今回は「調査捕鯨」ネタを2発(謎)。
何か知らんが、天下の『月刊宝島』が「調査捕鯨」に関して興味深い論稿を掲載していた。
・10年で“税金”約80億円を投入!世界的批判を浴びても日本が「調査捕鯨」を続ける理由とは・・・(2014年11月7日 takarajima.tkj.jp)
上の論稿の内容は、「調査捕鯨」が「天下り」の元凶になっているとか、税金がアフォみたいに使われてる云々というもの。
それだけなら至って普通(?)の論稿だが、中盤で「調査捕鯨」の歴史に関しては意味深なことを述べている部分があった。
以下、2014年11月7日分 ttakarajima.tkj.jp『10年で“税金”約80億円を投入~』からその部分を(略)
---- 以下引用 ----
(中略)
■世界から批判される“調査捕鯨”という詭弁
調査捕鯨という言葉が世に出たのは、1982年、資源管理機関のIWCが、クジラが絶滅の危機にあるとして、沿岸部で行われるイルカなど小型鯨類を除き、商業捕鯨の一時停止を決議したことによる。
この際、加盟国のうち日本、ノルウェー、ペルー、ソ連は、法的拘束力を免れるため異議申立を行っているが、その後、日本はペルーとともに、異議を撤回している。
当時の国会答弁などによれば、アメリカが、排他的経済水域内の漁獲枠割り当て削減や、日本からの水産物輸入規制をちらつかせて圧力をかけたようだ。
さらに、「調査捕鯨という名前さえ使ってくれれば、あとは文句は言わない」という、アメリカ側からのオフレコードの殺し文句があったともいわれている。
その後、アメリカを含む世界各国から『日本の調査捕鯨は詭弁(きべん)』との誹(そし)りを受けることになるとは、日本は思ってもいなかったのだろう。
いわばアメリカの口車に乗せられたわけだ。
商業捕鯨が完全に停止された87年以来、日本による捕鯨は科学的調査という建前のもとで行われることになった。
かつては南極海と北西太平洋に年一度ずつ、60日から70日の航海に出て捕鯨が行われていたが、3月の国際司法裁判所の判決を受け、現在は北太平洋のみで行われている。
(以下略)
---- 引用以上 ----
オフレコにおける米国側の「調査捕鯨」に関する見解はともかくとして、日本政府が「調査捕鯨」を錦の御旗として好き放題やってたのも事実なわけでさ。
「調査捕鯨」におけるクジラの捕獲数を数百頭単位にしたのは、日本政府が米国側(とIWC)が示した「調査捕鯨」に関する見解を(自分達の都合のいいように)解釈したという面もあるかもしれん(苦笑)。
まぁ、日本政府は絶対認めないだろうが・・・。
もう1つ。
今年3月31日のことになるが、オーストラリア政府が日本政府が行ってる南極海「調査捕鯨」の中止を求める訴えに関する判決が国際司法裁判所(ICJ)で行われ、南極海「調査捕鯨」は「科学的」でないとして国際捕鯨委員会(IWC)の条約違反と判定→日本政府が持ってた南極海「調査捕鯨」の許可を取り上げる判決が下された。
この判決について、真田 康弘(Yasuhiro SANADA)氏が今年5月に公開した見解の補足(ややこしい)を公開していた。
・捕鯨判決とその後の展開(2014年11月7日 ika-net.jp)
この中で真田氏は、ICJによる判決が今後の「調査捕鯨」に与える影響についても述べていた。
以下、2014年11月7日分 ika-net.jp『捕鯨判決と~』からその部分を(略)
---- 以下引用 ----
(中略)
3. 捕鯨判決のインプリケーション
この判決が将来の調査捕鯨に及ぼす影響としては、以下のものが挙げられる。
第一は、原告適格の問題である。
国際司法裁判所は日本がこの件を争わなかったため、豪州の原告適格を問題とせず、同国の個別利益だけではなくIWC加盟国の集団的利益の実現のための訴訟をあっさりと認めている[原文注1]。
これは、今後どの加盟国でも日本の調査捕鯨を国際法違反として提訴することが可能であることを意味し、国際法的にも重要な意義を持つ[原文注2]。
第二に、今後日本が南極海の調査を再開しようとする場合に及ぼす影響である。
ICJの判決は日本が条約第8条の下でのいかなる将来的な許可書を与える可能性を検討する際も、この判決に含まれる理由付け及び結論を考慮することが期待される、と付言している。
この判決で示された条件に則するならば、(a)非致死的方法で代替できるかを十分検討しなければならず、(b)サンプル数は調査目的に照らして十分な科学的論拠を有するものでなければならず、(c)捕獲予定数と実捕獲に大きな齟齬が生じた場合は、調査計画や捕獲予定頭数を修正するなどの措置をとるなどして合理的に説明のつくようにしなければならず、(d)査読論文数を飛躍的に増やすなど科学成果を挙げるものとしなければならず、(e)内外の学術研究機関と連携関係を強化する必要がある。
これらの全ての条件を満たす数百頭規模の捕獲調査計画策定は、極めて困難と思われる。
問題は日本の北西太平洋での調査捕鯨(JARPN II)にも関係してくる。
たしかに判決はJARPN IIについて直接判断を行うものではない。
しかし判決文において、同判決の理由づけと結論を考慮することが期待されているのは、全ての調査捕鯨である。
JARPN IIはしたがって、少なくともその調査計画は妥当か、科学的観点から根本的な見直しを行うべきであった。
(以下略)
原文注1:児矢野 マリ「国際行政法の観点からみた捕鯨判決の意義」『国際問題』(近刊)
原文注2:同上。
---- 引用以上 ----
ICJが原告適格を争わなかったのは、日本政府にとって大きな誤算だったのかもしれん。
特に、裁判本番における日本政府の対応のアレっぷりは、ICJが原告適格を否定してくれるだろうという何らかの期待を抱いていたのではという疑問すら抱きたくなる。
そして重要なのは、ICJの判決が「調査捕鯨」の大幅な修正を求めてることだわさ。
が、知っての通り、日本政府は懲りずに「調査捕鯨」続行を打ち出すばかりでなく、ICJの判決について妙な解釈を行っていた。
このような日本政府の姿勢について、真田氏は厳しい指摘をしていた。
以下、2014年11月7日分 ika-net.jp『捕鯨判決と~』から終盤部分を(略)
---- 以下引用 ----
(中略)
7. 今後の展望
日本政府は9月2日、南極海の調査捕鯨で捕獲対象をミンククジラに絞り、必要な調査捕獲数を11月頃に確定させる方針を明らかにし、これを15日から開催されたIWC本会議で改めて表明した。
また、10月に東京都内で国内外の科学者を集めた特別会議を開催する旨を発表した。
しかしこうした日本側の立場は、IWCに参加する加盟国の多くを納得させるものとは到底なり得なかった。
調査捕鯨に関しては、ニュージーランドが決議案を提出、賛成多数(賛成35、反対20、棄権5)で採択されている。
科学委員会に対して、提出された調査捕鯨計画がICJ判決に判示された基準(本稿1.(a)~(e))に従っているかどうかに関し助言を行うよう求め、IWC本会議が科学委の上記報告を審議し勧告を行うまで、調査捕鯨の許可を行わないよう要請する、等する内容である。
こうした決議により、IWC科学委での調査捕鯨に対するレビュー機能強化が期待される。
日本の調査捕鯨は、国外にはもとより、国内に対しても、その内実が説明されてきたとは到底言えない。
敗訴してなお、科学や事実そのものに向き合わず、判決の創造的な解釈や手続論への拘泥に陥っているように思われる。
IWCでもICJの評価基準を組み入れる旨の決議が採択された以上、調査捕鯨の科学性をなおも信じるなら、このIWC決議に基づくプロセスに真摯に取り組み、国際社会の理解を得るよう説明責任を果たすべきである。
必要なのは内輪だけに響く心地の良い理屈ではない。
その意味で、豪州側弁護人を務めたジェームス・クロフォード教授(ケンブリッジ大)が自らの弁論を終わるにあたり述べた一言は、極めて的確であるように思える。
裁判長、裁判官の皆様。
我々が欲するものは何か。
この多国間条約の下における説明責任(accountability)に他ならない。
我々はいつそれを欲するか。
今でしょう[引用者注16]。
---- 引用以上 ----
ある意味「調査捕鯨」は、日本社会の抱える「闇」を反映したものなのかもしれない。
異常なまでの自画自賛、「外側」への攻撃性、現実を直視せず脳内世界で戦いを繰り広げるetc・・・。
"Research whaling" crusades not dead!!!
何か知らんが、天下の『月刊宝島』が「調査捕鯨」に関して興味深い論稿を掲載していた。
・10年で“税金”約80億円を投入!世界的批判を浴びても日本が「調査捕鯨」を続ける理由とは・・・(2014年11月7日 takarajima.tkj.jp)
上の論稿の内容は、「調査捕鯨」が「天下り」の元凶になっているとか、税金がアフォみたいに使われてる云々というもの。
それだけなら至って普通(?)の論稿だが、中盤で「調査捕鯨」の歴史に関しては意味深なことを述べている部分があった。
以下、2014年11月7日分 ttakarajima.tkj.jp『10年で“税金”約80億円を投入~』からその部分を(略)
---- 以下引用 ----
(中略)
■世界から批判される“調査捕鯨”という詭弁
調査捕鯨という言葉が世に出たのは、1982年、資源管理機関のIWCが、クジラが絶滅の危機にあるとして、沿岸部で行われるイルカなど小型鯨類を除き、商業捕鯨の一時停止を決議したことによる。
この際、加盟国のうち日本、ノルウェー、ペルー、ソ連は、法的拘束力を免れるため異議申立を行っているが、その後、日本はペルーとともに、異議を撤回している。
当時の国会答弁などによれば、アメリカが、排他的経済水域内の漁獲枠割り当て削減や、日本からの水産物輸入規制をちらつかせて圧力をかけたようだ。
さらに、「調査捕鯨という名前さえ使ってくれれば、あとは文句は言わない」という、アメリカ側からのオフレコードの殺し文句があったともいわれている。
その後、アメリカを含む世界各国から『日本の調査捕鯨は詭弁(きべん)』との誹(そし)りを受けることになるとは、日本は思ってもいなかったのだろう。
いわばアメリカの口車に乗せられたわけだ。
商業捕鯨が完全に停止された87年以来、日本による捕鯨は科学的調査という建前のもとで行われることになった。
かつては南極海と北西太平洋に年一度ずつ、60日から70日の航海に出て捕鯨が行われていたが、3月の国際司法裁判所の判決を受け、現在は北太平洋のみで行われている。
(以下略)
---- 引用以上 ----
オフレコにおける米国側の「調査捕鯨」に関する見解はともかくとして、日本政府が「調査捕鯨」を錦の御旗として好き放題やってたのも事実なわけでさ。
「調査捕鯨」におけるクジラの捕獲数を数百頭単位にしたのは、日本政府が米国側(とIWC)が示した「調査捕鯨」に関する見解を(自分達の都合のいいように)解釈したという面もあるかもしれん(苦笑)。
まぁ、日本政府は絶対認めないだろうが・・・。
もう1つ。
今年3月31日のことになるが、オーストラリア政府が日本政府が行ってる南極海「調査捕鯨」の中止を求める訴えに関する判決が国際司法裁判所(ICJ)で行われ、南極海「調査捕鯨」は「科学的」でないとして国際捕鯨委員会(IWC)の条約違反と判定→日本政府が持ってた南極海「調査捕鯨」の許可を取り上げる判決が下された。
この判決について、真田 康弘(Yasuhiro SANADA)氏が今年5月に公開した見解の補足(ややこしい)を公開していた。
・捕鯨判決とその後の展開(2014年11月7日 ika-net.jp)
この中で真田氏は、ICJによる判決が今後の「調査捕鯨」に与える影響についても述べていた。
以下、2014年11月7日分 ika-net.jp『捕鯨判決と~』からその部分を(略)
---- 以下引用 ----
(中略)
3. 捕鯨判決のインプリケーション
この判決が将来の調査捕鯨に及ぼす影響としては、以下のものが挙げられる。
第一は、原告適格の問題である。
国際司法裁判所は日本がこの件を争わなかったため、豪州の原告適格を問題とせず、同国の個別利益だけではなくIWC加盟国の集団的利益の実現のための訴訟をあっさりと認めている[原文注1]。
これは、今後どの加盟国でも日本の調査捕鯨を国際法違反として提訴することが可能であることを意味し、国際法的にも重要な意義を持つ[原文注2]。
第二に、今後日本が南極海の調査を再開しようとする場合に及ぼす影響である。
ICJの判決は日本が条約第8条の下でのいかなる将来的な許可書を与える可能性を検討する際も、この判決に含まれる理由付け及び結論を考慮することが期待される、と付言している。
この判決で示された条件に則するならば、(a)非致死的方法で代替できるかを十分検討しなければならず、(b)サンプル数は調査目的に照らして十分な科学的論拠を有するものでなければならず、(c)捕獲予定数と実捕獲に大きな齟齬が生じた場合は、調査計画や捕獲予定頭数を修正するなどの措置をとるなどして合理的に説明のつくようにしなければならず、(d)査読論文数を飛躍的に増やすなど科学成果を挙げるものとしなければならず、(e)内外の学術研究機関と連携関係を強化する必要がある。
これらの全ての条件を満たす数百頭規模の捕獲調査計画策定は、極めて困難と思われる。
問題は日本の北西太平洋での調査捕鯨(JARPN II)にも関係してくる。
たしかに判決はJARPN IIについて直接判断を行うものではない。
しかし判決文において、同判決の理由づけと結論を考慮することが期待されているのは、全ての調査捕鯨である。
JARPN IIはしたがって、少なくともその調査計画は妥当か、科学的観点から根本的な見直しを行うべきであった。
(以下略)
原文注1:児矢野 マリ「国際行政法の観点からみた捕鯨判決の意義」『国際問題』(近刊)
原文注2:同上。
---- 引用以上 ----
ICJが原告適格を争わなかったのは、日本政府にとって大きな誤算だったのかもしれん。
特に、裁判本番における日本政府の対応のアレっぷりは、ICJが原告適格を否定してくれるだろうという何らかの期待を抱いていたのではという疑問すら抱きたくなる。
そして重要なのは、ICJの判決が「調査捕鯨」の大幅な修正を求めてることだわさ。
が、知っての通り、日本政府は懲りずに「調査捕鯨」続行を打ち出すばかりでなく、ICJの判決について妙な解釈を行っていた。
このような日本政府の姿勢について、真田氏は厳しい指摘をしていた。
以下、2014年11月7日分 ika-net.jp『捕鯨判決と~』から終盤部分を(略)
---- 以下引用 ----
(中略)
7. 今後の展望
日本政府は9月2日、南極海の調査捕鯨で捕獲対象をミンククジラに絞り、必要な調査捕獲数を11月頃に確定させる方針を明らかにし、これを15日から開催されたIWC本会議で改めて表明した。
また、10月に東京都内で国内外の科学者を集めた特別会議を開催する旨を発表した。
しかしこうした日本側の立場は、IWCに参加する加盟国の多くを納得させるものとは到底なり得なかった。
調査捕鯨に関しては、ニュージーランドが決議案を提出、賛成多数(賛成35、反対20、棄権5)で採択されている。
科学委員会に対して、提出された調査捕鯨計画がICJ判決に判示された基準(本稿1.(a)~(e))に従っているかどうかに関し助言を行うよう求め、IWC本会議が科学委の上記報告を審議し勧告を行うまで、調査捕鯨の許可を行わないよう要請する、等する内容である。
こうした決議により、IWC科学委での調査捕鯨に対するレビュー機能強化が期待される。
日本の調査捕鯨は、国外にはもとより、国内に対しても、その内実が説明されてきたとは到底言えない。
敗訴してなお、科学や事実そのものに向き合わず、判決の創造的な解釈や手続論への拘泥に陥っているように思われる。
IWCでもICJの評価基準を組み入れる旨の決議が採択された以上、調査捕鯨の科学性をなおも信じるなら、このIWC決議に基づくプロセスに真摯に取り組み、国際社会の理解を得るよう説明責任を果たすべきである。
必要なのは内輪だけに響く心地の良い理屈ではない。
その意味で、豪州側弁護人を務めたジェームス・クロフォード教授(ケンブリッジ大)が自らの弁論を終わるにあたり述べた一言は、極めて的確であるように思える。
裁判長、裁判官の皆様。
我々が欲するものは何か。
この多国間条約の下における説明責任(accountability)に他ならない。
我々はいつそれを欲するか。
今でしょう[引用者注16]。
---- 引用以上 ----
ある意味「調査捕鯨」は、日本社会の抱える「闇」を反映したものなのかもしれない。
異常なまでの自画自賛、「外側」への攻撃性、現実を直視せず脳内世界で戦いを繰り広げるetc・・・。
"Research whaling" crusades not dead!!!