粗茶淡飯

中国・台湾・日本のお茶に関する色々。執筆者・徳田志保。

魔都・上海の茶館②

2016-07-25 00:26:44 | 茶館・茶房・茶坊・カフェ



喫茶だけでは経営もたず…

①に書いた上海のツワモノ達が経営する茶館は全て広く、内装にもお金をかけてあり、個室も完備されているので、接待にも使用可能です。そのレベルたるやテレビや映画の撮影にも使われる程です。(上部画像はテレビ撮影の時のもの)

ただ。昨今の日本もそうですが、喫茶だけでは利益が限られてしまいます。ましてや煎のきく中国茶、長居になるのは必至。これではあっという間に立ち行かなくなります。

そこで…

日本のカフェと同じく飲食などのサービスも提供します。ただし出すものは日本のとは拘り方が違い、簡単なお茶菓子から宴会料理まで、幅広くなります。その追求心たるや、日本のカフェなど足元にも及びません。彼らは中国全土はもちろん、必要とあらば海外からも拘りの食材を集め、かなりの人件費をかけて調理師を雇います。



また中国医学の医師を常駐させ、専門スタッフに鍼灸や推拿のサービスを提供しているところもあります。

そして、肝心なお茶。

良茶は当然高いのですが、彼らのお茶は、上海にしてはちょっと掛け率が低過ぎないか?という価格設定なことが多いのです。

なぜならば…

生産者に対し、生産者の宣伝(情報開示)をすることを条件に、卸価格を通常では考えられない位、大幅に下げさせるからです。

彼らの茶館は、ネットで検索すれば一発で様子がわかるような有名店ですし、業界でも一目置かれる存在です。もちろん、優良顧客も多く持っています。そこに認められて納品できたという実績は、生産者にとっては勲章みたいなものなのです。

上海で毎年行われるお茶の展示会を見たことがある方はご存知だと思いますが、毎年その手のイベントには中国各地から物凄い数の製茶関係者が上海へ押しかけ、取引のチャンスを虎視眈々と狙います。その熾烈な競争の中で勝ち抜くのは糸を針の穴に通すより難しいと言われています。

彼らはそれを逆手に取り、気に入ったお茶を見つけると、上記の条件で取引を持ちかけるのです。

基本的には3年位、最高級品を安価に納めさせ、その生産者の名前が有名になって来た頃(生産者自身に販売力がついてきた頃)には、また次のターゲットへ…というサイクルになっているようです。

彼らはその3年間の間に、店舗での小売、卸販売を集中的に行い、特に贈答用として企業や団体組織などから大量注文を請負ます。通常の、贈答用は最高級品ではなく、所謂普及品ですから、ここで量も稼げ、かなりの利益が見込めることになります。

またこれも「茶縁」の延長でしょうか。顧客と顧客を繋ぎ、新たなビジネスを生みだす橋渡し的なことを担っている茶館もあります。これはあくまで偶発的に始まることなのでしょうが、この手のチャンスが星の数ほどあるのも上海ならではなのだと思います。

上海の経営者達は、この経営の手法は中国国内でも上海が一番早く始めたと認識しているようで、最近は北京やその他の沿海部の大都市の茶館にもこの手法が徐々に広がっていると話していました。

さて今回はあくまで「個人オーナーの茶館」を対象にしたお話しになりましたが如何でしたでしたか?

上海で、一見さんとしてこの手の茶館で喫茶する際は、「少し高くても構わないので、オススメのお茶はありませんか?」と伝えた方が、美味しいお茶に出会える可能性が高くなると思います。お試しあれ!



魔都・上海の茶館①

2016-07-24 00:54:40 | 茶館・茶房・茶坊・カフェ




中国語で「魔都」と書くと中国人が思い浮かべるのは上海、今回は上海の茶館事情の一端をお話します。

上海も日本と同様、若い人のお茶への関心度は低いし、ケチで有名な上海人のお財布をこじ開けるのは、なかなかの至難の技。彼らは自分の自尊心を満足させる、相当たる理由がないもの以外の出費はトコトン抑えます。

上海は物価もテナント料も東京と変わらない、お茶の商売をするには大変厳しいビジネス環境です。魔都・上海で、「個人オーナー」として10年以上茶館の経営をしてきた…となると、ある意味ツワモノの仲間入りではないでしょうか。
上海で常に良質なお茶を取り揃え、顧客を満足させ、経営的に維持・持続して行ける人材は、本当に限られています。

では、上海で比較的長く経営を維持できている個人オーナーの茶館は、どんな手法で経営をしているのでしょうか?