エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

鹿公園の「理想と現実」・・・

2023年07月20日 | 鹿公園
鹿公園の「理想と現実」


6/17 に生まれたバンビ、母乳を飲んで元気に育て!

★ 歴史から紐解く鹿公園・・・
安平町のHPを覗くと鹿公園について次のように紹介されていた。

今から100年以上前の明治35年 (1902年) に、現在の鹿公園内の森林が日本で最古の保健保安林とし
て指定されました。保健保安林とは、生活環境保全機能、及び保健休養機能の高い森林、すなわち
人間の健康を守るものとして保護することが不可欠な森林です。

当時は、道内の至る所が原生林であったにもかかわらず、なぜ小さな町の一画が保健保安林として
残されたのか、詳細は不明ですが、明治25年にSLが走り、それ以降に鉄道拠点となることが見通さ
れていた点や、明治33年に当時東洋一と言われたコークス場が操業したことが要因ではないかとの
節もあります。当地の開発が進む中、未来のために自然を残そうという先人達の想いが表れたもの
と推測されます。この森林は、町民憩いの場として親しまれているほか、キャンプ場やアスレチッ
ク、パークゴルフ場等が整備されているため、レクリエーション拠点として町外者の来場も多いで
す。また、運が良ければ、夏に園内の池でホタルを見ることもできます。


個人的感想だが、なんの説明にもなっていない鹿公園の紹介に失望している・・・
いつもネックになっている言葉が「保健保安林」で公園内の整備などを訴えても常にこの言葉が先
頭に出て来て、「なにも行動出来ないんですよ」と答えはいつも同じ。行政の怠慢さが露呈する印
象が強い。
HPの中にある「保健保安林とは」では、生活環境保全機能とか保険休養機能の高い森林、そして
人間の健康を守るものとして保護することが不可欠と書かれているが、皆さんはご理解出来ただろ
うか?

広大な公園内には幾つもの遊歩道が整備されていてその中には旧追分町のご神木とされたコナラの
大木があり説明が記された看板が設置されている。しかし、安平町になって以降その看板は放置状
態で説明文はもう読めない状態のままだ。老木となったコナラの大木も保護されていないため、枯
れた枝も目立ち朽ちるのは時間の問題かも知れない。台風などで倒れた樹木が遊歩道を支障し危険
と認めた時はその除去作業は比較的手早い。しかし、切りっ放しで切られた木は無造作に遊歩道の
脇に放置したままで終わっている。これは保全とは程遠い森づくりを知らない事なかれ主義の消化
業務としか見えないのである。保健保安林だろうが、国有林だろうが、公園として観光の目玉にも
しているならその森林内の整備は不可欠であり、もっと手を入れてもっと町民内外に親しまれる森
づくりに力を入れて欲しいと願う。

公園を管理する町が単に表面的な説明だけでない本当の憩いの場として活用出来るような取り組み
が求められていると思う。最後に運が良ければ、夏に園内の池でホタルを見ることもできます。と
あるが、運が良ければでは無く、ホタルが毎年見られるような環境を整える事が大切だと気付いて
欲しいものだと訴えたい。


★ 鹿の飼育も50年以上の歴史・・・
鹿公園内にある鹿柵は作られてからすでに50年以上経っていると言う。その間何度か補修はされ
つつも全体的には金網の錆も目立つし、柵を支える支柱の束石が土面から浮いている箇所もあり、
これまで充分に整備してこなかったツケがここに来て姿を現し始めた。地形の傾斜を利用した鹿柵
内の土状は、雨が降ると上から下に土砂が流れ落ちる。柵内にある樹木の根も土が流れて剥き出し
となり、大木化した樹木はいつ倒れるか分からい状態だ。もし、柵側に倒れたら柵は潰れて破損し、
そこから鹿が逃げる事もあり得るだろう・・。猛獣とは違うエゾシカだが、自然界のエゾシカとは
違い長い間飼育された鹿は自分たちで餌を探し食べる習慣は無い。人に危害を与える心配が少ない
事が少し救いではあるが、予算の事ばかり気にしながらこれまで手を加えて来なかった鹿公園の隠
れた事実が理想と現実の狭間にある事を知って欲しい。

そう行政は何もしてこなかった・・のではなく、何もしようとしなかったが正解で、新たな事業を
立ち上げる気力のあるお役人がいない人材不足なのかも知れない。ただ、私は行政事にはほぼほぼ
無知でその仕組みや中身に精通していない立場で物申している。

「何も分からん奴が勝手な事を・・」と、お叱りを受けるかも知れないが、多くの方が訪れるよう
になった鹿公園の鹿たちの人気もちょっと深堀すれば光と影があり、世間様には知られざるところ
も多い事は確かである。


★ 鹿たちの一年そして一生・・・

エゾシカの寿命で検索すると、オスとメスでも違うし寿命自体にも違いはあった。
その中で最長は、オス9歳、メス20歳とあったが、平均するとオス3歳、メス4歳というデータ
もある。これは環境に大きく影響して寿命は様々変わると思っても良いかも知れない。

では、鹿公園内の鹿の寿命は?と聞かれるとはっきりしたデータの記録は無い。
しかし、この2年間は観察ノートを付けていて給餌しながらその変化を記するようにして来た。

私たちがボスと呼んでいるオスは推定だが6歳位。それは枝分かれした角の数と飼育して来た給餌
員の観察から出した年齢でもある。そしてメスの最高齢は5歳位とみている。

自然界における鹿のライフサイクルは下記の表を参考にして欲しいが、一年中柵内で飼育されてい
る鹿公園の鹿はそのサイクルにズレがあるかも知れない。



札幌市環境局環境都市推進部環境共生担当課による

そのズレを感じる出来事のひとつは、出産期で表では6月~7月とあるも鹿公園では8月、9月に
生まれた実例もある。また、繁殖期も12月まで続く事もありそれが理由で出産期もズレる事が分
かって来た。繁殖期のオスはメスを巡る権力争いで気が荒くなり、オス同士の戦いは柵内でも見る
事が出来るが、年に一頭から二頭はこの戦いで死することも見て来た。時にはオスと気が合わない
メスが攻撃を受けて傷付き、その後亡くなるケースもあり弱肉強食の世界はここでもあるのかなぁ
と思うところだ。

そしてまた、出産期を迎えたメスも順調に出産できる鹿とそうでない場合もあり、それはエサの量
や栄養のバランスにも影響していると私たちはみている。

今年6月に生まれた鹿は2頭いたが、1頭は3週間ほどで亡くなってしまった。
詳しい原因は不明だが、親の育児放棄と受乳不足ではないかと推測している。また、先日出産期を
迎えた鹿が難産と見られる状態のまま数日が過ぎても出産出来ず、最後は獣医による「安楽死」の
判断で処された事は、正直ショックを隠せなかった・・。

僅か0.5haしかない柵内の鹿にとって、エサを求めて移動する事も出来ないし、他の群れに混じ
って繁殖する事も出来ないのである。人間でいう「近親相姦」に当たる禁忌扱いされる行為だが、
ここではそうするしか繁殖出来ない現実もまた事実なのである。

飼育している鹿は現在14頭 (オス5頭、メス5頭、雄雌不明の子鹿4頭) だが、何頭になっても基
本エサの量は変わらないし、毎年増減はあっても15頭前後で収まるのも事実である。

動物園なら専門の飼育員や獣医師が常駐し、栄養も考えられた充分な給餌もされるのだろうが、鹿
公園内の鹿は、柵で囲んだ中に鹿を閉じ込めて、少ないエサに耐えながら放置された野生の鹿と言
っても過言では無い気がする。

色々書いてしまったが、これが「理想と現実」・・・。