伊澤屋

歴史・政治経済系同人誌サークル「伊澤屋」の広報ブログ。

独裁少女サヨ子ちゃん 議案1 『当選の赤い薔薇は鮮血の色』

2019年05月08日 18時30分00秒 | Weblog

独裁少女サヨ子ちゃん


議案1  『当選の赤い薔薇は鮮血の色』



 ピピッ、 ピッ。
無機質だが強い、開票速報の当確の音が選挙事務所のTVから響き名前の左に赤い薔薇が咲く。


「ふぅ。 意外と遅かったわね」


令和9年4月25日(日)午後9時24分 東京都三鷹市。 当確を得た当の私が顔色一つ変えないのを周りがかえって慌てる。
当選は当然として、それを伝えるのが 「番組開始と同時」 でなかったのだけがどうも不足で満点は与えられない。


「はい。三鷹市長選今当確出ました。 無所属の新人で新護憲三派連合三党の推薦を受けた理辺サヨ子候補当確です。現場の真生さん、そちらの様子はいかがでしょう。万歳や拍手とかは?」
「真生です。 護憲三党の中でも移民党は外国人党員が多く今回選挙スタッフにも外国人が多いので日本独特な『万歳三唱』はありませんが…日本人スタッフが『ワッショイ』これは珍しい。  ソランさん、今三鷹市長選の開票率はどうなっているでしょうか。 得票率で言うと、数字的にはどうでしょうか?」

「はい。スタジオより繰り返します。今回注目選挙区の三鷹市長選挙、今開票率5%でうち8割強、2100票余りで理辺サヨ子候補当確です。ある程度予想されていましたが圧勝でしたね。」
「スタジオのソランさん、今カメラズームしていますが理辺候補が共に戦った運動員達を回り労をねぎらっています。 でもやはり16歳だけあって若いですよね。去年公職選挙法が大改正されてから今回は初の統一地方選になりましたが標準学年なら高校2年での当選は快挙ですね」

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「従来市町村長選挙の被選挙権は25歳以上でしたが去年の法改正で四年制大学卒業以上の資格があればそれ未満の年齢でも立候補できるようになりましたから…でも驚きました」
「理辺候補は去年15歳で東大法学部を卒業して僅か1年ででしたからね。 立進民主党も最高の新人を獲得したと私も思いますよ。 ではソランさん、スタジオにマイク戻します」


「はい。現場の真生さん、お疲れ様でした。 開票速報まだ長いので次の現場中継まで良く休憩取られて下さい じゃあ」


「記者さんは元気ね」
「いやぁお嬢、これが仕事ですから。 次は隣の杉並区で中継ですけどやっぱり立進党の区長が確実に受かるだろうから社の上層部も今頃酒と飯が旨いと思いますよ」

「それは良かったわ。 再来月の議会の第2回定例会もどうか来られて。帰りご飯をおごるわ」
「勿体無いお言葉です。 うちらTVが終わったら次は新聞社とネット配信でしたよね。 私もお嬢のその人徳にあやかりたいもんですよ。 んじゃ♪」


調子の良い男だ。 でもこの真生という男は利用価値がある。 第四権力だ。 価値も無いくせに調子だけいい奴ならとうにしばいている。


「大報の李斬です。 選挙中のマニフェストで市長就任後最初に実現させたい物は?」
「エイジャンパシフィック・イヴニングポストのイチェノヴォー・ジンです。 最大の懸案の都アイリス条例は市長としてはやはり厳守ですか?」 

「ええ…マニフェスト項目で最優先で実現はやはり、私にとって一丁目一番地の 『多様性と寛容さの尊重』 ですね。これが無いと私ではなくなってしまいますから。 金髪で青い目の市長を昭和世代や平成一桁のおじ様方はお認めにはなりたがらないとは私自身痛い程存じ上げておりましたが民意は正直でしたからね。 ふふ。♬  都アイリス条例、アイリス原則は国際公約の為当然厳守です。 市内でのヘイトも俗悪行事も 『ダメなものはダメッ!』 の姿勢で厳罰に処しますわ」


ピッ、ピッ…。
選挙事務所のTVから再び当確音が流れた。 9時37分だった。


「前回選挙から1年足らずで今回は議会と同日出直し選挙になった杉並区長選、開票率10%… 無所属の現職で立進民主党、移民党、公徳党の推薦を受けた田中麗候補、今当確出ました。」
「はい。 杉並区の現場から真生です。 スタジオのソランさん、田中区長の選挙事務所では今シャンペン空けてみんなで乾杯です」

「あ~、 真生さん美味しそうですね~~!」
「勝利の美酒ですね♬ いやぁ美味しい! ソランさんも来れば良かったのに!」


「…あの記者さん、さっきまでウチで取材しててもう隣の杉並区長の当選取材って早過ぎない? 科学忍法でも使えるの?」
「お嬢、ギョーカイじゃ 『飛ばしの真生』 って言えばあの人ですよ。連続取材の為なら信号無視でも飲酒運転でも轢き逃げでも何でもして次の現場に向かう鬼です」

「そう…飛ばし記事書かれて足を引っ張られたくはないわね」


でも毎度思うのは選挙の開票速報で局により違うが当確、当選の度画面に踊る薔薇は何故こうも皆血の様な赤なのか。報道は自分達が受からせた政治家なのだから逆らえばやはり自分達が葬ってやるという警告の目的で棺に入れる花の意味も込め最も鮮やかな赤を選ぶのか。悪趣味な。


「どうしたの?」
「はい。…市長。 ああ記者さん達からの質問が全社終えられてからでも結構なのですが」

「まだ市長じゃないわよ。 一体何かしら? 言って」
「お兄様が部活のお友達とお誕生祝いにとバーボンを呑み過ぎて救急搬送されました」

「あの馬鹿は18歳にもなって何やってるの!? 構わないわ。酔いが醒めれば自分で勝手に帰ってくるだろうし放っておきなさい!!」
「承知致しました」


同日午前8時39分、ニューヨーク  サンジェルマン家。


「おはようございます、旦那様」
「おはよう、ファブリさん。 いかんな、寝過ぎた」

「先程10分ほど前に確認しましたが、サヨ子様が市長選挙で当選されました」
「別にこちらで調べるのでも良かったのにな。 いつも貴女はお給金以上の仕事をしてくれる」

「お祝いの書状の用意は?」
「不要だろう。 あちらも読むまい」


                       議案1 『当選の赤い薔薇は鮮血の色』 完

次回予告

いけないよ。 どうも世界中で 「政治ごっこ」 が普通になって本物の 「政治」 がとうに忘れられた、絶えたカンジがしていけない。必要なのはごっこじゃなくて本物の政治だ。
当然みんなのしあわせ♡ なんて甘い理想なんて実現できないしそもそも私はそんなのは絶対にさせない。 政治とは恐怖と苦痛と絶望をカードにして行う知的なゲームに他ならない。
さあ、キックオフ。♪ 


次回 議案2  『これが政治だ!』

来週もサヨ子と、再び悪夢を見てもらう。

From now on I want to leave it to Judgement of future historians.

真実を直視せよ。


(え・伊澤 忍)



                            ©小林 拓己/伊澤 忍  2679
 


独裁少女サヨ子ちゃん 序  『反抗者はしばけ!』

2019年05月01日 18時30分00秒 | Weblog

独裁少女サヨ子ちゃん


序  『反抗者はしばけ!』

 

 今から私に挑戦しようと試みている小太りの脂ぎった中年の入り口くらいの男は、何とも自信に満ちた表情で私を睨みつけ机上の資料の最終確認に余念が無い。 とにかく幸せそうだ。  奴の出番が回ってきた。 さあ、お手並み拝見といこうか。 ♪

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「休憩前に引き続き会議を再開致します。 次の通告者。 7番 櫻井治君 登壇願います」
「宜しくお願いします。 議会閉会中に行われた市長による専決処分についてお伺いします。 所謂都アイリス条例、東京都言論表現良化条例を根拠とした市内国公立及び民間施設での同人誌即売会等開催の禁止についてこの憲法上の可否についての市長の所見をお伺いすると共にこれが憲法違反ならば取り消されるのか市長の所見をお伺いします。 ご答弁宜しくお願い致します」

「市長 理辺サヨ子さん」
「はい。 それでは只今頂きました、都言論表現良化条例が根拠の市内国公立及び民間施設での同人誌即売会禁止の専決処分に関するご質問にお答えします。 良化条例は憲法に違反しない為処分を取り消すことはありません。 以上になります」

「7番 櫻井治君」
「今の市長のお話では答に全くなっていません。 何故これが憲法に違反しないのかという点がすっぽりと抜け落ちています」

「市長 理辺サヨ子さん」
「低俗で青少年に有害な同人誌が憲法21条における表現の自由の保護を受ける対象などではない事は誰の目にも明らかであり、合わせて一定のキャパシティを持つ施設は人権活動、途上国支援といったあるべき用途に用いられるべきであり結局それが無くても何人も困りはしない、所詮は趣味に過ぎない同人誌即売会などに用いるべきでないと市は認識しております」

「7番 櫻井治君」
「市長は今… 『趣味』 と仰いましたか? 所詮は趣味、たかが趣味というのは明らかな差別ではありませんか!? 私も現役の同人作家ですが私は趣味やお道楽で同人誌を出しているのではありません! 私は日本の為に戦っているんです! 日本が経済力も技術力も著しく低下した今同人誌産業は残された数少ない貴重な得意分野です。 それを市長は 『たかが趣味』 などと仰るのですか!?」

「市長 理辺サヨ子さん」
「悪趣味です。 汚らわしい! 質問として扱う価値も無いので打ち切ります。 議長、今すぐそのオタウヨのデブに退場を命じなさい」

「櫻井君の退場を命じます」
「??? 何だと? 何が退場だ!? 俺の質問時間はまだ残ってるんだ! 理辺市長、何故俺の質問に答えない!? 同人誌排除が合憲だっていうのか!? 答えられないのか? もう負けを認めたって事か?」

「無駄に吠えていないで、早く議場から出ていきなさい。 どうせ恥の上塗りになるだけだからあくまで善意で言って差し上げているのよ。 耳が悪いんだったら良い耳鼻科を紹介するわよ」
「何が耳鼻科だ! 人の話を聞いてないか聞こえてないのはお前だろ! 戦勝国民気取りかッ!?」

「質問に答えろ! 理辺パヨ子!!」


それから瞬時だ。 一秒以下だったか。 私は演壇の足元からキャベツを取り出し、櫻井の脳天めがけて投げ付けていた。 中がぎっしり詰まった大玉のキャベツは思いの他質量があり硬い。
次の瞬間奴の頭部に命中したキャベツか頭蓋骨かどちらかが 「グシャッ」 という音を発し、奴は声も出さずにそのまま議場の床に崩れ落ちた。


「それがキャベツだと、言ってるんだ…。 私は人種キャベツも民族キャベツも絶対許さない。 する奴はしばく」


ばた、ばた、ばた…  どや、どや、どや…


「はい。真生です。 デスク? 今日撮影の画は使えません。 ええ…さっきのです。 はい」
「ああ。 生中継観てたけど市議会公式サイトのアーカイブ無しなのが不幸中の幸いだったな」

「こいつぁ… ウチだけじゃなくて在京キー局全部完全に箝口令ですよ。 まず過ぎます」
「だよ! もう今日は収穫無しで構わんからさ。 ストックの画とナレーションで繋ごうぜ」

 
奴が、櫻井が再び立ち上がる事は無かった。

令和9年6月。 東京都三鷹市。 初夏の日差しはどこまでも透き通り何も気にならなくなる様な青空の日だった。

                             序 『反抗者はしばけ!』 完
 
次回予告

「受かる」「落ちる」 点数でも票数でもほんのタッチの差で受かれば喜びひとしおでも逆ならその場で自ら命を絶ちたくなる。 それが人間。
だから私は敵を、どんなに価値の無い屑でも人生に絶望させないように圧倒的な差で落とすの。 どう? 私って優しいでしょう?


次回 議案1  『当選の赤い薔薇は鮮血の色』

これが血の色でなければ、何の色だというの?

From now on I want to leave it to Judgement of future historians.

真実を直視せよ。


(え・モザイクカオリ)



                            ©小林 拓己/伊澤 忍  2679


新連載 『独裁少女サヨ子ちゃん』 制作発表

2019年04月01日 18時30分00秒 | Weblog

制作発表を行う。 本ブログに於いて新作のWeb小説

『独裁少女サヨ子ちゃん』

の連載を来月令和元年5月1日より開始するのに当たりその決意を伝えたい。
『愛国少女ウヨ子ちゃん』 からのノベライズを快諾して下さった原作者の小林拓己先生には
この場をお借りして厚く御礼申し上げたい。



新連載予告

正義は人の数だけあると誰かが言った。だが私は目の前にある私以外の正義を悪と断じこの場で
そいつが二度と立ち上がれないくらい徹底して叩き、踏みつけ完全に討ち滅ぼさねばならない。
嫌な仕事だ。 でも誰かに代わってもらおうなんて思わない。 私以外にはさせない。


序 『反抗者はしばけ!』

しばかれたくなければ、どいていろ。



                         ©小林 拓己/伊澤 忍   2679  


15分後に。

2019年04月01日 18時12分21秒 | Weblog
注目。 15分後に、重大発表を実施する。 

つらい。

2019年03月19日 14時27分24秒 | Weblog
いそがしくて、つらい。

お茶に…しようか。

正夢、予知夢らしい。

2019年02月26日 13時00分18秒 | Weblog
二・二六事件の日の朝に高橋良輔作品 『ガサラキ』 を夢に見るのが予知夢らし過ぎる。

【公式】 『花の子ルンルン』 第1話 所感

2019年02月13日 12時39分21秒 | Weblog
観た。

この時代の 「第一話作画」 はもはや人間の手描きの限界レベルに達していたと判る。
気付いたがこの時代の漫画はお年寄りや乗り物や建物といった脇役的な画がとても上手い。

【公式】 『魔法少女ララベル』 第1話  所感

2019年01月01日 21時38分33秒 | Weblog
35年ぶりだか、観た。

服や建物の昭和感が半端無い。

進捗 9.14

2018年09月14日 22時30分23秒 | Weblog
現進捗。

昨日、各太さの画材のは発色及び消しゴム掛けの耐性のテスト実施。
本日、2頁「もくじ」テキスト部分のペン入れ行い。

進捗 30.9.11

2018年09月11日 22時09分06秒 | Weblog
現進捗。  …このフレーズも2年ぶりくらいだ。

新刊。 表紙、裏表紙、1、2頁の計4頁取り掛かり、この内1頁をペン入れまで完了。
来月中旬から下旬には脱稿とここで書けそうだ。