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これから急増する「定年女子」を襲う厳しすぎる現実

2018年09月26日 | プロライフ
これから急増する「定年女子」を襲う厳しすぎる現実 人口減少日本で、女性に起きること by 河合 雅司の転載



●日本は「おばあちゃん大国」になる。
●2017年生まれが90歳まで生きる割合は、女性が2人に1人(50.2%)、男性も4人に1人(25.8%)だ。95歳までなら、女性25.5%、男性9.1%に上る。
●老後の収入をどう安定的に確保するか。
●10年後には131万人の女性が定年を迎え、20年後にはさらに250万人の女性が定年に達し、合わせると、約380万人の女性が定年後の生活を歩む。
●「定年女子」の再就職は難しい。
●長き老後の生活費はどうすればよいのか。
●多くの人の老後の生活資金の主柱といえば公的年金。
●女性は「独り暮らしになる可能性」が大きい。
●「高齢化した高齢者」となって身内が1人もいないとなりうる。

これから急増する「定年女子」を襲う厳しすぎる現実
人口減少日本で、女性に起きること

河合 雅司

女性の2人に1人が90歳まで生きる

日本は「おばあちゃん大国」への道を邁進している。

昨年の敬老の日に合わせて、総務省が発表した推計(2017年9月15日現在)によれば、65歳以上の高齢者は前年比57万人増の3514万人だが、これを男女別にみると男性1525万人、女性1988万人で女性が463万人多い。

女性100人に対する男性の人数でみても、15歳未満では105.0、15~64歳は102.3と男性が上回るものの、65歳以上になると割合は逆転する。男性は76.7にまで落ち込んでいるのだ。

総じて女性のほうが長寿であるためだ。厚生労働省の「簡易生命表」によれば、2017年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.26歳となり、ともに過去最高を更新した。ちなみに、戦後間もない1947年は男性が50.06歳、女性53.96歳であった。

この頃「人生100年時代」と言われるようになったが、「簡易生命表」で確認してみよう。2017年生まれが90歳まで生きる割合は、女性が2人に1人(50.2%)、男性も4人に1人(25.8%)だ。95歳までなら、女性25.5%、男性9.1%に上るという。

各年齢の平均余命をみると、2017年時点で40歳だった人の平均余命は男性42.05年、女性は47.90年だ。70歳だった人は男性15.73年、女性20.03年である。

「おばあちゃん大国」となった日本では、〝80代ガール〟がファッションリーダーとなり、今では考えられないような流行やブームが到来するかもしれない。

かつてない規模で「定年女子」が誕生する

だが、長寿を喜んでばかりはいられない。

平均寿命が延びたといっても、「若き時代」が増えるわけではない。老後がひたすら延び続け、戦後間もない時代の高齢者には想像もできないほど膨大な時間を過ごすことになる。それは、老後の収入をどう安定的に確保するかを考えなければならないということに他ならない。

「簡易生命表」の数字を見るかぎり、誰が100歳まで生きなければならないか分からない。とりわけ確率が高い女性の場合、人生100年を前提してライフプランを立てておいたほうが無難だ。

もちろん、これからの「おばあちゃん像」は大きく変わる。一昔前に比べて若々しい人が目立つようになったが、変わるのは容姿だけではない。1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性の社会進出が進んだ。

もうすぐ、われわれは、日本のビジネス史において経験したことがない場面に遭遇することだろう。かつてない規模での「定年女子」の誕生だ。

総務省による2017年の「労働力調査(速報値)」を見ると、55歳から64歳の女性の正規職員・従業員は131万人いる。45歳から54歳となると、250万人だ。

65歳を定年と見なして、この女性たちが定年を迎える場合、10年後には131万人の女性が定年を迎えており、20年後にはさらに250万人の女性が定年に達している。合わせると、約380万人の女性が定年後の生活を歩むことになるのだ。

男女雇用機会均等法の施行以降、オフィスの風景は様変わりした。寿退社が多く、コピー取りやお茶汲みが女性の仕事とされた時代は完全に終わり、今後は1つの会社に勤め続けて定年退職を迎える女性社員が増えてくる。

統計の数値がそれを先取りしている。総務省の「労働力調査(基本集計)」の平均速報(2017年)によれば、定年まで10年以内の55〜59歳の女性の就業率は、2007年の59.5%から2017年には70.5%へ上昇した。60〜64歳も2007年の41.0%から2017年は53.6%に増加した。

内閣府の「男女共同参画白書」(2016年版)は、「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と考えている人は45.8%だと伝えている。1つの会社に勤め続け、昇進する女性も珍しくなくなり、女性役員も次々と誕生した。厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2016年度)によると、課長相当職以上の管理職の12.1%は女性である。

男女雇用機会均等法の施行年に四年制大学を卒業して就職した女性の多くが、2024年には60代に突入する。この世代は途中で退職した人も少なくないが、彼女たちより少し後の世代は働き続けている割合が増えてきており、定年まで働き続ける女性はさらに増え続けることが予想される。

「人生100年時代」を展望したライフプランを考えるとき、定年後も働くというのは大きな選択肢の一つとなろう。ところが、定年女子を待ち受ける雇用環境は、現時点では決してバラ色ではない。定年退職を迎える女性の場合、厳しい現実が立ちはだかっている。

オールド・ボーイズ・ネットワークとは?

第一生命経済研究所が定年前後に再就職した60代に調査を実施しているが、男性は「退職前から(再就職先が)決まっていた」が36.8%、「満足のできる再就職先がすぐに見つかった」が30.3%と、70%近くが定年後の人生の選択をスムーズに決めている。

これに対して女性はそれぞれ22.2%、17.8%と、苦戦ぶりをうかがわせる数字が並んでいる。男性以上に、長い老後のライフプランを描き切れない女性が増えることが予想される。

男女の差が生じる要因としては企業側の責任も小さくない。男性の場合、「前の勤め先が紹介してくれた」が26.3%なのに対し、女性はわずか4.4%にすぎない。

50代後半の女性の53.0%は勤務先から定年後の仕事に関するアドバイスや情報提供を受けておらず、多くはハローワークや友人・知人、インターネットを使って自ら情報を集めているのである。

男性と同様に65歳までの再雇用制度も利用できるが、前出の第一生命経済研究所の調査によれば、男性の6割ほどの水準だ。むしろ、以前から関心のあった資格を取得するためにスクールに通うなど、「第2の人生」を切り開こうという傾向も見られる。

定年女子の再就職を厳しくしている要因の一つに、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の存在がある。

「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは、排他的で非公式な人間関係や組織構造のことだ。伝統的に男性中心社会であった企業コミュニティーにおいて、暗黙の内に築き上げられてきた。

社内派閥や飲み仲間、業界の勉強会、経営者の親睦団体など、ネットワークの形態はさまざまだ。多くの男性はこうした人脈を通じて情報交換をしたり、仕事上の便宜を図ったりしている。

女性たちは、ほとんどが蚊帳の外に置かれているため、組織の文化や暗黙のルールも伝わりにくい。

重要な人事異動や新規プロジェクトが、仕事帰りの居酒屋などの会話の中で決まることも少なくない。女性の昇進を妨げている大きな要因として挙げられるが、定年後の好条件のポストについても例外ではないということだ。

そうでなくとも、女性の場合、これまで1つの企業で働き続ける人が少なく、定年後の生活について参考にできる先輩がなかなか見つからない、相談できる仲間がいないという事情があった。

企業には女性が定年退職まで働くことすら、あまり想定してこなかったところさえある。企業経営者は、定年女性の再就職の受け皿づくりを急ぐべきである。
わが子に先立たれる女性も増える

とはいえ、企業経営者の奮起を待つだけでは心許ない。人生100年をにらんで自ら準備できることは、若いうちから実践に移しておくに越したことはない。

では、長き老後の生活費を、どうやり繰りすればよいのだろうか。

よほどの資産家は別にして、多くの人の老後の生活資金の主柱といえば公的年金であろう。女性は男性に比べて賃金が抑え込まれたり、途中で寿退社したりする人も多いため、退職金や年金受給額も低い傾向にある。賃金構造基本統計調査(厚労省、2017年)によれば、女性の賃金は男性の73.4%だ。

この男女格差を引きずったまま、高齢期に入る女性は多い。男性よりも老後が長いことを考えれば、少しでも受給額を増やしたいところだ。

公的年金は受給開始後、生きている限り受け取れるし、長い年月の間の物価上昇にも対応している(民間の個人年金や企業年金は必ずしもそうではない)。

まず選択として考えたいのが、「年金の受給開始年齢の繰り下げ」だ。むろん、受給開始年齢の繰り下げは男性にとっても大きな選択肢であるが、寿命の長い女性のほうがそのメリットは大きい。

年金額を少しでも増やしておきたい理由は、寿命の長さが「独り暮らしになる可能性」の大きさと抱き合わせになっていることにもある。

夫のほうが年上という夫婦は多いだろう。男女の平均寿命の差も考え合わせれば、連れ合いを亡くしてから独りで暮らす時間はかなりの長さとなる。

さらに考えなければならないのが、人生100年時代においては、年老いた子供に先立たれる女性が増えてくる点だ。「高齢化した高齢者」となって身内が1人もいないとなれば、頼れるのは年金だけとなろう。

具体的に説明すると、現行では公的年金の受給開始年齢は原則65歳である。だが、本人の希望で60〜70歳の間で選択できる。受け取り開始時期を1ヵ月遅らせるごとに、受給額は0.7%ずつ増え、最も遅い70歳からもらい始めれば、受給額を42%も増やすことができる。

70歳の受給開始から12年弱で、原則として、65歳から受給を開始した場合と年金総額は等しくなるという試算もある。これに従うならば、70歳まで受給を遅らせて81歳以上生きればより多くの年金をもらえることになる。

女性は、かなりの人が100歳近くまで生きるとみられているのだから、得をする人は多そうだ。

ただし、男女を問わず、年金受給開始年齢を繰り下げようと思えば、その間収入の算段をしなければならない。それは「働けるうちは働く」とセットとなろう。

とはいえ、先述したように「定年女子」の再就職は難しいという現実もある。

定年後の好条件ポストを確保するには、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」を崩さざるを得ないが、長い時間をかけて築き上げてきたアンダーグラウンド組織の強固な結びつきを断ち切るのは難しい。ならば、メンバーに加わるのも手だ。

ただメンバーに加わろうといっても、ハードルが低いわけではない。そこで対抗策として考えたいのが、性別を超えたディスカッションの場を設けるよう会社側に働きかけることだ。

就業時間内になるべく多くの接点をつくっていくことで、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に風穴を開けられれば、今よりキャリアアップしやすくなり、定年後の選択肢も広げやすくなる。

「起業」を考えよう

それでも、高齢になって自分らしく働ける仕事はなかなか見つからないものだ。そこでさらなる選択となるのが「起業」だ。起業ならば、「第2の定年」を心配しなくてよい。

男性に比べて勤務先からの情報が少ないという状況を見越してか、定年前に60歳以降も働ける会社に転職したり、起業に踏み切ったりする女性は増加傾向にある。

もちろん、そのすべてが安定的な収入に結びつくとは限らない。勝算があって踏み切る人ばかりでもないだろう。退職金をつぎ込んだ挙げ句、事業に失敗したとなったら目も当てられないと尻込みしたくなる人も多いだろう。

こうしたリスクをできるだけ減らすためには、定年間際になって慌てて準備をするのではなく、老後の長さを考え、むしろ若い頃から将来的な起業をイメージし、人脈づくりやスキルアップを計画的に進めるぐらいの積極的な発想がほしい。起業を念頭に置いて資格取得やスクールに通うのもチャンスを拡大する。

内閣府男女共同参画局の「女性起業家を取り巻く現状について」(2016年)によれば、女性の起業が最も多い年齢層は35〜39歳の12.1%である。次いで30〜34歳の10.4%だ。一方で55〜59歳以降も上昇カーブを描き、65歳以上も9.9%と3番目に高い水準となっている。

起業を志した理由のトップでは「性別に関係なく働くことができるから」が80.8%と最も高く、「趣味や特技を活かすため」(66.7%)、「家事や子育て、介護をしながら柔軟な働き方ができるため」(54.4%)などが男性に比べて大きくなっている。

子育てや介護に一段落ついたタイミングで、いま一度、「自分らしさ」を見つめ直し、「仕事と家庭の両立」を求めて起業に踏み切っている人が、すでに相当数に上っているということである。

女性の場合、78.6%が個人事業主である。起業にかけた費用や自己資金をみても、50万円以下が25.2%とトップで、比較的低額で開業する傾向にある。経営者の個人保証や個人財産を担保とはしていないとした人も73.6%を占め、手元資金の範囲で堅実に始めるという人が多い。肩肘張らずに考えれば、案外、始めやすい。

女性は男性に比べて子育てや介護といった生活ニーズに根ざした「生活関連サービス、娯楽」(18.8%)、趣味や前職で身につけた特技を生かした「教育、学習支援」分野での起業が多いのも特徴の一つだが、今後、勤労世代が減っていく中で、生活関連サービスのニーズは大きくなる。

こうした分野で小回りのきくサービスを展開する企業が増えることは、社会全体にとってもプラス効果が期待できる。

大きなリスクを背負わない人が多い分、女性起業者の起業後の手取り収入は少なく、月額「10万円以下」が26.7%、「10〜20万円以下」が22.5%と、半数近くは20万円以下にとどまる。だが、これでも長い老後を踏まえて、「老後資金の蓄え」、「年金の足し」として考えれば大きい。

女性に限らず、男性だって、長い老後を、いかに「自分らしく」生きるかは大きなテーマであろう。現役時代から入念な準備を進めておかなければできないことは多い。少子高齢社会にあってのライフプランづくりは、実に計画的でありたい。

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