徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

至の月、階段と迷路の街にて 1

2019-11-10 14:11:17 | 小説








 本文詳細↓



 「おお……!」
 眼下に広がる光景に、僕は思わず息をのんだ。まさに圧巻の一言に尽きる。
 「あれが噂に名高い階段と迷路の街か……」
 「そんなふうに呼ぶのは人間ぐらいぞ。我らはあの場所を『オス・モルガーン』と呼んでいるゆえ、おぬしもそうするがよい」
 「オス・モルガーン? どういう意味だ?」
 「『東の裂け目』という意味よ。分かりやすかろ?」
 「へえ、じゃあ『西の裂け目(ベンス・モルガーン)』というのもあるのか?」
 「……さあ、あるのではないか? 我は見たことないがな」
 「お前も見たことがないなんて、それは探しに行く甲斐がありそうなところだな。……まあ、とりあえずは東から行ってみるとしよう」
 僕は荷物を担ぎ直すと、街道に拵えられた階段を下りはじめた。
 巨大な谷を埋めるように下へ下へと造られた、一風変わった街を目指して。

 「人間とはまた珍しい。一体何の用だ?」
 街道から直接街へ入れる唯一の入り口で僕らを出迎えたのは、煙管を吹かせたゴブリンだった。
 「人探しを兼ねた観光で」
 「物好きな奴だな。ここがどう言われているか、知らん訳じゃねえだろ?」


コメント
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