徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

至の月、階段と迷路の街にて 7

2019-11-16 17:55:18 | 小説








 本文詳細↓



 「ここからでは、針が一周する以上にかかると思いますが……」
 「……え?」
 「それも最短でのお時間ですから、不慣れな方だともう少しかかってしまうかもしれません」
 そんなことになっては、日なんかとっくに落ちている。
 長い長いため息が、僕の口から出ていった。なんなら魂も、半分くらい出ていってたかもしれない。
 「救貧院にも、簡単ですが寝泊まりできる部屋がありますので、よろしければ今夜はこちらでおやすみになられては?」
 「……お世話になります」
 それ以外に、どう答えろと。

 「救貧院は、第三層から第一層まで大きくぶち抜いて造られています。そのため風通しも良く、光が入りやすい場所なんです。よほどの種族的な理由がないかぎり、皆さん風と光が恋しいようで、昼は多くの人が立ち寄られます」
 「それはまたずいぶん景気がいいことよ。争いの原因にはなったりせんのか?」
 「司祭様は、この街では多少顔が利く方なんです。おかげさまで、救貧院に一歩でも踏み入れたらどこの誰であっても、暴力行為はおろか口論すら一切しません」
 「なんと、それが本当なら驚きだ。いや、エクレア殿を疑う訳ではないのだが、気性が荒い地下の者どもがと思うとな」


コメント
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