活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

二木 隆さんの漢詩の本、羽田野麻吏さんのルリユール

2016-02-06 12:08:52 | 活版印刷のふるさと紀行

 このところ東京も雪が降るとか降らないとか予報が大揺れですが、暦の方は「立春」、店頭でフキノトウや菜の花を見つけてつい、うれしくなって手を出してしまいました。

 うれしくなったといえばこんなことがありました。

 ひとつは学士会館で先週行われた二木 隆さんの『漢詩と花と』の出版記念のパーティ、集まった方は二木さんがドクターだからほとんどが医療関係者。その方々がこぞっていわれていたように、『漢詩と花と』は素人ばなれした見事な本でした。

 まず、造本、A4判布クロースに署名が金箔押し、それに無地のソフトケース入り。最近ではなかなか見られない本格的な上製本、その堂々たる風格に脱帽しました。そして、肝心な中身が、また類例がないほどの凝りようでした。見開きの右ページ上段に隷書で漢詩が一編、そして下段にカラーの花の日本画。いずれも著者が丹精込め、集中して制作した力作。そして左ページ上段に右ページの漢詩を日本語の読み下し文にして著者がこれまた、流麗な漢字で配し、

その下段には漢詩に関連した随想が組んであるという構成。             

 隷書で書かれた漢詩の迫力、その下の日本画の花の可憐な美しさと色合い、添えられている随のも著者の漢詩はもちろんご自身の人生感をしみじみ伝えてくれるようで心打たれます。編集者でも思いつかないような実に心憎い本作りに敬意を抱きました。「やられたー」です。さらに驚いたのは、その翌々日、同じ二木さんの8回目のテノール独唱会に招かれたことです。

 週刊誌に日本の名医として登場するお医者さんでありながらこの才能のほとばしり、それを目の当たりにして「こんな方もいるのだ」と、つい、うれしくなってしまいました。

 もうひとつ、うれしかったのは恵比寿のLIBRAIRIE6で観た羽田野麻吏さんの「サトゥルヌスの書物」展であろました。

 展覧会のメイン、羽田野さんならではのルリユール(工芸製本)作品の見事はさは別にして、私がうれしかったのは、書名にちなんだ鉛活字をこっそり内部にひそめた、ルリユールには関係はありそうではありますが、いわばお遊びの出品作のあれこれでした。実物をご覧いただかなくてはわかりませんが、そのユニークさ、洒脱さ、エスプリにこれまた、脱帽でした。

 そうそう、フキノトウはちょっぴり苦くとも「春近し」うれしい味でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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