福島県・宮城県で震度6強の地震、被災されました皆様に心より、お見舞い申し上げます。当地は3時間ほどの停電があり、携帯ラジオからの情報がストップ、コードを外し電池に切り替え事なきを得ました。懐中電灯も役立ちました。
◎鰊・鯡Herring にしん
ニシンは、世界においても人類が最も古くからなじんできた魚です。ヨーロッパの北海沿岸地方でも、代表的な魚であったようです。日本では古くより食用として縄文時代の貝塚で、ニシンの骨の出土が見られています。江戸時代、北海道の松前は、ニシン経済に支えられ、ニシンに関する祭事が定着して江差の姥神(うばがみ)大神宮はニシンの神としてきました。人類にとって深い関わりのある魚なのですがそんな鰊は今や以前ほどの存在感を失ってしまった感があります。
現在、ニシンの漁獲量は最盛期に比べ激減しており、日本では明治時代より1957年(昭和32年)にニシンの魚群が消滅していくまでは、ニシンは北海道の水産業界を支えていたのです。1897年(明治30年)の水揚げは97万トンと、実に100万トン近い量でした。
北海道でニシンが消えた決定的な要因は「乱獲」を推測しています。 北海道で本格的に鰊を漁獲するようになったのは、室町時代15世紀の中頃からといわれます。江戸時代(1603-1867)中頃からは最も盛んで、イワシとともに当時肥料としての需要があったことも加わり、ニシン漁業の全盛時代でした。
江戸時代に北海道、東北日本海側で獲れた鰊を、身欠きニシンに加工して船で西日本にまで広がり、京都の鰊蕎麦が知られるようになっていったのです。ニシン漁で沸いた巨額の財産を築き北海道では「ニシン御殿」と呼ばれる建築物を築きあげて現在では文化的に保護記念物として残っています。日本におけるニシンの漁は明治30年(1897年)にピークを迎え、現代的な大型船などが無い時代で、漁獲量は一時は100万トンにものぼっていたのです。
しかしながら乱獲により1950年代半ば以降はほとんど見られなくなって、ニシン業凶漁対策として漁期は3月下旬から6月上旬までに、それでも、沖での漁獲でも不振でした。またソ連沿岸のニシンを求めて漁船が出漁するようになり、ニシン操業は、国際漁業として日ソ漁業委員会において資源保護のための規制の対象となります。その規制措置は年ごとに厳しく1977年、ソ連の200海里漁業水域の設定とともに、日本の遠洋ニシン漁業は衰退の一途となります。
そこで1974年、日本で地域性ニシンの人工孵化(ふか)から55日間の飼育に、北海道立栽培漁業総合センターが成功し種苗生技術が確立がなりました。以来、北海道、東北地方ではこの技術を栽培漁業のなかに組み入れて、ニシン資源の増大が試みられています。このことにより近年の北海道近海ニシンの漁獲量は微増で推移が見られています。 日本の鰊は「数の子」として正月には欠かせないものです。身の部分は、生干し・身欠きにしんとして主に北海道、東北で消費しています。
そして、その群来が数十年ぶりに1999年に突如(とつじょ)として留萌(るもい)で、その後には石狩湾を中心として次第に増え、この10年ほどは北海道の周辺で少しずつジワリとみられています。明治の最盛期には、最大で年間100万トン近くまであったわけで、近年には2008年(3500トン)、2019年(15000トン)と今はその1%(1万トン)前後の規模です。
ニシンに対する食用魚としての需要は依然として根強いものがあり、カナダ、アメリカ、アラスカのほか諸外国から輸入に頼って、それらの大半の、卵は米国やカナダから、魚丸ごとでは、ノルウェーなどからの輸入物がほとんどのようです。
ノルウェーのニシンは200m前後の深い海底の小石に粘着卵を産むタイプで、北海道のニシンは沿岸の水深15m内外の海藻類に粘着卵を産み付けています。魚の量が著しく多いときには石や砂礫(されき)にも卵を産み付け、雄の放精で海が一面に白濁する現象がみられたといいます。このような状態を「群来(くき)る」と称していました。しかし、ニシン資源の激減した近年では、このような現象はほとんどみられません。
産卵の年齢は3歳魚から5歳魚で雌の1尾の産卵数は3万~10万粒ぐらいです。
北海道の西海岸からオホーツク海沿岸にかけての産卵場付近で発育した稚仔魚は、夏以降徐々に北方沿岸に移動し、秋までにオホーツク海沖合いに移り、晩秋には千島列島の間を通って太平洋に南下し、1~2月には金華山沖に達して、3~4月に北上を始め、5月には北海道の太平洋岸に来遊し、秋には千島列島の間を通ってオホーツク海に入り、一部はそこにとどまり、一部は宗谷(そうや)海峡を抜けて日本海に入り産卵行動に入るといいます。
近年の2019年鰊漁獲量の日本一は北海道です。全国シェア約99%と、国内漁獲量のほとんどです。
ニシン科で、寒帯性で幼魚はイワシに似ています。アイヌ語でヌーシィ(よくとれる魚)よりニシンの語源ともいわれています。茨城、新潟を南限とし北太平洋、日本海北方海域を回遊している魚です。
体長35cm程に成長し北国、北海道では、鰊が捕獲される頃やっと春の訪れが感じられることから春告魚(はるつげうお)ともいいます。いわゆる春鰊(3~5月)といわれるものが卵を持って旬として市場に出回っているのです。以前は、イワシと共に大魚に沸いた魚であったのですが、最近は温暖化も考えられ水温の上昇により鯡が北上でノルウエー、ソ連、カナダなど1970年代より輸入物が増えています。
身欠きにしんは、戦前は、鯡の漢字が充てられているぐらいに背肉を食用に胴部分を肥料(食、魚にあらずの語源ともいう)にしていたが現在ではすべて食用としているようです。乾燥状態のよいものを皮、小骨をそぎおとし、そのままつまみとするのが、一番持ち味を味わう食べ方でおいしく頂けます。身欠きにしん(昆布巻き・煮物・三平汁・鰊そば・鰊漬け)、開き鰊、糠鰊、燻製、かずのこHerringroe(カドノコ:納豆昆布佃煮、わさび漬け)の加工品が作られています。
「ニシン漬け」は、北海道のニシン産業の歴史を伝える郷土料理で、厳寒の冬を越すために保存食として食糧を貯蔵のために漬物として家庭でつくられていました。冬が訪れる前に干物としてある身欠ニシンと野菜を一緒に漬け込みニシン漬けとして定着しています。ニシンの減少している今日でも冬の郷土料理として根づいています。
身欠きニシンを一晩、米のとぎ汁に漬けた後に鱗(うろこ)、骨を除き落とし、よく水洗いして5cmほどの長さに切っておきます。ざく切りしたキャベツ、大根、人参、鷹の爪などと交互に一緒にして、米麹と塩で3週間ほど漬け込みするとよいでしょう。
アラスカからは昆布に粘着性のある卵を産み付け数の子昆布(子持ち昆布)といわれ貴重な珍味として塩蔵品を空輸しています。数の子の歯ざわりと昆布の旨みがよく塩抜きして二杯酢、わさび醤油がおすすめとか。
数の子を過酸化水素(現在ではかずのこのみ)で漂白してきれいな黄色としていますが数の子に含まれるカタラーゼにより分解されるので加工助剤としての表示を免除しています。
鰊の生食は、鮮度、寄生虫(アニサキス:-20℃2日で死滅)の問題もあり不適なので、新鮮なものは塩焼きが油が乗って美味です。
100g中生にしんでエネルギー196kcal、水分66.1g、タンパク質17.4g、脂質15.1g(脂肪酸総量12.54g:飽和脂肪酸2.97g・一価不飽和脂肪酸7.18g・多価不飽和脂肪酸2.39g【n-6リノール酸160mg・n-3αリノレン酸100mg・n-3EPA880mg・n-3DHA770mg】)、炭水化物0.1g、灰分1.3g、ナトリウム110mg、カリウム350mg、カルシウム27mg、マグネシウム33mg、リン240mg、鉄1.0mg、亜鉛1.1mg、銅0.09mg、マンガン0.02mg、ビタミンA:18μg、ビタミンD:22.0μg、ビタミンE:3.1mg、ビタミンK:(0)μg、ビタミンB1:0.01mg、ビタミンB2:0.23mg、ナイアシン7.3mg、ビタミンB6:0.42mg、ビタミンB12:17.0μg、葉酸13μg、パントテン酸1.06mg、ビタミンC:Trmg、コレステロール68mg
100g中身欠きにしんでエネルギー224kcal、水分60.6g、タンパク質20.9g、脂質16.7g(脂肪酸総量13.97g:飽和脂肪酸3.46g・一価不飽和脂肪酸8.33g・多価不飽和脂肪酸2.18g【n-6リノール酸410mg・n-3αリノレン酸160mg・n-3EPA760mg・n-3DHA590mg】)、炭水化物0.2g、灰分1.6g、ナトリウム170mg、カリウム430mg、カルシウム66mg、マグネシウム38mg、リン290mg、鉄1.5mg、亜鉛1.3mg、銅0.10mg、マンガン0.04mg、ビタミンA:Trμg、ビタミンD:50.0μg、ビタミンE:2.7mg、ビタミンK:(0)μg、ビタミンB1:0.01mg、ビタミンB2:0.03mg、ナイアシン(8.6)mg、ビタミンB6:0.21mg、ビタミンB12:13.0μg、葉酸12μg、パントテン酸1.24mg、ビタミンC:(0)rmg、コレステロール230mg
100g中にしん燻製でエネルギー280kcal、水分43.9g、タンパク質23.1g、脂質22.1g(脂肪酸総量19.08g:飽和脂肪酸4.53g・一価不飽和脂肪酸11.43g・多価不飽和脂肪酸3.13g【n-6リノール酸200mg・n-3αリノレン酸64mg・n-3EPA1100mg・n-3DHA870mg】)、炭水化物Trg、灰分10.9g、ナトリウム3900mg、カリウム280mg、カルシウム150mg、マグネシウム36mg、リン400mg、鉄3.5mg、亜鉛1.1mg、銅0.16mg、マンガン0.03mg、ビタミンA:Trμg、ビタミンD:48.0μg、ビタミンE:0.5mg、ビタミンK:(0)μg、ビタミンB1:0.01mg、ビタミンB2:0.35mg、ナイアシン(9.3)mg、ビタミンB6:0.10mg、ビタミンB12:15.0μg、葉酸16μg、パントテン酸1724mg、ビタミンC:(0)rmg、コレステロール23068mg
100g中数の子塩蔵水戻しでエネルギー80kcal、水分80.0g、タンパク質15.0g、脂質3.0g(脂肪酸総量1.49g:飽和脂肪酸0.52g・一価不飽和脂肪酸0.45g・多価不飽和脂肪酸0.52g【n-6リノール酸13mg・n-3αリノレン酸7mg・n-3EPA180mg・n-3DHA270mg】)、炭水化物0.6g、灰分1.4g、ナトリウム480mg、カリウム2mg、カルシウム8mg、マグネシウム8mg、リン94mg、鉄0.4mg、亜鉛1.3mg、銅0.06mg、マンガン0.02mg、ビタミンA:2μg、ビタミンD:17.0μg、ビタミンE:0.9mg、ビタミンK:0μg、ビタミンB1:Trmg、ビタミンB2:0.01mg、ナイアシン(5.2)mg、ビタミンB6:0.04mg、ビタミンB12:4.5μg、葉酸0μg、パントテン酸0mg、ビタミンC:0rmg、コレステロール230mgを含みます。
ビタミンB2:0.23mg/生100g中に含み青身魚でDHAの脳の活性化、EPAを含み血流をよくすることに働きます。
ニシン科Clupeidae にしんか
動物界Animalia- 脊索(せきさく)動物門Chordata-脊椎動物亜門 Vertebrata-条鰭綱(じょうきこう)Actinopterygii-ニシン目Clupeiformes-ニシン科Clupeidaeの分類です。
世界のほとんどの温帯から熱帯の海域に分布し、食用、水産資源として極めて重要な存在です。口は体の先端に、やや上向きについて歯の発達は悪く、主にプランクトンを餌としています。少数の例外を除き、腹部に稜鱗(りょうせん)がみられます。体長25cm未満のものが多くニシン、大西洋ニシン、キビナゴ、コノシロ、サッパ、マイワシなどが属しています。
小骨の多い鰊で、かつては鯡とも書かれ魚にあらずともいわれていましたが、今日では100g中でEPA(鯖1.6g・秋刀魚生1.5g・鮪脂身1.4g・鰊0.9g・鰯0.8g)やDHA(鮪脂身3.2g・秋刀魚生2.2g・サバ2.3g・まいわし0.9g・鰊0.8g)は、青魚の脂身の部分などに特に多く含み注目しています。たんぱく源、血流改善・脳の活性化に旬の食材、春告魚の鰊をお勧めします。
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