徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

至の月、階段と迷路の街にて 19

2019-11-28 20:06:14 | 小説








 本文詳細↓



 形も大きさも違ういくつものブロックに分かれて宙に浮く、階段と迷路の街の変わり果てた姿が待っていた。
 「⁉」
 反射的にのどを震わせた音は、口の中の布に吸い込まれて外に漏れることはなかった。呆然と街を見上げていると、ペロンと目の前に紙が垂れてきた。
 『どれぞの悪魔の仕業だろう。こうして街を浮かせて、谷底の泉への道を開いていたのだ。層ごと持ち上げるのではなく、バラして浮き島のようにするあたり、連中の美意識が窺えるわ』
 僕のポケットに入っていればいいのに、アダムは僕の頭の上で寝そべって、動こうとはしなかった。
 とにかく行くしかないと、目の前に浮いている階段を掴んで、懸垂の要領で体を持ち上げた。エクレアさんに手を貸しながら、ずいぶん見通しのよくなった谷を見下ろした。気のせいか星々の光も遠く、夜の世界はいつもの何倍も黒いように思えた。

    さあさ、寄れや歌えや祭の宴

 そのとき、オス・モルガーンに楽しそうな歌声が響き渡った。耳栓をしているのに、はっきりとその声は聞こえた。



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