企業の締切りは29日 2割程度から過半数売却の方針 2016年は医療機器子会社売却で5900億円稼ぐ

   メモリー売却で2018年3月(新年度内)に債務超過解消 上場廃止にならないことを最優先。今後は8月1日に2部に降格(18年3月末で債務超過を回避できなければ上場廃止へ)。ところが半導体事業の協業の相手であるWDから、売却を認めないとの異論が出されていたことが明らかになっているのはすでに述べた通り。 

 売却ができたとしても 成長のけん引役としてきた メモリーと海外の原子力事業の双方を失うことになる。エレベータ―(昇降機)や照明、空調、・・・ほかには原子力以外の火力などエネルギー、メモリー以外の半導体、ITシステム 鉄道?など社会インフラが残るというけれど。

 まず原子力の問題。現在の経営者にも米WHの損失を十分に見通せなかった責任があり(2月14日、3月14日 2度4-12月期の決算発表を延期 損失確定で4月11日に発表できるか) 過去の経営者には2006年に4900億円でWHを買収。原子力事業を同社の中核事業と位置付けた責任ある。

 4月1日付け分社 新会社 2月10日設立済み 東芝メモリ 米ウェスタンレジタル(世界3位) 米マイクロテクノロジー(同4位) が出資予定 韓国SKハイニックス 台湾のホンハイ精密工業なども意欲 3月30日 東芝 臨時株主総会で半導体メモリー事業の分社を決議

 3500億円(大手行三井住友銀行 みずほ銀行 三井住友信託銀行が2800億円 地銀80行などが700億円)の協調融資の行方 2月15日2月末までの延長求める 財務制限条項コベナンツ違反との指摘があるが3月末までは継続方針。東芝は16年9月末で自己資本3600億円強あったが、2016年12月後半 原発事業で損失可能性(16年12月27日)で一挙に状況が変わり、最終的には17年3月WHの破産で債務超過に陥った。 

原子力事業に傾斜した責任は誰にあるのか
 東芝は原子力と半導体を2本柱としてきた。その原子力事業で最大7125億円の損失が出ることが明らかになった(労務費で37億ドル 資材価格など調達コストで18億ドル各上昇など)。海外の新設工事からは撤退。国内の廃炉・保守は維持。2017年3月期最終損益で3900億円の赤字見通し(2017年2月14日)。2016年9月末の自己資本が3600億円。利益を加えて5000億円規模であれば、債務超過とならないが、7000億円となると、金融機関の支援(損失問題の表面化で格下げは、コベナンツに抵触するが、コベナンツを行使せず融資を継続することを銀行団に依頼したとされる。2016年9月末で融資残高は8000億円弱、さらに融資枠が約7000億ある)がなければ債務超過というかなり厳しい事態となっている。CB&Iから買収したCB&Iストーンアンドウェブスター(S&W)が手掛ける原発建設に伴うもの。なぜこうなったか。直接的にはジョージア州ボーグル原発建設に伴うもの。東芝はWHを通じてこの建設リスクをわざわざ引き受けた(WHが2015年12月に買収した)。背景にあるのは原子力発電のリスクは高まったことを受けて、エンジニアリング会社の出資撤回の動きだ。東芝、WHについても、ボーグル発電所についても単独でリスクを背負い込んだ。ボーグル以外の米国や中国浙江省の案件でも、損失発生のリスクが指摘されている。東芝がするべきことは、原子力事業そのものを見直すことではないか。世界中で原子力発電を受注するという東芝の発想そのものが、発生するリスクの大きさを考えるとばかげていている。今回の損失は2基の原子炉建設遅延によるもの。東芝は世界で2030年までに世界で40基受注する計画とのこと。そこから発生するリスクは想像を絶する。なぜリスクの高い原子力発電にここまで入れ込み続けたのだろうか?

 外から見ていてわからないのは、東日本大震災を経て原発のリスクが誰の目にも明らかになったあとも、原発を重視する姿勢を変えられなかったことだ。なぜ原子力発電が終わったという認識を東芝の経営者はもてなかったのだろうか。発電所を作ればつくるほど、東芝は最大の想定外リスクを増やしてゆくことになぜ無頓着だったのか。今回米国で生じた損失は、東芝が自ら引き受け招いたもの。こうした誤った判断が下された背景には、社内で原子力事業を推進する電力事業系の立場の人たちが要職を占め、発言権を維持し異論を封じたことがある。 東芝の経営陣は2016年に交代したばかりだが、損失の表面化で、米原子力事業を進めてきた責任者である志賀重範会長が退任する見込み。社長の綱川智氏は留任する意向のようだ(日経17/01/28)。東芝の半導体と原子力を二本柱にする経営は、西田厚聡社長時代に確立した。西田氏の剛腕が、会計不祥事が生み出されるようになった出発点にある。また損失の噂のあった、米原子力事業の責任者である志賀氏を副社長から会長に昇格させた人事(2016年6月)は、東芝の原子力偏重を象徴する

 今東芝は二本足打法を見直そうともがいている(2017年2月)。しかし東芝はWHの出資比率の引き下げを図るが、損失の山であるWHにカネを出す投資家がいるだろうか。半導体メモリーは3月末をめどに分社化。外部資本受け入れとのこと。しかし経営権も取れないのに誰が金を出すだろうか。当初の2割出資案は、株式の過半売却も視野に入れてと変更された。これは半導体を譲り渡すということ。東芝の経営は完全に行き詰まったている。そしてその発端は、2006年のWH買収という決断にあった。その決断をしたのは、西田氏であり、その判断を支えたのは、佐々木氏や志賀氏である。佐々木氏と志賀氏には、原子力事業出身であるが技術者であるがゆえに、原子力事業への過信があったのではないかと私は考える。

 ただこうした東芝の経営の是正に、社外取締役が無能だったことに批判がある。問題発覚時の社外取締役は実に4人。この4人がそろって、東芝の経営に無能だった理由として、学者や官僚が多く会社経営に無知であったことが指摘されている。またおそらくであるが、東芝のように技術系の人たちが幹部に並び、技術に関する経営上の価値判断も求められる席で、おそらく各部門の長の発言に対して、有効な牽制をすることはできなかったのではないか。その意味で社外取締役に人を得ていなかったという判断は妥当である。東芝の経営に関しては、たとえばであるが経営学者ではなく、原子力方面の研究者の方や半導体事業の経営者の方が有効な発言ができたのではないか。しかしそのとき、その人物の「独立性」の判断は確かにむつかしくなるだろう。学者や官僚、東芝の事業と無関係な経営者を並べるのは、形式的な独立性要件にはかなっている。しかし結果として、無能な社外取締役を作ることになったのではないか。

 西村泰三1935-   社長1996-2000 会長2000-2005 相談役2005-2016  相談役として経営に長年介入を続けたことに批判あり

 西田厚聡1943- 早稲田政経卒後 東大法政治院卒 パソコン事業等 社長2005-2009  会長2009-2014 2006年WHを4900億円で77%取得

 佐々木則夫1949- 早稲田理工学部機械学科卒 入社以来 役員になるまで原子力事業  2006WH買収を主導 社長2009-2013 副会長2013-2015 東日本大震災後 原子力部門縮小の判断をせず

   田中久雄1950- 神戸商科大学卒 資材部門 社長2013-2015(会計不祥事引き起こす)

   室町正志1950-   早大理工電気通信卒 半導体部門(セミコンダクター)系 会長2014-  社長2015-2016  特別顧問2016-

 志賀重範1953-   東北大工学部原子核工学卒 原子力事業 WH損失を見逃したとの批判あり 会長2016-(米原子力事業損失表面化で引責辞任へ)

 綱川智1955-  東大教養卒 東芝メデイカル社長 社長2016- 西村泰三に近いことに批判あり

2015年の東芝事件前の主な会計不祥事

2004年 西武鉄道 株式の保有状況を偽って指摘 上場廃止
     カネボウ 債務超過を資産超過と偽る 上場廃止
2006年 ライブドア 自社株売却益を売上高に不正計上 上場廃止
2007年 IHI 工事費用を過少評価し赤字を黒字と公表 特注銘柄指定 課徴金15億9457億円
2011年 オリンパス 財テク損失を簿外で不正処理 特注銘柄指定 課徴金1986万円 罰金7億円 元社長らは逮捕
会計不祥事発覚後の東芝のリストラの流れ 2015-2016年
2015年4月3日 会計処理に関し調査委員会設置発表
2015年8月31日 保有トプコン株(測量機器大手)のすべてを売却と発表(5-600億円 3割出資)
2015年9月15日 東証 特注(特別注意)市場銘柄に指定
2015年10月28日 画像用半導体CMOSセンサーの生産設備をソニー(CMOSセンサーで世界首位)売却 約200億円で 正式発表
2015年12月7日 証券取引等監視委員会 金融庁に勧告 行政処分として73億円の課徴金を科すこと 2008年以降 幅広い分野で損失送りなど 利益修正額が総額2248億円 過去5年間の虚偽記載 新日本監査法人にも検査 
2016年3月18日 2017年3月期の黒字計画公表
2016年3月 東芝メデイカルシステムズ(CT MRTなど医療用画像診断装置で国内首位28% 世界で4位12%)をキャノンに売却へ(ソニー 三井物産 富士フィルム コニカミノルタも食指) 売却額7000億円規模 東芝の虎の子 選択と集中 リストラ原資 半導体などへの投資に 今後は家電やノートパソコンの立て直し 構造改革へ 3月17日6655億円で売却合意 東芝は今後 電子デバイス(半導体 スマホに使う
NAND型フラッシュメモリーなど)、原子力火力発電など発電機器などエネルギー・昇降機、業務用空調など社会インフラの3事業にシフト。他方 白物家電(産業革新機構主導でシャープと統合する案もあった)は中国家電大手美的集団(Mideaブランド 白物では世界2位)に売却 2割弱の出資を維持して東芝ブランドも残す。次の成長領域として医療機器分野は自己資本比率3%弱(2.6% 2015年3月末は17.1%)の危機的状況脱却のため売却とした。資本市場からの資金調達には特注銘柄でなくなる必要あり 役職員給与の減額幅拡大や2017年3月新卒採用中止も決めた。
2016年4月 2015年12月以来進められていた 東芝(1985年にノートパソコンを世界で初めて商品化) 富士通(2016年2月分社) VAIO(2014年ソニーから独立 出資者は日本産業パートナーズJIP)3社のパソコン事業統合構想がまとまらなかった。(なおその後 2016年10月レノボが富士通のパソコン事業を傘下に収めることを決めた レノボは2011年にNECのパソコン事業を統合 2016年7月にレノボ主導に 現在国内シェアトップ トップ企業 経営に余裕:技術者の活躍余地・・ユニークな商品がうまれる 悪化すると数字に縛られ安い部材に目が行きがち 現在の世界パソコン市場は レノボ デル デルの3強ガシェアの過半を占める 2014年 国内ではレノボ26.3% 富士通18.8% 東芝12.2% デル10.9% HP10.7% アップル5.2% など 2015年国内19万台のシェア:IDCジャパン レノボ26% 富士通17% 東芝12% HP11% デル10% アップル7% エイスース3% パナソニック3% VAIO2% セイコーエプソン1% つまり3社統合で国内首位メーカーは作れたがそうならなかった。他方 パソコンについてはシェア2%のVAIOや同3%のパナソニックが検討している。利幅の低い標準的な機種は避けて、機種を絞り高性能を売りにして生き残りを図る。)
2016年4月-5月 2016年3月期決算で原発の損失計上へ(2006年移行6000億近くを投じてWHを買収 出資比率87% 暖簾3500億円の多くが収益力低下で減損の必要がある…3000億円程度 WHの価値引き下げへ 原発事業の収益性低下は深刻)等合わせ損失は4000億円強 このほか内外で1万4000人強削減などリストラ費用3400億円強 反面 東芝メデイカルシステムズ売却などが収益に貢献 2016年3月期最終損益は4832億円の赤字(その後4600億円に修正 さらに4700億円とさらに修正) 5月12日 5月23日 5月26日 自己資本比率は5.5%で目標30%に向け 資本政策を検討中
2016年4月 社長に綱川副社長(医療機器 白物家電売却実務担当した)が昇格する見通し 半導体 原子力などエネルギー 昇降機など社会インフラの3事業で経営立て直しへ
2016年6月末 自己資本比率7% 自己資本3360億円 健全の目安は30%で 30%への早期回復目指す このため2016年9月21日に2016年4-9月期 連結純利益700億円見込むものの中間配当の2年連続見送り発表
2016年9月15日 内部管理体制確認書を東証などに提出 日本取引所自主規制法人が特注市場銘柄解除を検討へ(提出された報告書は3000ページを超える 精査のため判断の越年の可能性9月23日明らかに) 指定解除後 資本増強策検討へ 過去と決別できるか BS(バランスシート)の将来像を示して会計操作の余地を減らす 責任者追及刑事訴追など
2016年9月28日 4-9月期の業績好調 主力のフラッシュメモリー好調 ハードデイスクも伸びる 700億円の黒字(2015年は904億円の赤字) 為替の円安も支援要因
2016年10月18日 大学新卒採用 2018年4月から再開を発表(2017年4月は採用中止)

2017年10月25日加筆修正更新


中国 新常務委員7人の顔ぶれ(2017年10月)

2017-10-24 21:02:05 | Area Studies

新常務委員7人(中国共産党中央委員会政治局常務委員会7人)が決まった(2017年10月 年齢順)。

栗戦書(67) 2012年7月より中央弁公所主任(常務委員会の議題、常務委員の日程調整役 常務委員会は中南海で週1回程度のペースで開催 政治教員の会議は月1回程度) 1950年8月生まれ 河南師範大学の夜間で学んだあと共産党中央党校 社会科学院社会人コースなどで学ぶ。2007年1月黒竜江省省長 2010年8月貴州省省長 2012年7月より現職

習近平(64) 1953年6月北京生まれ 総書記(国家主席 党中央軍事委員会主席) 留任

韓正(63) 2012年上海市党委書記   習近平が陳良宇(汚職により2008年懲役18年判決 陳は江沢民派とされる。2010年に上海万博誘致に成功した功績があるが汚職をしたということで失権した。その後任となったのが習近平である。)のあとの上海市党書記のとき上海市長 1954年4月生まれ 労働者として働き党務もこなしながら復旦大学専班卒業 その後 華東師範大学でも社会人として学ぶ 

李克強(62) 1955年7月生れ 首相 留任 河南 遼寧のトップを経験

王沪寧(62) 2002年10月から中央政策研究室主任 1955年10月生まれ 華東師範大学卒業後 上海社会科学院を経て復旦大学

汪洋(62) 2013年3月から副首相 元広東省党書記(2007年12月 2009年後任は薄熙来だった 薄熙来は汚職により2013年に無期懲役判決を受け失権) 1955年3月安徽省生れ 共産党中央党校卒業 経済通とされ経済政策での役割が注目される

趙楽際(60) 中央組織部長(2012年11月より) → 中央規律検査委員会書記 1957年10月青海省西寧市生まれ 工農学生の最後として北京大学哲学系で学ぶ その後社会科学院 共産党党校でも学ぶ 2000年42歳のとき全国最年少で青海省省長に就任

新常務委員7人(中国共産党中央委員会政治局常務委員会)が決まった(2012年11月 従来の9人から2人減員)。

第18回全国代表大会(2012年11月)で決定。定年は68才とされる。11月の党大会では経済規模・所得倍増計画を打ち出された。
 中国経済は2010年ころ農村の余剰労働力が底をつく「ルイスの転換点」を通過 賃金の急上昇が始まった。このことにより高成長は終わったと表現される。
 胡錦濤(2002.11-2012.11)ー温家宝 のもとで「国進民退」が進んだのは、胡錦濤時代のマイナス面と考えられる。
 このほかの課題としては、農村労働者(出稼ぎ労働者)への差別的扱い(戸籍制度)が農村労働者の都市定住を妨げていること。
 内政:低成長への移行という環境のもとで 政治腐敗に立ち向かえるか 所得再配分を実現できるかという点。
 既得権益層は、国有企業に天下りして個人資産を拡張させ、さらに個人財産を海外に移し子弟を海外に留学させている。
 中央政府は、既得権益層の支持と大多数の国民の あきらめのもとに政権を維持してきた。しかし今後、
異議申し立ての空間が加速度的に拡大する。人々の不満をうまく吸収するシステム(政治改革)が必要になっている。
 今後の統治の安定化のためには、既得権益層を抑制する必要がある。そのため民主化や既得権益層の自己財産公開。体制に批判的な人々の支持を得る政策目標の打ち出しなどが必要との指摘がある。逆に言えば、民主化措置がとられなければ、既得権益層への批判から、社会が不安定化するリスクは高い。
 選ばれた新常務委員は以下の7人。対中国外交では中国の中国政府のトップにある政治局員 常務委員(さらに将来の政治局員)とのパイプ作りが必要とされる。
 
習近平(59) 1953年6月北京生まれ 2007年にすでに常務委員 精華大学化学工業学部 夫人は軍専属の歌手の彭麗媛 娘は米国ハーバード大学留  学中 2008年に国家副主席 ⇒ 共産党総書記 党軍事委員会主席 
李克強(57) 1955年7月生れ 安徽省 2008年副首相 北京大法律学部と経済学院(博士) 夫人は大学教授の程虹は北京経済貿易大学外国学部教授   娘は米国留学中 3月の全国人民代表大会で温家宝首相の後を継ぐ。2013年3月の全国人民代表大会で首相就任予定。
張徳江(67) 1946年11月遼寧省台安県生まれ 工業担当副首相 重慶市党委書記 機械工業閥とも 江沢民派
兪正声(67) 1945年4月生れ 上海市党委書記 機械工業閥
劉雲山(65) 1947年7月山西省 党宣伝部長
王岐山(64) 1948年7月山西省 西北大学と社会科学院近代歴史研究所で歴史を専攻 副首相 太子党 実務派 人民銀行副総裁を1990年代前半(1993年)に経験(当時の副首相は朱鎔基で人民銀総裁を当時の人民銀総裁を更迭 自ら総裁を兼務した そのとき副総裁に王岐山を抜擢 朱鎔基は1998年に首相に昇進した。)
 江沢民(1989.6-2002.11)ー朱鎔基(1998に首相) には国有企業のリストラを推進し「国退民進」を進めたプラスの側面もあった。
張高麗(66) 1946年11月福建省 アモイ大学経済学部統計専攻 シノペックを経て政治へ 李嘉誠と盟友 娘は企業家に嫁ぐ 2007年天津市委党書記 江沢民派 石油閥系
老幹部の江沢民(85)(もともとは自動車技術者)は機械工業閥 石油閥にまたがる派閥人事の頂点に立つ。
 失脚した薄熙来(62)は江沢民派で石油閥の周永康(69)が懇意だったとされる。石油閥の大ボスとされるのが
曽慶紅(72):江沢民(3つの代表 重要思想を2001年に提起 私営企業経営者を含む社会階層との団結を主張)の側近とされる。機械工業閥で同様の立場にあるのが呉邦国(70)。

これに対して共青団に地盤がある胡錦濤(格差是正を優先する和諧社会路線打ち出す)派は党内改革派とみられるがその
汪洋・広東省党書記 1950年11月生れ 李源潮・党中央組織部長 1955年3月生れ は今回は常務委員に入らず(昇格せず 政治局員には入る)。政治局員は常務委員7人を含む25人。

新常務委員が直面する中国経済の課題
 7%以上の成長を目指すこと。「保8」で2020年に「小康社会」実現を目指すこと(2012年の成長目標は7.5%だった 中国の潜在成長率は7.5-8%あたりとされている)。
一人当たりGDP2002年1000ドル 2011年5000ドル超(台湾の1987年当時 韓国の1989年当時の水準)所得が一定水準になると人々は権利に敏感になる 不満も吹き出しやすい 2010年で5400ドル 日米のおよそ9分の1
 3倍以上とされる都市農村間格差解消すること。
 所得格差 富裕層の所得を把握できない 相続税もない 幹部の腐敗
 製造業の生産能力過剰問題、高齢化による労働年齢人口減少問題に取り組むこと。生産年齢人口がその他の年齢層を上回る人口ボーナスが終焉を迎えている。労働賃金が上昇を始めている。給与水準は改善。一人っ子政策 2015年から生産年齢人口が減少に転ずる
 生産性の改善 経済の効率改善が安定成長の維持には不可欠
 国有企業の肥大化 民間企業を買収 肥大化進む 
 人民元の資本取引自由化問題、政府部門の効率化に取り組むこと。
 対外的には為替介入でドル資産(米国債)を膨らませ1兆ドルを超える米国債を保有。米政府の最大の債権者となった。そのため米国債の値下がりは困る、矛盾した立場に陥っている。

中国型国家資本主義モデルの限界ともされるさまざまな矛盾の表面化
 人民元政策:為替操作国認定を避ける(2005年7月 対ドル固定から動かし始める 市場介入を減らし 人民元対ドル相場上昇を一定容認 元高政策には物価抑制策の側面 2012年 中国経済減速とともに元安への転換の観測も)人民銀行はインフレ懸念から人民元上昇を容認する立場、他方で共産党中央は、失業の増大と社会不安につながる人民元上昇をためらう立場とされる。
 米欧が輸出依存型の成長を弱めることを要求。しかし消費主導の成長モデルへの転換は容易ではない。
 社会資本は過剰投資に陥っている。
 中国企業の債務残高は国内総生産の120%に達する。
 生産の増加が在庫の積み上げになることがある。期待先行の生産でないか、在庫調整は進んでいるかをチェック。
 鉄鋼業では9億トンの生産能力のうち2億トンが過剰。セメント 風力発電 多くの企業が過剰生産能力に直面して(生産能力の過剰問題 増産に走ると生産には走り在庫が増える しかしこれが需要に見合っていないと在庫が積みあがる:形式的に成長率は上昇するが)、債務削減に動こうとしている。
 鉄道網の整備 高速鉄道の整備(12月26日北京ー広州間全長2200kmが開通 所用時間20時間が8時間に)
 中央政府が2008年の4兆元の経済対策で過剰生産に落ちった反省から動かないので地方政府がインフラ投資に走っている
  製造業が 一斉に設備投資に走った
  経営効率の悪い企業の生き残りにつながった
  設備の過剰は減速の要因になった
  あふれた資金がバブルの温床になった
 伸びを誘っているのは地方政府の投資 各地の地下鉄 住宅など
  地方融資平題とよばれる資金調達会社が債券、信託、委託貸付などの方法で資金調達 金を出すのは意外にも個人
  銀行の定期1年物で3%に比べ信託の予想利回りは9-9.5%で大幅に高い
  一種のシャドーバンキング
  銀行が売る金融商品にも銀行ガリスクを負わない商品があり問題になっている
 輸出企業の競争力低下(人民元 人件費上昇による競争力低下)。
 銀行では不良債権が増加(国有企業へのずさんな融資が背景の一つ)。
2008年リーマンショック時の4兆元(大企業は設備投資 輸出で吸収できると踏んでいたが、欧州危機で在庫があふれる結果に。)
   過剰生産(過剰設備投資) バブルが全国に広がる結果にもなったとの反省がある。
 李克強は「4兆円」政策再来に強く反対してこれを食い止め、投資と輸出に過度に依存した経済の転換を模索しているとされる。
 新築住宅価格 値上がり続く

中国人民銀行トップの交代も話題に
 中国人民銀行総裁 周小川(64) 2012年10月に任期10年迎える 65才で閣僚級幹部は定年 2012年11月14日 中央委員名簿から外れる
中央委員は政治局員含む約200人。ここから人民銀行総裁の格付けが必ずしも高くないという表現が生まれる。

 2011年10月監督管理委トップが一斉に交代
  銀行業監督管理委員会主席に尚福林(60):前職は証券監督管理委員会主席
  証券監督管理委員会主席に郭樹清(56):前職は中国建設銀行トップ

噂されている周総裁の後任候補
 中国投資(CIC)の会長 楼継偉(61)
中国工商銀行トップ 姜建清(59)
 中国銀行の董事長 肖鋼 など

地域研究論 Area Studies Business Models Business Strategies


白昼の詐欺としての仮想通貨(virtual currency or crypto currency)と日銀・金融庁の責任

2017-10-16 18:30:04 | Area Studies

A fraud in broad daylight: virtual currency

メリット:短時間に安く決済送金できる。即時1%程度。
デメリット:独自の経済圏 資金の流出などで 金融政策が利かなくなる。脱税が生じる。
2017年4月 改正資金決済法(仮想通貨法)施行  取引所に登録制導入
ICO initial coin offering ビットコインなど仮想通貨と交換できるトークンが発行され、これで資金を集めること。トークンは仮想通貨取引所で換金できる。しかしトークンを発行するものが架空の事業で資金を集めるおそれがある。架空なプロジェクトに架空通貨を使う。端的に金融詐欺なのだが、なぜか金融庁は放置している。確かに法定通貨でないものが実際には支払いに使われることは、この仮想通貨の前から生じている。法定通貨との交換性があれば、仮想通貨による支払を認めてよいとはいえる。そこまでは認められるが、相場の不安定はいただけない。2014年 マウントゴックス事件。

2017年に入りビットコインの相場が急上昇した。年初の1ビットコイン10万円が8月には50万円台(8月2日ビットコインキャッシュBCH分裂。このときビットコイン保有者は同数のBCHを受け取った。9月2日に5013ドルの高値。10月24日に香港企業が中心のビットコインゴールドBTGが分裂を始め11月24日ビットコインゴールドが誕生した。ビットコイン保有者は同数のBTGを得られたとのこと。背景には当初の設計に取引データ容量の制約があり、取引の急増で送金に時間がかかるようになった。世界の開発者が送金をスムーズにする開発をきそっている。ダイヤモンドハデータ容量がビットコインの約8バイトのこと。11月29日午前10時半頃には1万ドル(約111万円)を超えた。現地時間12月10日夜米シカゴオプション取引所CBOEにビットコイン先物が上場された。18日にはシカゴマーカンタイル取引所でビットコイン先物が上場された。)
この状況は「まとも」ではない。取引するのは勝手だが、このように急激に価値が変動するものを
決済手段に使うのは乱暴だ。またICOも資金調達というが、投資したお金が相場の変動により霧散するリスクを
はらんでいて、その場合、ICOによる投資は詐欺になりかねない。中国政府がICOを全面禁止とした(2017年9月4日)のは適切な処置といえる。また
2017年9月30日 中国で仮想通貨取引所BTCチャイナの取引が停止された。こうした中国政府の対応を歓迎したい。
注目されるのはこの点で中国政府の方が詐欺行為に対して、まともなな判断をしていることだ。 

これに対して日本銀行や金融庁が、仮想通貨に対して容認する姿勢を示しているのは、金融取引を通じたマネーロンダリング
などを警戒する日頃の姿勢と乖離がありすぎる。通貨そのものが「幻想」だというのは、貨幣の本質をとらえてはいる。
現在の貨幣は国家の信用によって裏付けられておりそれは実体としては把握しにくいものだ。
けれども仮想通貨はその相場の激しい変動が示しているのは、その相場が現在の貨幣の相場に比べて、一段と投機的で歯止めがないことだ。
これまでの貨幣流通のルートと異なった流通が可能で、マネーロンダリングや不正送金に使われる可能性は高い。
仮想通貨に対して、これを容認する姿勢を示す日本銀行や金融庁の姿勢に対して、疑問符をつけておきたい


ソフトバンク傘下スプリントによるTモバイル買収 模索

2017-10-16 14:52:33 | Area Studies

ソフトバンク傘下のスプリント(米携帯市場で4位)がTモバイルUS(同3位 ドイツテレコム傘下)買収交渉を続けている。

なおスプリントは懸命な赤字削減により4-6月期に3年ぶりに最終損益で黒字になったとのこと。大幅な経費削減。通信網 販売網は強化。お得感のある料金プランで成長を維持。もっとも時価総額でスプリント(347億ドル)よりTモバイル(536億ドル)が大きい。

買収が成功すればベライゾン、AT&Tに次ぐ 3位に浮上できる。

なおソフトバンクの有利子負債は既に15兆円近い(2016年には3兆3000億円投じ英アームHDを買収)。この背景に5月下旬に立ち上げた10兆円ファンド(ソフトバンクビジョンファンド)。またトランプ大統領にもとでのFCC委員長交代に期待。2014年の買収話はオバマ政権下ぼFCCの反対で実現せず。したがって関係者が合意した場合は、トランプ政権下でFCCの判断がどうなるかも注目される。

2020年から5G実用化するなど競争環境の変化が見込まれている。こうした変化を見込んで、最大手のベライゾンは昨年2016年 ヤフーのネット事業(検索 広告など スポーツや金融の情報サイトとして根強いファンが存在)の買収48.3億ドルを発表。2017年2月、ヤフーでの個人情報流出(2016年9月に5億人の個人情報流出発表 12月に10億人の個人情報流出発表 空前の規模とされる)を受けてその買収額は3.5億ドル減額されて、44.8億ドルに修正された。ベライゾンでは傘下のAOLと一体運営することで、コンテンツ配信やデジタル広告事業を強化するとのこと。またAT&T(2015年衛星放送大手デイレクTVを買収)がタイムワーナー(ワーナーブラザース、CNNの親会社)を854億ドルで買収で昨2016年大筋合意しており、問題は司法当局の判断がどうなるかに移っている。(背景にはネット動画の普及によりコンテンツ流通の主導権が動画配信業者に移っており、米国ではケーブルTV契約者が急減している。またネットユーザーがコンテンツの視聴より、SNSを通じた交流に時間を割く傾向も知られている。)

 


2017年7-9月 米FRB資産縮小決定

2017-09-22 17:24:39 | Area Studies

2017年7~9月 テーパリングの決定(9月)

 物価上昇率の停滞 ハリケーン被害による雇用の下ぶれ(経済成長率は2017年2.1%見通し。日本は1.3%) 9月まで利上げ見送る。しかし10月からのFRB資産縮小(再投資をしない)は決定(9月19-20日のFOMC米連邦公開市場委員会)。テーパリング(金融資産買入れ額の縮小 市場への影響を考慮して満期を迎えても再投資しない規模を拡大 当面3ケ月は米国債を月60億ドル MBSなどを月40億ドルそれぞれ再投資額を縮小する。1年後には縮小幅をそれぞれ月300億ドル、200億ドルとし資産縮小の規模を最大年6000億ドルとする)。2015年12月からゼロ金利解除政策開始(16年12月 17年3月 6月に政策金利引き上げ)→2008年以降の金融危機対応の完全終結(2007年には4%台だった長期金利は2%強)。バランスシートは4.5兆ドル(2008年の危機前は9000億ドル)。今後10月にも再利上げが見込まれる。

   注目したいのは為替動向だが、金利が上昇すればその国の為替が高くなる。アメリカの金利引き上げはドル高(円安)となるはず。しかし影響するのは物価上昇率の差だとされる。米国では物価上昇率の低下がみられる。日米の金利が仮に同じなら物価上昇率が高い国の金利はそれだけ低下することになる。為替相場は金利が高い方の国が高くなる。米国の物価が上昇しないということなら、日米金利差は縮小、円高(ドル安)に振れることになる。

 この間のトランプ政権への期待はドル高(円安)に。またトランプ政権の政策実行能力への不安はドル安(円高)要因になった。政府日銀は円安による輸出促進効果は現地生産への移行によって低下したと公言を始めている。これはトランプ政権が日本が円安誘導政策(さらに円売り介入政策)をとっていると批判していることへの煙幕ではないかと指摘されている。しかしこの指摘を重ねると、円安→株高という循環を政府は自ら崩す結果になる。

米金利引き上げ 高まる米景気後退論(2017年5月~6月)

 FRBは2017年3月に3ケ月ぶりに利上げに踏み切った。そして6月にも利上げした(0.25%政策金利の誘導目標を引き上げ FF金利を年0.75-1.00%から1.00-1.25%に引き上げ)。ただそれでドル高・円安になるかは疑問視される。それは利上げが、米国の長期金利の上昇を必ずしも意味しないからだ。米国の金利上昇のにぶりから、景気回復基調の新興国(トルコ ポーランド インド 韓国 インドネシア 南アフリカ ブラジル アルゼンチン メキシコなど)に資金が流入している。

 2017年4月下旬から景気指標が市場予想を下回るものが増え米経済がピーク超えしたとの情報(2017年4月後半からエコノミックサプライズ指数はマイナス化)から、米国経済はピークを超えて後退局面に入ったとの観測がひろがっている。こうした米景気減速感から、為替相場はむしろ円高に振れている。米経済は2009年8月から長期上昇局面にあった。そろそろ転換ではないかという指摘がある。であれば、この6月の利上げのあとは利下げが予測される。加えてトランプ政権の不安定さも一つの要因になる。トランプの政策は実現するとしても規模が縮小(トランプ政権への期待の剥落)、金利引き上げ要因となる大きなインフレは起きないと市場は予測する。むしろ逆に金利下げからドル安・円高とも。

貿易収支・外債投資で多くの懸念材料

 他面で日本の貿易収支をみると、2017年4月の発表では実に6年ぶりに2016年度の貿易収支が黒字化、経常収支の黒字の大きさはリーマンショック前の2007年度の水準を回復した(原油価格下落 天然ガスの輸入額が減少する一方 アジア向け 米国欧州向け輸出が好調)。トランプ政権登場後(大統領選に勝利2016年11月) トランプは強力にドル高是正発言を続けている(現在は14年ぶりのドル高水準 ドルが強くなりすぎているのはアメリカの本音といってよい)。急激な円安は2017年に入ると収まり円高に市場は動いた背景には、国際収支の動向があるが、それが米国の意向にも沿っていることは明らかだ。逆に為替が輸出入に与える影響は現地生産(部品供給網は海外化)の進行で低下。

 国際収支の今後を考えると、資源価格の上昇により貿易黒字は減りそうだ。しかし旅行収支の黒字幅は外国人観光客の増加で拡大しそうだ。それ以上に増えそうなのが知的財産にたいする収入。ノウハウや商標、特許権料などの収入。これらのサービス収支が、貿易収支の黒字幅の減少を補いそうだ。となると円高基調はなお続くとみるべきではないか。足元の景気の良さ(日銀の政策の継続を望む意見から円高に行かない+米国経済の先行き不安からドルを買い進まない トランプ政権登場で政策期待から金利上昇 国内運用機関は外債運用で損失 外債運用減らす その後再び外債へ+通常為替ヘッジ つまり円売りと円買いを同時に行うので為替中立的 生保はヘッジをかけないオープン外債は少ない ヘッジ比率は5割から8割 ヘッジをかけないものとしてGPIFがある GPIFは外国ものが運用上限の4割に近く動けない 米国債先物売り・・・その後の買戻し=金利下げ圧力につながる)を反映した、ぬるま湯相場(ゴルディロックス)から一層の円高を警戒する意見が強い。

 円高リスクは生保の外債投資を鈍らせる。投資コスト下げるにはヘッジ比率下げる。それには円高リスク大きい。

 いわゆる地政学リスクに伴う安全通貨円買いも 円高要因。史上最高値の株高にある米国株の腰折れ懸念。

原油価格は上昇に転換(2016年後半)

OPECの減産合意(2016年9月および11月末)を受けて、原油安から原油価格上昇へ(北海ブレンドは2016年42ドルから52ドルを波動 ドバイ原油は22-23ドルから50ドルへ倍以上に上昇した)。貿易収支の黒字幅は縮小へ。 

2016年9月7日 一次101円20銭2週間ぶりの高値 

2016年9月時点 スイスとドイツで10年物国債の8割 日本国債では7割がマイナス金利。景気を刺激も引き締めもしない中立金利が先進国でずるずる下がり「長期停滞」に陥っている。銀行も利ざやがとれず融資を控えるようになっている。強めの需要政策が必要という「高圧経済論」が強まる。➡すなわちこれまでの金融緩和に頼った政策の限界が指摘されている。これまでは政府の財政出動が、歯止めのない大きな政府につながることを批判する意見が強く、構造改革の推進が正しいとされていた。しかし、世界全体が低成長から抜き出れない状況。一種の悪循環に陥っているという反省が強まっている。極端な低金利の長期化が金融機関の経営や年金財政に与えるマイナスの側面にも関心が高まっている。

10月28日 米商務省発表 7-9月期実質GDP速報値 前期比年率換算2.9%増 2年ぶりの高い伸び 市場予想の2.5%程度を上回る 4-6月期の1.4%から改善

さらにドナルド・トランプの大統領選出(2016年11月8日)を受けて、インフラ投資、規制緩和が進むことが期待されて、米景気の改善が見込まれ、米金利は上昇へ。原油高もあり、円安へ。

9月28日に行われたOPECの臨時総会で日量3200-3300万バレルへの減産(8月時点で3324万バレル)が合意された。日量120万バレル程度の減産。 減産合意は8年ぶりで画期的。背景にはサウジの譲歩。米国のシェールに対抗する必要性から増産に踏み込んだ2014年から2015年にかけてのシェア確保優先方針を転換。原油安に危機感(原油価格がサウジの財政を圧迫 脱石油に向かう投資にも暗雲)。

米国では11月8日に投開票が行われた米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプが次期大統領に選出された。

トランプ次期大統領の政策(大幅減税 インフラ投資 エネルギーや金融で規制緩和 米国内への資本参入を促進)で米景気が上向くとの観測から、利上げ観測・ドル高(米金利急上昇➡12月の利上げ確実。 米国の株価金利が急上昇。高金利のドルが買われ円安)。新興国からは資金流出が進む。新興国はマネー流出で株価下がる

ドナルド・トランプの登場でFRBの金融政策にも不透明感が高まる。もともとFRBの金融政策には批判が少なくない。12月の利上げに、イエレンは踏み込めなくなったとも、大統領就任前に利上げに踏み込むともされた。11月の失業率は4.6%と約9年ぶりの低い水準(前月比0.3ポイントダウン)。トランプ次期政権が掲げる大型の景気刺激策もあって、市場は利上げを予想。低金利、低インフレの時期は転換期を迎えたとの観測がもっぱらとなった(後述するようにFRBは12月14日のFOMCで2015年12月以来1年ぶりの利上げを決めた。2015年12月の利上げは9年半ぶりで2008年以来のゼロ金利政策の解除をいみした。)。

11月21日 インフラなど公共投資期待。財政支出拡大 インフレ懸念 円は一時111円台 株価は1万8000円台確保

11月24日一時112円台後半に下落。午後1時 1万8450円。

11月30日のOPEC定期総会(ウイーン本部)で、8年ぶりに減産合意(下限の3250万バレルで合意 減産120万のうち50万をサウジが負担。政情不安のナイジェリア リビアは減産免除 イランも増産余地確保)が確認された(非加盟国ロシアは増産維持したいが石油価格回復には賛成 米国での生産増加も引き下げ要因)。減産合意、原油高から米国では物価上昇予測。12月1日 NYのWTIは1毛月半ぶりに1バレル51ドルの高値をつけた。

その後12月10日 OPECとロシアなど非加盟主要産油国はウイーンのOPEC本部で閣僚会議を開いて協調減産で合意した。非加盟国の減産幅は日量56万バレル弱(うち半分はロシア メキシコが10万など)。両者が合わせて世界生産(2015年で9167万バレル)の2%弱を減産することになった。不安要因はOPECの生産の増勢がとまるかどうか。減産の適用を免れたリビア、ナイジェリアの生産の回復。生産コストを下げたシェールが価格があがることで増産に転じることなど。シリアのアサド政権をめぐってはこれを支持するロシア、イランと、反体制派を支持するサウジが組んだ形。

トランプ円安()トランプ勝利 生保が大胆な円売り 保有外債の為替リスク:背景 多額の外債買い越し 原油減産合意で原油相場上昇 貿易収支黒字幅縮小へ。11月:101円台から113円台へ円安展開。

減産合意 原油高 円安 ➡ 経常収支見通し困難 日本の株価は円安による業績好転期待から上昇。しかし新興国が安定するかどうか 原油価格上昇が国内経済に及ぼす影響はなどを考慮すると株価の上昇がどこまで続くかは疑問。日本では自動社株のほか、トランプの進めるインフラ投資関連株、金融規制緩和と金利上昇で利ざや拡大とから金融株に人気が集まった。

円安は外貨建ての輸入業者には重荷。外貨が必要(外貨での投資)+外貨建て債務で為替変動をヘッジ。銀行の場合は新興国での外貨需要。

トランプの大統領選出後、米国でインフレが進むという観測から金利が上昇。日米金利の拡大が生じて急激に円安が進行した(長期金利差は2.4%台で6年7ケ月ぶりの水準 米長期金利は年2.5%台)。103円台のところから116円台まで(12月12日)。

12月13日 トランプ次期大統領は次期国務長官に米石油メジャーCEOのレックス・テイラーソンCEOの起用を発表した。また前日の12日には国家経済会議の議長にゴールドマンサックスのCOOゲーリー・コーンを指名している。11月30日に財務長官に指名されたステーブン・ムニューチン(エール大学卒)もゴールドマンサックス出身で近年はヘッジファンドを運営。大統領選では陣営の金庫番をつとめたとのこと。日本としては商務長官に知日派のウイルバー・ロス(ハーバード大学院修了 ロスチャイルドに勤めた経験)の起用が決まったことが心強いとされる。

12月14日 米連邦公開市場委員会FOMCは失業率の一段の低下(11月の失業率は前月を0.3ポイント下がって4.6% 実質GDP伸び率7-9月の確定値は3.5%)と物価上昇率が目標の2%に近付いたことを受けて(9年半ぶりだった)2015年12月以来1年ぶりの利上げを決めた(2015年12月の利上げに際して年4回の利上げペースを見通したが3月には2回とし、結局12月まで利上げできなかった。その間に2016年1月に日銀のマイナス金利決定、2月にECBの追加緩和決定があった。政策金利であるFF金利の誘導目標を0.25-0.50%から0.50-0.75%へ。利上げ幅は0.25%.失業率の低下と物価上昇率の低さ(1.7%でなお2%超えない)。なおトランプの大統領就任で今一つ問題にされるのは、イエレンの任期だ。イエレンの任期は2018年2月まで。トランプはイエレンがオバマを支援するために政策金利を据え置いてきたと批判していた。そこで注目されているのがスタンフォード大学のジョン・テイラー。テイラーはインフレ率と成長率をもとに適正金利をはじくテイラー・ルールの考案者だが、FRBのお低金利政策は、適正金利を下回っていると批判してきた。また同じ連銀内部でも(2016年10月)イエレンが金融危機からの脱却には、高圧経済を容認する姿勢を示して、低金利の長期化による景気刺激を容認気味であるのに、フィッシャー副議長は物価上昇率の高まりから金利引き上げの条件が整ってきたことを主張していた(2016年10月から11月)。

トランプとイエレンとの対立はこのほか、ドッドフランク法(2010年7月成立 巨大銀行の監督を強化し銀行のリスク取引行為を制限 高リスクデリバ取引の禁止 FRB主導金融機関監督協議会の設置 金融機関の秩序だった破綻制度 など➡トランプは同法が中小銀行に重い規制順守負担を貸して中小企業の資金調達に悪影響を与えていると批判している ただ銀行の自己勘定取引やファンド投資を制限する同法を壊すことは ウオール街の利益でもある トランプのウオール街批判とは一致しない ただトランプがゴールドマンサックス出身者を重用していることとは関係しそうだ 11月30日 次期財務長官のステーブン・ムニューチン氏はイエレンの仕事ぶりは評価する一方 ドッドフランク法を念頭に金融規制を緩和して融資を促すことを主張している)の評価(危機防止に役立つか 経済成長を鈍化させるか)、財政拡張昨の評価(大規模な需要喚起は不要か:完全雇用を守る 雇用拡大に必要か)、中央銀行の独立性(議会がFRBの金融政策を監視するFRB監査法案についての賛否)などでも目立っていた。したがってトランプの大統領就任により、イエレンは孤立化したとみていいだろう。

このような「過剰な規制からの回避」はヨーロッパでも、過剰な規制が市場機能を却って阻害する問題として知られ、2016年にすでにイギリス、EUの双方でルール緩和の動きがみられるとされる。その意味では、トランプが始めていることは、金融危機後の規制の行き過ぎの反動としてみることもできる。

トランプによる大型減税や10年で1兆ドルというインフラ投資構想は、インフレ圧力を強め利上げを加速する(財政を悪化させるとの意見もある)との見方がある。

低金利政策は通貨高を避ける方策ではあるが、仮に金利が上昇を始めるとドル相場(ドル高)が上昇するとともに、新興国は債務負担が増え(先進国も財政は悪化)、金利上昇は世界全体の重しになる可能性もある。完全雇用に近いもとで財政拡大なら金利上昇という指摘の一方で、ドル高を嫌うなら、利上げスピードはダウンするはずという議論もある。

12月16日 15日に約10ケ月ぶりに118円台の円安。16日も118円台。日経平均は1万9395円(16日午後1時)

12月23日 NY原油先物は1バレル53ドル台終了。年初に比べ4割以上上昇。

1月17日発表のウォールストリートジャーナル紙でのインタビューでトランプは我々の通貨ドルは強すぎるとして通貨安誘導の可能性を示唆した。これはクリントン政権でルービン財務長官が始めたとされる強いドル政策とは矛盾する。また2015年12月の利上げによりドル高に進み始めた市場の動きとも矛盾する。しかし米国製造業からみると輸出競争力を削ぐ一因ではある。他方で次期財務長官に指名されたムニューチン氏は、1月19日、議会公聴会で長期的に強いドルが重要だとして、米国政府のドル高支持という政策は不変だとした。この二人の発言から、トランプ政権の為替政策はまだ固まっていないとの観測が広がった。

2017年1月20日 トランプ政権が発足した。そして公約通り、環太平洋経済連携協定TPP(trans pacific patnership 2015年10月大筋合意 参加12ケ国 8億人 工業品ほとんどや農業品の大部分で関税の撤廃をめざしたもの 12ケ国の国内手続修了で60日で発効 署名から2年経過後は加盟国のGDPの85%を占める6ケ国が通知すると発効)からの離脱を表明した。また中国やメキシコの製品に、高い関税をかける姿勢をしめしている。トランプは英国の金融離脱を賢い選択として評価する姿勢を示している。NAFTA(北米自由貿易協定)も再交渉を明言した。

減産合意に関わらず原油が軟調であるのは 加盟国だが減産の枠外とされたリビアナイジェリアの増産 米シェールオイルの増産(価格あがるとシェールが増えて上値おさえる) メキシコ湾での原油生産の増加 米国内需要の弱さのためガソリン在庫が減らないなど。これに対し、サウジが状況によって自ら輸出量を減らして価格下支えする強硬な態度であること。

2017年5月頃から、ようやく在庫の減少、シェールの生産効率の低下 フラッキングにかかわる技術者の不足が伝えられるようになった。他方で中長期で温暖化対策 自働車・発電の燃費の改善から燃料転換(EVの登場 再生可能エネルギーの急速な値段の低下)で石油消費量減るとの議論がある。これに対して石油生産コストの大きな低下を予測する意見もある。

2017-09-22更新