伊澤屋

歴史・政治経済系同人誌サークル「伊澤屋」の広報ブログ。

独裁少女サヨ子ちゃん 序  『反抗者はしばけ!』

2019年05月01日 18時30分00秒 | Weblog

独裁少女サヨ子ちゃん


序  『反抗者はしばけ!』

 

 今から私に挑戦しようと試みている小太りの脂ぎった中年の入り口くらいの男は、何とも自信に満ちた表情で私を睨みつけ机上の資料の最終確認に余念が無い。 とにかく幸せそうだ。  奴の出番が回ってきた。 さあ、お手並み拝見といこうか。 ♪

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「休憩前に引き続き会議を再開致します。 次の通告者。 7番 櫻井治君 登壇願います」
「宜しくお願いします。 議会閉会中に行われた市長による専決処分についてお伺いします。 所謂都アイリス条例、東京都言論表現良化条例を根拠とした市内国公立及び民間施設での同人誌即売会等開催の禁止についてこの憲法上の可否についての市長の所見をお伺いすると共にこれが憲法違反ならば取り消されるのか市長の所見をお伺いします。 ご答弁宜しくお願い致します」

「市長 理辺サヨ子さん」
「はい。 それでは只今頂きました、都言論表現良化条例が根拠の市内国公立及び民間施設での同人誌即売会禁止の専決処分に関するご質問にお答えします。 良化条例は憲法に違反しない為処分を取り消すことはありません。 以上になります」

「7番 櫻井治君」
「今の市長のお話では答に全くなっていません。 何故これが憲法に違反しないのかという点がすっぽりと抜け落ちています」

「市長 理辺サヨ子さん」
「低俗で青少年に有害な同人誌が憲法21条における表現の自由の保護を受ける対象などではない事は誰の目にも明らかであり、合わせて一定のキャパシティを持つ施設は人権活動、途上国支援といったあるべき用途に用いられるべきであり結局それが無くても何人も困りはしない、所詮は趣味に過ぎない同人誌即売会などに用いるべきでないと市は認識しております」

「7番 櫻井治君」
「市長は今… 『趣味』 と仰いましたか? 所詮は趣味、たかが趣味というのは明らかな差別ではありませんか!? 私も現役の同人作家ですが私は趣味やお道楽で同人誌を出しているのではありません! 私は日本の為に戦っているんです! 日本が経済力も技術力も著しく低下した今同人誌産業は残された数少ない貴重な得意分野です。 それを市長は 『たかが趣味』 などと仰るのですか!?」

「市長 理辺サヨ子さん」
「悪趣味です。 汚らわしい! 質問として扱う価値も無いので打ち切ります。 議長、今すぐそのオタウヨのデブに退場を命じなさい」

「櫻井君の退場を命じます」
「??? 何だと? 何が退場だ!? 俺の質問時間はまだ残ってるんだ! 理辺市長、何故俺の質問に答えない!? 同人誌排除が合憲だっていうのか!? 答えられないのか? もう負けを認めたって事か?」

「無駄に吠えていないで、早く議場から出ていきなさい。 どうせ恥の上塗りになるだけだからあくまで善意で言って差し上げているのよ。 耳が悪いんだったら良い耳鼻科を紹介するわよ」
「何が耳鼻科だ! 人の話を聞いてないか聞こえてないのはお前だろ! 戦勝国民気取りかッ!?」

「質問に答えろ! 理辺パヨ子!!」


それから瞬時だ。 一秒以下だったか。 私は演壇の足元からキャベツを取り出し、櫻井の脳天めがけて投げ付けていた。 中がぎっしり詰まった大玉のキャベツは思いの他質量があり硬い。
次の瞬間奴の頭部に命中したキャベツか頭蓋骨かどちらかが 「グシャッ」 という音を発し、奴は声も出さずにそのまま議場の床に崩れ落ちた。


「それがキャベツだと、言ってるんだ…。 私は人種キャベツも民族キャベツも絶対許さない。 する奴はしばく」


ばた、ばた、ばた…  どや、どや、どや…


「はい。真生です。 デスク? 今日撮影の画は使えません。 ええ…さっきのです。 はい」
「ああ。 生中継観てたけど市議会公式サイトのアーカイブ無しなのが不幸中の幸いだったな」

「こいつぁ… ウチだけじゃなくて在京キー局全部完全に箝口令ですよ。 まず過ぎます」
「だよ! もう今日は収穫無しで構わんからさ。 ストックの画とナレーションで繋ごうぜ」

 
奴が、櫻井が再び立ち上がる事は無かった。

令和9年6月。 東京都三鷹市。 初夏の日差しはどこまでも透き通り何も気にならなくなる様な青空の日だった。

                             序 『反抗者はしばけ!』 完
 
次回予告

「受かる」「落ちる」 点数でも票数でもほんのタッチの差で受かれば喜びひとしおでも逆ならその場で自ら命を絶ちたくなる。 それが人間。
だから私は敵を、どんなに価値の無い屑でも人生に絶望させないように圧倒的な差で落とすの。 どう? 私って優しいでしょう?


次回 議案1  『当選の赤い薔薇は鮮血の色』

これが血の色でなければ、何の色だというの?

From now on I want to leave it to Judgement of future historians.

真実を直視せよ。


(え・モザイクカオリ)



                            ©小林 拓己/伊澤 忍  2679

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