今日の宿は「天城ハリスコートユースホステル」
表にはバイクばかり一列に並んでいた。
その列の最後尾に自転車を置いておく。

ちょっと浮いてる
部屋はうれしい和室。
すでに同室の2名が先にくつろいでいた。
丸刈りにちょびヒゲの体がやたらとでかいオジサンと人のよさそうなオジサン。
2人とも気さくな人で、すぐに仲良くなってしまった。
丸刈りヒゲのオジサンはバイクで伊豆をツーリングしている人。
体格がいいのは元キックボクサーということらしく、うなずける。
しかし国家公務員だというのは驚いた。
官僚ですよ。役人ですよ。キャリアですよ。
僕の持ってる役人のイメージが崩れたなあ。
ものすごい体育会系な役人だ。
だって明らかにこの人キレさせたら殺(ヤ)られるもん。
そんな丸刈りヒゲのオジサンは嫁さんと3歳の娘を放り出して、一人気ままにツーリングだそうな。
だけど仕事は持ち込んでいて、パソコンを何やら打っていた。
もう片方の人のよさそうなおじさんは、日本中を車で回って郵便局巡りの旅をしている人だった。
郵便局巡りとはご存知だろうか。
Wikipediaによると…
郵便局巡り(ゆうびんきょくめぐり)とは、日本郵政公社が経営する郵便局、及び同公社が個人または法人に委託する簡易郵便局(以下「郵便局」)を全国各地において巡回し、訪問した証拠として日付印や郵便貯金通帳の印字等をコレクションする趣味である。略称として「局巡り」「巡局」「局めぐ」「局メグ」。
そのオジサンは各郵便局で消印を集めているそうなのだが、中には記念印、風景印という各地特有のスタンプがあって、それに集め甲斐を感じているようだ。
なかなか面白そうな旅のテーマであるが、いかんせん約2万5千局を巡るというのには、途方もない時間がかかりそうな気がする。
だが、そのオジサンはすでに3分の2はまわったと話していた。
やはり離島の郵便局が難所だという。
確かに、小笠原の郵便局に行って帰ってくるには1週間かかりそうだ。
社会人の身分で、しかも家族がいながら達成するのはやはり大変な気がする。
というか、嫁さんは今おなかに7ヶ月になる赤ちゃんがいるというのだ!
嫁さん放り出してGW丸々一人旅なのだという。
さすがにそれは人としてどうなのかと、丸刈りヒゲが始終いじっていた。
さて、僕は風呂に入ることにした。
さすがに大汗かいてるし、風呂に入らんと気持ち悪い。
この宿の風呂は温泉を引いているそうで、期待感を膨らませ浴室へ。
残念だった…。
まずシャワー。
冷水か熱湯しかでません!
微妙な温度調節を一切受け付けないという柔軟性に欠けたシャワーなのだ。
まさに0か1か。
ものすごいデジタルなシャワーです!
はっきり言ってシャワーはないと思え!
そして浴槽。
詰めて入って3人ぎりぎりというキャパシティである。
体育座りではとてもゆっくりできませんね。
しかも、早くあがらないと次に入る人を待たせてしまう。
せっかくの温泉なのになんとももったいない。
空いている時間を狙うべきでした。
ちなみに宿は風呂場の拡張予定しているらしい。
拡張後に期待したい。
晩飯にはカニが出た。カニが。

カニ現る
あと竹の子ごはんがおいしかった。
食事中に1人のバイクの兄さんと仲良くなる。
明日の宿を決めてないというので、僕が明日泊まる土肥の「ユースホステル高砂屋旅館」を紹介した。
夕食後、その兄さんを含めた部屋の4人で明日の予定などを話していた。
全員西伊豆へ行くので、その見所を模索していたのだ。
僕は地図に載っている安い温泉を巡ることを考えていて、その温泉の場所を見せた。
「おお、この無料で入れる露天風呂な。混浴みたいだよ。俺も行こうと思ってた」
「そこ、私もチェックしてたんですよ」
「じゃあ、明日はみんなで混浴温泉巡りだな!」
急遽、混浴温泉同好会発足となった。
巡る温泉として松崎を中心とした4箇所の温泉を発見した。
一同「完璧だ!!!」
その夜はテレビで総合格闘技をやっていた。
丸刈りヒゲのオジサンはさすが元格闘家だけあって、解説が非常に分かりやすい。
「ボディーを打つのはいい作戦だな。あれはダメージが蓄積するんだ。翌日は血のションベンだぜ」
「回転蹴りってのはな、足を踏み込む時に読まれちゃうんだ。だけど左ジャブで相手の注意をそらしながら踏み込んだから、今のはうまく入ったんだ」
「曙が相手をコーナーに詰めるのはいい作戦だな。あの200キロでのしかかられるだけで相当体力消耗するぜ。まあ、曙の方だってその200キロを支えるのは大変だけどな。ローキック連発で膝を狙えば、曙が勝手に倒れるさ」
試合はオジサンの言うとおりにことが運んだ。
選手がほぼマウントポジションを取ってるのを見て。
「もうあの状態になったら作業だな。ただ殴ればいい」
マウントポジションがきっかけで、そのオジサンはちょっとした体験談を始めた。
「俺はな、ツーリングでこういう宿をとったの初めてなんだよ。
それまではずっとキャンプでテントはって寝泊りしてたんだ。
それが、この前ちょいとした事件があってな。
ある夜テントで寝ている時、ふと悪寒がして目が覚めたんだ。
それで起きてちょっとテントを出た瞬間だよ。
トラックがバックでテントに突っ込んで、ドカーンって全部持ってかれた!
あのまま寝てたら間違いなく死んでたね。
もう俺頭きて、トラックの運転手引きずり降ろして、マウントよ。
ガンガン殴ってやった!
そうそう、簡単にマウントって取れるんだよ。
ちょっとしたコツがあって…」
僕が実験台でマウントを取る実演をしてもらった。
とりあえず相手を転がしたら、何とかして相手の足の間に腕を挟みこむ。
そうすれば、後は腕をぐっとひきつけるだけで簡単に相手の足を開くことができるという。
足を閉じる力よりも腕をひきつける力のほうが絶対に勝るからだって。
マウントさえとってしまえば後は作業なのだ。
そんな感じで非常に濃ゆい夜は更けていく。
消灯後なんとなく嫌な予感はしていたのだが、それは的中した。
両側のオジサンものすごいイビキで、なかなか寝付けなかったのである。
表にはバイクばかり一列に並んでいた。
その列の最後尾に自転車を置いておく。

ちょっと浮いてる
部屋はうれしい和室。
すでに同室の2名が先にくつろいでいた。
丸刈りにちょびヒゲの体がやたらとでかいオジサンと人のよさそうなオジサン。
2人とも気さくな人で、すぐに仲良くなってしまった。
丸刈りヒゲのオジサンはバイクで伊豆をツーリングしている人。
体格がいいのは元キックボクサーということらしく、うなずける。
しかし国家公務員だというのは驚いた。
官僚ですよ。役人ですよ。キャリアですよ。
僕の持ってる役人のイメージが崩れたなあ。
ものすごい体育会系な役人だ。
だって明らかにこの人キレさせたら殺(ヤ)られるもん。
そんな丸刈りヒゲのオジサンは嫁さんと3歳の娘を放り出して、一人気ままにツーリングだそうな。
だけど仕事は持ち込んでいて、パソコンを何やら打っていた。
もう片方の人のよさそうなおじさんは、日本中を車で回って郵便局巡りの旅をしている人だった。
郵便局巡りとはご存知だろうか。
Wikipediaによると…
郵便局巡り(ゆうびんきょくめぐり)とは、日本郵政公社が経営する郵便局、及び同公社が個人または法人に委託する簡易郵便局(以下「郵便局」)を全国各地において巡回し、訪問した証拠として日付印や郵便貯金通帳の印字等をコレクションする趣味である。略称として「局巡り」「巡局」「局めぐ」「局メグ」。
そのオジサンは各郵便局で消印を集めているそうなのだが、中には記念印、風景印という各地特有のスタンプがあって、それに集め甲斐を感じているようだ。
なかなか面白そうな旅のテーマであるが、いかんせん約2万5千局を巡るというのには、途方もない時間がかかりそうな気がする。
だが、そのオジサンはすでに3分の2はまわったと話していた。
やはり離島の郵便局が難所だという。
確かに、小笠原の郵便局に行って帰ってくるには1週間かかりそうだ。
社会人の身分で、しかも家族がいながら達成するのはやはり大変な気がする。
というか、嫁さんは今おなかに7ヶ月になる赤ちゃんがいるというのだ!
嫁さん放り出してGW丸々一人旅なのだという。
さすがにそれは人としてどうなのかと、丸刈りヒゲが始終いじっていた。
さて、僕は風呂に入ることにした。
さすがに大汗かいてるし、風呂に入らんと気持ち悪い。
この宿の風呂は温泉を引いているそうで、期待感を膨らませ浴室へ。
残念だった…。
まずシャワー。
冷水か熱湯しかでません!
微妙な温度調節を一切受け付けないという柔軟性に欠けたシャワーなのだ。
まさに0か1か。
ものすごいデジタルなシャワーです!
はっきり言ってシャワーはないと思え!
そして浴槽。
詰めて入って3人ぎりぎりというキャパシティである。
体育座りではとてもゆっくりできませんね。
しかも、早くあがらないと次に入る人を待たせてしまう。
せっかくの温泉なのになんとももったいない。
空いている時間を狙うべきでした。
ちなみに宿は風呂場の拡張予定しているらしい。
拡張後に期待したい。
晩飯にはカニが出た。カニが。

カニ現る
あと竹の子ごはんがおいしかった。
食事中に1人のバイクの兄さんと仲良くなる。
明日の宿を決めてないというので、僕が明日泊まる土肥の「ユースホステル高砂屋旅館」を紹介した。
夕食後、その兄さんを含めた部屋の4人で明日の予定などを話していた。
全員西伊豆へ行くので、その見所を模索していたのだ。
僕は地図に載っている安い温泉を巡ることを考えていて、その温泉の場所を見せた。
「おお、この無料で入れる露天風呂な。混浴みたいだよ。俺も行こうと思ってた」
「そこ、私もチェックしてたんですよ」
「じゃあ、明日はみんなで混浴温泉巡りだな!」
急遽、混浴温泉同好会発足となった。
巡る温泉として松崎を中心とした4箇所の温泉を発見した。
一同「完璧だ!!!」
その夜はテレビで総合格闘技をやっていた。
丸刈りヒゲのオジサンはさすが元格闘家だけあって、解説が非常に分かりやすい。
「ボディーを打つのはいい作戦だな。あれはダメージが蓄積するんだ。翌日は血のションベンだぜ」
「回転蹴りってのはな、足を踏み込む時に読まれちゃうんだ。だけど左ジャブで相手の注意をそらしながら踏み込んだから、今のはうまく入ったんだ」
「曙が相手をコーナーに詰めるのはいい作戦だな。あの200キロでのしかかられるだけで相当体力消耗するぜ。まあ、曙の方だってその200キロを支えるのは大変だけどな。ローキック連発で膝を狙えば、曙が勝手に倒れるさ」
試合はオジサンの言うとおりにことが運んだ。
選手がほぼマウントポジションを取ってるのを見て。
「もうあの状態になったら作業だな。ただ殴ればいい」
マウントポジションがきっかけで、そのオジサンはちょっとした体験談を始めた。
「俺はな、ツーリングでこういう宿をとったの初めてなんだよ。
それまではずっとキャンプでテントはって寝泊りしてたんだ。
それが、この前ちょいとした事件があってな。
ある夜テントで寝ている時、ふと悪寒がして目が覚めたんだ。
それで起きてちょっとテントを出た瞬間だよ。
トラックがバックでテントに突っ込んで、ドカーンって全部持ってかれた!
あのまま寝てたら間違いなく死んでたね。
もう俺頭きて、トラックの運転手引きずり降ろして、マウントよ。
ガンガン殴ってやった!
そうそう、簡単にマウントって取れるんだよ。
ちょっとしたコツがあって…」
僕が実験台でマウントを取る実演をしてもらった。
とりあえず相手を転がしたら、何とかして相手の足の間に腕を挟みこむ。
そうすれば、後は腕をぐっとひきつけるだけで簡単に相手の足を開くことができるという。
足を閉じる力よりも腕をひきつける力のほうが絶対に勝るからだって。
マウントさえとってしまえば後は作業なのだ。
そんな感じで非常に濃ゆい夜は更けていく。
消灯後なんとなく嫌な予感はしていたのだが、それは的中した。
両側のオジサンものすごいイビキで、なかなか寝付けなかったのである。