粗茶淡飯

中国・台湾・日本のお茶に関する色々。執筆者・徳田志保。

国産紅茶⑤

2016-07-29 23:07:54 | 国産紅茶(和紅茶・日本茶)
↑台茶18号

長いシリーズになっていますが、もう少し頑張ります。(^_^;)

さて、現在日本の茶生産者が紅茶を作るにあたって、どんな問題があるのでしょう?

以下はオーソドックス製法に当て嵌めた話になります。

✳︎栽培

施肥についてはネット上で色々言われていますので省略します。
個人的な意見としては私も窒素や硫安に頼るような施肥の習慣は感心しません。ですが「有機肥料だから良い」「無施肥だから味わい豊か…」という話も、概念としては理想ではあるものの、それを実現するには幾つかの先天的な前提条件が必要で、時と場合によることを皆さんに理解していただきたいと思っています。くれぐれもネット情報などに惑わされず、現場の考えも聞いていただきたいです。

中華圏では、どんな作物に対しても「肥料要施对。」(肥料は正しく施すことが大切。)と言われており、何でもかんでも無施肥にすれば素晴らしい味わいのお茶になるかと言われればそうではなく、有機肥料なら良いかと言われれば、その作物が求める成分と量が合っていなければ何の意味もありません。これらの事をバランスよく理解することが肝要かと思います。

✳︎品種

当然ですが、紅茶向きの品種とそうでないものがあります。

✳︎摘採

これは…技術の高い摘み手の手摘みなら最高ですが、日本ならではの問題もありますね。(^_^;)

✳︎萎凋

ここが結構勝負の分かれ目になります。施肥に問題があれば萎凋も上手く行きづらいですし、萎凋がキチンと出来なければ、次の揉捻→発酵に影響します。日本の気候で安定した紅茶を作るには、「萎凋槽」はあった方が良いと思います。何人かの生産者さんは費用はそうかからずに、DIYで、加温機能、風量調節可能なものを作っています。

↑こんな光景は日本ではあまり見られないかも?

✳︎揉捻

葉を傷つけることで、酸化発酵させる訳ですが、これにもコツがあります。ただ圧をかけて揉めば良いというものではなく、揉む速度や時間も、生葉の条件やその日の天候によって違ってきます。私の中国の友人は、揉み始めてから完了するまでに、お茶の香りが6回、明らかに変化すると言います。でも毎回のそれがいつなのかは、一様ではないそうなので、余程年季が入って慣れている人でない限りはタイマーセットしてその場を離れる…というのは不可能でしょう。

✳︎発酵

正山小種、白琳工夫、宜興紅茶、祁门紅茶、日月潭紅茶の産地を見てきた経験からすると、発酵の設備は空間が小さ過ぎると何かしらの不具合が生じます。湿度、温度は勿論のこと、その出入り口、対流のバランスを考えなければなりません。

✳︎乾燥

少量の時は棚型乾燥機でも良いと思いますが、量がある程度増えてきたらやはり、それ用に自動乾燥機があった方が良いですね。緑茶のとは分けた方が賢明だと思います。

さて、ザックリ、大雑把に書きましたが如何でしたか?実際にお会いして、工場で話をすればもっと具体的なお話が出来るのですが、ユーザーから業者の方まで幅広く読んでいただいているらしい!?こちらでは、こんな感じで書くのが精一杯です。

もっと詳細を知りたい方は個別に質問していただきますようお願い致します。

最後に、日本の生産者にとって、国産紅茶はまだ発展途上の分野で、誰でも1番になれる可能性があります。また煎茶ほどの綿密な仕上げも必要ないので、小売をしたい方には扱いやすい面もあるかもしれません。引出しの1つとして、技術を習得しておいて、決して損はないのではないでしょうか?

10年後の国産紅茶の姿がとても楽しみです!

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