flagburner's blog(仮)

マイナーな話題を扱うことが多いかもしれません。

"Research Whaling" as "War on Terrorism"

2011-06-29 19:45:43 | 捕鯨騒動
今回は、世間のドタバタの裏でこっそり進行していた「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」がまとめた論点とかの紹介。
・これまでの主要な論点と意見(2011年6月20日? 農林水産省;.pdfファイル)

これまで、委員会は合計4回行われてきた。
無論、委員会の議論では「調査捕鯨」の続行が前提だったけど・・・。
以下、2011年6月20日分農林水産省『これまでの主要な論点と意見』を全文(略

---- 以下引用 ----

これまでの主要な論点と意見

1 調査の正当性

・鯨類捕獲調査は国際法上認められた正当な権利であり、止める理由は全くない。
・我が国の鯨類捕獲調査が、国際捕鯨取締条約第8条に基づく正当な調査であること及び不当な妨害を受けていることを国内・国際世論に対し、あらゆる機会を通じてPRしていくべき。


2 調査の科学的な意義

・経済性も重要であるが、食料資源としての南極海生態系の重要性に鑑みた調査の意義を評価すべき。
・科学的見地から、南極海調査の成果の学術的意義は大きく、かつ調査レベルは高く世界の最先端にあるものと評価できる。
・科学的成果は評価するが、捕獲調査はIWCにおいて各国が協力する環境を整えた上で実施すべき。
・極めて多数の生きている鯨を捕獲しているが、その科学的根拠はあるのか。


3 調査の仕組みと財源

・調査副産物である鯨肉の販売収益を捕獲調査の経費に充てるという現行の仕組みが成り立たなくなっている。
・妨害による影響を考えれば、副産物販売収入で調査経費を賄う現行の仕組みを考え直し、国の予算で実施すべき。
・国の政策として調査を実施するのであれば、必ず財源の問題を伴うので、経済的合理性の検証が必要。
・鯨肉需要に対する供給という観点からは、沿岸の捕鯨だけで十分ではないか。高いコストを払ってまで南極海調査を継続する必要があるか。


4 反捕鯨NGOの妨害を踏まえた南極海調査の実施

・国連海洋法条約における海賊行為の定義は本来広く、反捕鯨 NGOの妨害行為は国際法上の海賊行為として違法性を問えるのではないか。
・反捕鯨 NGOの妨害行為により、南極海の鯨類捕獲調査を止めることはあってはならず、調査継続のための妨害対策を議論することが重要。
・環境テロリストを増長させるわけにはいかず、妨害に対して国が手を出せないのなら、第三者的な警備組織を導入することも検討してはどうか。
・反捕鯨NGOによる妨害行為が激しくなる中で、そんな危険なところに、海上保安庁の巡視船の派遣までして調査に行く必要があるのか。
・調査捕鯨が正当なものであっても、海上保安庁の巡視船を派遣することには反対。巡視船については派遣した場合の国際世論の反応を考慮しつつ、国家戦略として慎重な検討が必要。


5 その他

・当面の経営対策として、前回の南極海調査を切上げたことによる損失に対する手当が喫緊の課題。

---- 引用以上 ----

なんつー自画自賛・・・。
というか、「調査捕鯨」のアレっぷりに関しては、石井 敬氏も指摘していたけどな。
この辺は以下参照(手抜き)
・Anti-whalers should just stop ...(2011年6月19日 Japan Times)

しかし、上のまとめを読んでると、随分勇ましい文言が並んでること並んでること(謎笑)。
「環境テロリストを増長させるわけにはいかず」とか「国際法上の海賊行為として違法性を問える」とか・・・。
以前書いたけど、「調査捕鯨」を続行したい人達には「引くのも勇気」という言葉は辞書にないんだろうか?
実際、次シーズンの「調査捕鯨」に行く際、農林水産省は海上保安庁の巡視艇に出動を要請したらしいし。
・調査捕鯨で海保巡視船の出動要請 妨害行為に備え、農水省(2011年6月27日 47news.jp)

色んな意味で頭が痛いこの話。
さしあたっては、2011年6月27日分 47news.jp『調査捕鯨で~』を全文(略

---- 以下引用 ----
 農林水産省が、今年秋ごろから南極海で実施する調査捕鯨について、海上保安庁に巡視船の出動を要請していることが27日分かった。
前季の調査捕鯨が、反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害行為により途中で打ち切らざるを得なくなったことから、海保の支援を得て調査継続につなげる狙いがある。

 ただ「国内の根拠法令がない」(農水省関係者)ことから海保内には慎重な意見があり、実現するかどうかは今後の調整次第だ。

 関係者によると、農水省ではこれまでも海保に支援を要請したことがあり、前季の調査では海保職員が調査船団に同乗したが妨害行為を防げなかった。
---- 引用以上 ----

根拠法令、ね。
一応、海上保安庁の船は公海に関する条約及び海洋法に関する国際連合条約によって軍艦に準ずる特権(C:軍艦及び非商業的目的のために運航するその他の政府船舶に適用される規則、第29条~第32条が根拠)を持ってるらしいからな~。
この辺は以下参照(手抜き)
・海洋法に関する国際連合条約(ioc.u-tokyo.ac.jp)

理論的には、海上保安庁の船を「調査捕鯨」団に同行させることもできるが・・・。
実際にこれをやるなら、先程紹介した委員会の論点で触れられていた「派遣した場合の国際世論の反応を考慮しつつ、国家戦略として慎重な検討」が必要になるだろうな。
一歩間違えば、(海上保安庁の船が武装してる以上)「武力行使」と受け取られかねないし、ね。

一方、海上保安庁の船を「調査捕鯨」団に同行させることができない場合は、「第三者的な警備組織を導入する」可能性が出てくるか。
そうなると、(「テロとの戦い」で悪名高い)民間警備会社という名の傭兵部隊を頼ることになるかと。
(ALSOK じゃ力不足な気がするし)
この手法の長所の1つは、海上保安庁の人達に危害を与える可能性を未然に無くせること。
南極海くんだりまで海上保安庁の船を派遣する必要も無くなるしね。
逆に短所の1つは、民間警備会社の人達が Sea Shepherd のメンバーに危害を与えた際の責任がどうなるのか不明確、ってこと。
これについては、「テロリストに人権なんぞねぇ」という論理で無視されそうだが・・・。


にしても。
例の委員会における論点を振り返ると、「調査捕鯨」が「テロとの戦い」の1つとして位置づけられてる感が否めない。
「テロとの戦い」は「終わりのない戦争」という一面もあることを踏まえると・・・。


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
シーシェパードが本気になったらどうなるんだろう。 (猫が好き♪)
2011-06-30 23:34:30
 日本側が、海保あるいは民間の武装船を繰り出すとしたら・・・。

 シーシェパードの戦闘部隊としての能力ってよく知らないんだけどさー。
 シエラ事件では吸着機雷を使いこなして海賊捕鯨船を爆沈した実績があるし、実はあそこらへん兵仕上がりがけっこういたりするし(シーシェパードの話じゃないけど、ゾディアックの操船担当とかって、軍でその手の訓練を受けたやつが除隊後に所属してやっていると聞いた)、その気になればかなりの武器を闇市場から入手できるし、へたに武装船を同行させたりしたらあっちも本気で対抗してくる可能性とかってのもあるんでないかなあ。

 日本側ではテロだなんだって言ってるけどさ、実際に投げ込んでいるのって酪酸程度でしょ、正直「三味線弾いてるんじゃないの」って気がする。見栄えがする抗議行動をやってはいるけれども、害を与えようという気迫は現時点ではあんまし感じられないんだ。実害を与えることを考えたらやっぱ硫酸硝酸あたりを使うんでないのとか思ったりするし。
 へたに刺激してシーシェパードの目的を「実害を与えること」にシフトさせたら、様相が一変する可能性って、あると思う。そして、シーシェパード側は、現在の調査捕鯨ってシエラなみの海賊捕鯨に見えている可能性があってな。
 少なくとも、シーシェパードがやられっぱなしで終わるというのは考えにくく、日本側が武装船を繰り出すという情報をつかんだら機関銃やら手持ちミサイルやらくらいは普通に持ってくるような気がする。「非暴力の腰抜けとシーシェパードは違うんだからな」とかにこにこしているキャプテン・ワトソンの顔が思い浮かぶ。

 いやまあ。現実問題、シーシェパードが捕鯨母船を撃沈したりした日には、さすがに非難は免れ得ないだろうと思うし、シーシェパードはつぶれることになるかもしれない。しかし同時に英雄にもなるだろう。
 ここで武装護衛線を出したりしたら話は当然にややこしくなるんだが、背負うリスクは格段に上がるんじゃないのかなあ。人死にが出ても知らんぞとか思うのです。
返信する
猫が好き♪ さんへ (flagburner)
2011-07-03 16:28:29
コメントありがとうございます(亀レス申し訳)。

>少なくとも、シーシェパードがやられっぱなしで終わるというのは考えにくく、日本側が武装船を繰り出すという情報をつかんだら機関銃やら手持ちミサイルやらくらいは普通に持ってくるような気がする。
う~ん。
そういう武器を Sea Shepherd が所持するとなれば、少なくてもオーストラリアやニュージーランドまでそれを運んで船に積みこむリスクを負うのは避けられないんですよね。
仮にそれをやった場合、オーストラリア政府やニュージーランド政府から出港を阻止される危険もあるわけで・・・。

となると、「調査捕鯨」団側が第三者による警備を依頼した場合、Sea Shepherd は同様の策 -- 民間警備会社という名の傭兵部隊に護衛を依頼 -- を取るのが現実的かもしれません。
ただ、この場合、Sea Shephrd の依頼を受ける会社がいることが前提ですが・・・。

>ここで武装護衛船を出したりしたら話は当然にややこしくなるんだが、背負うリスクは格段に上がるんじゃないのかなあ。
そうなんですよね。
仮に「調査捕鯨」団側がこれをやったら、Sea Shepherd に格好の口撃材料を与えることになりますし・・・。
後、この記事で触れたことに加え、民間警備会社が誤って「調査捕鯨」団の船員を死傷させた場合の責任所在も不明確になる可能性も否定できません。

>人死にが出ても知らんぞとか思うのです。
むしろ、「調査捕鯨」団と Sea Shepherd の双方が、「自分達の仲間から」死人が出て欲しい、とすら思ってるかもしれませんね(不謹慎)。
そうすれば、「被害者」と言い張れますから・・・。
返信する
Unknown (赤いハンカチ)
2011-08-13 09:45:34
緒方林太郎(民主党福岡)が食い下がっています。



http://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=41208&media_type=wb&lang=j&spkid=19837&time=00:09:00.0
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.php?deli_id=41208&media_type=wb

2011-08-10 20:00:00
海賊対処・テロ防止特別委員会での質問
http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-10981854081.html




--------------

(※)

日本政府公式見解(海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律)
2011年5月13日
シー・シェパードによる南極海鯨類捕獲調査へのこれまでの妨害行為は、
海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律(平成二十一年法律第五十五号)第二条に規定する海賊行為に該当するとは考えていない。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b177159.htm?OpenDocument

日本政府公式見解(海洋法に関する国際連合条約)
2011年3月15日
シー・シェパードが所有する船舶の旗国でない我が国が、公海上で行われるこれまでと同様のシー・シェパードの妨害行為を、
海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号)の範囲内で、現場で取り締まるための法整備を、実効性がある形で行うことは困難と考えている。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b177122.htm?OpenDocument
2011年6月1日(5月閣議決定)
日本政府としては国連海洋法条約上の海賊として断定することは難しいということです。
シーシェパードの行為は、国際法上、海賊とは言えませんけれども、
www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/pdf/gizigaiyo3.pdf

------

(※)ちなみにアメリカはSUAでは日本に協力的です。



本国からはオランダ政府に対し、
SUA(海洋航行不法行為防止条約)に違反しているため、
条約の厳守とボブ・バーカー号とスティーブ・アーウィン号の船籍剥奪を要請している。
http://www.jsu.or.jp/general/shinbun/pdf/2647.pdf
返信する
赤いハンカチ さんへ (flagburner)
2011-08-13 21:34:58
コメント&情報ありがとうございます。

緒方 林太郎氏ですか。
公式 blog を読んでると、(放送禁止用語)としか思えない言葉遣いがチラホラ・・・。
読んでるだけで、頭が二日酔いになりそうです。


ってのはともかく。
>シーシェパードは海賊ではないのか
むしろ、海賊認定されたら Paul WATSON 船長が喜びそうですが。
なにしろ、海賊は一部の人達にとっては「勲章」みたいな呼び名ですから・・・(謎)

ちなみに、Wikipedia 日本語版で『海賊』のページには Sea Shepherd の旗の画像が使われていますが、英語版の『Piracy』ではそれが使われてないんですよね。
それが良いのか悪いのかは不明ですが・・・。
返信する
Unknown (赤いハンカチ)
2011-08-13 22:51:47
>公式 blog を読んでると、(放送禁止用語)としか思えない言葉遣いがチラホラ・・・。
>読んでるだけで、頭が二日酔いになりそうです。

でもコレは非常に面白かったです。



クジラの関係でその手法が上手くいったから
http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-10569830839.html
返信する
赤いハンカチ さんへ (flagburner)
2011-08-15 20:39:43
コメントありがとうございます。

緒方氏の水産庁・農林水産庁・外務省職員に対する見解については、判断を留保したほうがいいかもしれませんが・・・。

特定の国に無償協力資金提供を継続することが自己目的化してる、という指摘は何気に重要かもしれません。
なにせ、必要のないはずの資金提供を続けるためにはそれなりの理論武装が欠かせませんから・・・。

それと、本来なら、その資金提供の結果に関する検証が必要なんですよね。
ただ、それを水産庁・農林水産省だけでなく国会も行ってるか、というと疑問ですが・・・。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。