昨日のことになるが、参議院の憲法審査会で赤池 誠章(Masa-aki AKAIKE)氏が、「現在の日本国憲法は憲法違反」云々なんて発言を行ってたらしい。
・「憲法自体が“憲法違反の存在”」自民党副幹事長・赤池 誠章議員による憲法審査会冒頭発言書き起こし(2014年3月1日 blogos.com)
最初は何のこっちゃと思っていたが、実際の発言は本当にどうしようもない代物だった。
以下、2014年3月1日分 blogos.com『自民党副幹事長・赤池 誠章議員に~』から、赤池氏の発言部分の前半を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
私は自由民主党の赤池 誠章です。
自民党は昭和30年、1955年立党以来、自主憲法制定が党是であります。
当時の「党の使命」には、以下のように書かれております。
「国内の現状を見るに、祖国愛と自主独立の精神は失われ、政治は昏迷を続け、経済は自立になお遠く、民生は不安の域を脱せず、独立体制は未だ十分整わず、加えて独裁を目ざす階級闘争は益々熾烈となりつつある。 思うに、ここに至った一半の原因は、敗戦の初期の占領政策の過誤にある。占領下強調された民主主義、自由主義は新しい日本の指導理念として尊重し擁護すべきであるが、初期の占領政策の方向が、主としてわが国の弱体化に置かれていたため、(中略)現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備を強力に実行し、もって、国民の負託に応えんとするものである。」
(以下略)
---- 引用以上 ----
この「党の使命」の中には、LDP結成時において日本で広まっていた反共主義を反映する文言が盛り込まれていた。
ちうわけで、「党の使命」から blogos.com の記事で(中略)になっている部分の一部を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
憲法を始め教育制度その他の諸制度の改革に当り、不当に国家観念と愛国心を抑圧し、また国権を過度に分裂弱化させたものが少なくない。
この間隙が新たなる国際情勢の変化と相まち、共産主義及び階級社会主義勢力の乗ずるところとなり、その急激な台頭を許すに至ったのである。
(中略)
わが党は、自由、人権、民主主義、議会政治の擁護を根本の理念とし、独裁を企図する共産主義勢力、階級社会主義勢力と徹底的に闘うとともに、秩序と伝統の中につねに進歩を求め、反省を怠らず、公明なる責任政治を確立し、内には国家の興隆と国民の福祉を増進し、外にはアジアの繁栄と世界の平和に貢献し、もって国民の信頼を繋ぎ得る道義的な国民政党たることを信念とする。
而して、現下政治の通弊たる陳情や集団圧力に迎合する政治、官僚の政治支配、政治倫理の低下の傾向等を果敢に是正し、国家と国民全体の利益のために、庶政を一新する革新的な実行力ある政党たることを念願するものである。
わが党は右の理念と立場に立って、国民大衆と相携え、第一、国民道義の確立と教育の改革 第二、政官界の刷新 第三、経済自立の達成 第四、福祉社会の建設 第五、平和外交の積極的展開 第六、現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備を強力に実行し、もって、国民の負託に応えんとするものである。
(以下略)
---- 引用以上 ----
共産主義、か。
随分と時代錯誤な見解としか言いようがない。
しかし、赤池氏のその後の発言を踏まえると、この「党の使命」を持ち出した理由はなんとなく理解できる。
もっとも、赤池氏の発言自体にそれが些細な事に思えてしまう問題点が含まれていたわけだが・・・。
ちうわけで、2014年3月1日分 blogos.com『自民党副幹事長・赤池 誠章議員に~』から、赤池氏の発言部分の後半を(略)。
国会議員ってなんだろうね(棒)。
---- 以下引用 ----
(中略)
自民党が立党して、今年で59年になります。来年は戦後70年、自民党立党60年を迎えるわけであります。改めて、自主憲法実現に向けて、その意義、理由は以下3点あると考えております。
第1は、現行憲法には制定過程に問題があり、法律としての大前提である正当性がないと感じております。
ご承知の通り、マッカーサーが率いる占領軍GHQから占領中に、言論統制された中で押し付けられたものです。
現行憲法は日本国民の自由意志で、公正で民主的な手続きで起草されたものではありません。
これは占領軍が占領地の法律を尊重しなければいけない国際法違反でもあり、何よりも現行憲法が自らの前文にある「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」に反しています。
憲法自体が“憲法違反の存在”というものであります。
正当に選挙もされていない占領軍の最高司令官マッカーサーの指示によって、短期間で英語で素案がつくられ、日本国民に知らされないまま、日本国政府に渡され、政府はそれを翻訳して憲法草案が作られ、衆議院、貴族院と議論されて成立したものであります。
その成立過程を知る以上、国民代表である私たち国会議員が、それを是とすることはありえないと私は考えております。
これを現行のまま放置することは恥であり、後世から叱責を受けかねないと感じております。
第2は、制定過程、その後主権が回復して国民に十分承認されているという反論がある中で、私は、憲法の内容自体にも問題があると感じております。
現行の憲法の基礎になっている考え方は三つあるといわれています。
第一は制定過程で分かるように、日本人には自分の国を守る力をもたさず、二度と立ち上がらせないようにするという占領政策。
米国の属国化、保護国化という考え方があります。
それが戦争放棄の憲法9条となっております。
その条項が、激動する国際情勢の現在、国家安全保障の足かせとなっております。
第二は、人工国家、米国流の社会契約説であります。
敗戦後の日本国民が契約によって、新しい国家をつくったフィクションに基づいています。
だから、日本の歴史や伝統文化はまったく反映されておりません。
第三は、旧ソ連の1936年スターリン憲法に影響されており、共産主義が紛れ込んでおります。
第24条の家族生活における個人の尊重や、両性の平等、27条の勤労の権利および義務などは、その条項にあたるといわれております。
社会主義者や共産主義者が護憲になる理由がここにあるわけです。
第3の自主憲法制定理由は、国民の意識、民意であります。自民党は一昨年、第2次憲法草案全文を発表して、12月に総選挙を戦い、勝利して政権を奪還しました。さらに、昨年夏の参議院通常選挙において、第一党となりました。
自主憲法制定は国民の民意となりつつあります。
これは国内外の激動する情勢が国民意識を変化させてきたからだと思っております。
国際社会における米国の相対的地位の低下、北朝鮮の日本人拉致事件、チャイナの尖閣諸島への侵略行為、ロシアの北方領土や韓国の竹島への不法占拠の強化。国内においては東日本大震災もありました。
日本国民は、現行憲法では自分自身や自分の家族、地域や国家を守ることができないのではないか、と気付いています。
以上、現行憲法の「正当性のない制定過程」「日本の歴史から断絶した憲法内容」「民意」の3点から自主憲法制定は、今まさに国政の重要課題となっております。
今後は、憲法改正国民投票のいわゆる18歳投票年齢など、3つの宿題を解決させ、全国各地で国民の声を聞く、国民運動を展開しつつ、立憲主義に基づき、改正原案をさらにつめ、来るべく国政選挙において、2/3以上の国会議員を結集させるべく、私自身もその一助になればと考えております。
世界有数の歴史と伝統を誇るわが祖国を守り、発展させ、子孫につないでいくために、立憲主義に基づいた自主憲法制定の決意の表明とさせていただきました。
---- 引用以上 ----
上の赤池氏の発言におけるスターリン憲法や共産主義云々ってのは、LDPの「党の使命」を持ち出したのを踏まえれば(コミンテルン陰謀論の範疇でしかないという点も含めて)別段驚くものでもない。
つか、今時コミンテルン陰謀論なんてシラフで信じる人がどれだけいるのやら・・・。
それより問題なのは、「憲法自体が憲法違反の存在」という発言だ。
そもそも、現在の日本国憲法が議論される時点で、日本では大日本帝国憲法が憲法として存在していた。
つまるところ、大日本帝国憲法の下で(正確には大日本帝国憲法の改正という形で)現在の日本国憲法の制定を行ったというね。
・大日本帝国憲法(ndl.go.jp)
参考までに、ndl.go.jp『大日本帝国憲法』から第73条を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
第7章 補則
第73条
将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
2 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス
(以下略)
---- 引用以上 ----
という大日本帝国憲法の条文に則って、改正手続きを行ったわけだ。
その意味では、手続き面については違憲とは言い切れないと思われる。
(この辺りの手続きの正当性については、「8月革命説」を巡る論争があるけど面倒なんでパス)
しかし、赤池氏の発言に従えば、どんなに遅くても現在の日本国憲法が施行された時点(1947年5月3日)で日本国憲法が施行された状態、あるいは現在の日本国憲法を過去に遡って適用しなければならない。
憲法制定前から存在する現在の憲法、現在でなく過去のために存在する憲法・・・。
とんでもない矛盾である。
ほかに することは ないのですか?