エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

原始の山・・・シビナイ岳 (1566m)

2014年02月25日 | 山紀行 (十勝・大雪)
表大雪・地形図に標高も名前も無い超マイナーな山
原始の山・・・シビナイ岳 (1566m)
■ 山 行 日      2014年2月24日(月)   2泊3日
■ ル ー ト      大雪湖~ヤンベタップ林道~シビナイ岳東尾根ルート 往復
■ メ ン バ ー       夫婦登山 №7
■ 登 山 形 態      山スキー (山行は日帰り)
■ 地 形 図     1/25000地形図  「白雲岳」「大雪湖」
■ 三角点・点名    三角点・点名・標高点・山名も無い
■ コースタイム    登り 6時間    下り 3時間
<登り>
07:05        ヤンベタップ林道出合P
08:10~15     ヤンベ分岐
08:55        東尾根取付き
             (シビナイ川左岸林道)
10:05        C1000二股付近東尾根取付き
13:00        頂上

<下り>
13:25        下山開始
14:25        シビナイ川左岸林道
14:55        東尾根取付き林道
15:30        ヤンベ分岐
16:33        ヤンベタップ林道入口(登山口)




★ 魅力・・・
「シビナイ岳 (1566m)」は、表大雪・忠別岳 (1963m)の北東約3㎞のところに表記されている山だが
地形図にはその標高も山名も無い。

私のガイド本にもなっている八谷和彦氏の著書「ガイドブックにない北海道の山々」から北海道地図
(株)の立体ボカシ表現による山岳地図「大雪山」(1981年初版、旭川山岳会監修)と「北海道の山名
一覧」(小山内東一編、1992年)には山名が載っているようだが、その他に山の名前を記した文献は
見当たらないと記されている。
ネット上の検索でもこの山の登行記録は皆無で、いかにマイナーな山であるかが分かる。
当初は地形図に名前の記された1000m超峰だけを登る対象としていたが、最近はそうでない山も
一座として加算していることもありシビナイ岳もその中の一つとして数えるべきと考えた。

1000m超峰全山・・・を意識しなければ当然この山の存在すら知る由も無く、登る事はなかったと
思うが、今は気になる存在になってる事は間違いなかった。

この山に関する各文献や先人たちの登行記録の一節は、いつか機会を作って確認することが必要
だが、今は唯一の参考書を頼りにしてこの山の魅力に迫って見たいと計画を立てて見た。
と言っても結局のところ八谷氏の記録から夏のヒドイ藪漕ぎと熊で有名な高原温泉に近いエリアで
ある事を知ると積雪期の今が無難と同感する。そして、ルートも地形図を見て東尾根を往復してる事
も納得するところだった。更に原始の森を感じる針葉樹の大木や"人も知らない遠い美しい国を求めて
彷徨っている幻想に包まれる"・・・そんなシビナイ岳の神秘な情景は是非実感して見たいと思う。


★ 久々の2泊山行・・・
まずは登山口までのアプローチと登行ルートを思案する。
1日目、自宅から約230㎞の層雲峡温泉を目指す。
エバ夫婦にとってここには良きも悪しきも思い出多い無料の駐車場は今回もお世話になる。
2日目、早朝出発で三国峠へ至る国道273号線を経由して大雪湖畔の石狩川沿いの林道入口
を目指す。4㎞の林道と東尾根取付きから頂上まで距離で約6㎞、標高差で約700mを往復し
車まで戻る。宿は再び層雲峡駐車場だ。
3日目、帰路。


★ 層雲峡氷瀑まつり・・・
前日の23日、19:20層雲峡駐車場に着く。
お祭りが日曜日と重なってか駐車場や道路交差点には係員が居て観光客の誘導をしていた。
駐車場はほぼ満車状態だったが何とか駐車出来安心する。
早々に氷瀑まつり見学と20:30~始まる花火大会を楽しみに会場へ向かった。


※ 氷瀑まつりの様子は別途アップしました。
こちらをクリックして下さい。
 前夜の「層雲峡氷瀑まつり」 

【2月24日(月)】
★ 予報通り・・・
起床 4:30
前夜の就寝は23:30と遅く少し寝不足気味だった。
夜はずっと風も強く天気が心配だったが夜明け前外に出ると満点の星空と風も収まって気合が入る。
今日は、予報通りの快晴が期待出来た。

駐車場出発 5:15

登山口到着 5:40

登山口は、国道273号線大雪湖・高原大橋の手前にある林道出合。
高原温泉、沼ノ原や音更山へのアプローチ林道の出合だが冬期間は閉鎖され除雪もしていない。
林道出合のゲート前だけ少し除雪され1~2台の駐車スペースがあった。



高原温泉への林道出合、ゲートされ除雪はしていない(開通は例年6月上旬らしい)

★ まさかの先行者・・・
出発 7:05
出合に到着した時ゲート前のスペースに車が1台停まっていた。
まさかと思いつつ新しそうなスキーのトレースが林道に付いている事を確認。
もしかして同じ山へと思いつつこんな偶然も無いだろうと期待はしていなかった。
取りあえずゲート前には停められず国道向かいのスペースに駐車して朝食を取った。



歩き始めた林道・・・には、モービルと先行者のトレースが続く


ヤンベ分岐手前から望んだ山をシビナイ岳と思い込み写真を撮る・・・


石狩川を2度跨いで左岸の林道を歩く、林道は広く歩き易かった。


林道出合から約4㎞歩いた最初の二股「ヤンベ分岐」に着く

★ トレース・・・
ヤンベ分岐 8:10~15
モービルのトレースは途中の砂防ダムでUターンしていて業務的に使用されたものと想像する。
しかし、スキーのトレースはその先にも付いていてありがたく利用もさせてもらったがヤンベ分岐に
着いた以降も自分たちが進む方向に延びていて「もしや・・・」と期待が膨らんできた。



ヤンベ分岐~沼ノ原方向へ付いていたスキーのトレース

★ ルート変更・・・
当初のルートは、ヤンベ分岐から沼ノ原方向へ少し歩いてから東尾根に取付く予定だった。
しかし、先行トレースの行方が気になってしまい暫くはトレースを辿って見ることにした。
ただ、最終的には東尾根の最後の末端となる「音更橋」手前まで辿って東尾根に取付いていない
場合はトレースにさよならを言う事にしていた。



正面に見えている山が取付く予定の東尾根になる・・・

★ さよなら・・・
東尾根取付き 8:55
膨らんだ期待は、音更橋手前で途切れてしまった。
トレースは音更橋を渡らず直進していて沼ノ原方向へ延びていた。
いったいどこまで行く先行者だったのだろうか?非常に気になるもトレースのお礼も言えずに
「さよなら」となり少し寂しかった。

取付くルートは変更となったがトレースと別れて東尾根南の末端から取付いた。
急斜面で細かくジグを切りながら苦労して30mほど登ると別の林道が現れた。
その林道は、東尾根の南側にシビナイ川左岸と並行して延びていた。どこまで続いているかは
不明だが高度約1000m付近を緩やかに登りつつ自分たちの進む方向と同じ西へ延びていたので
利用する事にした。
約1.5㎞歩くとシビナイ川の1000二股付近で右股方向に林道は続いていたが下降していたので
ここから東尾根上に登る事とし林道にもさよならをつげる。しかし、少し登るとまた林道に出合う。
林道は西へ延び登りだったので再び利用させてもらった。1100m付近の平坦な尾根上まで延びて
から林道の方向が変わったので、樹林帯へ入る事にする。

尾根上1100m付近 10:30頃


シビナイ川左岸林道から南東側に聳える石狩連山を望む・・・


左岸林道は広く歩き易かった・・・


林道から望むシビナイ岳・・・と、思い込んだ山

★ 迷う読図・・・
地図とコンパスと高度計を駆使して・・・と言いたいところだが、だんだんと不安になって来た。
見えている山と現在地を照らすとどうも位置がずれてしまう。そして距離もありそうだった。
「あの山がシビナイ岳だとすると今はこの辺だ」
「なのに高度はすでに1400mを越えている、おかしい?・・・」
「さらにあの山を目指すなら高度を下げる事は無いのに今下がろうとしている、変だな?」
「地形図上の1243は過ぎたか?」「1431はどこだ?」・・・・・

不安をよそに周りの樹林帯は神秘的な原始林を感じる世界になっていた。

何度も何度も地図とコンパスと高度計を見直すエバ夫婦。



ここはすでに1400mを越えている。前方に見えている山をずっとシビナイ岳と思い込んでいた
★ チーヤンの提案・・・
「お父さん、一度尾根上に登ってからあの山に行かない?」
と言う何気ないチーヤンの提案があった。
この斜面を下って登り返すより一度尾根に登った方が位置がはっきりするかも・・・
私も同感に思うも何度見直してもあの山に疑問符が付いて離れなかった。

原始林の中を少しずつ登って尾根に向かった。
大木ではないがクリスマスツリーが疎らに点在しながらジグを切って登って行く。
振り返れば石狩連山が神々しく堂々と聳え北の方向にも大きな頂きが見え始めていた。



振り返ると石狩連山が堂々と聳えている・・・


目指す尾根は間もなくだった・・・

★ ポコ・・・
シビナイ岳1566m 頂上 13:00
尾根上に辿り着き、二人の高度計を確認するとどちらも1560mを越えていた。
更に地形図から頂上の北側は断崖絶壁で下は忠別沢が流れその対岸上には「高根が原」の平らな
台地があった。北側には大雪高原温泉らしき建物や緑岳、白雲岳と思われる大きな山並みを望み
自分たちが立っているその場所が頂上である事に気が付いた。

あくまでもシビナイ岳は山では無く尾根上のポコでしかないのだ。
遠くから眺めたあの山は、シビナイ岳の南西約1.2キロの1700m峰だったと判明する。

改めて地形図を照らし合わせると今までの不安がすべて解消した。
地形図上のC1431もその向こうのC1243も手に取るように納得の読図と展望だ。

タイムリミットも迫っていた時間だっただけにホッと胸を撫で下ろしチーヤンと固い握手で登頂を喜んだ。




シビナイ岳 1566m 頂上・・・と言ってもただのポコでした。

★ 限界だった6時間・・・
予報通り快晴に恵まれ、日帰り山行を強行して登り6時間も計算上では覚悟はしていた。
しかし、林道歩きだけでも3時間、山に取付いてさらに3時間の登行は正直限界を感じ始めていた。

シビナイ岳と思い込んでいたあの1700m峰が本当のシビナイ岳だったらあと2時間は掛かる計算で
登頂は諦めていただろう。もし登頂出来なければ再度の挑戦はもう考えられなかった。

晴れていたからこそ何度も地図を見る事が出来たし、考える余裕が持てたと思う。
好条件が揃ってこそ登頂に至る登行だったと今回の山行を振り返った。

本当に良かった・・・と安堵する。



頂上の西側「高根が原」を望む


頂上にて 石狩連山を背景にはしゃぐチーヤン


頂上から望む緑岳2019mと白雲岳2229m・・・


頂上から登って来たトレースと石狩連山を望む

★ ひたすら・・・
下山開始 13:25
登頂写真を撮ってから少し下がった所で休憩を取りシールを外して下山した。
登行ルートでは無い尾根上を下山すればしばらくの間バウターを楽しみながらスキー滑降が
出来たと思う。しかし、少し迷いながらアップダウンした登行ルートを確実に戻る安全策を選択し
ひたすらトレースを辿る事にした。

そのためパウダーを楽しめたのはほんの5分だけ・・・
1400m付近で再びシールを付けてトレースを辿った。
それでも下りではそれなりに楽しくシールが付いていてもシュプールを描ける滑りだった。

林道に戻った時は「帰れる」安堵感と達成感に浸るもずっしりと疲れも出て来て足は重かった。

先行していた朝のトレースは帰りも先行していた。この山に居るのは私たち二人だけかぁ~。
日が陰り始めるも今日は帰宅しなくてもいい・・と言う気楽さだけが力となってひたすら林道を歩いた。



帰路、西日が差す林道をひたすら歩くエバ夫婦・・・・

登山口 16:33

★ ご褒美・・・
層雲峡駐車場 17:00
今日のご褒美は温泉と生ビールです。
もし登頂していなかったら生ビールはお預けだったでしょう。
「黒岳の湯」で汗を流し、下のレストランから生ビールを一杯、二杯、三杯と注文して
グイグイと胃袋に吸い込まれていきます。  もう至福のひと時でした・・。

車中では鍋料理とまたまた冷たいビール

そして、氷瀑まつりと花火を見て就寝しました・・・。