特に、今まで読んだことがないような小説。
先週か先々週、図書館の返却棚で見つけた本がこれ。⇒
時計を忘れて森へいこう 光原 百合 (著)
表紙を見ただけではジャンル不明。
少女小説(そういうジャンルがあるのかどうかは分からないけれど・・・)
おおた慶文さんの絵がかわいい・・・
萌・・・という訳ではないけれども、これは、見たことの無いジャンル、小説だと思い借りることにした。
時をかける少女風かも知れない・・・
ところが、なかなか純文学・・・?
とも違うけど、しっかりした小説だった。
ジャンルでいうと推理小説になるんだそうだ。
そうかなぁ・・・
物語は、高校生の転校生の少女によって語られる。
この子が主人公かというと、どうとも言いかねる。
彼女が好きになる自然観察指導員が、探偵役になるのだけど、
この人が主人公かというと、そうとも言えるし、それは違うようにも思う。
じゃ舞台になる自然観察の森、シークが主人公、
いやいや、しっかり人間ドラマなのである。
ちっとも、分からない・・・
ごもっとも、
読んでもらうのが一番いいと思う。
僕がいいと思うのは、この小説には悪人が出てこないということ。
悪人がいなくても、善人ばかりでも、事件は起きる。
いや、むしろ誰も悪くないのに、悲しい事件は起きるのだ。
事件を悪心の所為にするのは簡単だけど、そうすると、原因の半分を捨ててしまっているような気がする。
非常にもったいない話だ。
この小説は、舞台を自然観察施設に限定することによって、善人をセレクトしたようなところがあるのだと思う。
自然が好き、イコール善人とはいえないけれど、
ある程度、ボランティアが出来る人というのは、生きることに前向きだと僕は言えると思う。
(家内は絶対ボランティアしない人間だし・・・それは余計だけど・・・)
そういう人たちだけでも、やはり悲しい事件は起きる。
でも、人間、弱いから、自分に対しても嘘をついたり、
壁を作ってしまったり、人を責めてしまったりするのだ。
自然に対する考え方も、征服し、整備するというより、
どうすれば、自然を傷つけずに、自然と人間は共生できるだろうかという哲学が貫かれている。
それは、探偵(指導員)の深森護さんの姿勢なのだけれど、
彼の姿勢は実は、人間に対してもそうなんだ。
探偵というより、本当はカウンセラーといった方がいいに違いない。
認めたくない事実でも、認めてしまわなければ、心の事件から開放されることがない。
彼は、それを自然に対するのと同じように慎重に、
反応を見ながら、樹を育て、森を慈しむように、光を与え、水をかけてみるのである。その人自身が、自分の力で立ち上がるのをじっと暖かいまなざしで、待っている。決して裏切らない、弱くもない。信じて体を預けることが出来るだろうか。自然は裏切らない。
そういう物語だった。
興味が湧かれた方が、本を手にとってくれること
それが僕のここでの種蒔です。
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