今回は、かなり久しぶりの八ッ場ダムネタ(汗)
先月10月6日~今月4日にかけて国土交通省が募集していたパブリックコメントについて、妙な事態になっていた模様・・・。
・八ッ場ダム:意見公募なのに96%が同一文書に署名だけ(2011年11月26日 毎日jp)
色んな意味でリアクションに困るこの話。
さしあたっては、2011年11月26日分 毎日jp『意見公募なのに~』を全文(略
---- 以下引用 ----
◇推進派が世論誘導か
建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)を巡り、国土交通省関東地方整備局が集めたパブリックコメント(意見公募)で、寄せられた意見の約96%が同一文書に署名だけ手書きしたものだったことが分かった。
「八ッ場ダムは必要不可欠」などと印刷され、ダム推進派が組織的に署名を呼びかけた可能性が高い。
ダム反対派は「世論誘導の狙いがあるのではないか」と反発。
専門家は「パブリックコメントの趣旨から逸脱した行為」と批判している。
同整備局が25日にまとめた「パブリックコメントの結果」によると、寄せられた5963件のうち5739件は全く同じ内容だった。
「八ッ場ダムは利根川水系における治水、利水の安全度を高める対策として、もっとも現実的、かつ確実に効果を見込める事業」「速やかにダム本体工事に着手し、計画通りに事業を完成すべきだ」などと推進を求める意見がパソコン文字で印刷されており、署名だけが異なっていた。
パブコメは10月6日~11月4日に全国から募集。
集まった5963件のうち埼玉県在住者の意見が5738件に上っており、同一文書の大半は同県在住者が寄せたとみられる。
同整備局は「パブコメは多数決ではないので、特に問題はない」と説明しているが、八ッ場ダム建設に反対する市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は「世論誘導のため組織的に署名を集めたと思われる。非常に問題だ」と話している。
【奥山 はるな】
---- 引用以上 ----
このパブリックコメントの結果について、国土交通省関東地方整備局がコメント+内容の紹介をしていた。
・八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討
パブリックコメントの結果(2011年11月?日 ktr.mlit.go.jp)
参考までに、ktr.mlit.go.jp『八ッ場ダム建設事業~』から署名付きパブリックコメントの意見を(略
---- 以下引用 ----
・本検証によって、八ッ場ダムは利根川水系における治水、利水の安全度を高める対策として、最も現実的、かつ確実な効果を見込める事業であることがあきらかになった。
このような結果が示された以上他の選択肢はない。
速やかにダム本体工事に着手し、計画通りに事業を完成すべきである。
[意見該当箇所:4-229頁、5行目]
・埼玉県の水需給状況は、八ッ場ダムを始めとする暫定水利権が占める割合が大きい。
この暫定水利権を解消しなければ、渇水に対する利水安全度が高まらないことは本資料から明らかである。
速やかに八ッ場ダムを完成させ、利根川の流況を改善し、暫定水利権を解消することは国の責務である。
[意見該当箇所:4-97頁]
・利根川流域での過去最大の洪水はカスリーン台風であり、洪水流量は 21,100立方m/s であるが、今検証の整備目標は今度20から30年間で整備可能な 17,000立方m としている。
利根川の流域住民は。
今後30年で整備可能な整備として、完成を目前に控える八ッ場ダム建設は必要不可欠な施設であり、首都圏の治水を担う国は、当然建設を続行すべきである。
[意見該当箇所:4-9頁]
---- 引用以上 ----
見事なまでに、八ッ場ダム建設推進派の意見を反映したパブリックコメントである(棒)
で、問題の署名付きパブリックコメントは、国交省が公開してるパブリックコメントの No.215~No.5963 までとなっている。
参考までに、.pdfファイルで公開されてるパブリックコメントのNo. の範囲を(略
・パブリックコメント01:No.0001~0124
・パブリックコメント02:No.0125~0214
・パブリックコメント03:No.0215~0787
・パブリックコメント04:No.0788~1257
・パブリックコメント05:No.1258~1757
・パブリックコメント06:No.1758~2257
・パブリックコメント07:No.2258~2757
・パブリックコメント08:No.2758~3257
・パブリックコメント09:No.3258~3757
・パブリックコメント10:No.3758~4257
・パブリックコメント11:No.4258~4757
・パブリックコメント12:No.4758~5257
・パブリックコメント13:No.5258~5757
・パブリックコメント14:No.5768~5963
署名付きパブリックコメントの多さに圧倒されるばかりである。
裏を返せば、八ッ場ダムに関する世間の関心の低さを示した結果とも言えるが・・・。
で、話を 2011年11月4日に行われた「学識経験を有する者の意見聴取の場」に移す。
実は、この有識者会議の議事録では、パブリックコメントの「数」について直接言及はしてないんだよな。
もっとも、問題の署名付きパブリックコメントの意見は「『八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)』に対するパブリックコメントについて 平成23年11月3日現在」という資料にまとめられて委員に伝えられたのだが。
この辺は以下参照(手抜き)
・事務局だより(2011年11月22日 八ッ場あしたの会)
・『八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)』に対するパブリックコメントについて 平成23年11月3日現在(2011年11月4日? ktr.mlit.go.jp;.pdfファイル)
この後、事業評価監視委員会では件のパブリックコメントについてもネタにするらしい。
毎日jp の記事では、「パブコメは多数決ではないので、特に問題はない」という国交省のコメントが紹介されてるが・・・。
事業評価監視委員会において、署名付きパブリックコメントが何らかの影響を及ぼさないとは限らないかと。
とりわけ、委員会の方々が、署名付きパブリックコメントの「数」を根拠にして(八ッ場ダム関連の事業)評価を行う可能性すらあるわけで。
その意味では、今回の署名付きパブリックコメントは案外軽視できない話なんだろうな。
つか、どこの誰が、「八ッ場ダムに関する(賛同意見の)パブリックコメントに名前を寄せてくれ」言い出したのやら(苦笑)
心当たりのある人は、八ッ場あしたの会にご一報を・・・(宣伝)
なお。
今月4日の有識者会議の最後のほうで、座長である宮村 忠氏が意味深なコメントを・・・。
以下、2011年11月22日分八ッ場あしたの会『事務局だより』より、宮村氏の発言(議事録P.30)+八ッ場あしたの会の見解を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
また、「討議」の最後では、次のように述べています。
「もっと早くからというお話がありましたけれども、これについてはさんざん議論されてきて、大変申しわけないですが私もコメントだけしますと、先ほど地元の人たちの話が清水さんから出ましたけれども、これからやるときに地元がどう苦労するかというより、今までさんざん苦労して、ふと全然地元とは関係なくとまって、さあ客観的に検証しろと言われても、地元の人は非常につらいと思います。苦労してきた地元に対して思うと、もうほじくり返すような議論はいい加減にしてくれというのが私の個人的な意見で、そんなことを含めて、今日いただいた意見をこの委員会の意見として予定どおり報告書として、しかもそれは委員名を書くんですか。どうするんですか。」(議事録30ページ)
座長が「議論はいい加減にしてくれ」というのでは、議論が成り立ちません。
これまで地元民に犠牲を強いてきた八ッ場ダム事業の中で、御用学者として宮村氏が果たしてきた責任は、決して小さなものではありません。
こうした経緯をほじくりかえされるのは「いい加減にしてくれ」という思いがあるのでしょうが、地元民のことを思いやっているという発言趣旨は、関係と県知事らの常套手段ともなっている稚拙な議論のすり替えです。
本当に地元民のことを考え、責任を感じているのなら、こんなことは口が裂けてもいえない立場のはずです。
(以下略)
---- 引用以上 ----
国交省的には、八ッ場ダムの建設是非に関する議論を「店じまい」(無論建設続行という意味で)にしたいようだ。
先月10月6日~今月4日にかけて国土交通省が募集していたパブリックコメントについて、妙な事態になっていた模様・・・。
・八ッ場ダム:意見公募なのに96%が同一文書に署名だけ(2011年11月26日 毎日jp)
色んな意味でリアクションに困るこの話。
さしあたっては、2011年11月26日分 毎日jp『意見公募なのに~』を全文(略
---- 以下引用 ----
◇推進派が世論誘導か
建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)を巡り、国土交通省関東地方整備局が集めたパブリックコメント(意見公募)で、寄せられた意見の約96%が同一文書に署名だけ手書きしたものだったことが分かった。
「八ッ場ダムは必要不可欠」などと印刷され、ダム推進派が組織的に署名を呼びかけた可能性が高い。
ダム反対派は「世論誘導の狙いがあるのではないか」と反発。
専門家は「パブリックコメントの趣旨から逸脱した行為」と批判している。
同整備局が25日にまとめた「パブリックコメントの結果」によると、寄せられた5963件のうち5739件は全く同じ内容だった。
「八ッ場ダムは利根川水系における治水、利水の安全度を高める対策として、もっとも現実的、かつ確実に効果を見込める事業」「速やかにダム本体工事に着手し、計画通りに事業を完成すべきだ」などと推進を求める意見がパソコン文字で印刷されており、署名だけが異なっていた。
パブコメは10月6日~11月4日に全国から募集。
集まった5963件のうち埼玉県在住者の意見が5738件に上っており、同一文書の大半は同県在住者が寄せたとみられる。
同整備局は「パブコメは多数決ではないので、特に問題はない」と説明しているが、八ッ場ダム建設に反対する市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は「世論誘導のため組織的に署名を集めたと思われる。非常に問題だ」と話している。
【奥山 はるな】
---- 引用以上 ----
このパブリックコメントの結果について、国土交通省関東地方整備局がコメント+内容の紹介をしていた。
・八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討
パブリックコメントの結果(2011年11月?日 ktr.mlit.go.jp)
参考までに、ktr.mlit.go.jp『八ッ場ダム建設事業~』から署名付きパブリックコメントの意見を(略
---- 以下引用 ----
・本検証によって、八ッ場ダムは利根川水系における治水、利水の安全度を高める対策として、最も現実的、かつ確実な効果を見込める事業であることがあきらかになった。
このような結果が示された以上他の選択肢はない。
速やかにダム本体工事に着手し、計画通りに事業を完成すべきである。
[意見該当箇所:4-229頁、5行目]
・埼玉県の水需給状況は、八ッ場ダムを始めとする暫定水利権が占める割合が大きい。
この暫定水利権を解消しなければ、渇水に対する利水安全度が高まらないことは本資料から明らかである。
速やかに八ッ場ダムを完成させ、利根川の流況を改善し、暫定水利権を解消することは国の責務である。
[意見該当箇所:4-97頁]
・利根川流域での過去最大の洪水はカスリーン台風であり、洪水流量は 21,100立方m/s であるが、今検証の整備目標は今度20から30年間で整備可能な 17,000立方m としている。
利根川の流域住民は。
今後30年で整備可能な整備として、完成を目前に控える八ッ場ダム建設は必要不可欠な施設であり、首都圏の治水を担う国は、当然建設を続行すべきである。
[意見該当箇所:4-9頁]
---- 引用以上 ----
見事なまでに、八ッ場ダム建設推進派の意見を反映したパブリックコメントである(棒)
で、問題の署名付きパブリックコメントは、国交省が公開してるパブリックコメントの No.215~No.5963 までとなっている。
参考までに、.pdfファイルで公開されてるパブリックコメントのNo. の範囲を(略
・パブリックコメント01:No.0001~0124
・パブリックコメント02:No.0125~0214
・パブリックコメント03:No.0215~0787
・パブリックコメント04:No.0788~1257
・パブリックコメント05:No.1258~1757
・パブリックコメント06:No.1758~2257
・パブリックコメント07:No.2258~2757
・パブリックコメント08:No.2758~3257
・パブリックコメント09:No.3258~3757
・パブリックコメント10:No.3758~4257
・パブリックコメント11:No.4258~4757
・パブリックコメント12:No.4758~5257
・パブリックコメント13:No.5258~5757
・パブリックコメント14:No.5768~5963
署名付きパブリックコメントの多さに圧倒されるばかりである。
裏を返せば、八ッ場ダムに関する世間の関心の低さを示した結果とも言えるが・・・。
で、話を 2011年11月4日に行われた「学識経験を有する者の意見聴取の場」に移す。
実は、この有識者会議の議事録では、パブリックコメントの「数」について直接言及はしてないんだよな。
もっとも、問題の署名付きパブリックコメントの意見は「『八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)』に対するパブリックコメントについて 平成23年11月3日現在」という資料にまとめられて委員に伝えられたのだが。
この辺は以下参照(手抜き)
・事務局だより(2011年11月22日 八ッ場あしたの会)
・『八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)』に対するパブリックコメントについて 平成23年11月3日現在(2011年11月4日? ktr.mlit.go.jp;.pdfファイル)
この後、事業評価監視委員会では件のパブリックコメントについてもネタにするらしい。
毎日jp の記事では、「パブコメは多数決ではないので、特に問題はない」という国交省のコメントが紹介されてるが・・・。
事業評価監視委員会において、署名付きパブリックコメントが何らかの影響を及ぼさないとは限らないかと。
とりわけ、委員会の方々が、署名付きパブリックコメントの「数」を根拠にして(八ッ場ダム関連の事業)評価を行う可能性すらあるわけで。
その意味では、今回の署名付きパブリックコメントは案外軽視できない話なんだろうな。
つか、どこの誰が、「八ッ場ダムに関する(賛同意見の)パブリックコメントに名前を寄せてくれ」言い出したのやら(苦笑)
心当たりのある人は、八ッ場あしたの会にご一報を・・・(宣伝)
なお。
今月4日の有識者会議の最後のほうで、座長である宮村 忠氏が意味深なコメントを・・・。
以下、2011年11月22日分八ッ場あしたの会『事務局だより』より、宮村氏の発言(議事録P.30)+八ッ場あしたの会の見解を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
また、「討議」の最後では、次のように述べています。
「もっと早くからというお話がありましたけれども、これについてはさんざん議論されてきて、大変申しわけないですが私もコメントだけしますと、先ほど地元の人たちの話が清水さんから出ましたけれども、これからやるときに地元がどう苦労するかというより、今までさんざん苦労して、ふと全然地元とは関係なくとまって、さあ客観的に検証しろと言われても、地元の人は非常につらいと思います。苦労してきた地元に対して思うと、もうほじくり返すような議論はいい加減にしてくれというのが私の個人的な意見で、そんなことを含めて、今日いただいた意見をこの委員会の意見として予定どおり報告書として、しかもそれは委員名を書くんですか。どうするんですか。」(議事録30ページ)
座長が「議論はいい加減にしてくれ」というのでは、議論が成り立ちません。
これまで地元民に犠牲を強いてきた八ッ場ダム事業の中で、御用学者として宮村氏が果たしてきた責任は、決して小さなものではありません。
こうした経緯をほじくりかえされるのは「いい加減にしてくれ」という思いがあるのでしょうが、地元民のことを思いやっているという発言趣旨は、関係と県知事らの常套手段ともなっている稚拙な議論のすり替えです。
本当に地元民のことを考え、責任を感じているのなら、こんなことは口が裂けてもいえない立場のはずです。
(以下略)
---- 引用以上 ----
国交省的には、八ッ場ダムの建設是非に関する議論を「店じまい」(無論建設続行という意味で)にしたいようだ。
>「ゴネ得」と言われたとしても、外野から言われる分には痛くも痒くもないんじゃないかと。
あ、この部分は説明不足でした(汗)
住民を「ゴネ得」として非難することで影響を受けるのは、実際に補償を出す行政や国会議員の方々云々を補足するべきでしたね・・・。
>現地の和解というのはたしかに難しい問題なんだよなあ
そうなんですよね。
私も前回コメントで書いた後で、和解を行う際の問題点を色々考えたのですが・・・。
少なくても、以下の3つは課題になると思います。
・和解のための枠組みをどう構築するのか
・和解の基準をどこに置くのか
・誰を和解のための枠組みに参加を認めるのか
ただ、和解云々と言っても、和解自体を望まない人達もいるのも事実なんですよね。
今回のケースとレベルは異なりますが、南アフリカで設置された「真実和解委員会」について、「制度を作ること自体が、和解への圧力にならないか」という指摘もありますし・・・。
↓参照
真実の理解は和解をもたらすのか(2011年6月21日 Stahlgewitter2011)
http://d.hatena.ne.jp/Stahlgewitter2011/20110621/1308607737
とにかく、八ッ場ダムの建設是非の結論がどちらになるにしろ、この問題は避けて通れないと言えます。
財源問題もまあいろいろ取り沙汰されてはいるのですが、最後まで作ったとして経済的に見合うかというとあんまし見合わない感じがするのよ。ていうかもう人口減少時代にはいるんだし、これ以上水はいらんだろうと。結果的に出費をおさえられるんだったら、つじつまあわせは官僚のお仕事ですから。
現地の和解というのはたしかに難しい問題なんだよなあ。ただ、これもね。
分断支配というのはわりとありふれた手であり、八ッ場ダムに関していうなら「当初は反対派が圧倒的、それを切り崩して賛成派に鞍替えさせ、反対派を少数においやって弾圧」という図式だったわけでしょう。そしたら、ここで賛成派に転じた人々が改めて反対派に転じてその状況を固定するという選択をするなら、残っている反対派に頭を下げて詫びるのもそんなに筋が通らないことじゃなかろうと思う。
まあ、それでも「非現実的な選択肢」とおれが書かざるを得ない理由は、やっぱそこがいちばんむずかしいよなあとか思うからなんだが。でも、たったひとりダム建設賛成派からリーダーシップを持つ転向者が出ればなんとかなっちゃうレベルの困難である、とも思うんすよね。
なによりもさ。
ここで「ダム建設を止めて確定する」というカードを使わない限り、不安定状態はまだまだ続くわけで。それでいいのか、ほんとにそれでいいのか、とは思うんすよ。やっぱ、いくないと思うんだよねえ。
>~原点に戻って先祖伝来の土地を守り現在の場所で生きていくことにして、ついでにダム建設をめぐって翻弄されたことへの慰謝料としてどっかーんと地元振興費でも取ればいい。
それも1つの解決策と言えますが・・・。
仮に、この策を取ると、DPJ 政権や国交省に限らず、補償の対象となった住民を「ゴネ得」と言って非難する人達が結構な数出てくる危険があるんですよね。
後は、単純に財源の問題(地元振興費が八ッ場ダム本地の建設費用を超えても驚きではない)も絡んでくるかと。
それに加え、今年3月の震災からの復興などに予算を回せ、という声が強くなりそうですし・・・。
それと並んで(八ッ場ダムの建設続行か中止問わず)重要な課題としては、対象地域となった人達の(この用語の使用が適切か疑問だが)和解だと思われます。
というのも、地元の人達は長年八ッ場ダムを巡って対立を続けてきたという経緯があるわけで。
ただ、これをやる場合には、色々問題がありそうで・・・。
なんとも頭の痛いところです。
民主党が政権をとる前だったと思いますが、八ッ場ダムの立地であり湖底に沈むことが決まっていた川原湯温泉に行って様子を見てきたんですよね。泊まりませんでしたけどね、まあいちおう八ッ場ダムに関してはおれは反対派なんで、金払って建設が進まないことの愚痴とか聞かされたらかなわないから。
で、要するにまあ、先行きがはっきりしないことが最大の問題なのである、という理解をしました。でだ。
その後民主党政権になり八ッ場ダムは中止の方向になったわけですが、そこでいったんは諦めて移転することを覚悟していた現地住民は猛反発をするに至ったというのが現状なわけですが、おいおいちょっと待てよ、とかおれは思ったわけです。
要するに何が問題なのかというと、「先行きがはっきりしないこと」なわけでしょう。で、民主党政権になってから、ダム建設の中止が再度クローズアップされて、「先行きがはっきりしない」状況が強化されて、そんで現地住民としては苛立っていると。
で、ここからあんまし現実的ではない意見なんだけどさ。
手はあるじゃない。今ここで、先行きを確定させる方法って、あるじゃないですか。それは何かというと、現地住民が「ダム建設の断念を受け入れ、現在の川原湯温泉の場所で今後も生きていくことを受け入れることを決めてしまう」ということなんです。もともと現地住民はダム建設には圧倒的に反対しており、切り崩されて移転に同意したという経緯なわけだし、原点に戻って先祖伝来の土地を守り現在の場所で生きていくことにして、ついでにダム建設をめぐって翻弄されたことへの慰謝料としてどっかーんと地元振興費でも取ればいい。
おれとしては、これって、言ってるほど非現実的な選択肢ではないような気がしている。じゃあなにが非現実的なのかというと、要するに「いったんは移転に同意してしまった人々の気持ちを、改めてどう方向転換するか」ということだけが問題なんだ。でも、現状で「ダム建設の推進と移転の実行」を求めたって、そういう未来が確定するわけじゃないでしょう。逆に、現状で「ダム建設の断念と移転中止の受け入れ」を表明して既成事実化してしまえば、それはもう誰にも覆すことはできない決定となし得る。
なんであいつら(=現地のダム建設推進派)には、それがわからなのだろうな。ってまあ、外野で言うのは楽チンなわけですけどね。
先行きが見えない未来のヴェールをはいで明らかなはっきりとした未来を見る方法はあるのだ。そこに気づいて方向転換をすれば、その瞬間に、数十年続いた不安定な時代を一気に過去のものとできるはず。なんとかそうなってくれないものだろうかと、おれは祈るような気持ちで、事態の推移を見守っているのですが。