エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

夕張・シューパロ岳(1457m)

2011年07月30日 | 山紀行 (増毛・夕張・芦別)
唯一の大滝越えがカギか・・・夕張・シューパロ岳 (1457m)
(1060二股からのルートファインティングも大きな鍵・・軽アイゼン必須)

■ 山 行 日   2011年7月29日(金)   日帰り
■ ル ー ト    奥芦別林道~芦別川西面直登沢 往復
■ メ ン バ ー
  夫婦登山 №17
■ 登 山 形 態   沢登り
■ 地 形 図   1/25000地形図   「芦別岳」 「幾春別岳」


■ コースタイム  入渓から 登り 4時間  下り 3時間
<登り>
  芦別川左岸林道(奥芦別林道)560m地点 7:45出発--(林道歩き)--西面直登沢出合650m
  入渓 8:30---880m大滝 10:05---滝上 10:38---1040源頭11:05
  ---1060二股 11:15---シューパロ岳頂上 12:30

<下り>
  下山開始 12:55---1060二股 13:50---1040源頭 14:00---880大滝 14:25
  ---林道出合 15:55---駐車地点 16:40



★ 1457峰(シューパロ岳)・・・

 1457峰を通称シューパロ岳と呼ぶこの山は、芦別岳の南稜線に位置する「南喜岳(ポントナシベツ岳)(1682m)」から西へ派生する尾根上の二つ目のコブに当たる。芦別岳の主稜線から外れた西側の山魂を後芦別山群とも言うが、どの山も奥深く芦部川左岸沿いの林道を約17キロも入らなければならない。林道から望む頂上部はどう見ても右側(南側)のコブが高く見えるが、地形図に示される左側(北側)の1457m標高点がもっとも高い。

 この山へは昨年の8月林道のみ偵察を終えていて、はやり林道終点から約3キロ手前で崩落した土砂のため通行止めがあることは確認していた。狙うなら林道歩きの分をプラスしなければ・・・とそのチャンスを待っていたところだ。たまたま先日(7月上旬)、HYML(北海道の山メーリングリスト)の仲間でもある山ちゃんがこのルートから登った報告を見て急に登行意欲が湧き早々に参考にさせて頂いて出発する。他に「地図がガイドの・・・」saijoさんの記録も参考にさせて頂いたのでお礼を申し上げたい。

山ちゃんのHP
saijoさんのHPです。



林道から望む「シューパロ岳」左(北側)のピークが頂上

★ 日帰り・・・

 山ちゃんとsaijoさんの記録そして昨年の林道偵察した記録を参考にするとわが家からは日帰りも可能と判断して早朝出発する。自宅から林道車止めまで約2時間・・・は意外にも近い登山口だった。

★ おびただしい数・・・

 林道における熊の糞の数は、正におびただしいというに等しいほどだ。場所によっては3mおきに新旧の糞が点在していた。
 歩き始めから上さんと交互に笛は吹きっ放しだった。当然休憩なども取らずに早歩きで林道終点を目指したのは言うまでもない。



 入渓した西面直登沢は、変化の少ない狭くて浅い通称ブタ沢である

★ 遡行・・・

 林道終点から入渓する沢は、西面直登沢ではなく650二股の右股沢である。一旦渡渉して対岸へ渡り北に延びる左股沢へ移る。右岸沿いに踏み跡があり沢を右下に見ながら一見沢から離れるような感覚になるが15分程歩くと約725m土場らしき広場に出て右手の踏み跡を辿ると再び直登沢に降りる事が出来た。ほどなく690二股に着き右へ、進路も東へ一直線上に進み西面直登沢となる。
 沢自体は小さく水量も足首程度何の変哲もないいわゆるブタ沢であるが、700mを超えると少しずつ斜度を増し沢らしい小滝も出始める。880で唯一の大滝と呼ばれる2段10mの滝に出合う。1段目は難なく登り2段目は6~7mの狭いスラブ状の滝になっていた。良く見ると手がかりがありそうなので直登を試みることとなり、まずはチーヤンが挑む。しかし、中ほどで動きが止まり「冷た過ぎる~!!」と降りてしまった。じゃ私が・・と流れの中に手がかりを見つけて登るがシャワークライムは本当に冷たかった。あと一歩二歩及ばず直登を諦め高巻きのルートを見渡す。左岸は岩壁で無理、右岸の高巻きとなるが急斜面の泥壁で手がかりは草付きのみ・・灌木のある場所まで15mは登らなければならない。四肢を使って慎重に登り何とか灌木帯まで来るも大きく高巻く事になる。滝上に降りる時は再び急斜面の草付きだけで最後は沢から3mほど上から滑り落ちてしまった。この高巻きで30分以上時間を要したが何とか唯一の難関は突破出来た。



一見簡単そうに見えるスラブ状の滝であるが・・・


手がかりもあり何とか登れそう・・なのだが


冷た過ぎるシャワーに耐えられず断念する・・・

 これ以降も渓相に変わりは無く滝らしい滝も無くて高度だけ順調に稼ぐ。1040付近で突然源頭となり岩の隙間から湧き出る水を最後に上は涸れ沢となった。湧水は非常に冷たく美味しい。大滝の水が冷たいのも道理であった。沢形はその後もしっかりと続き1060付近で二股に出合う。ここは右股に進む。すぐに次の二股が現れて一見すると右股が本流と思われ、左股にはすぐに10mほどの岩壁が見える。(ここの部分は、saijoさんのHPを参考にさせて頂きました)誰しもが選ぶだろう右股ではなく左股の岩壁を左岸から高巻いて登った。上に出ると再び沢形がしっかりとあり斜度を増しながら上へ上へと続く。1200mを超えると沢形は続くも斜度は半端ではない。まさに攀じ登る感じで落ちたら止まらない・・恐怖心さえ覚える。足場が無くなると灌木へ逃げて攀じ登り、アイゼンとピッケルがあれば・・と今更に思った。最後は少し右の窪みに逃げて灌木帯を5mほど直登すると頂上だった。


涸れ沢になった1040m付近・・


1060二股の左股出合に10mの岩壁が阻む・・

★ 登頂感が湧かない・・・

12:30  頂上? 登った時は南北の尾根が見えて林道から高く見えた南のコブがここより低かった事を確認出来た。でもまだ半絶とせず視界も悪かったので一旦更に北の尾根にハイ松を漕ぐとその先にもう高いところは無くはやり先ほどの場所が頂上だと確信する。戻るときハイ松に鋸目がありその先の一番高い小さな小さな窪みが頂上だったと再確認。テープも標識も三角点も無いこの頂きだったが、ゆっくりしたくても物凄い数の虫とトンボが飛び交いとても長居は出来そうに無かった。何とか写真だけ撮ってすぐに直下の窪みに降りると虫も無く安住の地に思えた。
 でも「遂にやったー!!」という登頂感や達成感が今一つ湧かず、いつも飲む山頂コーラの味は冴えなかった。



北側から頂上に登るチーヤン・・・


おびただしい虫の数に長居は無用・・シューパロ岳頂上にて

★ 恐怖心再び・・・

12:55 下山開始

20分ほど休憩した後いよいよ下山する勇気を出す。余りにも必死で登って来た頂上直下の急斜面は下りもその恐怖心が蘇り「何としても降りなければ・・」と一歩ずつ歩を降ろした。
 下りの場合、灌木を見下ろす形となり予めどの木に掴るか決められたので最初のイメージより楽に降りる事が出来た。足場がしっかりしたガレの沢形まで降りた時にようやく恐怖心は取れて安堵する。そして、下りは早く源頭で美味しい水を飲み、1060二股の岩壁と880大滝では訓練も兼ねてロープを出し「懸垂下降」をして降りる。




急斜度でも下りは楽だった・・・


880大滝での懸垂下降・・・久しぶりです


30分以上掛かって大高巻きした滝も懸垂下降で5分だった。


あとは、ブタ沢を降りて林道で再び笛を吹くだけ・・・

★ にわか雨・・・

 登り場面でも少しだけ当たったが、下りでは本格的な雨に降られた。元々全身が濡れているのでまったく気にする事は無かったが、にわか雨で済んでくれたのでまずはホッとする。

 林道に出合ってからは再び二人交互に笛を吹きっ放しで車まで戻り、本当の意味でこの山行を終える事が出来た。何より無事で何より熊に遭遇しなかったのが救いである。そして、ようやく未踏の頂を踏んだ実感を噛みしめながらドシャ降りになった国道を走り帰宅した。






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