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「つくづく人をバカにしておるな……。しかし、そなたのように美しい娘と出会えるならば、穴に落ちてみるのも……ぷぎゃっ」
本当に投げ捨ててくれてもかまわなかったのに、丁寧にも彼女は僕のところへアダムを届けてくれた。その手の中でデレッと相好を崩しているアダムは素早く回収し、何か文句を言う前に荷物の中へ押し込んでやった。
「ありがとうございました。……えーっと、シスター?」
瑞々しい梨のようなプラチナブロンドの髪にシアンの瞳の彼女は、白と黒の特徴的な服を身につけていた。さらに護身用なのか、片側の先が筒状になった変わった形の棒を背中に負っていた。
「はい。私は、このオス・モルガーン唯一の救貧院で働いています、エクレアと申します」
「はじめまして、シスターエクレア。僕はトルヴェール・アルシャラール。さっきの失礼な小人はアダムと言います。ちょっと調子がいいだけで、悪意はないのですが……すみませんでした」
「いえ、気にしていませんから。それより、出血はなくとも打ち身がひどいでしょう。救貧院はすぐそこですから、どうぞお立ち寄りください」
「お気持ちは嬉しいのですが、僕らはできれば夜になるまでに月桂冠の宿に着いておきたいんです。骨折もないようですし、手当ては宿ですることにします」
立ち上がって腰や足首を回すが、違和感は特になかった。よしっ、と気合を入れ直したとき、おずおずとエクレアさんが口を開いた。