本文詳細↓
「ここからでは、針が一周する以上にかかると思いますが……」
「……え?」
「それも最短でのお時間ですから、不慣れな方だともう少しかかってしまうかもしれません」
そんなことになっては、日なんかとっくに落ちている。
長い長いため息が、僕の口から出ていった。なんなら魂も、半分くらい出ていってたかもしれない。
「救貧院にも、簡単ですが寝泊まりできる部屋がありますので、よろしければ今夜はこちらでおやすみになられては?」
「……お世話になります」
それ以外に、どう答えろと。
「救貧院は、第三層から第一層まで大きくぶち抜いて造られています。そのため風通しも良く、光が入りやすい場所なんです。よほどの種族的な理由がないかぎり、皆さん風と光が恋しいようで、昼は多くの人が立ち寄られます」
「それはまたずいぶん景気がいいことよ。争いの原因にはなったりせんのか?」
「司祭様は、この街では多少顔が利く方なんです。おかげさまで、救貧院に一歩でも踏み入れたらどこの誰であっても、暴力行為はおろか口論すら一切しません」
「なんと、それが本当なら驚きだ。いや、エクレア殿を疑う訳ではないのだが、気性が荒い地下の者どもがと思うとな」