■ 急増中の「缶詰バー」、魅力は「安さ」「楽しさ」と「起業のしやすさ」
2012年9月1日(土)6時0分配信 週プレNEWS
6年ほど前に都市圏で話題になった「缶詰バー」が、いま再び盛り上がっている。当時は“缶詰”という目新しさでメディアにも取り上げられていたが、最近の盛り上がり方はひと味違うらしい。いったい、なぜ再び「缶詰バー」が急増しているのか。
都内や大阪を中心に缶詰バー「ミスターカンソ」を16店舗展開している「クリーン・ブラザーズ」代表取締役社長の川端啓嗣氏は、その魅力についてこう語る。
「そもそも“缶詰”は世代によって、まったくとらえ方が違うんです。40代以上の人にとって、子供の頃に手にした缶詰というものは、ちょっとした『高級品』。逆に20代の人に話を聞くと、『缶詰製品を食べたことがない』というお客さんが意外と多く、缶詰を手にする手段も、『実家にお歳暮で送られてきた』『父親がパチンコの景品でもらってきた』など。だから“缶詰”に対して、ちょっとした好奇心を持って店に訪れる人が多いですね」
世代によって缶詰に対する思い出がまったく異なることが、友人と缶詰バーを訪れる際、コミュニケーションのきっかけになっているのだという。
また、最近の傾向では、女子会の場所として「缶詰バー」が利用されることも多いとか。
「本格的な『バー』には入りづらい女性でも、『缶詰バー』ならカジュアルに見えるようですね」(川端社長)
確かに缶詰1個当たりの単価は200円から500円と安く、ドリンクも500円前後。これなら飲んで食べても、千円札が2枚もあれば、お釣りがくる。
そして、6年前のブームと決定的に違っている点が缶詰の種類の豊富さだ。
焼き鳥やフルーツといった定番商品から、五目めしなどのゴハン系、そしてハバネロといった流行系など、ツマミにしたい人からゴハンを食べたい人まで、ニーズに合わせてさまざまに展開されている。前述した「ミスターカンソ」では、200~300種類もの缶詰をそろえているんだとか。
一方で、缶詰バーは利用するサイドだけではなく、起業する側にもメリットが多いという。
まず、缶詰は日持ちしやすいため、飲食店が一番頭を悩ませる「食材ロス」がほとんど発生しない。それでいて、缶詰はフタを開けるだけ、もしくは温めるだけなので、調理をする必要もない。よって、店のスタッフもひとりで十分対応できるのだ。実際、「ミスターカンソ」も店長しかいない店舗が珍しくないという。
もうひとつのメリットは、在庫を管理する倉庫と商品を飾る棚を一緒にできること。それにより小さな敷地面積で店を開くことができ、わずか3、4坪で運営している店もあるとか。缶詰をずらっと壁一面に並べておけば、それが店のオブジェにもなる。
このように、起業する際のリスクが最小限に抑えられる缶詰バーには、20代のオーナーも多いという。
「安くて、珍しくて、楽しい店に行きたい」と願う若い客と、「お金も経験もないけど店を持ちたい」と考える若いオーナーの思惑が合致した“2012年版・缶詰バー”。その魅力にどっぷりハマってしまう人々が多いのも、当然といえるかもしれない。