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史跡湯島聖堂(1797/1935) Yushima Confucian Temple

2020-07-23 16:13:43 | Area Studies

 湯島聖堂は元禄3年1690年、将軍綱吉(正保3年1646-宝永6年1709)がこの地に孔子廟を祭ったのが始まり。綱吉の母桂昌院(寛永4年1627-宝永4年1705)もここにきて、以下を詠じた。
「萬代の秋もかぎらじ諸ともに もうでて祈る道ぞかしこき」
寛政9年1797年将軍家斉(安永2年1773-天保12年1841)のときに、規模を拡大し、昌平坂学問所として整備した。朱舜水(万暦1600-天保2年1682)がもたらした孔子廟の模型を参考にしたとされる。江戸時代の川柳「三度目に昌平坂の下へ越し」は学問所が教育ママを生み出したことをからかっている。湯島天神のすぐそば。お茶屋の並ぶ湯島のすぐそばに、堅い朱子学を講じる殿堂があったことになる。
 大正から昭和前期に活躍した歌人,法月(のりずき)歌客は、以下のように
詠じている。
「これやこの孔子の聖堂あるからに幾日湯島にい往きけむはや」
 明治に入ってから聖堂は博覧会の会場として使われている(明治5年1872年3月)。博物館の場所としてまず使われた。博物館そのものは明治6年1873年に移転している。その後は、東京師範、東京女子師範の校舎として使われたとされる。
 江戸時代の建物が残されていたが、そのほとんどを大正12年1923年の関東大震災で焼失した。しかし伊藤忠太の設計を得て昭和10年1935年に鉄筋コンクリート造りにて再建された(大林組により昭和9年1934年9月竣工 また1986年から1993年まで大林組により保存修理工事が行われた)。メインの建物である大成殿の大きさは間口20m,高さ14.6mである。
 聖堂の構内には大正4年1915年、中国曲阜より持ち帰られた実から育てられた櫂の木が枝を伸ばし、そのそばに昭和50年1975年台北市ライオンズクラブ寄贈の丈高15尺4.57m孔子像が我々を見守り立っている。

   さだまさし(昭和27年1952-)は「レモン」(昭和53年1978)という曲のなかで、湯島聖堂の石段を歌っている。
 あの日 湯島聖堂の 
 白い 石の階段に腰かけて
 君は 陽だまりの中へ 
 盗んだ レモン細い手でかざす
 それを 暫く見つめた あとで 
 きれいねと 言ったあとで かじる
 指の 隙間から青い空に
 カナリヤ 色の風が舞う
 食べかけの レモン 聖橋から放る
 快速電車の赤い色が それとすれ違う
 川面に 波紋の広がり数えたあと
 小さな ため息交じりに振り返り
 捨て去る ときにはこうしてできるだけ
 遠くへ投げ上げるものよ

 歌詞に湯島聖堂は出てこないものの、プロモーションビデオを湯島聖堂を中心に撮ったことで、注目されてよいのが堀内孝雄(昭和24年1949-)の「聖橋の夕陽」(平成29年2017 作詞石原信一)だ。
 学生街の坂道で 偶然きみに逢うなんて
 白髪の混じる 齢なのに
 ときめく胸がよみがえる
 何を話せば いいんだろう
 あの頃のきみがそこにいる
 変わりゆくこの街かどに 色あせぬ青春がある
 きみを傷つけたことがあったから
 今が幸せと聞いてよかった・・・
 聖橋から眺める夕陽 
 川がまぶしく 時はたたずむ
 戻らない想い出に恋をする

 なお湯島聖堂について、記憶せざるを得ない事件が最近起きた。2018年4月11日に生じた木製案内板の倒壊事故だ。たまたま通行していたアイドルグループ仮面女子の猪狩ともかさんが、この湯島聖堂案内板の下敷きになり、脊髄損傷、両下肢まひの大けがをした。湯島聖堂は、江戸時代からの学問の雰囲気を伝える貴重な空間だ。学問とは人を育てることだ。聖堂の本旨とあまりにチグハグなこの事件を形容する適切な言葉を今も思いつかない。

JR御茶ノ水駅東口から聖橋渡りすぐ。
このほかの写真 ➵ Note #史跡湯島聖堂
丹念な記録として  日本近代教育発祥の地 湯島聖堂 2019/05/26
江戸期の姿      聖堂(江戸名所図会)


東京復活大聖堂(1891/1929) Holy Resurrection Cathedral

2020-07-23 11:40:13 | Area Studies
   いわゆる「ニコライ堂」。JR御茶ノ水駅東口からすぐ。ニコライ・カサートキン(1836-1912)は正教会布教のため1861年来日。「ニコライ堂」はその発願が実り1891年に竣工。日本で最大のビザンチン様式の建築。1923年の関東大震災で被災(東京ニコライ堂の惨状)。1927-29年に岡田信一郎らにより修復再建(1929 施工清水建設)。第二次大戦による戦災を免れ1962年に国の重要文化財の指定を受けた。なお2000年に鹿島建設が修復工事を行っている

    いわゆる「ニコライ堂」である。ニコライとは正教会布教のため文久元年1861年に来日したニコライ・カサートキン(1836-1912)のこと。「ニコライ堂」はその発願が実り明治24年1891年に竣工。日本で最大のビザンチン様式の建築として知られる。大正12年1923年の関東大震災で被災する(東京ニコライ堂の惨状)も、昭和2年1927年-昭和4年1929年に岡田信一郎らにより修復再建された(昭和4年1929年 施工清水建設)。第二次大戦による戦災を免れ昭和37年1962年に国の重要文化財の指定を受けた。なお平成12年2000年に鹿島建設が修復工事を行っている。
 與謝野鐵幹(明治6年1873年-昭和10年1935年)與謝野晶子(明治11年1878-昭和17年1942年)は明治42年1909年に、ニコライ堂の近くに移り住んだ。その歌からは日常の風景の中にニコライ堂があることを楽しんだ様子がうかがえる。
 まず晶子から4首。
戸あくれば ニコライの壁わが閨(ねや)に 白く入りくる 朝ぼらけかな
隣り住む 南蛮寺の鐘の音に 涙のおつる 春の夕暮れ
ニコライの 高き塔より鳴る鐘の 広がる屋根に 白き雨降る
わが住むは 醜き都雨ふれば ニコライの塔 泥に泳げり
 鐵幹からも4首。
岩崎の木立を出でてNIKORAIの 壁にただよふORCHESTRAかな
小石川原町の火事をかしくも NIKORAI寺のしら壁に照る
その男NIKORAI堂のうしろてに 暫く住みて行方知らずも
灰色の空に黙(もだ)せるNIKORAIの 黒き円(まろ)屋根われも黙せる
  斎藤茂吉(明治15年1882年-昭和28年1953年)は大正2年1913年2月、巣鴨病院を早退して、ニコライ堂を訪ねて次の歌を詠んでいる。このとき茂吉が見たのは、震災前のニコライ堂である。
 きさらぎの天(あめ)のひかりに飛行船 ニコライでらのうへを走れり
 以下も茂吉の歌である。
 入りかかる日の赤きころ ニコライの側の坂を下りて来にけり
 北原白秋(明治18年1885年-昭和17年1942年)は、昭和12年1937年、糖尿病による眼底出血のため、お茶の水にある杏雲会病院に入院。クリスマスイヴを病院で過ごした。そのとき以下の歌を詠んだ。このとき白秋は、昭和4年1929年に修復されたニコライ堂を詠んでいる。
 ニコライ堂この夜揺りかへり鳴る鐘の
 大きあり小さきあり 小さきあり大きあり
 以下も白秋の歌である。
 ニコライ堂 円頂閣(ドオム)青さび雲低し この重圧は夜にか持ち越す

 交通 JR御茶ノ水駅聖橋方面出口でてすぐ
 そのほかの写真 ➵ Note#東京復活大聖堂
参考 正教会に行ってみた 2019/12/04
History of the Cathedral




吉祥寺大仏(1722) The Big Buddha of Kichijoji

2020-07-22 17:31:55 | Area Studies

南北線の本駒込の2番出口から下りてすぐにある、諏訪山吉祥寺はもとは太田道灌が江戸城築城の折に、城中に開基されたお寺(1458年)。その後、現在の水道橋付近にうつり、現地に移ったの1657年明暦の大火のためとされる。漢学の学問所として栴檀林が置かれ、多数の学僧が集った。吉祥寺大仏は1722年鋳造の青銅製。
 江戸時代には盛んに大仏の鋳造が行われ、現存するものも少なくない。東京都内の江戸時代現存大仏の中で天王寺大仏は大きなものといってよい。
  九品寺大仏(1660年台東区 像高1.77m 総高2.61m)
  瀧泉寺大仏(1683年目黒区 像高2.64m 総高3.69m)
  天王寺大仏(1690年台東区 像高3.05m 総高3.83m)
  吉祥寺大仏(1722年文京区 像高2.93m 総高4.17m)
         江戸時代の鋳造大仏の研究(1)
   江戸時代の鋳造大仏の研究(2)
   以上のほかに、関東大震災で頭部が落ち、胴体部分も第二次大戦時に供出されたという上野大仏(1841年鋳造)は像高が6mほどあったとされる。

 ほかの写真 ➵ note  #諏訪山吉祥寺
 参考      江戸名所図会(吉祥寺)
         吉祥寺狛虎について(ブログ狛犬と私より)




心光寺石仏 Stone Buddhas of Shinkoji

2020-07-22 06:52:55 | Area Studies

心光寺は都営地下鉄三田線白山駅から下りてすぐにある浄土宗のお寺。傳通院の末寺で1628年に開基。1653年から当地にある。江戸期の極めて多数の石仏が現存している。石仏の表情はいずれも大変おだやかである。
 このほかの写真 ➵ note #心光寺石仏
なお心光寺から白山上まで上がってすぐの定泉寺。こちらは同じ浄土宗でも増上寺の末寺である。この寺にも、心光寺に比べて規模が小さいもものの、江戸期の石仏が現存している。   ➵    note#定泉寺石仏
 なお石仏に混じって、庚申塔が入っていることがあり、心光寺にもその例が混じる。この近くでは根津神社のものがある。 ➵ note#根津神社庚申塔


長谷川貴博『AI化する銀行』幻冬舎, 2017

2020-03-09 21:41:41 | Area Studies


著者は東北大大学院で数学で学び富士通に入社。金融系のシステム開発に参加。京大MBAで金融工学を学び、アナリストの経験もある。ただ本書の中身はあまり言葉を要しない。金融業界で確実にAI(artificial intelligence)化が進むことについて強いメッセージを送っている。ここでは最初のトレーディングのところをみてゆく。とくに理由付けの分析のところは説得的(写真は増上寺山門より本堂、東京タワーを望む。2020年3月9日)。

2017年1月のゴールドマンサックスCFOの発言。2000年に600人いたトレーダーが現在はわずか2人になり、日々の作業は200人のITエンジニアが運用するロボットトレーダーに置き換わっている。つまりトレーダーの数は300分の1に。トレーデイングに関わる人員は3分の1に削減された。

AIの利用が加速する理由を5点あげている。
1)大量のデータを解析することで利益の上がる業務に向いている
2)高度の専門性が要求され、利益額の大きい業務。単純業務。いずれも人件費がかかるため。
3)人間では時間がかかる上に完璧にはこなせない業務に向いている
4)属人性を排除したい業務(均質化・情報の共有)に向いている
5)少子高齢化による人手不足への対応

AIの強み(リベリオンリサーチによる)は3点
1)圧倒的なリサーチ力 広範な地域の膨大な情報を24時間
2)メンタルが強い 感情に左右されない
3)低コスト

ヘッジファンドでAI活用が進んだ理由を5点
1)属人性に左右されない成功確率と高い再現性
2)すでにクオンツ運用があるが、大量のデータを瞬時に解析して判断することで、ファンドマネージャーの限界を乗り越える必要があり、実際にAIを活用するヘッジファンドが高いリターンを実現。
3)コストの削減
4)能力が高いトレーダーがやってること(高い情報収集能力と分析能力。売買のパターンをよく知っている。)はAIに置き換え可能。人間のトレーダーがすることを模倣させることが可能でそれをさせている。
5)HFT 極めて短い時間に自動的に株式の売買をする 一つ一つの取引は小額だが確実に利益を積み上げる・・・高い確率で利益を出せる(ここはAIが強い) 2012年でアメリカでは6割 日本でも3-4割 ここはロボットトレーダーの独壇場 反面性能競争になり確実に利益が出るとも言い難くなっている
 HFTに対する規制のあり方(芳賀良 2019/11)
    高頻度取引ー競争と規制(2019/05/08)
    高頻度取引とは何か(2019/04/13)   アルゴリズム取引≠HFT
   日本における高速度取引の現状(2017)
    高速取引規制(大和総研G 2017/06/22)
 取引の高速度化(金融庁事務局作成資料 2016/05/13)

以下 不正防止や接客など 様々な面でのAIの活用が議論されている

オンプレミス クラウドの反対に企業が自前でコンピュタールームやデータセンターなどを用意すること。構築コストは高いが、 設計の変更が容易であること、情報セキュリティを厳格にできることなどのメリットがあるとされる。


上田二郎『国税局査察部24時』講談社, 2017

2020-03-07 22:14:27 | Area Studies


大企業の脱税の話がないことでちょっと内容は期待はずれだ。しかしところどころにテクニック的な記述もあり、参考になった。著者は国税査察官であったらしい。なんでも強制調査と任意調査の2種類があるが、強制調査を担当するのが国税査察官、通称マルサ。税務署の資料調査課が行うのは任意調査でこれは課税が目的。両者は大きく異なるものだという。なるほど。

最初に述べられているのは使途秘匿金課税の問題。これには法人税、法人住民税のほか、秘匿金に制裁的な課税40%が行われるとのこと。そこで使われるテクニックが架空外注費だとのこと。たとえば下請けから、孫請けと数段間のクッションを踏ませて、その最後からキックバックされる。実際には、実際の工事代金を水増しして振り込むなど、手口は巧妙とのこと。

蓄積した裏金はタマリとよばれる

税務署からみた対象所得捕捉率 クロヨン サラリーマン9割 自営業者4割
トーゴーサンピン サラリーマン10割 自営業者5割 農林水産業者3割 政治家1割

2014年から税務調査は 原則として事前通知必要になる

脱税請負人のことをB勘屋という 倒産した会社から領収書を買い取り、経営者に売るなど

累積赤字の会社が他社の脱税のために利益を被るケースもある

取引に協力してくれる会社を見つけて、買掛金を増やす

かつては相続人が海外居住の場合、国外財産の相続税を回避できた。現在は被相続人が日本に居住しておれば、相続人が外国籍でも国外財産に課税できるように制度改正された。

かつては日本の非居住者が株を売却しても 租税条約上キャピタルゲインに課税されなかった 富裕層のなかにはキャピタルゲイン非課税国に逃げ出すものが多かった そこで出国時点で1億円以上の有価証券を所有している者には、有価証券の譲渡又は決済があったものとみなして課税する国外転出時課税制度が導入された。・・・しかし罰則があるといえど、課税されるのに正直に申告するひとがいるかどうか?

タックスヘイブン 富裕層は租税回避が目的であるのに、他国籍企業は利益追求が目的で本来 別々の問題 タックスヘイブンとは 税金が存在しないか 極めて低税率の国・地域

利益を移す方法は様々あるがシンガポールにペーパーカンパニーをつくり そこから資金を借りて利息を支払う方法など

脱税は7年遡って調査することができる 脱税をした瞬間に 7年間も税務署の影におびえて暮らさなければならない

(脱税は警察が捕まえに来ません。国税庁が検察に告発して、特捜部が捕まえに来ます。・・・これは脱税が国事犯罪で非常に重いものだという、国家の論理からきている・・・国家は税金なしには成り立たないからです 佐藤優 いま生きる「資本論」 新潮社 2014年 p.86)

#強制調査 #タマリ #クロヨン #トーゴーサンピン #タックスヘイブン
#架空外注費 #国事犯罪 




太田康弘『ビジネススクールで教える経営分析』日経BP社, 2018

2020-03-07 21:05:03 | Area Studies


タイトルがいい。ビジネススクールで教えられることは誰でも知りたいこと。読んでみると目の付け所がよい。記述もポイントが書かれている。

ジレット・モデル 最初の導入部分で安値販売し、顧客を囲い込んだうえで、その後の消耗品などの料金で料金を稼ぐビジネス・モデル。カミソリ替え刃モデルともいう。同じようなものに インク・ジェット・プリンタ。→ razor blade business model

1997年に純粋持ち株会社が解禁されたことで 個別財務諸表が意味を失い 連結財務諸表が適切になった。

デユー・デリジェンス M&A前の手続き とくに資産調査のこと

BSに対するPLの大きさは ビジネスのスピードを表している 総資産回転率=売上高/総資産   総資産回転期間=総資産/売上高  総資産回転日数=総資産回転期間×365

売上高 年商 月商

アセット・ライトな企業がある。小さなBS 大きなPL 商社や小売業 薄利多売のハイスピード経営

 受託販売 売れ残りのリスク(在庫リスク)は委託者にあって受託者にはないので、売り上げや売り上げ原価に計上せず、委託手数料を利益に計上することになっているが、実務上は売上計上するケースがある。・・・結果として売り上げが大きくなる。

インフラ系などBSが重い企業がある。電力 ガス 通信 鉄道 エアラインなど。

PLが極端にちいさい 不動産賃貸業 銀行など(BSの数%)

平均的な会社の売り上げ債権は年商の18.2%  売上債権回転期間は約67日 この数値を回収サイト、あるいは単にサイトという。

もともとの サイトの意味は手形を見てから支払いをするまでの猶予期間=ユーザンスのこと。したがってユーザンスのこともサイトという。

前払いされることもある。プリペイドカードの場合。授業料の場合など。マイナスで表記する。

CCC cash conversion cycleについて

CCC=回収サイト+棚卸資産回転期間ー支払サイト

前払いの問題を入れて太田さんはつぎのようにまとめている

CCC=(回収サイトー前受サイト)+棚卸資産回転期間ー(支払サイトー前払サイト)

ここからは定義の話だが有用。

期末純資産=期首純資産+包括利益ー配当 つまり 包括利益=期末純資産ー期首純資産+配当

また 包括利益=当期純利益+その他の包括利益

要するに包括利益は、資産の値上がり益などを 当期純利益には反映させずに期末純資産には反映する仕組みになっている。

次に資本概念の整理 この整理はありがたい 資本概念が複雑であることがわかる。

拠出資本=資本金+資本剰余金

株主資本=拠出資本+稼得資本 稼得資本=留保利益あるいは利益剰余金

自己資本=株主資本+その他の包括利益累計額

純資産=自己資本+非支配株主持ち分+新株予約権

総資産=純資産+他人資本または負債

伝統的なとらえ方は

総資本=自己資本+他人資本  総資産=総資本 

である。BSの右側と左側の議論としては

伝統的とらえ方(資金の調達と運用)が間違っているわけではない。

ROE=親会社株主利益/期首株主資本

ROA=利益/期首総資産

経常利益=営業利益+営業外収益―営業外費用

     営業外収益費用とは金融収益費用+持ち分法損益

ROA=(経常利益+利子費用)/期首総資産

経常利益+利子費用 はEBIT earnings before interest and taxesに近い

税金を考慮すると NOPAT net opearting profit after tax

EBIT×(1-法人税率)

財務レバレッジ レバレッジ効果 財務リスク

本当はBSの左側が重要 しかしそこが簡単でないので右側のレバレッジの議論がでてくる

ROE=ROA×財務レバレッジ

ROE=売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

これをデュポンモデルという。この展開をデュポン展開。企業の収益性は利幅とスピードと借金の力の掛け算できまる。

工場をもたないメーカーをファブレス・メーカーと呼ぶ

ファブレスでもキャッシュをため込んでいると、BSが大きくなる。ROEという観点からは収益が悪くなる。

倒産しなさそうな会社

流動比率

当座比率 酸性テスト比率ともいう 昔 酸性の液体を金であるかどうかや金の質の判別につかったことから

手元のお金がなくてもお金が入ってくるなら安心 → キャッシュフローに注目

インタレストカバレッジレシオICR

これについては様々な数値がある。

利子控除前の利益/利子費用

EBIT/利子費用

キャッシュフローインタレストカバレッジレシオ

営業CF/利子支払い額

EBITDAインタレストカバレッジレシオ

earnings before interest, taxes,depreciation and amorrtization

EBITDA/純利子費用

1を下回ると運転資本投資を控えても利払いに足らないレベル 

証券市場論(前期) 財務管理論(前期) 

#アセットライト経営 #ジレットモデル #CCC #包括利益    #株主資本 #自己資本 

   

 


安江英行・劉新宇「国際企業法務入門」2012

2020-03-07 10:52:37 | Area Studies

この本の正式タイトルは「事例でわかる国際企業法務入門 日米英中の各国法による実務」でやたらと長い。中央経済社から2012年刊行。以下では、中国法の部分はカットした。中国の法制はまだ変化すると思えること、英米と日本の比較で注意すべき論点は一応分かると思えるので。

契約のルールの違い
英米では契約義務は厳格に履行する責任があるが、日本では自らの責任に帰することのできない事象による不履行については免責を認めている。不履行の場合の違約金の規定は、日本では契約原則自由の原則から、有効な合意とされるが、英米では実際に生じた損害を賠償することが基本であり、制裁的penalty条項は無効とされる。日本は口頭で契約が成立する範囲が英米に比べて広い。どの国でも保証行為は書面契約が必要。正式の契約締結前に締結が相手側の事情でできなくなった場合、それを契約違反として損害賠償請求することはどの国でもできない。

債権譲渡(assignment)
英米でも日本でも譲渡可能である。(企業の場合であれば売掛債権など。金融機関の場合は貸付債権などに譲渡可能がある。従来はそれを買い取りをして終わったが、現在は期間が長い債権についてはそれを証券化商品に仕立てることも行われる。流動化することによって、資産の回転率が高まり資産効率は改善される。)
   アセットファイナンスについて(三菱UFJ銀行の説明)

契約における責任の違い
(売買契約 引き渡し時点がずれる場合の所有権及び危険負担)
米国では、引き渡し時点まで売り主側。日本と英国では、特定物は契約時点から買主側、不特定物は引き渡し時点まで売り主側にある。)
(瑕疵担保責任warranty )
契約取引後、判明した数量の不足、品質における隠れた瑕疵。このようなwarranty違反は米国でも厳しく問題にされる。英国では、conditionとwarrantyを明確に分け、契約解除まで至るのはconditionの方だとされる。

債権保全法制の違い
たとえば債権を担保にする場合、第三者(債務者 譲渡者 譲受人以外の第三者)対抗要件をどうするかが問題になる。日本では2005年に動産および質権を担保にする場合の登記制度が整備された。
破綻の場合の債権保全については、日本では、民事再生法(会社及び個人)または会社更生法(会社のみ)により債務を軽減して事業を継続する方法がある。米国のchapter 11を真似て民事再生法はつくられ、従来の経営者が残ることが可能になった。英国では、従来の経営者は再建では排除される。

独占禁止法における違法の違い
販売地域の協定:日本では当然違法ではなく、市場への影響により違法性を判断。米国や英国では当然違法。
販売価格の下限の指定(再販価格維持制度):日本では正当な理由がない限り違法。米国や英国では当然違法。
抱き合わせ販売:日本では不公正取引として制限。米国では売り主が巨大な場合、英国では市場支配の濫用となる場合、違法。
合併の場合の事前届け出義務。日本では売り上げ200億円超の企業が50億円超の企業を買収ないし合併する場合。米国では買収者が取得する資産等の総額が2億ドル超の場合。

ガバナンスの扱いの違い
取締役報酬 アメリカでは取締役会で決定できる(これには批判がある)
独立取締役 (アメリカでは重視されるが)社内情報を十分入手できるかに課題がある(業務執行側が情報提供を阻むケースが知られている)
英国や日本では取締役と業務執行の分離が明確でないことが多い。米国の場合は業務執行役員と、取締役会が分離されるが、CEOが取締役会議長を兼任し、CEOに権限が集中する傾向がある。

#制裁条項 #瑕疵担保責任 #再版価格維持制度 #民事再生法 #登記制度 #アセットファイナンス

ユーデル「アセットべーストファイナンス入門」2004

2020-03-06 16:05:59 | Area Studies

きんざい より高木新二郎 堀池篤訳で2013年に翻訳がでている。なぜか訳者まえがきにもあとがきにも、英文フルタイトルがでてこない。調べた限りでは以下の翻訳と思われる。Gregory F.Udell, Asset Based Finance, Commercial Finance Association,2004.

冒頭で伝統的な銀行融資(financial statement lending)は、財務諸表、財務比率に依拠した無担保の短期融資だとする。

これに対してABLは全体的なキャッシュフローの評価ではなく、売掛債権と在庫品である担保物の価値評価に焦点を移したものだとする。売掛債権の質が重要になる。清算によりどれだけ回収できるかに与信判断の大部分が依存している。
 
 アセットファイナンスについて(みずほの説明) 
 (三菱とみずほの説明では、アセットファイナンスを基本的には債権買取を軸に説明している。企業の側から考えると、アセットを小さくする経営につながること。また金融機関の側からみると、実は金融機関のバランスシートの拡大も防ぐ仕組みとなっていることがポイントであろう。)

担保をとる通常の中小企業向け融資は、与信判断の基礎を企業の力に置いているがABLでは担保物の価値においており、担保物のモニタリングにそのビジネスの本質があるとしている。

(以上の出だしは大変印象的である。)
(以下2つ抜きだす。一つは担保価値には様々なものがあるという指摘。この長いリストはなかなか勉強になる。)
さまざまな価値(リストが長いので一分をはしょって抜粋した)
 再調達価値 全く同じ新品を作るのに現時点でかかる原価 
 取替原価 評価資産とほぼ同等の効用を有する類似商品を現時点でつくるための原価
 公正市場価格 公平な状態にある買い手と売り手の間で合理的に予想される売買代金金額
 秩序だった清算orderly liquidationにより売却する場合の価格 買い手をみつける合理的な期間(通常は180日)が与えられる場合
 強制清算価格forced liquidation value 倒産後比較的早い特定の日におけるオークション(入札)価格
 引揚価格salvage value 設置場所を動かすとした場合の価格
   スクラップ価格 材料として売却された場合の価格
 帳簿価格 貸借対照表記載価格

評価の手法には収益法、原価法、市場法がある。収益法つまり将来のキャッシュフローを割引率を用いて調整した現在価値を算出する方法は以上にはそもそも含まれていない。この方法は、買い手をみつける十分な時間的余裕を前提にしており、売却価格が資産の正味現在価値を十分反映すると仮定している、またキャッシュフローが資産ごとに特定できることを前提にしている。これはABLでは非現実的である。
ABLにおける価値評価手法にあるのは、原価法と市場法である。再調達価格法、置き換え価格法は原価法の一つである。これらは、市場に比較可能なものがない場合は、意味がある。いくらでうれるかという市場法がそれ以外であるが、こちらがABLでは標準的かつ現実的な価値評価方法である。

(もう一つは担保をめぐる詐欺について、あるいは気を付けるべき点の指摘である。この指摘も興味深い。担保の問題に加えて、資産の流出の問題や、倒産手続きの悪用の指摘は大事のpointである。)
担保の管理は重要である。それには、さまざまな詐欺(架空の売掛債権、存在しない在庫、二重担保、売掛債権の減少が報告されない、受取債権回収金が引き渡されないこと)がそこでは起こりうることも背景としてある。
 出荷前の商品・サービスの計上(請求書発行pre-billing)⇒出荷証明をチェック
 回収不能債権を新しい債権に移し替えること⇒個別の明細書をチェック
 売掛先信用情報の秘匿⇒信用情報の請求
   出荷留保への請求書(担保の二重化)
 架空の売掛債権創出fraudulent receivables
    在庫品価値の水増し計上
 架空在庫品の記載計上(倉庫・輸送中など 空箱・カラのコンテナーなど)
 陳腐化したものを評価減しないこと
 資産の隠匿(関係者・身内への支払い 架空業者への支払いなどによる資産・資金の外部流出) 
 在庫品のバッタ売り(在庫を大量に安値で換金処分すること。債権者にとっての問題は、資産価値が減ること、そして倒産手続きに入るとその現金は当面、回収できなくなること)
 倒産申し立て悪用。

#担保価値 #モニタリング #再調達価値 #引揚価格 #詐欺 #アセットファイナンス



ブリュア「ソビエト連邦史 改定新版」1970

2020-03-05 17:13:30 | Area Studies

フランスで出版されているクセジュ文庫を白水社が、やはりクセジュ文庫として日本でも翻訳していた。手元にある邦訳は1971年の出版。内容はいわゆる公式見解で、たとえばスターリンに対する批判は明確でない。しかしそこから読み取れることも多い。(以下では下斗米信夫「ソビエト連邦史1917-1991」講談社2017の同時期の記述を対比的に記しておきます。下斗米さんは同書で古儀式派と呼ばれる、ロシア正教の異端の一派とボリシェビキとの関係に注目されて、ソビエトの起源には古儀式派のネットワークがあり、ボリシェビキ内にはキリスト教社会主義に近い流れがあると指摘している。またロシア革命が労働者革命だというのは神話に過ぎず、革命の担い手は元は農民である兵士だったとしている。)古儀式派はスタロヴェールとも呼ばれる。ロシア語はスタロオブリャージェストヴォ。

1917年11月革命に至る経緯。ブリュアの記述によれば、ボリシェビキは常に少数派なのだが、武力革命を起こし、反対派を排除して自分たちだけで、政権を作ってしまっている。そのうえで、自分たちに反対する人の自由を制限している。投票によって選出された制憲議会は、解散される。そうした経緯はブリュアの公式的記述からも読み取れる。
(このように独裁になった原因として、下斗米さんも、レーニンの前衛党の理論のエリート主義を問題にする。さらに、党の政治局が権力の中心になったのは、人民員会議が穏健派が多かったからだとする。結果として政治局を束ねる政治局書記に権限が集中した。)

また、食糧調達の必要から、戦時共産主義の名のもとに農産物の徴発が始まると農民の抵抗がはじまり1918年、唯一の連合勢力だった左翼エスエルは農民の立場からボリシェビキに武力で抵抗を試みる。これに対してボリシェビキはエスエルの逮捕大量処刑で応じ、ボリシェビキによる一党独裁化が完成したこと。つまり社会主義革命といいながら、実際にボリシェビキが打ち出した政策は、農村では食糧の徴発。都市の工場では、無償労働の要請に過ぎなかったことも分かる。

1921年3月21日。徴発制に変えて現物税が導入された。さらに国内商業の自由が復活された。いわゆる新経済政策の発動である。これには直前のクロンシュタットの水兵の反乱:ボリシェビキのいないソビエトの要求が、注目される。この反乱に示される事態の悪化により、レーニン達は資本主義に戻るネップと呼ばれる経済政策を決断している。
(下斗米さんはとくに軍馬の調達が農民の飢餓を生んだと指摘している。深刻な飢餓も広がり、激しい抵抗を生むことになった。しかしそれは地方的反乱に終わり、共産党に対抗する理念と組織に至らなかったとのこと。このときのレーニンは、党の危機だとして党内分派を禁止。下斗米さんは敵は第五列(内部に潜む敵)という考え方が指導部中枢にあったとする。)
(レーニンが発作で字が書けなくなるのは1922年5月末、亡くなるのは24年1月。下斗米さんは、レーニンには相対的多元主義を認める面はなかったとする。このとき農村経済政策の自由化を代表したのはブハーリン。ブハーリン、ルイコフ、ウグラノフら右派の市場維持派に対し、トロッキー、ジノビエフら左派は、ネップを資本主義への妥協として批判。これら左右両派を分派として批判の上、解任などの手段で政権から追い出したのがスターリン、モロトフら主流派である。解任の理由付けは分派であった。そしてクラーク:富農の絶滅、集団化の強制、大量粛清などの1930年代が始まるのである。)

農業集団化による農業生産力低下問題発生の構図は、中国で1950年代に繰り返されることになる。中国がロシアの経験を真剣に学ばず、第二次大戦後、農業集団化による大飢餓を招いたことは、大変残念としかいいようがない(福光)。

#ネップ #農業集団化 #レーニン #スターリン #ロシア革命 #独裁

土肥恒之「ロシア・ロマノフ王朝の大地」2007

2020-03-04 23:39:28 | Area Studies

講談社学術文庫版2016年による

ロシアの農奴解放令(1861)は、農民の封建領主からの人格的支配からの解放の半面、国家にたいして買い戻し金を分割で連帯責任で払い続けるというもので、村共同体に農民を改めて縛るものだった。

注目されるのはゼムストヴォと呼ばれる地方自治機関の設置。学校や医療を与える組織になったこと。また統計も作られた。

ロシアの高等教育が、学生の出身階層の点でたとえばドイツに比べて比較的民主的であったこと、また女子教育が盛んであったこと。

改革を進めたアレクサンドル2世は、暗殺されてしまう(1881年)。次の3世に対して暗殺未遂事件(1887年)を起こし処刑されたのは、レーニンの兄だった。

この暗殺事件が一連のポグロム(ユダヤ人襲撃)につながる。ポグロムに対し、帝政下の警察は動かず、それがユダヤ人を革命に駆り立てた面がある。トロッキー、マルトフ、ジノヴィエフ、カーメノフなど。

農民が都市に出稼ぎの習慣を早くから(18世紀後半)持っていたことも注目される。農奴解放後の人口増加。農民は地代を稼ぐ必要もあった。その中には、商業やサービス業で成功するものも現れた。

鉄道網の整備にともない、レールの生産などが大規模に行われるようになった。

なお日本訪問中のロシア皇太子ニコライを、警護の警官が切り付けて大けがをさせた不祥事がいわゆる大津事件(1890)。(今日からみると、これほど重要な人の身辺警護を、なぜ津田三蔵という低い身分の地方警官にさせていたのか、大津事件は発生したこと自体、理解不能だ。津田は精神的に不安定だった節もあり、皇太子を切りつける行為の重要性もわかっていなかったとされるがあまりにも愚かだ。また来訪している貴人の身辺警護に失敗し大けがを負わせたこの事件は、日本国政府として歴史的に恥ずべき一大失態に思える。)

1906年首相になったストルイピンは、共同体の解体など、土地改革を始めた。平穏な時期が続けば、土地改革が進んだ可能性(個人農業経営者の増加)はあるが、1911年にストルイピンは暗殺され、皇帝ニコライは皇帝自身による個人的統治に戻ってしまった。

デイアスポラ 様々な理由で民族が離散すること。

#農奴解放 #大津事件 #ディアスポラ #ポグロム  #ゼミストヴォ

天谷知子「金融機能と金融規制」金融財政事情研究会2012

2020-02-26 14:38:08 | Area Studies

はじめにで著者は述べている。「なるべく感覚的に理解できることを重視した」と。実はこれはすごく大事なこと。読んで、感覚的に理解できないことが多いというのは大問題だ。また「古典的すぎる」内容も入っていると断っている。これも大事だ。伝統的な議論が何かわからなければ、何が新しいかもわからないだろう。最近のことだけ覚えればよいというものではない。

まず最初の金融仲介機関の機能の説明において、信用リスクの負担のほか、期間のミスマッチ、そして金利のミスマッチを金融機関は負っていると説明する。p.4 たしかにこの後者の2つへの注目は大事。

つぎに金融規制の役割として、個別の金融機関の問題-預金者保護のほかに、金融システム全体の維持の問題があることに言及している。後者は波及するドミノ効果のことかもしれない。p.8-9

最初にナローバンクが、金融規制に置き替えられるかが議論され、(十分な資金が集まらない あるいは貸付機能を果たさない)金融仲介機能を果たすものとはいえないので、ナローバンクは規制の目的に合致しないとしている。p.12-13

金融規制の代名詞となってるCAMELは1979年に銀行評価制度として導入された。p.27-28
 資本の充実度 capital adequacy
 資産の質   asset management
 経営管理   management
 収益性  earnings
 流動性  liquidity
出るがこれに加えて1996年にSが追加され、各項目の評価にあたりリスク管理能力を重視する改定が行われた。
    市場感応度 sensitivity to market risk

なおこうした評価において問題にされるリスクはつぎのとおり:それぞれ損失として具体的明確に書かれている。p.31
 信用リスク 信用供与先に財務状況悪化により資産の価値が減少消失、損失をこうむるリスク
 市場リスク 市場のリスクファクターの変動により、資産・負債価値が変動し損失をこうむるリスク、資産・負債からうみだされる収益が変動し損失をこうむるリスク
 流動性リスク ミスマッチや思わぬ資金の流出により必要な資金確保が困難になる、あるいは通常より著しく高い金利で調達を余儀なくされ、取引ができないあるいは通常より著しく不利な価格での取引を読偽なくされることで損失をこうむるリスク 
 オペレーショナルリスク
 役職員による正確な事務を怠ったこと、あるいは事故・不正を起こすことにより損失をこうむるリスク。コンピュターシステムのダウンまたは誤作動、システムの不備、不正な使用などに伴い損失をこうむるリスク。その他、法務リスク、風評リスクなど。

自己査定における債権分類。相手先が破綻したとしても(破綻先債権)、優良担保で100%カバーされていれば、債権の区分としては回収の可能性が高い「正常債権」である。担保による回収見込み額(7割 3割 無担保)と、相手先の財務内容により、以下「回収に注意を要する債権」「回収に重大な懸念のある債権」「回収不能債権」に区分される。p.44
不良債権。破綻懸念先以下の債務者に対する債権にこれらに含まれていない3ケ月以上延滞債権と貸出条件緩和債権をくわえたもの。p.46

大口信用規制(自己資本の25%まで)。同一人(同一グループ)に対して。p.48 この計算は、資金の流れが相互にあるので、かなり面倒になっているが、この計算問題はここでは外して進む。

earningsのところで維持可能性、継続的に収益をあげられるビジネスモデルになっているかが問われている。p.57これは企業分析でも大事な視点。

liquidity とsolvency.手元資金が不足し支払い不能の状態に陥るのがliquidity。債務者である預金者に弁済できるだけの資産価値を失うのがsolvencyで、それは資本の問題の裏返しと説明している。pp.71-72

バーゼルⅠ(1996-日本では1998/03より実施)、バーゼルⅡ(2004-日本では2007/03実施)、バーゼルⅢ(2010  2013より段階実施予定)の内容が説明されている。pp.79-85  最低所要自己資本比率としての8%には変わりはないものの、
Tier1比率等が引き上げられ、これに資本保全バッファーの上乗せ規制がある。

pp.88-95(なおバーゼルⅡからバーゼルⅢへの議論において、自己資本の損失吸収バッファーとしての役割が議論され、普通株などTier1が重視されるようになった。内部留保の損失吸収機能、普通株式の増資・減資による損失吸収機能。金融機関の経営破綻回避、存続を考えた場合、この自己資本の役割が大きいということであろう。自己資本比率を維持するということは事業継続と裏腹。自己資本比率規制は、金融機関の存続を前提にした規制だといえよう。)

#CAMEL    #債権自己査定 #正常債権 #不良債権 #大口信用規制 #solvency   #バーゼル規制 #バッファー機能



松田千恵子「ファイナンスの理論と実務」きんざい2007年

2020-02-26 11:20:51 | Area Studies

研究室からたくさんのテキストブックを処分して本書はのこした。金融機関の立場からファイナンスを議論したもの。特徴があるうえに説明は洗練されていて、長い間に蒸留され澄み切ったものを感じる。現在でも企業金融のテキストとして大変すぐれたものの一つだと思う。

順にみてゆく。
融資の基本原則として、収益性、成長性、公共性、安全性、分散を上げている。ここでは公共性の指摘に注目したい。
つぎに信用リスクをクレジット・デフォルト・リスクと回収リスクにわけている。回収リスクは返済契約が破られたあと、どこまで損失を少なくできるかわからないリスクのこと。ここではリスクの分解と回収リスクへの着目に注意したい。p.14

金融における企業価値とは、その企業が、将来生成するであろうキャッシュフローの現在価値の総和である。p.25

企業全体・・・最低限のハードルレートとして・・・加重平均資本コスト(がある)p.29

事業リスク 将来安定的にキャッシュフローを生み出すか(容易に予測がつかないリスクのこと) p.39の内容をまとめた

1990年代に問題になったのは「過剰負債」・・・過剰負債、過剰設備、過剰人員を財務リストラの名のもと(日本)企業は削減してきた p.20

産業構造の変化を考えると(資金需要は減少するので)現在の状況は明らかにオーバーバンキング p.49

借金を返す方法として ①事業からの資金流入を増やす ②保有資産の売却 ③ 新たな資金調達 を上げている。注目されるのは、②と③への注目である。通常のテキストでは①だけに注目している。p.55, 60

信用リスク分析でストレスシナリオは必要 楽観シナリオは不要としている。基本シナリオは蓋然性の高い者。教室では学生によく楽観と悲観の幅で教示するのだが、リスクをみるわけだから、確かに楽観シナリオを議論するのは債権者側としてはお馬鹿さんだろう。pp.92,95

フリーキャッシュフローの定義
EBIT×(1-税率)+非現金項目ー設備投資額ー正味運転資金増分
FCCの使い先として
財務体質改善、株主還元、未来投資 を上げているp.107

企業価値について、永続的に継続する前提での価値を継続価値としている。p.126-127

インカム、コスト、マーケットという3つの企業価値評価法に比較(ここは標準的だがEVAやリアルオプションをインカムに組み込んでいる)p.130-131

負債と株主資本の違い。株主資本のリスクは株価リスクにあると指摘している(これもはっとした。株主のリスクを私は出資したお金が返済されないとおしえているのだが、松田は株価変動リスクと書いている。両者の企業に対するガバナンスの違いについて、松田が注目するのは企業の負債比率の違いで意味が違ってくること。非上場では負債比率が高いこともあり負債によるガバナンスが強く働く、負債によるガバナンスは、会社をつぶすことができること、経営者個人に対するものでなく会社全体に対する点でも特徴があるとしている。いずれも大変鋭い指摘ではっとさせられた)p.154-157

金融の形を企業金融(コーポレートファイナンス)と資産金融(アセットファイナンス)に分け、企業の信用力から資産の収益力に信用の源泉と違うこと 融資の形もリコースローン(遡及型融資)からノンリコースローン(非訴求型融資)となることが示される p.238-239 (この議論は私:福光も授業でやるのだが、アセットファイナンスとプロジェクトファイナンスを分けて、アセットファイナンスは既存の資産の流動化手法であり、プロジェクトファイナンスはこれからの事業についての流動化=資金調達方法であると説明している。この点で松田はアセットファイナンスとプロジェクトファイナンスを明確に区別していないように見える。)
    プロジェクトファイナンス(みずほ銀行の説明) 従来の企業金融とは異なり、プロジェクトごとの収益性、キャッシュフローが問題にされていること。ノンリコース方式が取られること。などに注意

#回収リスク #ハードルレート #過剰融資 #回収リスク #ストレスシナリオ #オーバーバンキング #アセットファイナンス #プロジェクトファイナンス

English at Work-for Writing

2020-02-25 20:18:58 | Area Studies

イ・ジュン「ビジネス英語ライティング表現1000」アルク 2011年刊より

案内チラシ leaflet
回収 recall
外注 outsource
画像 picture
課長 manager; section manager
係長 assistant manger; assistant; associate  
教育マニュアル training manual
休暇中 on vacation
期日 the due date
欠陥品 defects;defective products;defective goods
合意した unanimous
交渉 negotiation
交流 networking
採食主義者 vegan
譲歩 concession
出張 business trip
進捗 progress; how far are you with~; I'm about ~ done
請求書 invoice
代案 alternative
妥協 compromise
提携企業 partner company
転勤する be transferred to ~
取扱説明書 instruction manual
配送 delivery
配付資料 handout
パスワード PIN:personal identification number
パンフレット brochure
物流 logistics
返金 refund
見通し prospects
夕食会 banquet
Cc: Carbon Copy  受取人に開示する宛先以外の送り先。
Bcc: Blind Carbon Copy  受取人に開示しない宛先以外の送り先。
KISS: keep it short and simple

中国経済学史

2020-01-13 18:02:30 | Area Studies

中国経済思想摘記ProfilePDF ListWixsite
中国経済学史Ⅰ
新中国の社会主義とその経済学の歩み中国経済学史後編中国経済学史前編経済学三巨頭銭莊・票據・荘票股票・股票交易・上海股份公所輪船招商局・交易所法・上海衆業公所上海衆業公所・上海華商証券同業公会・交易所法・上海華商証券交易所抗戦前の銀行1927-1938;抗戦期間の銀行1937-1945;改革開放前の銀行1949-1978;改革開放後の銀行1978-2008;債券市場史1949-2010;社会民主党狩り1930-1931;AB団事件1932-1933;囲剿新民主主義構想1948-1949;天津講話1949;三反運動・五反運動1951-1952;新税制1952-1953;過渡期総路線1953;統購統銷1953/10-11;農業の社会主義改造1953/11;高崗・饒漱石事件1953-1954;小脚女人1955夏;反右派闘争の行き過ぎ1957;反右派から八大修改・総路線1957-1958;反冒進批判から大躍進へ1958;左派による反論1958;廬山会議1959;農業は大寨に学べ1964;工業は大慶に学べ1964;文革と無産階級専制理論1973/1993;共産党的民主化1980-;計画生育1982;計画と市場1982/09;社会主義現代化建設1982/09;改革開放期の経済論争1979-1983;社会主義商品経済論1984/11;株式制度の試行1980年代;社会主義初級段階論(1)1987;社会主義初級段階論(2)1987;姓社姓資論争マルクスの限界1993/04;社会主義市場経済1994;分税制1994-;中国人民銀行法・商業銀行法1995;顧准について1996/02;股改2005-2006;市場の限界2005/02;于光遠について2005/08;マルクス主義経済学の退潮2005/10;外資優遇措置撤廃2008;輸入代替圈錢権銭交易三角債資金外逃返程投資習近平的反腐敗運動2012-;七不講2013-;新常態2014-;新発展理念2015;孫冶方について2018/03;全面的小康社会-2020;小康2021

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