flagburner's blog(仮)

マイナーな話題を扱うことが多いかもしれません。

A Translated Note by Uri Avnery(17, Jul, 2010)

2010-08-15 17:23:24 | パレスチナかイスラエルか
今回の話は、元 Knesset 議員こと Uri Avnery 氏が2010年6月に開かれた Knesset の会議を傍聴した感想を語ったもの・・・。
・A Parliamentary Mob(2010年7月17日 zope.gush-shalom.org)
・A Note on Israeli Democracy by former Member of Knesset Uri Avneri(2010年7月17日 tikkun.org)
・אספסוף בפרלמנט הישראלי(2010年7月17日 mysay.co.il)

つーか、Avnery 氏って誰?
って人は以下のサイトを参照(手抜き)
・Uri Avnery - Biography / Gush Shalom(zope.gush-shalom.org)

で、ここからが本題。
今回俺がネタにする Avnery 氏の話ってのは、2010年6月~7月にかけて Knesset で可決された複数法案に関する議論などが成り立っている。
その中には、今年5月に Free Gaza のメンバー達が出した抗議船団に乗り込んだ Hannin Zoabi 氏の議員特権剥奪に関する騒動ってのもあるのだが・・・。
この辺は以下も参照(手抜き)
・Revoking Knesset Members' privileges(2010年7月14日 flagburner's blog(仮))

ともかく、Avnery 氏の話を読んでいくと、立法府であり行政の監視役でもある(イスラエルは議院内閣制だが)議会という場がわけのわからないものになってた、という笑うに笑えない状況が見えてくるかと。
そして、これが決して他人事でないってのも・・・。

つーことで、Avnery 氏の話を適当日本語訳にしてみた。
例によって、訳文の正確性は一切保証しな(略

なお、今回は(も?)、訳注が妙に長くなってしまったので、訳注を別記事でまとめた。
・A Translated Note~の訳注(2010年8月15日 flagburner's blog(仮))

---- 以下訳文 ----
2010年7月17日、
イスラエルの民主主義に関する覚書(元 Knesset 議員 Uri Avnery による)



俺が初めて Knesset の議員に選ばれた際、当選したこと自体が怖くなった。
極めて稀な例外を除いて、議会における議論の知的レベルはゼロに近いことに気づいた。
議論の多くは、世間で非常に広く使われている常套句のつなぎ合わせで成り立っていた。
多くの会議で、会議場はほとんど空だった。
多くの議員や委員は、俗っぽいヘブライ語で話していた。
(法案の可決とかの)投票の際、多くの議員は賛成するか反対するか何の考えもなく、党議拘束に従うだけだった。

現在イスラエルの大きな街道や居住区で名前が使われている、Levy Eshkol や Pinchas Sapir に David Ben-Gurion、Moshe Dayan、Menachem Begin、Yohanan Bader に Meir Yaari に Yaakov Chazan のようなメンバーが Knesset にいた1967年のことだった[訳注1]。

現在の Knesset と比べると、1967年当時の Knesset はプラトンの『大学』に見えてくる。

何にも増して俺を恐れさせたのは、(イスラエルが国家として危機にあるという)集団ヒステリーの時代において人々の支持を集めるための無責任な法案を通そうとする議員たちの手際の良さだった。
俺が初めて提出した法案は、新しい法案を実行に移すことを制限する力を持ち間隔を置いて議員達に再考を促すための、素晴らしい人格者達からなる(英国とかにある)上院にあたる第二の議会を設立するというものだった。
俺が期待していたのは、興奮した状態で[議論がろくに行えない状態で]法案が性急に可決されてしまうことを防ぐことだった。

この法案は、Knesset でも世間でも真剣に議論されなかった。
Knesset は、ほぼ全員一致で否決した。
(数年後、何人かの議員が俺にその際の投票について後悔した、と語った)
イスラエルの新聞は法案で提示された議会を『貴族院』と名づけコケにした。
Haaretz は、紙面の1ページのほとんどを、英国貴族の衣装を纏った俺を描いた漫画で埋めこの法案を非難した。

現在の Knesset に歯止めはない。
多くは人種主義的かつ反民主主義的である、無責任な法案の制定が勢いを増している。
イスラエル政府自身が議会を政治的に分断された集団に変えるにつれ、そのような状況を防ぐ法案の動きは弱まっている。
イスラエルの歴史でもっとも巨大化し低レベルで人気がない現在の政府は、議員達とそのような法案を可決することで協力し、時には政府自らが提出することもある。

この絶え間ない動きに対し、唯一残った障害は最高裁だ。
成文化された憲法が存在しないため、最高裁が民主主義と人権を侵害する疑惑だらけの法案を無効化する力を行使してきた。
しかし、最高裁自体そこを壊すことを望む右派によって乗っ取られ、非常に危険な方向に向かっている。
(議会と政府の暴走に対し、)最高裁は極端な事態の時だけ干渉するのだ。

こうして逆説的な状況が浮かび上がったのだ:民主主義を最高の形で表現する議会は、イスラエルの民主主義にとって重大な脅威であることを示している。


この現象を誰よりも象徴する人物は、露骨な全体主義的な方針のために何年も前に非合法化された『Kach(このように)』の創設者 Meir Kahane の後継者であり『National Union』に所属する Michael Ben-Ari 氏である[訳注2]。

Kahane 自身も国会議員に一度だけ選出された。
他の議員達の反応は同じだった:発言しようと立ち上がると、ほとんどの議員達は会議場を離れた。
Kahane は自分の発言を、極右の議員達数名の前で行わざるを得なかった。

数週間前(2010年6月2日)、俺は 2009年の総選挙以来初めて現在の Knesset に足を運んだ。
俺も懸念している話題 -- 12年も前に Gush Shalom が始めていた入植地で製造されたモノに対するボイコット運動を、パレスチナ暫定政府(PA)も行う決定をした -- に関する議論を傍聴するために向かった[訳注3]。
議会の中で数時間過ごしたが、時が経つほどに俺の幻滅は深まった。

大きな原因は、俺が注意を払っていなかったことの結果だった:Kahane 主義の実践者であり崇拝者である Ben-Ari 氏が議員になっていることだった。
彼の師匠のように議員生活の間中孤立した部外者というわけでなく、逆に中心にいるのだ。
他のほとんどの政党に所属する議員が、議員用のカフェテリアで彼の周りに輪を作り、会議場で意味のない演説をぼんやりと聞いていた。
イスラエルにおける全体主義である -- Kahane 主義が、世論の中心に移ったことは疑いようもない。

今や、イスラエルの人達は[乱闘騒ぎがよく起きる]韓国や日本の議会から出てきたような見たこともない場面の目撃者となった。

アラブ国家主義者の党 Balad に所属してる Hanin Zoabi 氏が演説台に立ち、なぜ自分がイスラエル軍によって攻撃された Gaza 地区への抗議船団に参加したのかについて説明しようとしてた。
その時、Yisrael Beitenu 所属 Anastasia Michaeli 氏は議席から立ち上がり、Zoabi 氏を演説台から力づくで引きずり降ろそうと駆け寄り、金切り声を挙げ、腕を振り回した[訳注4]。
他の議員たちも、Michaeli 氏を手伝おうとして議席を立った。
Zoabi 氏の近くに、恐怖を与える集団と化した議員達が詰め掛けた。
ケガをしないように Zoabi 氏を守ることが精一杯だった。
男性議員の1人が Zoabi 氏に向かって人種主義と性別主義が入り混じった典型的な台詞を叫んだ:Gaza 地区に行って、41歳にもなって結婚してない女性に(Gaza 地区の住民が)何をするのか確かめてくるんだな![訳注5]

2人の議員は、見た目以上の対照的な背景があることを想像できないだろう。
Zoabi 氏は、かなり大昔から -- おそらくキリストが生きてた時代から -- Nazareth 地区に家族の出身なのに対し、Michaeli 氏は(当時)Leningradで生まれた。 『ミス・セントペテルブルグ』に選ばれ[訳注6]、ファッションモデルになり、イスラエルに住んでる誰かと結婚→ユダヤ教に改宗→24歳の時イスラエルに移住したが、ロシア風の名で通している。
8人の子供をもうけた。
かつては美しかった Sarah Palin と同じ立場[首相候補とか]を、イスラエルで得るかもしれない・・・。

俺が思い出せる限りでは、この混乱の間ユダヤ系の議員達は Zoabi 氏を守るために誰も行動しなかった。
(Likud 所属)Reuven Rivlin 氏と Meretz 党の所属議員である Chaim Oron 氏から出た、形ばかりの抗議しかなかった。

設立から61年の間、Knesset でこんな光景が繰り広げられたことはない。
一瞬にして、立法の権限を持つ議員達が議員の私刑を行う暴徒と化した。

(だからと言って)、Balad 党のイデオロギーを支持し、Zoabi 氏の素晴らしい人となりについて尊敬を払う必要はない。
Zoabi 氏は流暢に(母語であると)信じられるようにヘブライ語を話し、2つの学位をイスラエルの大学で取得し、イスラエルに住んでるアラブ系住民の地域に住む女性の権利獲得のために闘い、Knesset に議席を持つアラブ系政党に所属しながら当選した初の女性議員となった。
イスラエルの民主主義は、彼女のことを誇りにしていたはずだった。
Zoabi 氏は、アラブ系住民の大きな部族出身である。
彼女の祖父の兄か弟(要は大伯父)は、Nazareth 市の市長で、叔父の1人は副市長でもう1人は最高裁判事だった。
(だから、俺が Knesset に足を運んだ日、俺は Zoabi 氏の親族の誰かが議員にしたいと提案した)

今週(2010年7月13日)、Knesset は、Michael Ben-Ari 氏が提出した Haneen Zoabi 氏の議員特権を剥奪する施行令を Likud+Kadima 所属議員などの支持を受け圧倒的多数で可決した。
その直前、内務省の Eli Yishai 氏は Zoabi 氏から利敵行為のかどでイスラエル市民権を剥奪する自分が提出した決定に合意することを求めた。
議員の誰がが彼女に向かって叫んだ:[訳注7]
「イスラエルの国会(Knesset)に居場所はない!」
「(アラブ系住民に所持が義務付けられてる)イスラエルの身分証明書を持つ権利はない!」


その同じ日になるが、Knesset は Zoabi 氏が所属してる党の創設者である Azmi Bishara 氏に対し。
本会議での議論の後で、-- 再び Likud と Kadima 所属議員が合意した -- 議員を辞職したことによる Bishara 氏の議員年金支払いを拒否することが狙いだった法案が可決された[訳注8]。
(機密漏洩疑惑に関する訴追を喰らう恐れから、Bishara 氏は依然国外にいる)

Likud や Kadima に Yisrael Beitenu +その他宗教政党から圧倒的支持を得た一連の動きの偉大なる元締めは、全てのアラブ系議員を Knesset から追放し永遠なる純粋なユダヤ的 Knesset を打ち立てるという意図を隠さなかった。
この所の Knesset における決定は、法案を人種主義+反民主主義的にすれば次の選挙で得票を見込めることを知っている議員達によってほぼ毎週毎週立ち上げられ長く続いているキャンペーンの一部だ。

今週 Knesset が打ち出した、アラブ系(特に前から市民権を持ってる人の親族)にシオニストのイデオロギーを受け入れることを求め、イスラエルを「ユダヤ的+民主主義的国家」であると宣誓することを市民権取得の条件にする決定はまさにそれだ[訳注9]。
新しいアメリカ市民に、米国が「アングロ・サクソン系白人の(国教は)プロテスタント国家」であるとの宣言を求めると同じことだ。

Knesset の議会としての無責任さに限界はないようだ。
超えてはいけない一線は、だいぶ前に超えている。
(不平等とはいえ)イスラエルの市民権を持つ 20%以上の人達[アラブ系の人達]の代表である議員たちだけでなく、全ての市民権を持つアラブ系住民の間にも懸念が広がっている。

こうした流れは、東エルサレムに住む住民の地位に繰り返される攻撃へと連なっている。

今週(2010年7月12日)俺は、パレスチナ議会にいる4人の Hamas のメンバーの1人でありエルサレム出身である Muhammed Abu Tir 氏の拘束に関するエルサレムの地方裁判所法廷で開かれた公判に顔を出していた[訳注10]。
公判は、傍聴を希望する多くの人達に対し1人分の席しかない狭い部屋で行われた。
そこに入るのは非常に苦労したが、どうにか俺は入り込めた。

東エルサレムに住んでるアラブ系住民(ややこしい)も民主的な選挙に参加させると(破綻した)オスロ合意で定められてるイスラエルの明確な義務に基づき行われた選挙で議員に選ばれた後[訳注11]、イスラエル政府は東エルサレムにいる議員達の「永住外国人」の地位を剥奪した。

どういう意味なのか?
イスラエルが1967年に東エルサレムを「飛び地」にした際、政府はイスラエル国内のアラブ系有権者の比率を増やすと思われた元から住んでる人たちに市民権を与えることなど想定しなかった。
新たな地位も作りださなかった。
他の選択肢(イスラエルの市民権を得ること)を与えられなかったことで、元から東 Jerusalem に住んでた人達はイスラエルに住むことを希望している外国人の地位である「永住外国人」となった[訳注12]。
内務大臣は、そうした人達の地位を剥奪して出身国へ国外追放する権利を持っている。

明らかに、「永住外国人」という定義は東エルサレムに元から住んでいる人達に適用されるべきでないのだ。
そうした人達とその親たちはそこで生まれ育ったため、他国の市民権なんか持ってないし他に住む場所もないからだ。
地位を剥奪することは、何の保護も受けられない政治的な意味で家を持たない人達にすることだ。

イスラエルの裁判官は、Abu Tir 氏が持っている「永住外国人」という地位の無効化により、東エルサレムを離れる事を拒絶→制限なく拘束される「不法居住者」になると定義した。

(数時間前、最高裁は俺達が出した Gaza 地区への支援船への攻撃に関するイスラエル軍による調査に懸念する署名を受け取った[訳注13]。
局地的だが、大きな勝利だ:イスラエル建国当初から初となるが、最高裁は調査委員会への問題について口を出すことに合意した。
調査委員会が軍高官の証言を必要とし政府がそれを止めようとすれば、裁判所はそれを防ぐだろう)


議会にいる暴徒達が「アラブ系議員だけ」傷つけると信じこもうとするなら、明らかに間違っている。
ただ1つの疑問はこうだ:次の順番は誰だ?

今週(2010年7月14日)、Knesset は企業・大学にその他イスラエルの団体 -- 特に入植地 -- についてイスラエルへのボイコット運動に賛同するイスラエル市民に対し厳罰を科す法案について第1回目の可決をした。
いかなる形でもボイコットを支持する組織や個人は、罰金として 5000米ドルを支払うことになる[訳注14]。

ボイコット運動の呼び掛けは、民主的な表現手段だ。
俺はイスラエル全てに対するボイコットには明確に反対だが、(Voltaire にしたがって)ボイコットの呼びかけを行う権利を守るために闘う準備はできている[訳注15]。
この法案の真の狙いは、無論、入植地を保護することだ:イスラエル国家が定めた(1967年時点での)境界線外の占領地に存在する入植地の製品に対するボイコット運動を呼びかける人達を攻撃するよう考案されている。
俺と俺の友人たちも対象に含まれている。

イスラエル建国当時から、「イスラエルは中東におけるただ1つの民主主義国家」という誇張は決して止まることはない。
イスラエルによるプロパガンダの重要なカギだからだ。
Knesset は、そんな民主主義の象徴だ。

Knesset を乗っ取った議会の暴徒達がこうしたイメージを完全に破壊するつもりなら、イスラエルはリビア・イエメン・サウジアラビアといった国々の間に然るべき場所を見いだすだろう。
---- 訳文以上 ----

・・・Knesset 以上に日本の国会も危険だと思うのだが(違)
だって、多数派に所属する政党や議員による強引な法案可決が日常茶飯事だし。
そして、それを形だけ非難する(場合によっては強引な法案可決を煽る)メディアの存在も・・・。

「民主主義国家」ってなんだろうね。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。