二人ではなく、数人で賑わっていたフタリシズカ。花弁も萼片もない花ながら、どこかかわいらしさがある。謡曲「二人静」によるという命名で得をしている花だろう。ヒトリシズカもまた花弁も萼片もない不思議な花だが。俳句でも好まれている季題のようだ。「二人静娶らず逝きし墓の辺に 吉野義子」。「二人静いつまで母と暮せるか 白川京子」は少しベタか。
(2020-05 川崎市 公園)
フタリシズカ(二人静、学名:Chloranthus serratus)は、センリョウ科の多年草。
特徴
沖縄を除く日本全国の山林の比較的暗い場所に分布する。高さは30~60cm。花期は4~6月。茎の先に数本(2本の場合が多い)の穂状花序を出し、小さな白い花をつける。花には花弁も萼もなく、3個の雄しべが丸く子房を抱いている。花序は立っているが、果実ができると下に曲がる。夏頃(果実の成熟期)に閉鎖花をつける。
和名は、2本の花序を、能楽「二人静」の静御前とその亡霊の舞姿にたとえたもの。ヒトリシズカと対を成す。ただし、花序は二とは限らず、3-4つく例もある。
二人静いつまで母と暮せるか 白川京子
二人静いやがうへにも雨ぐもり 木津柳芽
二人静しづかにかげをまとひけり 角川春樹
二人静しづかに髪を愛されて 北川瑩子
二人静に跼みて高野詣でなる 村越化石
二人静ひとり静よりさびし 角川照子
二人静をんなの髪膚ゆるみくる 河野多希女
二人静墓所に寄るのもえにしかな 田中螺石
二人静娶らず逝きし墓の辺に 吉野義子
二人静家系図はただ「女」にて 松田ひろむ
二人静木洩日と囁き合ふは 渡邊千枝子
二人静片方の花穂吹きゐたり 中澤 春
前の世の罪許されて二人静 檜 紀代
夫の忌や二人静は摘までおく 丸山綱女
幽かなる穂花は二人静なる 加藤三七子
愁ふ妻二人静にものを言ふ 高橋克郎
瑠璃の巣や二人静の咲くほとり 山谷 春潮
群れ咲いて二人静と云ふは嘘 高木晴子
花白き二人静が夜明け待つ 小澤満佐子
雨の粒光れり二人静にも 加田とし女
静かなる二人静を見て一人 京極高忠