エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

知床・遠音別岳(1330.5m)

2009年03月23日 | 山紀行 (道東)
知床遠征・・・遠音別岳 (1330.5m)
■ 山 行 日    2009年3月22日(日)  日帰り
■ ル ー ト    オペケプ林道~北西尾根ルート 往復
■ メ ン バ ー     夫婦登山 №13
■ 登 山 形 態     山スキー&アイゼン登行
■ 地 形 図    1/25000地形図 「ウトロ」「知床峠」「真鯉」「遠音別岳」
■ 三角点・点名   一等三角点 点名「遠根別岳 オンネベツダケ」
■ コースタイム   登り  7時間   下り  3時間40分
<登り>
04:40      オペケプ林道入口
05:40      C252 送電線下
06:10      C341 ピーク
08:40      C780スキーデポ
11:40      遠音別岳(1330m) 頂上

<下り>
12:00      下山開始
13:00      スキーデポ地点
15:35      林道出合
15:40      登山口(オペケプ林道入口)



 遠音別岳西面・・斜里漁港から望む
  「一人歩きの北海道山紀行」(sakagさん撮影)から 
sakagさんの遠根別岳紀行はここをクリック

( 3/21 遠音別岳の全容は厚い雲に覆われ写真に収める事が出来ませんでしたので再度sakagさんの
写真をお借りしました)


★ 知床遠征について・・・

目標としている知床の1000m超峰の山は全15座。
その内、赤字の6座は未踏で今回、遠音別岳(おんねべつだけ) 1330.5mに挑戦した。

知床半島 1000m超峰 全15座

 1.羅臼岳 (1661m) ・・・・・96.7.4登頂
 2.サシルイ岳 (1564m) ・・・・97.7.5登頂
 3.硫黄山 (1562.5m) ・・・・・97.7.6登頂
 4.知円別岳 (1544m) ・・・・・97.7.6登頂
 5.東  岳 (1520m) ・・・・・97.7.6登頂
 6.三ツ峰 (1509m) ・・・・・・96.7.5登頂
 7.オッカバケ岳 (約1460m) ・・97.7.5登頂
 8.南  岳 (1459m) ・・・・・97.7.6登頂

 9.海別岳 (1419.4m) ・・・・・未踏
10.遠音別岳 (1330.5m) ・・・・未踏

11.知西別岳 (1317m) ・・・・・未踏
12.ペレケ山 (1267m) ・・・・・未踏

13.知床岳 (1254.2m) ・・・08.3.23 夫婦で登頂
14.天頂山 (1046m) ・・・・・・未踏
15.ラサウヌプリ (1019.6m) ・・未踏


未踏の山には夏道が無く沢登りか積雪期しか登頂の方法はない。
地元の岳人でも訪れることの少ない難儀でマイナーな山ばかりだが、それはまた奥深き
最果ての地に位置するところであるだけに単にピークハンターの如く頂上に登れば済む
話ではないし、簡単に登れる山など一つもないだろう。そんな中で昨年、2年越しで登
頂に成功した「知床岳」は、二人で成し遂げた達成感の大きな山であり念願の登頂でも
あった。それから始まった知床遠征は、今年で3年目。
残す6座の中で遠音別岳は一番長いルートと判断する。最初から簡単ではないと覚悟し
ての計画・・登れなくても登れる出発点に来ることでその山を楽しみたい。
途中まで登ってダメなら下山・・エバ夫婦の登り方だ。


【 3/21(土) 】 第1日目

自宅を 7:35 出発。


3/21 途中の上足寄付近から「阿寒富士」と「雌阿寒岳」を望む

日勝峠、上士幌、足寄、阿寒湖、弟子屈、斜里を経由して、まずは海別岳の登山口となる
斜里町峰浜のスキー場に隣接するウナベツ温泉・ウナベツ自然休養村管理センターに立ち
寄った。 (14:00着 自宅から約400㌔ 所要6時間30分)
場合によっては今夜の宿泊地とすることもあり偵察を兼ねてである。(入浴料300円)
次は、海別岳の登山口となる海別岳の北西、海別川十二線川と出合う林道の確認をした。
ウナベツ温泉から町道・東十線を南下する。地形図で確認すると登山口は意外と近く5分
で出合に着いた。足元から見上げる海別岳の広い北西尾根が続く・・しかし、山頂部は雲
の中でまったく見えない。近くにテントが張ってあったので近づくと3人パーティーの登
山者だった。今日、海別岳に登ったが猛吹雪で視界も悪く1000m付近で下山して来た。
と言うことらしい。他にも何組も登っていたが皆途中で下山した様だと教えてくれた。
最果ての地・知床であっても連休となれば訪れる登山者が多いのかと、自分たちがその一
人である事をよそに思ったりした。

次は、遠音別岳の登山口を目指す。
峰浜から国道334号線を約15㌔ウトロ側に走る。観光名所「オシンコシンの滝」の手前
約1.5㎞の所にオペケプ川とオペケプ林道がある。林道出合には林道の標識があるので
確認出来るし、国道と川の出合には広い駐車スペースと大きな案内図があるので更に確認
出来るだろう。

駐車帯には4台の車が駐車してあり1台はこれからの出発準備をしている様だ。間もなく
15時となる時間だったが3人パーティーは2時間だけ歩いてテント泊し、明日のアタッ
クに備えるという事である。彼らが出発した後すぐに偵察を兼ねて少しだけ林道を登ると
単独の下山者と出会う。700m付近でテント泊し登頂しての下山らしい。はやり厳しい
登行らしくテン場から頂上まで3時間を要したと言う。


★ あぁ~ 明日はどうなることやら・・・
エバ夫婦は、ここを宿泊地と決めるとすぐさま安着の準備となり恒例の缶ビールで乾杯!
が始まった。

16時を過ぎて3人パーティーが下山して来た。偶然にもエバの知人で新得のO橋さん
グループだった。登頂は果たしたらしいが視界は悪く展望は無かったようだ。また、か
なりの時間を要しての下山だった様で疲労困憊のご様子である。

その後は静かな夜となり明日の早い出発に備えて18:00の就寝である。

【3/22(日)】 第2日目

起床 2:30・・星空である
いつもの様にコーヒーを落とし寝ている体を起こしつつまったりとした時間を楽しむ。
昨夜の特製クリームシチューとアルファー米で朝食を摂り、4:30 車を出た。
オペケプ林道出合までスキーを持って歩く。
林道入口からスキーを履いての出発。4:40ヘッドランプを点けてのスタートだ。


★ 早々 ヒグマの足跡を発見・・・
大きく新しいその痕跡は少し前のものと思われる。薄暗い林道の中では決して気持ちの良い物ではない。
すぐに笛を出してピィーピィーと吹き散らす。足跡は林道を跨ぐように左から右の斜面に消えルートからは
外れていたので少しホッとしたが情報通り今年はヒグマの目覚めは早いようだ。


今回のルートは、「地図がガイドの山歩き」saijoさん
と先週登ったばかりの「一人歩きの北海道山紀行」sakagさんのHPを参考に北西尾根を辿る事にした。
(ルート地図も勝手ながらこちらのHPを参照して下さい)

地形図とトレースを相互確認しながらルートを辿る。雪面は比較的固くトレースに乗っかると良く滑った。
林道から外れ尾根に取付き、地図上のC252は送電線の下だ。ルートは尾根上だがトレースは送電線と
平行して一端南下し再び北西尾根にのっていた。(送電線下には木々がなく歩き易い)その後はC341・
C319と鬱蒼とした針広葉樹林帯の尾根を辿り約400mの平坦樹林帯で約2時間が経過した。
函館のsakagさんとほぼ同じタイムである。


C252送電線の下にて・・

尾根上の樹林は次第に大木化し疎林帯となって来るが、延々と続く長い樹林帯の歩行にいささか疲れて
来た。500m付近から550mの急登をジグを切って登ると緩斜面となり徐々に高度を上げていく。


600m付近の樹林帯を抜けたところ・・

C700m付近でようやく森林限界となりスパッと切れ目を入れた様に潅木が消えた。と同時に風が急に
強く吹き出し雪が舞い始めた。この辺りから頻繁にテープとデポ旗を付けながら辿る。
前方には大きな遠音別岳の頂が聳え立つが見た目以上に厳しそうな山に思えた。


C700m付近から海別岳と斜里岳を望む

最初は、少し強い風くらいに軽く考えていたがそれはすぐに訂正された。黙って立って居てはスキーと共
に流されるほどの強風そして烈風となって容赦なく吹き付けて来た。


C780m付近から見上げる頂上と烈風・・


厳しい登行の中、C1000m付近で幻想的な雲がきれいだった・・

★ 烈風に耐え幸運に助けられた登頂に涙・・・
C780付近でチーヤンがスキーをデポしたいと訴える。この風では流されて歩けず怖い・・とのこと。
8:40 スキーをデポし、12本爪アイゼンを装着。
すでに4時間が経過していた。

天候は快晴なのに何故ここだけこんなに風が吹くのか?
幸い視界が良いのと先人のトレースが僅かに確認出来たので上を向かず下の足跡だけ見て歩けた。
15m~20m毎にデポ旗を立て少しでも潅木があるとテープを付けながら前進した。時にはハイ松の中に足を取られ、
時には顔を上げて風にあおられた。
チーヤンは、目出帽にゴーグルと完全防備。
私は、ゴーグルのみで寒風が頬に打ち当たる。

頂上まで直線距離で約2キロ、標高差は約550mだ。

C850を超えると頂上へ急斜面の取付きとなり斜度を増しながら登って行く。前方を見上げると先人のパーティー
が間もなく頂上に達するところに居た。追い着きたい・・と思いつつも数歩登っては止まり耐風姿勢を取る・・の繰
り返しでは追い着くより離されている感じだった。チーヤンはそれが頻繁だった。「息も出来ない」とはこの事か?
高山での歩行とはこういうものか?と思わせる正に牛歩登行である。

先人のグループが下山し始め、最初のパーティーと擦れ違う。ほとんど口が利けないほど・・で、ただ擦れ違う。
直下では昨日駐車場から見送った3人パーティーと再会。釧路労山のパーティーらしい。「ここは凄いけど頂上は
風無いよ」うれしい一言。「もうすぐだから頑張って・・」と励まされ力が出て来た。

そして、ついに念願の頂上に立った




遠音別岳頂上直下の登り・・写真では読み取れない烈風が吹いているのだが・・・


3/22 遠音別岳 (1330.5m) 頂上にて




少し判りづらいが 知西別岳、羅臼岳方面の展望・・

11:40 登頂。(登り 7時間)

少し遅れてチーヤンも・・・泣きながら登頂した。
「凄かったネェ~」と約3時間に及ぶ烈風に耐えての登頂は、一気に緊張から解放(ときはな)される。

ふと我に返り・・見渡す景色は360度だ。あの風は何処に・・と、ここだけなのか?微風に驚く。

知床半島のほぼ中央のど真ん中。オホーツク海と太平洋・根室海峡を同時に見て北方領土・国後と択捉島も間近な
海に浮かんで見えた。南西には、サラウヌプリと海別岳、北西には海まで裾野を広げる辿った尾根が確認できる。
そして北東側は起伏の激しい複雑な尾根が入り乱れ知西別岳や羅臼岳、ずっと奥に硫黄山の山々が神秘を満ちた姿
で写っていた。
感動が大き過ぎてか東側の切り落ちた断崖には目もくれずここが雪庇の上?なのか、などとも考えなかった。
恒例山頂コーラで登頂を祝い、約20分間の知床を堪能した。

下りでは、風に押されるように駆け足気味で降りて行く。
3時間かかったスキーデポ地点まで1時間、スキーは最後までシールを付けたまま往路を辿り約3時間30分で林
道入口に到着した。幸運にも下山を開始してすぐ山頂は雲に覆われ海別岳もまったく見えなくなっていた。そして
林道に着いた頃、雨が降り出して来た。なんというタイミングだろうか・・・。

下山後、ウナベツ自然休養センターの温泉に浸かり明日の海別岳に備えよう・・と思ったが、雨が本降りとなり風
が強くなって来たので「海別岳は中止」かも・・という思いで斜里町まで戻り斜里温泉(入浴料300円)で汗を流し、
道の駅しゃりで車中泊した。

今宵は、登頂の祝いか?知る人ぞ知る、斜里の「つぼ岳?」で生ビールを飲み至福の夜となる。