(続き)
雪が積もった公道へ車を慎重に走らせると、どの車も10km程度の超低速で進んでいた。
雪道の怖さを知らない私は、
「もう少しスピード出せば?」と思いながらついて行った。
そして幹線道路に入って目を疑った。
道路全体が完全に凍結していたからだ。
「マジっすか?これっていわゆるアイスバーンだよね・・・」
そもそも今回、いつも通り車で行こうと思ったのは、
大通りに出ればせめてシャーベット状で大丈夫だろうと楽天的に考えていたからで、
全面氷の一番行きたくない状態は想定外であった。
しかし気を取り直して、前を行く車は右折して視界が開けたのをいいことに、
あることを試したくなった。
それは、雪道は危険と聞いていたが、どの位危険なのか知りたくなったことである。
「やはり実際に経験しないと分からないよね」
前後や左右の安全を確認すると、幸い後続車は信号停車で1台もいなかった。
そこで20km程度にスピードを上げ、軽めにブレーキを踏んでみた。
すると、途端にタイヤがロックし車体が右を向き始め滑り出した。
「うおー、やべー」
慌ててブレーキから足を離すとグリップ力が回復し体勢を立て直せた。
「なるほど、これが雪道の恐さか」
とても焦ったが、伝わる動力に安心して冷静さを装う。
「やはり体に染み込ませないといけないな」
無謀にも少しスリルを感じて、再チャレンジする。
すると今度は、先程より大きく右を向き滑った。
「こえーっ」
急いでブレーキを緩めると再び車体は安定した。その横を対向車が通り過ぎて行く。
この時まで対向車の存在をすっかり忘れていた私は、馬鹿なことをしたなと反省した。
「そうか、だからさっきの車はゆっくり行っていたのか」
こうして雪道の恐さを身をもって体験した私は、車が超低速で進んでいる理由を知ることができた。
もう馬鹿な真似は二度としないと誓いながら、
慎重に信号二つほど進むと車が大渋滞していた。
チェーンを付けている車もいたが、そこは雪になれていない都市。
車はほとんど進まず、動いてもノロノロ運転であった。
私も車間距離を大きく開け、ブレーキとアクセルはできるだけソフトに踏んだ。
中でも一番気を遣ったのが緩やかな下り坂で、エンジンブレーキをかけながら何とか通過した。
結局、普段より相当時間がかかり遅刻したが、雪による遅延が認められ事なきを得た。
それにしても、チェーンを前から買おうと思っていたが、
先立つものが無く買わなかったことを後悔した。
雪国の方から見れば失笑を買う話ではあるが、雪の恐さを思い知った一日であった。
「一言」
あっ、今日はクリスマスイブ。ケーキ食べてねえや。